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本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 作者:香月 美夜

第四部 貴族院の自称図書委員

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ギーベ・ライゼガング

「いってらっしゃいませ、ローゼマイン様」

 城でユーディットがレッサーバスから降りて、アンゲリカが代わりに乗り込んだ。周囲の貴族達が出発のために騎獣を出し、順番に空へ向かって駆け上がっていく。

「アンゲリカ、少しは休めましたか?」
「はい。師匠に稽古をつけてもらった以外は休んでいました」

 ……あんまり休んでなさそう。

 直轄地の祈念式とライゼガングの両方で護衛任務に就いてもらうことになるのでアンゲリカに数日の休みを与えたのだが、あまり意味はなかったようだ。

「魚を切ってローゼマイン様に褒められた話をしたところ、師匠が稽古をつけてくれることになったのです。次回はより鋭い剣捌きを見せよ、と。師匠も討伐に参加したかったそうです」
「次の機会があって、神殿で良ければお招きいたします、と伝えてくださいませ」
「かしこまりました。師匠がさぞお喜びになるでしょう」

 アンゲリカが楽しそうに弾む声で、どのくらいおじい様がすごいのか、騎士団では誰が強いのか、エックハルト兄様と神官長の得意な戦い方などを話してくれる。相槌を打ちながら聞いていると、コルネリウス兄様の騎獣が少し近付いてきた。

「ローゼマイン様、ライゼガングに入りました。もうじき夏の館に到着します」

 コルネリウス兄様の言葉にわたしは眼下の風景を見下ろした。あちらこちらに雪が残った黒っぽい土ばかりが広がっていて、緑が少なくて寂しい景色に見える。ランプレヒト兄様の結婚式の頃は黒々とした森に囲まれた農地に、青々とした葉が茂る長閑な田園風景だったはずだ。

「季節が違うと、雰囲気も違いますね。ライゼガングに入っていたとは気付きませんでした」
「敵が隠れていても発見しやすくて良いですね」

 確かにライゼガングでは襲撃未遂が多かったけれど、今回はさすがにないだろう。護衛騎士に加えて騎士団からも来ているし、祈念式のこの時期は一年間の収穫を左右するので、どこも忙しいのだ。

 先導する者達が高度を下げていくのが見えた。どうやら到着したらしい。
 何度かライゼガングに来たことがあるけれど、明確にわたしの記憶に残っているのは神殿関係者が使う離れくらいだ。
 ランプレヒト兄様の結婚式の時に夏の館にも少しお邪魔したが、昼食だけ食べたらすぐに出発だったし、結婚式の後は疲れて早々に与えられた自室に引っ込んで眠り、体調があまり良くないままレッサーバスを運転してエーレンフェストに戻って寝込んだので、あまり記憶に残っていない。

 わたしが騎獣を下すと、フランとモニカとフーゴがそれぞれの荷物や食料を神官が使う離れに運び込む。ライゼガングには小聖杯を渡すだけなので、神官達の仕事は少ないけれど、グーテンベルク達の活動が一区切りするまでは滞在しなければならないのだ。
 堅牢な城内が冬の館となっているハルデンツェルと違って、ライゼガングには離れがあるので、貴族とフラン達が接触することはない。それだけは少し安心だ。

「ローゼマイン様、小聖杯の受け渡しは挨拶の後ですね?」
「えぇ、フラン。準備をお願い」

 ギーベ・ライゼガングに小聖杯を渡した後、グーテンベルク達が過ごすことになるところへ案内してもらうことになっているので、彼等はこのままレッサーバスで待機だ。
 わたしは小聖杯を持ち、フランとモニカを従えた状態で整列した。

「ようこそ、ライゼガングへ」

 ギーベ・ライゼガングと印刷業の代表者であるお母様が長々しい挨拶を交わした後、わたしは小聖杯を持って進み出る。
 ギーベ・ライゼガングはお父様より少し年上に見える文官っぽい雰囲気の人だ。初対面の時には穏やかな笑顔だが、目が野心に燃えているように見えた。今はそれを感じさせないけれど、油断はしない方が良いだろう。

