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本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 作者:香月 美夜

第五部 女神の化身

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領主一族の会議 前編

 引き取ろうと思えば引き取れる親がいるのに、季節一つ分も子供部屋に放置しておくなんてニコラウスが可哀想だ、とわたしが言うと、コルネリウス兄様が難しい顔になった。

「父上は粛清の指揮を執る立場だからね。折を見て、数回はニコラウスと話をしに行ったけれど、引き取るのは無理だ。貴族院に入ってもいない子供を離れに一人で置いておくわけにはいかない」
「……本館にはお母様がいますよね?」

 別に離れでなくても、とわたしが呟くと、コルネリウス兄様はきょとんとした顔で「母上はニコラウスの母親ではないのに何故引き取るのだ?」と言った。

「え? 引き取れないのですか?」
「ローゼマイン様は神殿でお育ちですし、洗礼式を機にエルヴィーラ様のお子様となったので、同母の兄弟と異母兄弟への理解が浅いのかもしれませんね。母親の許可があれば……ニコラウスの場合はトルデリーデ様が望んでエルヴィーラ様に託せば引き取ることはできますよ。捕らえられているので、意思確認ができませんけれど」

 レオノーレのフォローにコルネリウス兄様とランプレヒト兄様は「ローゼマインにはわかりにくいか」と頷いた。アンゲリカもわかったような顔で一緒に頷いている。

「トルデリーデの意見もなく、ニコラウスを母上が引き取るには、養子縁組が必要になる。トルデリーデは罰を受けたら戻って来るのに、子供部屋から引き取るためだけに養子縁組をするのは現実的ではないだろう? 母上もニコラウスは子供部屋にいた方が良い、とおっしゃったよ。トルデリーデが意見できない状態で子供を取り上げるわけにはいかないそうだ」

 たとえ同じ敷地内の離れで暮らしていても、異母兄弟というのは完全に別の家庭として扱われている事実を目の当たりにして、わたしは衝撃を受けた。これほどまでに母親の違いで差があるのであれば、引き取られずに子供部屋に残されている子供は想定以上に多いのではないだろうか。

「わたくし、父親が引き取れば、腹違いでも面倒を見るものだと思っていました……」
「ローゼマイン様を筆頭に領主候補生がアウブにお願いされたため、ニコラウスやマティアス達は連座を免れています。けれど、犯罪者の子であることに変わりはございません。直接罰を受けないだけで、皆の意識はそう簡単には変えられませんから、好き好んで自宅に入れる人は少ないのではないでしょうか」

 程度の差こそあれ、犯罪者の親族に対する厳しい目は麗乃時代にもあったものだ。わたしはレオノーレの言葉に「ニコラウスはまだ九歳の子供ですが……」と小さく返すことしかできない。

「ローゼマイン、もう九歳なのだ。ニコラウスがこれまでトルデリーデからどんなふうに育てられているのか、自分の母親が自分の父親によって捕えられたことをどのように思っているのかを考えると、私は本館へ入れたいとは思わない」

 コルネリウス兄様の言葉にランプレヒト兄様は「ニコラウスは騎士見習いになるために鍛錬を積んでいるからな」と肩を竦めた。

「ニコラウスは体格も良いし、おじい様によると筋は良いらしい。感情的になった時にどのように動くのかわからないニコラウスを本館に入れるのは反対だ。アウレーリアや赤子の安全を優先したい」

 今は本館にアウレーリアと生まれたばかりの赤ちゃんがいるので、尚更、不安要素を入れたくないらしい。本調子であれば、アウレーリアがニコラウスを押さえるくらいは簡単にできるけれど、産後の今の状態では難しいそうだ。

 ……ヴェールを被ってのそのそと動いていたアウレーリアが簡単に騎士見習いを押さえられると言われても、何だか信じられないけどね。

「トルデリーデはヴェローニカ様を敬愛していて、フェルディナンド様を罵っていたこともあるし、エックハルト兄上が名捧げした件や神殿に出入りするローゼマインを引き取った件で母上を嘲笑していたこともある。たまにしか本館へ足を運ぶことはなかったけれど、私はトルデリーデが嫌いだし、彼女に育てられたニコラウスを受け入れたいと思わない。トルデリーデが罰を終えて戻るまで、ニコラウスは子供部屋にいるのが一番だと思うよ」
「そう、ですか……」

