愛は朝からバタバタしていた。
今日は区内掃除の日。
毎日の朝の日課である掃除・洗濯を済ませ、
やっと化粧をしているところである。
旦那の大和はソファーでコーヒーを飲みながら、優雅に朝からテレビを見ていた。
「今日の掃除行かないんでしょ?」
愛はくつろいでいる大和にいちよう聞いてみたが。
「どうして俺が行かないとだめなんだ。めんどくさい」
おもいどおりの返事が返ってきただけだった。
この家を建てたのが5年前。
団地内の行事があるときは愛が出席している
最初の半年ぐらいは大和が行っていたが。
一度愛が行ったきり行かないようになったのである。
「聞いたのが間違いだったわ」
愛は大和のそんな態度に腹がたったのか、
ブツブツと呟いた。
・・・
それからは二人とも黙ったまま
いつもこんな感じではあるのだが…
「桜、向日葵そろそろおきて~」
愛は化粧の手は止めずに、二階で寝ている子供達に向かって大声で叫んだ。
しばらくして…
「はい、おはよ二人とも。早く用意してご飯食べて。今日は区内掃除の日だから、用意できたら行くよ」
桜と向日葵は、愛が機嫌悪いのを察したのか黙ったまま用意を始めた。
「出かけてくるぞ」
大和は急に立ち上がり、そういいながらリビングから出ていったのである。
休日でも大和は一人行動が当たりまえであった。
愛も子供達もそんな休日に慣れているせいか
大和が出ていくことに、なんの違和感もなかった。
愛と大和は結婚して12年になるが、夫婦の会話もなく、休日も別行動がほとんどだった。
「用意できたらいこうか」
愛は子供達が用意できたのを確認したのか、ソファーから立ち上がり玄関へ向かった。桜と向日葵も不機嫌な顔で愛に続いた。
区内掃除の集合場所の公園までは家から歩いて5分ほどである。
公園に着くともうかなりの人が集まっていた。
区内の決まりで不参加の家は5.000円罰金であるため、ほとんどの家が参加している。小学生は子供会があって全員参加になっているため、かなりの人数である。
季節は12月初め。今日も雪が降りそうな曇り空である。
桜と向日葵は友達を見つけたのか、走っていった。
愛は一人になり震える腕をさすりながら立っていると、後ろから肩をたたかれた。
「おはよう」
愛が急に肩をたたかれたのでビックリして振り返ると、茜が笑顔で立っていた。
茜は愛と同じ会社に行っている同僚である。
家は近所で子供もよく似た歳である。
愛と性格が合うせいか、よく遊んだりしている。
「おはよう茜。今日も寒いよな」
「ほんと毎日寒いよな。どうしてこんな寒いのに掃除なんてしないとだめなんだろうね。自分の家も掃除してないのに」
「茜の家はほんと汚いよな。ちょっとは掃除しなよ。」
愛は綺麗好き、対して茜は掃除が苦手なのである。
「愛の家が綺麗すぎるんだよ。私も掃除してるんだからね。」
茜は苦笑いを浮かべている。
「まぁ~茜はいろんなところに物をおきすぎなんだよ。もっと見えないところに片付けないと」
「だって見えるところにあったほうがほしいときにすぐ見つかるでしょ。片付けちゃったら絶対どこにしまったかわからないよ」
茜は一人でうなずいて納得していた。
愛はそんな茜を見て呆れている。
「家事なんて真剣にやっても得にならないでしょ。旦那も子供も私がやるのが当たり前だと思ってるしね」
茜の言っていることは確かに当たってある。
愛は自分が汚いのが嫌だから掃除や片付
けはやっているが、毎日ご飯作って洗濯して・・・。
子供は仕方ないとしても、旦那はそれが当たり前だと思っているのが腹が立つ。
「男ってほんと嫌な生き物だよね」
「ほんとだよ。付き合ってるときはめちゃくちゃ優しかったのに。結婚したらまったく何もしない。ほんとどうにかしてほしいよあの男だけわ。」
愛と茜は合うたびにこんな話をしている。
旦那の文句に関しては同感なのである。
茜も結婚して10年である。
愛の旦那と同様、家のことは何一つしてくれない。
「世の中の男ってみんなおんなじなんだろうかな~。家のことは何もしない。仕事して疲れてるのなんて一緒なのに。」
「ほんとだよね。自分が仕事してなかったらまだ我慢できるけど…自分だけ仕事頑張ってるみたいな態度とるから余計に、腹が立つんだよね。」
愛も茜も思っていることは一緒のようであり、同じようにうなずいている。
「茜は癒しのダーリンがいるでしょ」
愛はそんな同じようにうなずいている茜を見てちょっと怒った顔でそう言った。
「 まぁ~ね~。隆雄は今の私をほんとに癒してくれるよ」
茜は急に嬉しくなったのか笑顔にかわった。
茜は旦那とは別に付き合ってる人がいるのだ。世間的にいう不倫だ。
「いいよなー茜は、そういう人いるから。私も探そうかな~」
「そうしなよ。前の彼氏は良かったでしょ」
愛も数ヶ月前までは癒しの彼氏がいたのだ。
相手は独身者であったため、いつでも会うことができたし、何も気を使うことがなかった。
茜のほうは、既婚者ではあるが単身赴任をしているため独身者と対してかわらない。
「独り身は楽だけど、ずっと一緒には入れないからね。やっぱり次は結婚している人がいいな」
不倫というものは一線を越えてしまうと大変なことになってしまう。
愛の彼氏はそんなことを恐れたのか、ややこしくなる前に別れを告げたのであった。
最初は気晴らし程度の付き合いだった愛ではあったが、一緒にいるとやっぱり感情がでてくるものである。彼氏はそんな愛の気持ちを察したのであろう。
「茜はどうなの!?隆雄とは??。うまくやってるの?」
愛は自分の過去を振り返りちょっと悲しい気分になった。
「いい感じだよ。隆雄は家で一人だからいつでも会いに行けるしね。嫁とも全然連絡とってないみたいだし」
「そうなんだ。いいよなやっばり単身赴任は。どっちも結婚してたら先のことなんて考えなくていいんだもんね」
「そんなこともないよ。やっぱりずっと一緒にいると好きになっていくし、私のほうは旦那が近くにいるからね。あんまり下手なことしてばれちゃったら大変だしね」
茜はさっきの笑顔が嘘のように急に寂しい顔に変わった。
「でもばれなかったらずっと一緒にいれるじゃんか」
「そうなんだけど。ずっと一緒にいれても結婚できるわけでもないでしょ。だから辛いこともいっぱいあるよ。最近はうちの旦那にも怪しまれてるしね。」
「ばれないように気をつけなよ」
「そうだね…」
二人がいつものように話し込んでいる間に周りの人達が集まり始めた。
「あ~掃除めんどくさいね」
「早く終わらして帰ろうよ」
二人は掃除が相当嫌なようで嫌な顔をしながら集まっている中に入っていった。
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