「癒しと変化をもたらす水の女神 フリュートレーネと側に仕える眷属たる十二の女神によって、土の女神 ゲドゥルリーヒには新たな命を育む力が与えられました。広く浩浩たる大地に在る万物が水の女神 フリュートレーネの貴色で満たされますことを心より願っております」
「確かに、土の女神 ゲドゥルリーヒは水の女神 フリュートレーネの魔力で満たされています。雪解けに祈りを、春の訪れに祝福を捧げます」

 小聖杯の受け渡しが終わると、わたしの神殿長としてのお仕事は終了だ。わたしは一度後ろに下がって、フランとモニカには離れを整えるように、フーゴには食事の支度をしてもらうように指示を出した。

 同様に、オティーリエにはわたしに与えられる部屋を整えてもらうように指示を出した。けれど、ブリュンヒルデにはわたしと同行するように命じる。グレッシェル以外の土地を見るのは、きっと何かの役に立つからだ。

「そのために未成年のわたくしを、ライゼガングの親族だから、と強引に同行者に加えたのですね?」
「理由はたくさんあります。説明したでしょう?」

 オティーリエ一人では大変だが、リヒャルダはライゼガングの凋落に直接関係するガブリエーレやヴェローニカにも仕えたことがあるのでライゼガングには心証が良くない。リーゼレータよりはブリュンヒルデの方が上級貴族で親族なので同行者に加えやすい。

「ローゼマイン様のおっしゃった中に、ライゼガングの下町視察をさせるためという説明はございませんでしたよ」
「あら、そうだったかしら? わたくし、うっかりしてしまったようですね」

 ホホホ、と笑ってブリュンヒルデに背を向けると、ギーベ・ライゼガングの前に進み出る。

「では、早速ですが、グーテンベルク達が過ごす場所へ案内をお願いできますか?」
「かしこまりました」

 ギーベ・ライゼガングが軽く手を動かすと、すぐに印刷業を担当するライゼガングの文官が出て来た。ハルデンツェルやグレッシェルでの話を聞いているのか、わたしがグーテンベルクを騎獣で連れて行くことには特に何も言われず、案内が始まった。

「グーテンベルクが過ごす場所は夏の館から少し離れたところにあるフルースの町です」

 小高い丘の上にあり、森に囲まれているライゼガングの夏の館から最も近い平民の町がフルースだそうだ。全員が騎獣に乗って夏の館を取り巻く壁を越える。
 丘を下りたところにあるフルースはどことなくハッセに似た雰囲気の町だった。平民達の仕事としては農業が中心で、冬の館付近に農業以外の仕事をする者が集まっているというところがよく似ている。

 何人かの貴族は平民の町に降りるということに、わずかに顔をしかめたが、祈念式や収穫祭で農村を回っているヴィルフリートやシャルロッテは「直轄地の農村と似ていますね」とむしろ楽しそうに見えた。

「鍛冶工房も木工工房もこちらにございます。フルースの住人に教えてやってくださいませ」
「かしこまりました」

 鍛冶工房や木工工房で親方に挨拶し、荷物を置かせてもらう。グレッシェルと同じような手順の仕事である。その様子を見ていたブリュンヒルデが何かに気付いたように軽く目を見張りながら町を見回した。

「こちらはグレッシェルの下町と違って、汚れや臭いが目立ちませんね。何故かしら?」
「農業が盛んな土地だからですよ、ブリュンヒルデ」

 エーレンフェストを模して壁にきっちりと囲まれているグレッシェルと違って、ライゼガングは夏の館を囲う壁があるだけで、下町はなく、すぐに農地が広がっている。農業を中心にしているので、人口密度も低く、臭いが町に籠っていないのだ。

「ライゼガングの貴族であるレオノーレはライゼガングの平民の町に立ち入ったことがあるのでしょうか?」

 ブリュンヒルデの質問にレオノーレは「えぇ」と頷いた。

「わたくしは騎士見習いですから、魔獣の討伐のために夏の館を出たことがあります。ローゼマイン様にお仕えする前ですから、ほんの数年ですけれど」

 ブリュンヒルデはライゼガングの親族なので、何度かライゼガングを訪れたことがあるそうだ。けれど、夏の館に滞在するだけなので、平民が暮らす場所の違いには気付かなかったし、視界や意識に入れるものではなかったらしい。このような違いがあるとは思っていなかったと呟く。