 ニコラウスを取り巻く状況は理解できたけれど、胸の奥は何だかとてももやもやしている。まだ何の罪も犯していないのに、世間の風当たりがあまりにも強すぎると思うのだ。

「……春を寿ぐ宴を終えても子供部屋に残される子供達は、一体何人くらいいるのでしょう? 残る子供達を孤児院へ移すことできないでしょうか?」

 少しでも風の当たらないところへと思ったら、ポツリとそんな言葉が漏れた。その途端、コルネリウス兄様とレオノーレが目を見張る。

「ローゼマイン、何を考えている!?」
「ローゼマイン様、思い付きで抱え込むには事が大きすぎます」

 思い付きで抱え込むには大きすぎるかもしれないけれど、子供部屋に残される子供達をそのままにしておくのも可哀想だ。城の本館で生活する以上、常に貴族の大人達の視線に晒される。

「ランプレヒト兄様、シャルロッテの側近に子供部屋の面倒を見てくれていた人がいるはずなのです。その人に冬の子供部屋について話を聞きたいです。コルネリウス兄様、ハルトムートを呼んでください。孤児院の現状について質問があります」

 仕方がなさそうな顔でランプレヒト兄様とコルネリウス兄様が部屋を出ると、すぐ近くに控えていたのだろうか、入れ替わるようなタイミングでハルトムートが笑顔で入ってきた。

「ローゼマイン様、お呼びですか?」

 わたしはハルトムートにニコラウスの現状を軽く話し、孤児院の現状と春になると親が引き取りに来る子供達の人数を尋ねた。

「これまでに要望があったのは五名です。確かに第二夫人や第三夫人の子はどちらかというと残されがちですね。魔術具を持っていない子供に関しては誰からも何の連絡もありません」
「……そう。子供部屋に残される子供達を孤児院で受け入れることはできると思いますか?」

 わたしの言葉にハルトムートは橙の目を伏せて、少し考え込んだ。

「受け入れるだけならばできます。彼等の生活にかかる費用は子供部屋と同様に親や粛清した貴族から接収すれば良いのですから。ただ、洗礼前の子供達とは違って、子供部屋にいるのはすでに貴族として扱われている子供達です。灰色神官や灰色巫女の言葉を素直に聞くかどうかわかりませんし、灰色の服を着せて生活させるのは難しいと思われます」

 粛清後の孤児院の状態をわたしは自分の目で見ていない。洗礼前の子供達は建前上まだ貴族ではないけれど、子供部屋の子供達は明確に貴族なのだ。

「ローゼマイン様、ヴィルフリート様が入室の許可を求めていらっしゃいます」

 グレーティアの声にわたしが頷くと、「ランプレヒトから何かを始めるつもりだと聞いたが、今度は何をするつもりなのだ?」とヴィルフリートが不安そうに部屋に入ってくる。
 わたしは「実現は難しそうです」と首を振った後、子供部屋の子供達を孤児院へ移せないか、と考えていたことを一通り説明した。ヴィルフリートは一度呆れた顔で溜息を吐く。

「……可哀想だから世間の目から隠してやりたいのか? だが、隠したところで何の解決にもならぬ。彼等の親族が罪を犯し、罰を受けていることは事実ではないか。世間の目から隠すのではなく、自分には恥ずべきところがない、と胸を張って生きていくように言うべきだ」

 ヴィルフリートは真っ直ぐに前を向いてそう言った。自分の経験上、貴族達の陰口はいつまでも続く。ほんの一時、隠してあげることは何の成長にもならない、と言った。

「世間の視線から少しでも隠してあげたいという理由もあるのですけれど、メルヒオールは冬の間は子供部屋に行けなくて、北の離れで側近達に囲まれて一人で勉強していたのでしょう?」
「そう言っていたな」
「メルヒオールに先生が付いていたなら、先生がいなかった子供部屋はどのような状態だったのでしょう? 春から子供部屋に残される彼等に、貴族として満足な教育は与えられるのでしょうか?」
「それは子供部屋を担当している母上に相談して手配してもらうべきで、管轄外の其方が考えることではない」

 頼まれてもいない他人の仕事に手を出すな、と言われて、わたしは少しだけ肩の力を抜いた。確かにわたしが考えるのではなく、養母様にどうなっているのか質問して、何とかしてもらう問題だった。

