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本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 作者:香月 美夜

第五部 女神の化身

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ブリュンヒルデの提案

 ブリュンヒルデの発言にシンとその場が静まった。その場にいた全員が驚きに目を見開き、跪いているブリュンヒルデを見つめる。寝耳に水の発言にわたしの思考回路がついていかない。

 ……アウブの第二夫人? 誰が誰の? ブリュンヒルデが養父様の!?

 真っ白になった思考回路にポツポツと浮かぶ言葉が繋がった瞬間、今度は大混乱が襲ってきた。ガタッと椅子から立ち上がり、一歩ブリュンヒルデに近付く。

「ちょ、え!? 待って、待ってくださいませ! ブリュンヒルデ、落ち着いて深呼吸を。気を確かに……」
「落ち着かねばならぬのも、深呼吸が必要なのも其方だ」

 呆れたような顔になった養父様が立ち上がり、テーブルを回ってわたしの隣に立った。そして、「ほら、深呼吸をしろ」と軽く肩を叩いてくれる。

「ヒッヒッフー……ヒッヒッフー……」
「何だ、それは?」
「勝手に口から出ました。わたくし、何を言っていますか?」
「残念ながら全くわからぬ。落ち着け」

 ブリュンヒルデの爆弾発言に全く動じていないように見える養父様と、混乱しているわたしを見ながらオロオロしているように見えるおじい様を交互に見る。

「お、おおお、落ち着き方がわかりません、おじい様」
「その気持ちはよくわかるぞ、ローゼマイン」

 二人であわあわとしていると、リーゼレータが「失礼します」と静かに進み出てきて、スッとシュミルのぬいぐるみを取り出した。

「取り乱すな、馬鹿者。息を吸え」

 フェルディナンドの声にハッとして、反射的にわたしは息を吸った。いっぱい吸った。「息を吐け」と言われないので、更に吸った。どんなに頑張ってもこれ以上は吸えないというくらい肺に空気がいっぱいになった。苦しくてたまらなくなったわたしはフハッと息を吐く。

「どこまで吸わせる気ですか、フェルディナンド様!?」

 涙目でシュミルのぬいぐるみを睨むと、リーゼレータがニコリと笑った。

「ローゼマイン様が深呼吸の仕方を思い出されたようで何よりです。今度は淑女としての立ち居振る舞いを思い出してくださいませ」

 シュミルのぬいぐるみを抱きかかえたまま、リーゼレータが魔術具を作動させる。可愛いシュミルにフェルディナンドの声で「君はそれでも領主候補生か。嘆かわしい」と言われて、わたしは椅子にすすっと戻って座り直した。

「大丈夫です。落ち着きました。お話を続けましょう」
「ふむ。驚きの効果だ。よくやった。下がれ」
「恐れ入ります」

 養父様はリーゼレータの機転を労いながら自分の席に戻り、わたしからブリュンヒルデに視線を移す。

「ローゼマインのこの様子から考えても、主に一言も相談していなかったことは明白だな」
「はい。主であるローゼマイン様にもお父様にも相談していません。フロレンツィア様も他の領主候補生の方々もご存じないことです」

 ブリュンヒルデは静かにそう言った。養父様はピクリと眉を動かしたけれど、そのままブリュンヒルデに話を続けさせる。

「当人に自覚が薄くても、ローゼマイン様はライゼガングを左右できるお立場です。ギーベ・グレッシェルであるお父様もライゼガング系の貴族の中では影響力をお持ちです。相談した結果、わたくしをアウブの第二夫人に、というお話が正式に持ち込まれれば、今のアウブには断るのが難しいでしょう。ですから、この場の戯言として扱い、アウブが聞かなかったことにするためには、わたくしの独断でなければならないのです」

 ライゼガング系の貴族の意思とは関係がない話という形にしたかったのです、とブリュンヒルデは言った。

「それに、第二夫人に関しては周囲に押し付けられるのではなく、エーレンフェストの将来に必要な者をアウブが選ばなければならないと思っています。ローゼマイン様とヴィルフリート様のご婚約は領地のためにアウブが決められたものだと伺っています。でしたら、領地にとって必要であれば、御自身の第二夫人を娶る選択もしてくださるでしょう」