「グレッシェルでローゼマイン様がおっしゃったように、他の土地とグレッシェルはずいぶんと違うのですね」

 ブリュンヒルデがそのような比較をできるようになったのも、自分の足で下町に踏み込んだからだ。色々な土地、やり方を見て、自分達の土地に活かせると良いと思う。わたしがそう言うと、ブリュンヒルデが「努力します」と力強い笑みを浮かべた。

「ところで、印刷工房はどこですか?」

 わたしの質問に答えたのは、最終確認でこの町を訪れているヴィルフリートだった。

「冬の館の隣だ。ライゼガングではハルデンツェルと同様に冬の手仕事の一環として印刷業を行うと聞いている」

 ライゼガングは農地の面積が広く、ハルデンツェルと違って南にあるため雪解けも早い。そのため、エーレンフェストの食糧庫とも言われるほど、農業が盛んな土地である。印刷業はあくまで副業であり、本業にはしないのだそうだ。

「ライゼガングが最優先すべきは農業だ、とギーベが言っていた。エーレンフェストの食糧庫であるライゼガングが農業を疎かにするわけにはいかぬので、当然だな」

 ライゼガングの収穫量は冬の社交界の食糧に直結する。今年はいまいちと言われないように毎年細心の注意を払っているそうだ。

「ヴィルフリート兄様、頑張ったのですね」
「うん?」
「ずいぶんとライゼガングのことを調べたのだな、と感心したのです」
「ライゼガングに赴く前にイグナーツと一緒に色々と調べたのだ」

 わたしの言葉にヴィルフリートが少し得意そうに笑う。お母様が「あら、まぁ」と楽しそうな声を出したのが聞こえ、「次の標的はローゼマインか」とコルネリウス兄様が面白がるように呟いた。

「フルース滞在中、グーテンベルクはこちらでお過ごしください」

 あちらこちらの工房にどんどんと荷物を降ろしながらフルースの町の中を移動し、最終的にたどり着いたのはグーテンベルクが過ごすことになる冬の館だった。農民達が自分達の土地へ戻っていくので、代わりにそこで過ごしてほしい、と文官は言った。

「掃除道具をたくさん持って来て正解でしたね」

 下町でまた過ごすのだから、とグレッシェルで大変な思いをした灰色神官達は自分達が清潔に過ごせるようにしっかり準備してきたらしい。

「ルッツ、早速始めますか?」
「もちろんです。ギル」

 最も長期出張に慣れている二人がレッサーバスから降りると、すぐさま手分けして動き始めた。グーテンベルク達は二人の指示に従って荷物を降ろしていく。頼もしい姿に小さく笑いながら、わたしはルッツに声をかけた。

「わたくし達が滞在中の食事はフーゴに任せているので、離れで食事を摂ってくださいませ」
「恐れ入ります」

 全員で掃除です、と言うルッツの声を背後に聞きながら、わたしは契約するために必要なプランタン商会のベンノとダミアンだけを連れて、夏の館に戻った。



 夏の館に戻り、お茶を飲みながら印刷業に関する最終確認をギーベ・ライゼガングとお母様が中心に行い、プランタン商会が印刷協会や植物紙協会に関する契約を結んでいく。

 ライゼガングにはイルクナー同様に山や森もあるので、そちらで行う予定の製紙業には林業に携わっていた者が関わることになっているらしい。孤児院の子供でも手伝えるということなので、女子供や老人の仕事になるのだそうだ。

「ギーベ・ライゼガング、大変失礼とは存じますが、印刷業を冬の手仕事の一環とするのでしたら、投資した金額と釣り合わないのではございませんか?」

 このまま契約を進めても良いのか、とベンノが少し不安そうな顔になった。初期投資に比べて、稼働時間が短く、ハルデンツェルと違って住民総出で取り組む冬の事業とするわけでもないのでは利益が少ないのだろう。