「其方は子供部屋全体ではなく、むしろ、ニコラウス個人のことを考えてやればよかろう」
「ニコラウス個人ですか?」

 意味がよくわからなくて首を傾げると、ヴィルフリートは「あぁ、そうだ」と頷いた。

「ニコラウスは上級騎士見習いとして領主候補生に仕えたいと望んでいて、一番の希望はローゼマインだそうだ。ボニファティウス様に可愛がられているコルネリウスやアンゲリカの仲間に入りたくて、コルネリウスとローゼマインの仲の良さを羨ましく思っているらしい」

 思わぬ言葉にわたしは目を瞬いた。そんなこと、わたしは知らない。

「だが、ニコラウスは母親が違うために避けられて、ローゼマインとは会話一つできないと言っていた。両親に対してローゼマインに仕えたいと希望を述べたら一蹴された、と」
「ヴィルフリート様、一蹴したのは父上ではなく、母親のトルデリーデです。神殿から出てきたローゼマインに仕えるのは許さない、と言ったのです」

 ランプレヒト兄様が溜息と共に訂正を入れたけれど、ニコラウスがわたしの側近を希望したのは事実らしい。ニコラウスと一言も話をしたことがないわたしは、接触を禁じたコルネリウス兄様を見上げた。

「コルネリウス兄様、わたくし、ニコラウスが側近を希望していたなんて知りませんでした。全く聞いていませんけれど……」
「ニコラウスはヴィルフリート様に仕えるのが一番良いと決まったからです。トルデリーデもヴェローニカ様に大事にされていたヴィルフリート様が主であれば文句は言いませんし、ニコラウスも領主候補生の側近になりたいという希望は叶えられるし、ランプレヒト兄上がいるので、我々兄弟と仲良くなろうと思えばなれます」

 コルネリウス兄様がニコリと笑ってそう言うと、ヴィルフリートは軽く頭を振って「だが、私に仕えるのはニコラウスの希望ではないだろう」とコルネリウス兄様を睨んだ。

「子供部屋で不自由な生活をしている上に、自分の希望が叶わないのは可哀想だ。連座を免れた子供達だって自分の主を決めることができるではないか」
「トルデリーデの息子でなければ、私もヴィルフリート様と同じ意見だったかもしれません」

 コルネリウス兄様が明らかに作り笑いだとわかる笑顔でそう言うと、ランプレヒト兄様が困ったように息を吐いた。

「ヴィルフリート様、トルデリーデは、ローゼマインがフェルディナンド様と手を組んで、アウブ・エーレンフェストを騙して養女になり、とても悪辣な手で前神殿長を陥れて、ヴェローニカ様まで罪が及ぶように画策した、と主張していたのです」

 ……フェルディナンド様がわたしを使って罠を張り、養父様が首を突っ込んだところで、勝手に前神殿長とヴェローニカ様が自爆したというのが正解だよね。

「子供には罪がないとか、まだ何もしていないから、とローゼマイン様は簡単に受け入れそうですが、危険人物が近付く隙を作るのは護衛騎士として許容できません。今はただでさえ危険なのですから」

 わたしが言いそうなことを先回りしてコルネリウス兄様に言われてしまった。護衛騎士達が揃って頷いているのを見ると、ニコラウスと話をするのも大変そうだ。

 ……わたし、一度はきちんと向かい合って話をしたいんだけどな。



 次の日、約束通りの三の鐘に、文官と側仕えを一人ずつ、護衛騎士は全員を連れて、わたし達領主候補生は揃って北の離れを出る。やはり色々と警戒されているのか、普段使う会議室とは違い、本館の中でも北の離れから近い場所にある広めの面会室が会議室として準備されているのだ。
 養父様、養母様、おじい様、ヴィルフリート、シャルロッテ、わたし、そして、これまでとは違ってフェルディナンドの代わりにメルヒオールとその側近達が入って、会議は始まった。

「今回は報告が多い。まず、フロレンツィアが懐妊した。夏の終わりから秋には生まれるだろう。もうしばらくは体調が良くないことが多いと思われるので、それを念頭に置いて、これから先の仕事を振り分けていきたい」

