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オレンジ
作:kick


朝起きたら右手の人差し指の爪と肉の間から、何かの芽が出て小さな白い花を咲かせていた。
顔を洗わなくてはいけなかったので、その人差し指を反らせて水を汲んだが、やはりどこからか水を吸い込んでしまったらしく、指と指の間、水かきのところから葉がわんさかでてきて、いつのまにか右腕は真夏の桜みたいに青々とした葉っぱにおおわれてしまった。
右手の自由が利かないのでとりあえずキッチンにいって左手で冷蔵庫をあけ、オレンジジュースを取り出し、コップに注ぐ。
そして不器用に左手でジュースを一口のむと、その曲げている左腕のひじの下にオレンジが一つ成った。足にはしっかり根が張っていた。まいった。
ひじを斜めに持ち上げて、口でかぶりとオレンジをもぎ取った。
すると右手の葉は枯れ落ち、足元の根は水分を失いからからになってぽきぽきと折れた。口の中のオレンジは砂になりじゃりじゃりと歯にあたった。
時計を見たら9時を廻っていた。急いで身支度を整えて家を出た。

というのが会社に遅刻した理由です。
そういうと上司は数秒僕の目を見つめたあと
「なんちゅうあほな言い訳や!とりあえず今日中にこれやっとけ!!」
と言って、大量の書類を突きつけた。

今その書類の一つ一つに目を通しながら、地味に電卓をたたいている。
気が付けばお昼の時間を過ぎている。あれは夢だったのか現実だったのか今でもよく分からないが、大量の仕事を押し付けられたと言うことだけは間違いない。

「お疲れ様です。」
と言う声とともに、書類と書類の間にわずかに残された机のスペースにコーヒーが置かれた。その手の爪の先には小さく白い花が描かれていた。
彼女が笑顔を残して去っていく背中に僕は声をかける。

君、オレンジ好き?














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