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本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 作者:香月 美夜

第五部 女神の化身

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ディートリンデの奉納舞

 会場中の視線を一身に浴びる中、光の女神の衣装をまとったディートリンデが闇の神の衣装をまとったレスティラウトにしずしずと近付いていく。奉納舞の舞台に上がるためにディートリンデをエスコートすることになるレスティラウトがものすごく嫌そうな顔で、ディートリンデの頭を見た。

「其方、それほど飾り立てて舞えるのか?」

 皆の心配と不安を代表してズバッと尋ねたレスティラウトに、わたしは心の中で拍手する。この場でそれをストレートに尋ねることができるレスティラウトは勇者ではなかろうか。
 しかし、勇者の質問はディートリンデには届かなかったようだ。

「えぇ。もちろん舞えます。わたくし、たくさんお稽古しましたもの」

 ディートリンデは自分の重そうな頭ではなく、両手を見下ろしてそう言った。

 ……レスティラウト様は髪飾りについて言ったんだと思うよ。どこを見てるの?……腕に何か付いているのかな? あ、もしかして、魔石?

 頭の派手な飾りだけではなく、光らせるための魔石もしっかり準備していたようだ。準備万端なディートリンデにわたしは驚きを隠せなかった。一体どのようにしてあのフェルディナンドから逃れることができたのだろうか。

 わたしがそんなことを考えている間に、ひらひらと長い袖を揺らしながら領主候補生達は舞台に上がっていく。光の女神をエスコートするのは闇の神だが、レスティラウトは極力ディートリンデを視界に入れないようにしているのか、顔が正面ではなく、やや横を向いているように見えた。

 ……何だかさっきのフェルディナンド様と同じような顔になってるけど、頑張れ、レスティラウト様!

 領主候補生達が音楽や剣舞と同じように祭壇に向かって、それぞれの位置に並び、跪いて舞台に触れる。それだけの動きにディートリンデの頭が重そうに揺れた。崩れないか、こちらの方がハラハラする。

「我は世界を創り給いし神々に祈りと感謝を捧げる者なり」

 領主候補生の声が上がった瞬間、それまで真っ白だった奉納舞の舞台に今年も魔法陣が浮かび上がった。皆が見えていないようなので、わたしは口を噤んだまま舞台を見つめる。
 音楽が流れ始め、ゆっくりと舞手が立ち上がった。ふわりとした動きで手を挙げれば、ひらりとした袖が揺れる。奉納舞の始まりだ。

 ……あ、本気で光らせるつもりだったんだ。

 奉納舞が始まってすぐにディートリンデが身につけている魔石が小さく光った。全身のあちらこちらに魔石を潜ませているようで小さな光が手首で、髪で、ポツポツと光っている。一人だけ光っているので、確かに目は引く。けれど、舞自体はそれほど上手いわけではない。やはり頭が重いのか、くるりと回る度に軸がぶれているのが非常に気になる。

「おぉ、光の女神が光っているぞ。ローゼマインの稽古の時もこのような感じだったのか?」

 養父様が小声でそう問いかけた。シャルロッテが曖昧な笑みを浮かべながら、首を横に振った。

「お姉様は身につけていた魔石の質が違います。たくさんのお守りに加えて虹色魔石の髪飾りが光っていたので、あのような小さな光ではなく、もっと華やかでした。ただ、美しいと思うよりは、いつ祝福が漏れるのか、気が気ではありませんでしたけれど」

 シャルロッテの言葉に、わたしは冷や汗が噴き出るのを感じた。あの時は祝福が漏れないように必死だったので、自分ではどんな状態だったのか全くわからなかったけれど、もしかして、今のディートリンデよりも目立っていたのだろうか。

「……あの、わたくし、今のディートリンデ様より目立っていたのですか?」
「一緒に舞っていても気になって思わず視線が向くような光だったからな。もっと目立っていたであろう」

 ……いやああぁぁぁ! ディートリンデ様より目立っていたなんて、わたし、周囲の人達にどれだけ目立ちたがり屋と思われたんだろう!?