「それは商人が考えることではない。投資した金額と釣り合うか否か考える対象は金額だけではない。心配しなくても後で契約を取り消すようなことはせぬ」

 ギーベ・ライゼガングの言葉にベンノは「恐れ入ります」と言って、ダミアンを振り返った。ダミアンが契約書を差し出し、手早く契約を終える。

「これで印刷協会や植物紙協会についてプランタン商会が行うべき契約は終わりました」
「そうか。ならば、他のグーテンベルクと合流すると良かろう」

 ギーベ・ライゼガングの言葉にベンノとダミアンは立ち上がり、暇乞いの挨拶をして夏の館から出て行った。上級貴族ばかりが集うこの場にいるのは精神的にきつそうなので、わたしは軽く頷くだけで黙って二人を見送る。離れでゆっくりと過ごすと良い。

 その場にいるのが貴族ばかりになると、ギーベ・ライゼガングは一度お茶を入れ替えさせ、ヴィルフリートとシャルロッテに視線を向けた。優しげな笑顔のままだが、色々と探るような目をしているようにも見えて、わたしは二人を庇えるように身構える。

「このような機会は滅多にございません。人伝の言葉ではなく、私はローゼマイン様のお言葉を伺いたいと存じます。よろしいでしょうか?」

 ……ヴィルフリート兄様やシャルロッテじゃなくて、わたし!?

 予想外だった言葉にビクッとしてわたしは背筋を伸ばした。さすがにこの場で「よろしくないです」とは言えない。わたしの側近達はもちろん、ヴィルフリートやシャルロッテの側近達にも緊張が走る。

「伯父様」

 レオノーレが声をかけるが、ギーベ・ライゼガングは少し首を振ることで介入を許さない。お母様とお父様に視線を向けると、静かに頷いた。しっかりやれ、と言われているのだろう。

 ……ヴィルフリート兄様を立てて、わたしは次期領主になるつもりがないことを主張する。

 わたしは神官長に言われたことを思い出しながら、ギーベ・ライゼガングと向き合った。

「お伺いいたします」
「恐れ入ります。……ゲドゥルリーヒが手に入る位置にいながら、手を伸ばさぬエーヴィリーベはいないと存じます。ローゼマイン様はいかがお考えでしょうか?」

 ……いかがって言われても困るよ。ちょっと待って。解読が大変だから。

「確かにゲドゥルリーヒに手を伸ばさないエーヴィリーベはいないでしょうね」

 ギーベの言葉をほぼそのまま返して時間稼ぎをしながら、わたしは必死に考える。

 ……えーと、ゲドゥルリーヒが故郷とか、自分が住んでいる土地を示すこともあるから、今回は多分エーレンフェストのことでしょ?

 少し悩んだ結果、ギーベの言葉を「養女となり、領主候補生となり、次期領主に相応しい功績と能力と魔力と後ろ盾がありながら、何故次期領主を目指さないのか?」というような意味だと解釈した。多分間違ってないと思う。

「ギーベ・ライゼガングのおっしゃる通りだと思いますけれど、わたくしはエーヴィリーベではございませんから、ゲドゥルリーヒを必要とはしていません」

 誰もが領主の地位を欲しいと思うわけがないでしょう、と返すと、ギーベ・ライゼガングはゆっくりと息を吐いた。

「姪であるレオノーレも、親族であるブリュンヒルデも、異母弟の子であるハルトムートも、揃って同じように答えたのですが、それでは納得できないのです。何故、望んでくださらないのでしょうか? 望んでくだされば、全ては丸く収まるのです」

 ギーベはそう言ったけれど、元平民のわたしがアウブになって丸く収まるものなどないのだ。

「ヴィルフリート様は白の塔に入ったことで次期領主から外され、他の弟妹と同じ立ち位置に戻られた。それがローゼマイン様との婚約により、次期領主と目されています。領主に相応しいのはローゼマイン様であるはずなのに、次期領主と目されるのがヴィルフリート様ではございませんか。血族たるライゼガングにはそれが歯痒くてならないのです」

 わたしが次期領主で婚約者をヴィルフリートにするのであれば全く問題がなかったけれど、何故逆なのかが理解できないらしい。
 わたしは首を傾げながら、ヴィルフリートへと視線を向けた。俯かないように頑張っているけれど、きつく握りしめられた拳に全てが出ている。