 真っ直ぐに見据えてくる飴色の瞳に観念したように、養父様は一度目を伏せる。そして、ゆっくりと深緑の目をブリュンヒルデに向けた。

「聴こう」
「恐れ入ります」

 ブリュンヒルデは跪いたまま、落ち着いた様子で説明を始める。

「わたくしもシャルロッテ様の御意見を伺い、ライゼガングの情報を積極的に得るまでわかりませんでしたが、ライゼガングは粛清後に領内の貴族と縁を結ぶよりも上位領地との縁組を重視する領主一族の考え方にかなり危機感を覚えているようです。ヴィルフリート様との結婚でローゼマイン様が本当に第一夫人になれるかどうかが疑問視されています」

 そんな現状から「ヴィルフリート様ではなく、ローゼマイン様を次期アウブに」という声が再燃したり、「上位領地の第一夫人など必要ない」という思いが強くなり、「上位領地から娶らなければならないのであれば、順位を上げる必要などない」という主張が生まれたりしているそうだ。

「ライゼガングは婚姻によってアウブとの結び付きを強めてきた貴族です。アウブが第二夫人をライゼガングから得て、彼等を尊重する姿勢を見せるだけで不安の大半は消えるでしょう」

 ……シャルロッテと情報交換してから今までの間にそんな情報を集めてたんだ。ウチの側近、マジ有能。

 情報収集能力が高いのはハルトムートだけではないようだ。それとも、ライゼガング系の貴族の情報だからとりやすいだけだろうか。

「第二夫人というのは領地の将来に大きく関わる問題ですし、本来はアウブにこうしてお話をするにも十分な根回しが必要な件だと承知しています。わたくしもこのような形で進言するつもりはなかったのですけれど、さすがに見るに見かねました。一刻を争う事態だと判断した上での差し出口でございます」

 ブリュンヒルデは養父様とその周囲に付いている側近に労わるような視線を向ける。わたしにはその表情の意味がよくわからなくて首を傾げた。

「一刻を争うというのはどういうことですか?」
「……おそらくアウブは粛清によって、御自分の側近の大半を処罰したのです。フロレンツィア様と側近を共有しなければ、北の離れにも来られないほど。このような状態ではアウブはもちろん、フロレンツィア様の執務にも影響があるのではございませんか?」
「え!?」

 養父様の側近の顔など全て覚えていないわたしは驚きに目を見張って、養父様の周囲を見た。

「領主一族の会議において、それぞれの領主候補生の仕事量を承知の上で、シャルロッテ様ではなく、ローゼマイン様の助力を乞うたのはご懐妊という理由以上に、ローゼマイン様による穴埋めが必要だったのではないか、と考えたのですけれど、いかがでしょう?」

 わたしが養母様の補佐をすれば、ライゼガング系の貴族が入れやすくなる。ライゼガングの協力が欲しかったからではないか、とブリュンヒルデが指摘した。
 養父様はわずかに唇を上げただけで何も答えない。けれど、否定されなかった以上、ブリュンヒルデの言葉は正しいのだろう。

「ライゼガングの情報をボニファティウス様に頼られている現状を考えても、アウブにライゼガングの支持が必要なのは今すぐでしょう。けれど、フロレンツィア様の事情を考えれば、二年ほどは第二夫人をお迎えするのが難しい状態です」

 ……うわぁ、まさに八方塞がりって感じだね。

「けれど、わたくしは見ての通り未成年ですから、貴族院を卒業した後に一年の婚約期間を設ければ、星結びの儀式はどれだけ早くても二年後です。フロレンツィア様の妊娠や出産に影響の出る期間は終わっています」

 ブリュンヒルデの飴色の瞳は強い光に輝いている。

「アウブがライゼガングから第二夫人を迎えると発言することで、ライゼガングの大半は今までと同じように時が進むと不安を解消することができるでしょう。ヴェローニカ様の実家であり、最も対立が激しかったグレッシェルの娘を娶る意味は、おそらくアウブがお考えになる以上にライゼガングにとって大きいのです」