 けれど、光が点っていたのはほんの数秒のことだった。ふっと光が消える。消えたことに気付いたらしいディートリンデが少しだけ眉をひそめた数秒後にはまた光った。そして、更に数秒するとまた消える。その繰り返しだ。

 チカチカと点滅する光に何となく視線が向いてしまう。目立つために点滅させているのかと思ったけれど、よく見れば、魔石が消えるたびにディートリンデが少し顔をしかめてまた光らせている。目立つように点滅させているわけではないようだ。

 ……どうして点滅するんだろう?……ん? あれって、魔力?

 ディートリンデの周囲にゆらりと揺らめく魔力が見えたような気がした。大量に魔力を発している時に出てくる淡い色合いの揺らめきが魔法陣に吸い取られているように見える。けれど、これが見えるのは魔法陣が見えている自分だけなのかどうかわからない。わたしは思わずフェルディナンドに視線を向ける。その顔には作り笑顔はなく、眉間に皺が寄っていた。

「わたくしの目にはディートリンデ様から魔力が漏れ出ているように見えるのですけれど……」

 気のせいかしら、という養母様の呟きにシャルロッテも頷いた。

「わたくしも見えます。最初は目の錯覚かと思いましたけれど、段々と濃くなってきている気がしませんか?」

 どうやら魔力の揺らぎが見えるのはわたしだけではなかったようだ。そう思った頃には誰もが気付き始めたようで、「魔力がずいぶんと放出されていないか?」と観客席がどよめき始める。

「なぁ、ローゼマイン。大丈夫なのか? あのような魔力の放出をして……」
「一時ローゼマインはよくあんなふうになっていたが、どうなのだ?」

 養父様とヴィルフリートに問われたけれど、わたしにはわからない。溢れそうになるのを必死に抑えているのに結果的に漏れてしまったり、感情的になりすぎて威圧状態で魔力が溢れたりすることがあっても、魔石を光らせるために魔力を行き渡らせたことはないのだ。

「わたくしは全身に付けた魔石を光らせるために魔力を放出したことがないので、今のディートリンデ様の様子を正確に知ることはできません。ただ、全身から魔力を放出するのは、わたくしがお薬を飲んで数日寝込むくらいに体に負担がかかりますね」

 わたしは至極真面目に答えたつもりだが、養父様は呆れたような顔でわたしを見た。

「ちょっと外をうろつくだけで数日寝込む其方の虚弱さでは負担具合も参考にならぬ」
「……まぁ、そうですよね。普通の人が魔力を放出した時の負担具合なんて、わたくしも存じませんもの」

 奉納式で魔力を吸い取られた人達は皆ぐったりとしているようだったし、ハルデンツェルで春を呼ぶ儀式を行った時に強制的に魔力を吸い取られた女性達は意識を失った者もいた。それから考えても全く負担がないわけではないと思う。

「でも、領主候補生の次期アウブならば魔力供給には慣れているでしょうから、大した負担ではないと思いますよ」

 大丈夫でしょう、とわたしが言った瞬間、「あ!」「危ないっ!」と周囲から口々に声が上がった。ディートリンデがぐらんと大きく揺れて、隣で舞っていた闇の神に向かって全身が傾いていく。

 ……全く大丈夫じゃなかったよ!

 ふらついたディートリンデの姿に大きく息を呑みながら、わたしは舞台の上を注視した。全てがスローモーションに見えるような感覚の中、高く結い上げられた髪から赤い花の髪飾りが一つ抜け落ちる。

「何だ!?」

 殊更にディートリンデを視界に入れないようにしていたせいだろうか。舞に集中していたせいだろうか。それとも、大きく腕を伸ばして回っていた時だったせいだろうか。自分に向かって傾いてくるディートリンデに気付くのが、ダンケルフェルガーの領主候補生として鍛えられているレスティラウトにしては少し遅れた。

「なっ!?」

 大きく目を見開いている回転途中のレスティラウトにぶつかった瞬間、ふらふらしていたディートリンデは勢いよく弾き飛ばされた。そのまま風の女神役の領主候補生を巻き込みながら倒れる。ディートリンデの髪飾りが落ちて、高く結い上げていた髪型が崩れ始めた。