 養父様の言葉にざわりと会議室の中がざわめいた。第二夫人を娶る予定やこれから先の執務はどうするのか、と戸惑ったように顔を見合わせている者がいるけれど、一足先に妊娠について教えられていたわたしに困惑はない。一番に「おめでとうございます。秋が楽しみですね」と声をかけた。

「ありがとう、ローゼマイン」

 ホッとしたように養母様が表情を緩めると、メルヒオールも嬉しそうな顔でお祝いを口にした。

「おめでとうございます、母上。私の弟か妹ができるのですね?」
「そうだ。だが、これはしばらくの間、内密にしておく。いいな?」

 養父様はそう言いながら会議室にいる側近達を含む全員を見回すと、妊娠報告に少し俯いて硬い表情をしていたシャルロッテが意を決したように顔を上げて口を開いた。

「お母様を危険に晒すつもりはございません。もちろん内密にしますし、わたくしにできる限りの協力をするつもりです」
「助かる。……この後の報告は冬に行われた粛清を中心にしたい。エーレンフェストを立て直すことが急務であることはわかるであろう?」

 冬の粛清についての報告が始められる。マティアス達からの情報によって、計画を前倒しにして粛清を始めたこと。ゲオルギーネに名捧げをしているとわかっている者を優先して捕らえることにしたこと。ゲルラッハの冬の館に突撃した時は自害した者も多かったが、エーレンフェスト貴族として登録していた者が少なかったこと。

「父上、意味がよくわかりません。ギーベ・ゲルラッハの館にはエーレンフェストの貴族ではない者が多くいたということですか?」
「そうだ。こちらに登録されているメダルの魔力と合わない者が何人もいた。正確には何人分もの死体があった」

 何人分もの死体という言葉に背筋がぞわりとしたけれど、わたしはメダルに登録されていない者に心当たりがある。

「メダル登録のない者は身食い兵かもしれませんね。わたくしが初めてギーベ・ゲルラッハの襲撃を受けた時は身食い兵が関係していた記憶がありますもの」

 青色巫女見習い時代の初めての襲撃でゲルラッハを訪れた後の襲撃では身食い兵が使われていたはずだ。シャルロッテがさらわれかけた時も身食い兵が何人もやって来た。

「あぁ、シャルロッテの洗礼式の時に襲い掛かってきて自爆した兵士も所在が不明な者だった。間違いなく同じような者だと思われる」
「……ギーベ・ゲルラッハも自爆なのですか? 何となく信じられなくて……」

 わたしはギーベ・ゲルラッハの館に突っ込んだというおじい様に視線を向けた。おじい様は眉間に皺を深く刻んだ難しい顔でゆっくりと口を開いた。

「自爆する現場を見たわけではない。状況から自爆だと判断しただけだ。……私が先陣を切って突っ込んでシュタープで捕らえようとしたが、乱暴すぎると反対する者はいるし、当たり前だが執事は入れたがらなくて、私が突っ込んだ時には焦げ臭い肉塊が散らばる部屋だったのだ」

 淡々と語られているが、その部屋の惨状はあまりにも怖くて想像したくない。「ちなみに、私が突っ込んだ瞬間に執事が自爆して玄関が大変なことになった」なんて話は耳を塞ぎたい衝動に駆られながら聞いた。血みどろぐっちゃの光景が頭に思い浮かぶのを必死に振り払いながら、勝手に鳥肌が立つ二の腕を擦りつつ、わたしはおじい様の話の続きを聞く。

「部屋中に散らばっている腕や足の魔力を、こちらで登録されているメダルと付き合わせて判断し、誰がその場にいたのか調べたのだが、魔力登録のない者が何人もいた。ギーベ・ゲルラッハについては左手の指輪と家紋、それから残っている魔力がメダルから本人に間違いないと判断したが、どうにも誤魔化されているような気がしてならぬ」

 おじい様の武人としての勘は警鐘を鳴らしているようだが、現場に残っている物や自分の目で見たことから「ギーベ・ゲルラッハの生存」に対する確信は持てないそうだ。

「ギーベ・ゲルラッハが手だけを残して逃げた可能性はないのですか?」

 ヴィルフリートの質問におじい様が緩く首を振った。

「部屋の血の匂いや肉塊の温度から考えても、私が部屋に突っ込んだのは自爆して間もなくに間違いない。館の周囲は騎士が取り巻いていて、騎獣の姿は見られていない。魔力食らいがいる地下を貴族が逃げるのは至難の業で、全ての出口は平民の兵士が見張っていたのだ」