 そう言った後、「婚約者がいれば、領主会議で他領からの縁組のお申込みをお断りすることも容易になります」とブリュンヒルデは微笑む。わたしの側近として他領との縁組も決して乗り気ではなく、頭を悩ませていたことを知っているからこそ言えることだ。

「ローゼマイン様が神殿に籠られても、側仕えであるわたくしは大半の部分を城で過ごしているので、ライゼガングとの交渉の矢面に立つことが可能です。何より、元々フロレンツィア様と同派閥ですから、補佐はしても対立はしません。シャルロッテ様と協力し合いながら、フロレンツィア様の穴を埋めることができます」

 シャルロッテ様と協力しながらの社交は貴族院でもしていました、とブリュンヒルデは胸を張る。

「貴族院における王族や上位領地とのお茶会や会合の準備や接待は、わたくしが中心でした。エーレンフェストの中では上位領地との社交経験も多い方だという自負もございます。アウブの婚約者という地位であれば、シャルロッテ様と協力しつつ、側仕え達の教育を行うことも可能になるのではないか、と思います」

 領主の養女の側近がアウブ夫妻の側近達を始めとした大人達に口を出すのは難しい。けれど、第一夫人の補佐をする第二夫人という立場になれば、それが可能になる。自分の経験を伝え、上位領地とやり取りができる側仕えを育てやすくなる。

「このような形でフロレンツィア様の穴を埋めながら、少しでも早くローゼマイン様の提案する世代交代を進めれば、旧ヴェローニカ派の者を登用するのも難しくなくなるでしょう。旧ヴェローニカ派を登用することが増えれば、遠ざけることを選択せざるを得なかった側近を戻すこともできるようになると考えられます」

 ブリュンヒルデの言葉に養父様は少しだけ目を細めた。じっとブリュンヒルデを見つめながら口を開く。

「私が予想していた以上によく周囲を見ているし、色々なことを考えていることがわかる。だが、好き好んで第二夫人に……」
「そうですよ! ブリュンヒルデは優秀で気が利いて有能なのですから、養父様の第二夫人になるなんて勿体ないではありませんか! 養父様よりブリュンヒルデの方がカッコいいくらいです」

 周囲で必死に笑いを堪える声が聞こえて、「おい、ローゼマイン」と養父様がひくっと口元を引きつらせる。でも、事実だ。

「だって、養父様には養母様がいるのですよ。養母様が一番好きで、他の女性なんて目に入らなくて、第二夫人など娶りたくない、と散々ぐちぐち言っていたではありませんか。そのような殿方に嫁いでも、ブリュンヒルデが幸せになれる未来が見えません。わたくしは嫌です」

 せっかく結婚するのだから、もうちょっと愛情を持って接してくれる人と結婚してほしい、とわたしが訴えると、ブリュンヒルデは目を丸くした。

「では、ローゼマイン様はどうしてヴィルフリート様との婚約を承諾したのですか? ヴィルフリート様が愛情を持って接してくださると考えたからですか?」
「いいえ。エーレンフェストの図書室と神殿図書室を自由にできる立場が欲しくて、印刷業を進めるのに最適だと考えたからです」
「つまり、結婚に愛情は関係ないのですね」

 ……ハッ! 確かにわたしの愛情が本以外に向いてない!?

 本音を漏らすのではなく、すでに婚約している先達として、もっと良い言葉が必要だった。失敗を取り繕うためにわたしは必死で言葉を探す。

「あ、あ、でも、ブリュンヒルデと養父様とは違って、わたくしとヴィルフリート兄様の間には穏やかな家族愛というか、今まで通りの緩い関係があります。その関係は続けられるでしょうし、フェルディナンド様やギーベ・ライゼガングとも約束していましたから、冷遇はされないと思いますよ。大丈夫です」