「避けろ!」
「危ないっ!」
「きゃあっ!?」

 観客席から声が上がる中、突然巻き込まれた風の女神役が悲鳴を上げ、大きく衣装の袖を広げながらディートリンデに押し倒されるようにして尻餅をつく。
 バタリと伏せたディートリンデの手が舞台に触れた瞬間、舞台の魔法陣が光った。時間にして、ほんの数秒。

「何だ!?」
「今、舞台に魔法陣が見えたぞ」

 光った瞬間だけ、皆にも魔法陣が見えたようだ。魔法陣が浮かび上がったのはほんの数秒だが、皆の目に焼き付くには十分な時間だったらしい。見知らぬ魔法陣が舞台に浮かび上がったことで、周囲が騒然とし始める。

「何故、あのようなところに魔法陣が……?」
「あれは一体何だ?」

 周囲の声にフェルディナンドがこめかみを押さえているのがわかった。目が合った瞬間、考え込むような顔をしつつ、フェルディナンドは人差し指を唇に当てる。

 ……何も喋るなってこと、だよね?

「静粛に! まだ奉納舞は終わっていません!」
「神事を中断することはできぬ」

 中央神殿の神殿長と神官長が、騒然となった観客席や何が起こっているのかわからないように舞台を見上げている卒業生に向かって声を上げる。けれど、ディートリンデは完全に意識を失っているようで、風の女神役を巻き込んで倒れ伏したまま、ピクリとも動かない。そのままの舞台で奉納舞が続けられるはずもなかった。

「ディートリンデ様をあのままにはしておけぬ。行くぞ」

 フェルディナンドが席を立って、アーレンスバッハの貴族達に声をかけながら、舞台に上がって行く。ハッとしたようにアーレンスバッハの者達が動き始めた。

「其方はディートリンデ様を舞台から降ろし、側仕えに奉納舞の衣装を脱がすように言え。其方等は髪飾りの回収を急げ」

 側近の一人が舞台の上に伏せているディートリンデを抱き上げて運んでいき、他の者が散らばった髪飾りを回収していく。フェルディナンドは運ばれていくディートリンデを一瞥した後、尻餅をついた状態の風の女神役の前に跪き、丁寧に謝罪した。

「突然ディートリンデ様が意識を失うという事態に巻き込んでしまい、大変申し訳ございません。あのように倒れては今も痛みを感じているところも多々あるでしょう。私から貴女に癒しを与えることをお許しいただけますか?」
「……許します」

 フェルディナンドは巻き込まれてしまった風の女神役にルングシュメールの癒しを与えて、立ち上がれるように手を差し出した。風の女神役がその手を取って立ち上がり、痛みがないことを確認すると、舞台を下りる。

 舞台の下ではディートリンデから光の女神の衣装が側仕え達によって脱がされていた。その衣装を中央神殿の者に渡すように指示を出すと、フェルディナンドは意識のないディートリンデに付き添うようにゲオルギーネに言われ、講堂を出て行く。

「奉納舞を再度行う」

 ディートリンデの光の女神の衣装が中央神殿の者の手を渡り、補欠枠の領主候補生に渡された。補欠枠だった領主候補生は急いで準備を整えると、舞台に上がる。中央神殿の神殿長による指示の下、奉納舞のやり直しだ。

「我は世界を創り給いし神々に祈りと感謝を捧げる者なり」

 観客席のざわめきが収まらないまま、奉納舞はもう一度行われた。今度は誰かが光ることも、魔法陣が光ることもなく、無難に終わり、お昼を示す四の鐘が講堂に鳴り響いた。



「入場から退場までディートリンデ様には驚かされたな」

 高く結い上げた髪型に、チカチカと点滅する魔石、ふらふらになって周囲を巻き込みながら派手に倒れ、魔法陣を光らせた。間違いなく、今年の卒業式で一番の話題になる目立ちぶりだと思う。エーレンフェストにおける昼食の話題もディートリンデと舞台に一瞬だけ浮かび上がった魔法陣の話で持ちきりだ。

「あのようなところに魔法陣があるなど初めて知りました」
「わたくし達、卒業生からは見えなかったのですけれど……」

 レオノーレとリーゼレータがそう言って顔を見合わせる。舞台より下に控えていた卒業生達には光った魔法陣が見えなかったそうだ。そんな卒業生達に、階段状になっている観客席から見ていた学生達がどんな奉納舞だったのか、話し始める。