 おじい様の言葉に頷きながら養父様も更に説明を加える。

「街の結界は最大まで警戒レベルを上げていたし、北門にも騎士を配置し、平民の兵士達にも馬車は決して通すな、と通達してあった。騎獣でも馬車でもエーレンフェストから逃れた貴族はいないと報告されている」

 それだけ揃っても、おじい様はどうにもギーベ・ゲルラッハの死が納得できないらしい。

「ボニファティウスがあまりにも納得しないので、マティアスから聞いてゲオルギーネに名捧げをしていると確定している者に関してはメダルを使った処刑もすでに終えた」
「……闇の神の、アレですか?」

 ハッセで見たメダルを使った処刑を思い出して、わたしは恐る恐る尋ねた。フェルディナンドに次々と叩きこまれた領主候補生コースの中で覚える魔術としてあった。この場には領主候補生以外もいるので曖昧にぼかして言ったけれど、養父様には通じたようだ。厳しい面持ちでコクリと頷く。

「でも、養父様。あの魔術はアウブの支配下にいなければ、通じないのではありませんか?」
「ローゼマイン、騎獣も使わず、馬車も使わず、どのようにエーレンフェスト以外へ行くのだ?」
「……え、えーと……転移陣、とか?」
「人を転移させる転移陣こそ作成にアウブが必要ではないか。ギーベ・ゲルラッハに使えるわけがない」

 わたしが必死に捻り出した答えは養父様の呆れた視線で却下された。確かにわたしがフェルディナンドから教えてもらった時も、アウブにしか作成ができないようになっていると言われた。

 養父様は「とにかく、ギーベ・ゲルラッハは死んだ。それで良いではないか」と言うと、ギーベ・ゲルラッハに関する話を打ち切る。

「現状として困っているのは、他に名捧げをしている貴族がいないかどうかだ。名捧げは基本的に秘密裏に行われる。マティアスの情報を元に捕らえた者は間違いなさそうだが、彼等の記憶さえトルークで曖昧になるので、名捧げしている者の調査は本当に難航している」

 様々な繋がりから推測していくしかないらしく、冤罪で処刑という事態を起こさないためにも慎重にならざるを得ないそうだ。

「あぁ、そうだ。ローゼマイン、ヴィルフリート、シャルロッテ。連座を免れ、其方等に名捧げをした者をこれからしばらく調査のために騎士団が借りることになる」

 ゲルラッハ、ヴィルトル、ベッセルなど、ゲオルギーネに名捧げをしていたギーベが治めていた土地の捜査のためには子供達が必要らしい。

「粛清後、騎士団が捜査のためにそれぞれの夏の館へ向かったのだが、ギーベの館は血族でなければ開けられぬ扉が多いため、捜査できなかった場所も多かった。これから新しいギーベに交代すると、隠し部屋の類が完全に使えなくなるので、その前に館の捜査をしたいと思っている」

 孤児院長室の隠し部屋にわたしが魔力登録をし直すと、二度と以前の孤児院長の隠し部屋が開かなくなるのと同じように、ギーベが交代して登録し直すと二度と開かなくなる扉がいくつもあるらしい。

「急いで館の調査をしなければならない事情はよくわかりました。マティアス、ラウレンツ、ミュリエラには騎士団の調査に同行し、協力するように言いますから、手荒な真似は絶対にしないでくださいませ。三人はすでにわたくしの側近です」

 わたしが騎士団長であるお父様を見つめながら念を押すと、お父様は頼もしい笑顔で頷いた。

「ローゼマイン様のお言葉、騎士団の者にはよく言い聞かせておきましょう。もちろん、ヴィルフリート様とシャルロッテ様の側近にも手荒な真似はいたしません」

 そう言った直後、薄い青の瞳に厳しい光を宿らせる。

「その代わり、騎士団の調査に協力するように、そして、親や親族の罪を隠匿するような真似はしないように、主としてよく言い聞かせておいてください」
ニコラウスはまだしばらく子供部屋にいることになりそうです。
今回の会議では話し合う内容がたくさんあるので、まだ終わりません。

次回は、後編です。
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