 わたしが必死で捻り出した言葉にブリュンヒルデはものすごく微妙な顔になり、養父様はしかめ面になった。

「ローゼマイン、其方はギーベ・グレッシェルの娘を第二夫人に迎えて冷遇するほど、私が愚かに見えるのか?」
「え? えーと、アウブとしてそれなりに頑張ってくれると思っています」
「それなりとは何だ? こら」

 不機嫌な顔の養父様にぷすぷすと頬を突かれる。地味に痛くてわたしが「おじい様、助けてくださいませ」と助けを求めると、おじい様は「ふんっ!」とすぐさま養父様の手を払い退けてくれた。

「ぐあっ!? 加減しろ!」
「養父様……。すごい音がしましたけれど、癒しは必要ですか?」
「いや、良い。それよりも、其方の側近は全てを呑み込んだ上で、第二夫人を希望しているようだが、其方は反対という立場で良いのか?」

 ブリュンヒルデの決意に反対という立場をとるのか、と尋ねられて、わたしはブリュンヒルデに視線を向ける。ブリュンヒルデはニコリと綺麗な微笑みを浮かべた。

「ローゼマイン様、わたくしは流行の発信をしたいと思って、ローゼマイン様の側近を希望しました。望みが叶ったことを嬉しく思っていますし、これからは第二夫人として、フロレンツィア様やローゼマイン様を通じて流行を発信していきたいと思っています。そして、領主一族として流行を作り出していくことにも挑戦したいのです」

 ブリュンヒルデの希望に満ちた顔はライゼガング系の貴族達を抑えるための犠牲になる者の顔ではなかった。むしろ、せっかくのチャンスを見つけたのだから、最大限に自分の希望を叶えようとしている野心家の顔だ。

 ……ブリュンヒルデがカッコよすぎる。

「わたくしが第二夫人になれば、ローゼマイン様の代わりに領内の社交を引き受けられます。旧来の社交をローゼマイン様が覚える必要はございません。領内を整え、ヴィルフリート様とローゼマイン様がアウブ夫妻としてエーレンフェストを治める時に不都合がないようにしたいのです」
「側近の鑑だな。その心映え、気に入った。ジルヴェスターの第二夫人に認める」

 ……おじい様が気に入ったって、え?

 目を瞬くわたしに構わず、おじい様は上機嫌で座り直して、悠然とお茶を飲み始めた。ブリュンヒルデはじっとわたしを見つめて、賛成するのか、反対するのか、わたしの発言を待っている。

「ブリュンヒルデの決意はエーレンフェストのために最善だと思います。でも、わたくし、ブリュンヒルデが側近を辞めるのは困ります」

 わたしの発言にブリュンヒルデは小さく笑った。

「貴族院卒業まではローゼマイン様の側仕えでいさせてくださいませ。その後、結婚のためにお仕事を辞めるのは想定されていらっしゃったことでしょう?」
「それはそうですけれど……」
「わたくし、ローゼマイン様がお困りになることがないようにベルティルデやグレーティアを教育します。ご安心ください」

 女性は結婚して辞めていくので、新しい者を育てたり、子育ての終わった世代を取り込んだりするように養父様からも言われていた。適齢期の側近達を見回して、少し寂しい気持ちになる。
 そんなわたし達のやり取りを見ていた養父様が、ゆっくりと息を吐きながら口を開いた。

「ブリュンヒルデ、其方が婿を迎える予定であったならば、グレッシェルは跡取りをどうするつもりだ?」
「妹がいます。今のわたくしが婿を迎えるより、わたくしが第二夫人となってグレッシェルを交易都市として整えた後、ベルティルデに少しでも優秀な婿を迎えてもらった方がグレッシェルのためになるでしょう。……第二夫人に男の子ができたようですから、そちらに継がせることも考慮しています」

 ブリュンヒルデは元々グレッシェルを支えてくれる他領の優秀な男性を迎えるつもりだったようだ。けれど、エントヴィッケルンが成功しなければ婿取りは難しい。変革が成功するかどうかわからないところに来てくれる優秀な者は少ないのだ。