「なぁ、ローゼマイン、シャルロッテ。あれはハルデンツェルの魔法陣に似ていないか? その、魔法陣は発動することなく消えてしまったが、白い舞台から突然浮かび上がったり、作動するのに何か条件があると思われたりするところも似ている気がするのだ」

 ヴィルフリートの言葉に、わたしとシャルロッテはコクリと頷いた。白い舞台に隠されている魔法陣という括りで見るならば、確かによく似ていると言える。

「ローゼマイン、其方はあの魔法陣に見覚えがあるか? 奉納舞も神事なのだから、何か知っているのではないか?」

 こちらを探るように見る養父様の言葉にわたしはふるふると首を振った。

「わたくしは存じません。エーレンフェストで行う神事に奉納舞はございませんから、中央神殿だけの神事なのでしょう」
「なるほど……」

 養父様がまだ疑わしそうにこちらを見ている中、オルドナンツが飛んで来た。もうそろそろ終わり際とはいえ、こんな昼食時にオルドナンツが飛んでくるなんて珍しい。そう思ってみていると、オルドナンツはわたしの前に降り立って嘴を開いた。

「ローゼマイン様、エグランティーヌです。昼食のお時間に申し訳ございません。これから使いをお茶会室へ向かわせます。お手紙を受け取っていただけませんか?」

 ゆったりとしたエグランティーヌの声だけれど、昼食中にオルドナンツを飛ばしてくるのも、卒業式当日にお茶会室へ使いを出すのも通常ではあり得ない。よほどの何かが起こっているに違いない。

「養父様」
「返事をしてお茶会室で待機だ。行くぞ」
「はい」

 わたしはオルドナンツで「かしこまりました」と返事をすると、昼食を急いで終える。お茶会室へ向かうのは領主一族全員だ。お茶会室で食後のお茶を飲みながら、使者の訪れを待つ。

「側近達は下がれ。王族の緊急依頼だ。人払いしておいた方がよかろう」

 養父様の言葉に護衛騎士を数人残し、側近達が下がっていく。それを見ながら、養父様は心配そうに養母様を見た。

「使者によってもたらされるのはあまり良い依頼ではなかろう。フロレンツィアも部屋で休んでいた方が良いのではないか?」
「今知らされても、後で知らされても受ける衝撃は同じです。わたくしはエーレンフェストの第一夫人としてここにいます」

 養母様の言葉に養父様は仕方がなさそうに頷く。

「一体何のお話でしょうね?」
「あの魔法陣に関する問い合わせに決まっている。緊急だが、オルドナンツで知らせることもできない用件など、それくらいしかない」

 養父様の言葉にわたしはそっと息を吐いた。それならば、フェルディナンドに聞いてもらわなければ、わたしには答えられない。



 緊張した空気が満ちたお茶会室に小さくチリンとベルの音が鳴り響く。アナスタージウスの筆頭側仕えであるオスヴィンが使者としてやって来た。すでに側近が人払いされている状況に礼を述べ、範囲指定の盗聴防止の魔術具を使用する許可を養父様に求める。

「構いません。護衛騎士は範囲から出るように」

 オスヴィンは範囲指定の魔術具を作動させると、一通の手紙を差し出した。

「ローゼマイン様、こちらはアナスタージウス王子からでございます。大変お手数とは存じますが、こちらにお返事をいただいてから戻るように命じられています」

 カサリと開いて手紙を読む。アナスタージウスの筆頭側仕えが使者として立つくらいなので、大変なことになっていることはわかっていたが、それでも、予想外の内容に頭がくらりとした。

 なんでも、中央神殿の神殿長と神官長が昼食の時に、奉納舞で浮かび上がった魔法陣は次期ツェントの選別をするための魔法陣で、今、最も次期ツェントに近い人物がディートリンデであると言ったらしい。

 ……わぁお、ディートリンデ様が次期アウブじゃなくて、次期ツェント?