「ヴィルフリート兄様の方が領主に相応しい、とわたくしが考えているので、逆になることはございません」

 ギーベだけではなく、ヴィルフリートが驚いたようにわたしを見た。周囲の側近や騎士達が目を丸くしながらわたしに視線を向けてくる。お父様はとても興味深そうな顔になっていた。

「一度下に落とされたヴィルフリート兄様は這い上がるために努力することを知っています。神殿長を務めるわたくしの負担を減らすため、大勢の貴族達が忌避する神殿の神事に参加してくれます。そして、エーレンフェストに生きる民の姿を目にしたことで、民を守り、ともに生きようとする領主として必要な気持ちを知っています」

 ギーベ・ハルデンツェルもその点を認めてくださいました、と付け加えると、ギーベ・ライゼガングはゆっくりと顎を撫でた。

「それはローゼマイン様も同じでしょう。神殿育ちであるという悪評をはねのけるだけの実績を積み、神殿長としてエーレンフェストのために尽くし、孤児にさえ心を砕き、民を守っているではございませんか」

 ……そう言われると、わたしって本当に聖女みたいだね。

 とても自分のことだとは思えず、わたしはぼんやりと聞き流す。ハルトムートの聖女伝説もこんな感じで流布されているのだろうか。考えたくないものである。

「ギーベ・ライゼガング、わたくしとヴィルフリート兄様では大きく違う点がございます。それこそが領主に相応しいかどうかの違いと断言できるほど、異なるのです」
「それは一体どのような点でしょう?」

 ギーベ・ライゼガングが軽く目を見張って身を乗り出した。周りの皆が注目しているのがわかる。わたしは自分の胸を押さえて、微笑んだ。

「わたくしは本のために生きています。少しでも安価な紙を作るのも、印刷工房を作るのも、全て自分が読むための本を増やすためです。今のところ、結果だけを見れば領地のためになっていますが、全ては自分のために行ったことで、領地のために始めたことではございません。民と共に生きたいと考えたヴィルフリート兄様と違って、わたくしは本を増やし、本を読んで、本と共に生きたいのです」
「……そ、そうなのですか」

 おそらく本が好きだという情報くらいは入っていただろうが、まさかそこまでとは思わなかった、と言いたげにギーベ・ライゼガングの表情に驚きが浮かぶ。
 表情を崩したギーベに少し緊張が解れたのか、ヴィルフリートが笑顔を浮かべた。

「このように自分の望みを最優先に考えるローゼマインに好きなことをやらせながら、如何にエーレンフェストの利益となすか。それが次期領主に課せられる試練です。私はまだまだ不足な点が多いが、努力していくつもりです。ローゼマインにとって有力な後ろ盾となっているギーベ・ライゼガングにはローゼマインの思い付きを実現するための助力や、時には諌めて諦めさせることなど、エーレンフェストの利となすための援助をぜひお願いいたします。ライゼガングはローゼマインの血族ですから、とても心強いです」

 ……ヴィルフリート兄様、その言葉、わたしを次期領主にしたい、と望むくらいなんだから暴走くらいは簡単に止められるよな? って言ってるのと一緒!

 どこまで天然なのか知らないが、ヴィルフリートの言葉はわたしの暴走癖を全く知らなかったらしいギーベ・ライゼガングにはクリティカルヒットしたらしい。

「お二人の言い分はよくわかりました。しかし、何分、ライゼガングはエーレンフェストから少し離れています。できうる範囲の協力になりますが、助力させていただきましょう」

 わたしの後ろ盾になると言っていたギーベ・ライゼガングは「できうる範囲の協力」に引き下がってしまった。

「そのためには、おじい様の強硬な姿勢を動かさなければなりませんが……」

 ギーベ・ライゼガングはおそらく曾祖父様の部屋があるのだろうと思われる方向へと視線を向けた。
ギーベ・ライゼガングとのお話でした。
この人の立ち位置に関してはまた次で。

次は、曾祖父様のお見舞いに行きます。
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