 特に、養母様の懐妊によってエントヴィッケルンの予定が変更され、計画に変更が生じている今、ブリュンヒルデは婿取りよりも第二夫人としてエントヴィッケルンの成功に力を入れる方が重要だと考えているらしい。
 アウブが主導で街の整備を行うと言われれば、「自分達を蔑ろにするのか」とギーベ・グレッシェルは反発するかもしれないけれど、ブリュンヒルデが間に立てば物事はずいぶんとスムーズに動くそうだ。

「わたくしにはわたくしの打算と理由がございます。わたくしはアウブの寵を得るためではなく、エーレンフェストを支える一員として自分の能力を最大限に活かすために第二夫人の役職を希望します」

 ブリュンヒルデのプレゼンテーションが終わった。
 自信たっぷりの顔で「小娘の戯言と切り捨ててくださっても構いません。そのために独断で動いたのですから」とブリュンヒルデが言った。
 養父様はクッと笑って立ち上がる。そして、ブリュンヒルデの前に立ち、手を差し伸べた。

「其方の心意気、受け取った。ギーベ・グレッシェルに面会を申し込む。春を寿ぐ宴で壇上に上がれる衣装と魔石を準備しておくように」
「恐れ入ります」

 ブリュンヒルデは勝利を得た笑みを浮かべ、その手を取った。さらりと深紅の髪が背中を滑る。

 ……うぅ、ブリュンヒルデが養父様の第二夫人か。

 ブリュンヒルデが望んだことだし、エーレンフェストにとっては最良なのはわかる。けれど、ちょっとだけ諸手を挙げての祝福がしにくい。やっぱり第二夫人というのがわたしの感覚には馴染まないようだ。話に聞く分には「そういう文化だからね」と思えるし、それほど抵抗はないのだけれど、身近な人が第二夫人になるとちょっと微妙な気持ちになってしまう。

 ……しかも、溺愛されている第一夫人がいるからねぇ。

 父親に決められるのが当然の世界で、自分の望んだとおりの婚姻を勝ち取れたのだから、その面だけを見ればブリュンヒルデの大勝利なのだけれど。

「……む? オルドナンツ?」

 お菓子を食べていたおじい様が窓の外を睨むようにしてそう呟いた。皆が一斉に窓の方へ向いたけれど、オルドナンツの影も形も見えない。

「おじい様、どこですか?」
「……もうじき見えてくるはずだ」

 おじい様が言った通り、十秒ほどするとオルドナンツの形が見え始めた。驚異的な視力に驚いているうちに、オルドナンツはこの部屋に入ってきた。そして、お父様の腕に降り立つ。

「騎士団長、ゲルラッハより報告です」

 一斉に皆が顔色を変えてオルドナンツを見つめる。マティアス達を連れた騎士団が調査のためにゲルラッハへ向かっているはずだ。何があったのだろうか。

「隠し部屋の数々を確認していたところ、ゲルラッハの息子がギーベ生存の可能性を口にしました。至急現地へお越しください」

 一番に立ち上がったのはおじい様だ。養父様と目を合わせて、頷き合う。

「カルステッドはここに残し、私はライゼガングの取り込みに注力する」
「うむ。私も今度こそしくじらぬ。何がしか持ち帰る」

 おじい様はそう言って、自分の側近を引き連れて部屋を飛び出して行った。

「養父様、マティアス達は……」
「ボニファティウスに助力してもらうことになる。カルステッド、戻るぞ」

 今にも飛び出していきたそうな顔をしているお父様がグッと拳を握って養父様の言葉に頷く。養父様はわたしを見下ろして、ぺちっと額を叩いた。

「ローゼマイン、其方の側近が行っているのだ。気が急くのはわかるが、其方の面倒を始終見ていたフェルディナンドはもうおらぬ。其方が何かしてもすぐに庇える存在がいないことを念頭に置いて行動してくれ」
「……はい」

 お互い、今までと同じように行動していては痛い目に遭うぞ、と言い残し、養父様は足早に部屋を出て行った。
ハルトムートに続いてブリュンヒルデの独壇場です。
ライゼガングの娘という立場をフル活用して、自分の望みを叶えました。

次は、春を寿ぐ宴です。
+注意+
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