 奉納舞の舞台にそのような魔法陣があることを王族の誰も知らなかったこと、ジギスヴァルト、アナスタージウス、エグランティーヌ達の奉納舞では魔法陣が光らなかったことから、グルトリスハイトを持たぬ今の王族ではなく、正式なツェントが選出される日が近いかもしれないと主張しているそうだ。

 妙な噂が出回る前に、あの魔法陣が次のツェントを選出する物なのかどうか、本当にディートリンデが最も次期ツェントに近い者なのかどうか、情報を少しでも集めたい。本当にディートリンデがグルトリスハイトを持つツェントとなるならば、王座は譲るつもりであることが書かれている。

 ……ディートリンデ様がツェント!? 何その未来!? 怖いよ!

 神事や魔法陣に詳しいわたしならば、中央神殿の言い分が正しいかどうかわかるのではないか、ということで、午後からの卒業式へ神殿関係者が出席している時間にアナスタージウスの離宮で話を聞きたいというお願いだった。お願いの形を取っているけれど、日時が指定されている王族のお願いである。実質、召喚命令だ。

「本当に心苦しいのですが、王族には神事についてお伺いできる相手がローゼマイン様しかいらっしゃらないのです」

 そう言うオスヴィンの顔は普段通りの穏やかな笑顔に見えるけれど、声に微妙な焦りが浮かんでいる。確かに、成人式に驚くような頭の盛り方をして登場したアーレンスバッハの次期アウブが最も次期ツェントに近いと言われれば焦るのもわかる。

 ……でも、こんなの、わたしの手に余るよ! フェルディナンド様!

「奉納舞は中央神殿の神事だ。故に其方は何も知らぬのであろう、ローゼマイン?」

 先程そう言ったな、とわたしを見つめる養父様に何度も頷く。わたしは何も知らないことになっているのだ。養父様はオスヴィンに視線を向けた。

「王族からの呼び出しがある以上、ローゼマインを向かわせるつもりではございますが、今はアーレンスバッハにいるフェルディナンドに質問していただいた方がまだ情報を得られるかもしれません」

 事態が事態であるだけに、ここで王族の召喚を断るようなことはできない。養父様はわたしだけではなく、フェルディナンドを呼び出すように言った。

「フェルディナンドを呼び出すにも、今ならば奉納舞で倒れたディートリンデ様の容態を問うという理由がございます」

 オスヴィンはすぐに頷き、「神事についてはフェルディナンド様の方がよくご存知の可能性があるそうです。ディートリンデ様の容態を問うために呼び出してはいかが、とエーレンフェストより提案を受けました」とオルドナンツをエグランティーヌに向けて飛ばす。その横顔に何とも言えない焦りが浮かんでいるのがわかる。

「恐れ入ります、アウブ・エーレンフェスト」

 オスヴィンは範囲指定の魔術具を回収すると、わたしの了承の返事を抱えて、足早に戻って行った。

 お茶会室に残っているのはエーレンフェストの領主一族だけになった。どの顔も非常に困った顔になっている。

「あの魔法陣がそのような魔法陣だったとは……」
「まだハッキリと決まったわけではない。どう考えてもあり得ぬと思うが、フェルディナンドの答えを聞いてくるのだ、ローゼマイン」
「はい」

 アーレンスバッハの隣で、ディートリンデがどのような扱いになるのかはエーレンフェストにも影響する。情報が少しでも必要なのはエーレンフェストも同じだ。

「王族が卒業式の間に事情を知りたいとお考えならば、他はなるべく普通にしていた方が良かろう。ローゼマインは例年通り、体調が優れないことにしておく。伴はリヒャルダと急いでカルステッドを呼び出そう」

 学生達は何食わぬ顔で卒業式に出て、わたしは卒業式が始まってからエーレンフェストからやって来るお父様と一緒にアナスタージウスの離宮に向かうことになる。

「とりあえずフェルディナンドを呼び出すことで、其方にとって最適の保護者を付けることはできた。基本的にはフェルディナンドに丸投げで、其方は話を聞くことに徹するように」

 養父様にそう言われ、わたしはコクリと頷いた。

とてもよく目立つディートリンデの奉納舞。
数秒間とはいえ、浮かび上がった魔法陣。
それを見たに中央神殿によって様々な波紋が広がります。
エスコートをしたフェルディナンド&レスティラウトはお疲れ様でした。

次は、エグランティーヌの呼び出しです。
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