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本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 作者:香月 美夜

第四部 貴族院の自称図書委員

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帰還後の夕食と子供部屋

「よく帰ってきた、ローゼマイン!」
「父上、そこまでです」
「止まってください、師匠」

 笑顔でおじい様が出迎えてくれる横で、アンゲリカとお父様が睨みをきかせるのがわかった。去年、興奮したおじい様に投げられて天井に激突しそうになったことを思い出し、わたしも一瞬身構えてしまう。

「退け、其方等! 二年連続で最優秀をとった孫娘を褒めるのに、何の手加減がいると言うのだ!?」
「父上が手加減しなければ、ローゼマインが死にます」

 周りに諭され、おじい様がしょんぼりする。全力で褒めてくれるのは嬉しいのだが、自分の身の安全は大事だ。

「おじい様、手をこうして開いてください。絶対に握ってはダメですよ」

 わたしはおじい様に手をパーにしてもらい、人差し指と中指を握る。本当は手を繋ぎたかったのだが、おじい様の手が大きすぎたので無理だった。

「これでお部屋に向かいます。北の離れまで一緒に行きましょう」
「う、うむ」
「師匠、絶対に手に力を入れないでください」
「ボニファティウス様が握ったら、ローゼマイン様の指なんて簡単に折れますから」

 護衛騎士達がハラハラとしながら見守る中、わたしはおじい様と手をつないで歩くという偉業を成し遂げた。

「では、夕食の時にまたお話しましょう」

 渡り廊下の前でおじい様と別れて部屋に戻ると、側近達に新しく入った側近であるローデリヒを紹介する。

「わたくしが名を受けた文官見習いのローデリヒです。これから騎士寮で暮らすことになります。ダームエル、後で騎士寮に案内してあげてください。養父様には話を通しているので、お部屋の準備はされているはずです」
「かしこまりました」
「ローデリヒ、文官の仕事についてはハルトムートとフィリーネに聞いてくださいね」

 皆が寮から戻ってきた今日はそれぞれの荷物を片付けるのが忙しいので、実際に仕事を始めるのは明日からになる。

「ローゼマイン様、お茶の準備ができていますから、お茶会の部屋に移動していただいてもよろしいでしょうか?」

 オティーリエがヴィルフリートやシャルロッテの側仕えと共に準備してくれていたらしい。側近達が荷物を片付ける間、時間を潰すためなのがわかっているので、わたしはおとなしくアンゲリカとオティーリエと一緒に本館のお茶会用の部屋に向かう。
 そこにはヴィルフリートとシャルロッテがいて、同じように時間を潰すようになっていた。

「メルヒオールの部屋が準備されていたのだ」

 北の離れは上が女性、下が男性と貴族院の寮と同じような構造になっている。上にはわたしとシャルロッテがいたけれど、下はヴィルフリート一人だったので、メルヒオールが入るのが嬉しいらしい。

「そういえば、春を寿ぐ宴の時に洗礼式を行うと聞いています。わたくしが神殿長として祝福をするのですよ」

 夕食が終わった後で就寝の挨拶に連れて来られるメルヒオールしか見たことがないけれど、雰囲気は養母様に似ている。髪の色が養父様に似ていて青みの強い紫なので、ヴィルフリートよりも養父様に似ていても不思議はないのに、少なくとも、初めてヴィルフリートを見た時に思った「ミニジル様」とは全く思えない。
 わたしは養女で同母の兄妹ではないので、メルヒオールが生活する本館の部屋に入れない。ほとんど交流がなかったけれど、仲良くできれば良いと思う。



 エーレンフェストに戻った日の夕食は、おじい様や神官長も一緒に摂るのが恒例になってきた。今日の夕食もわたしはおじい様の隣だ。領主代行としてお留守番だったおじい様に領地対抗戦の様子やハイスヒッツェと神官長のディッター勝負、表彰式での強襲、コルネリウス兄様の剣舞の様子を話す。思い返してみれば、ほんの数日でずいぶんと色々なことが起こったものだ。

「……来年はフェルディナンドを留守番にして、私が領地対抗戦に行った方が良いのではないか?」

 黒の武器が禁止されているというのにわたしに祝福を願った騎士見習いの話を聞いたおじい様が真面目な顔でそう言った。ディッターの活躍はともかく、まだまだ騎士としての心構えがなっとらん! と憤慨している。
 そして、来年は留守番しろ、と言われた神官長は軽く肩を竦めて、おじい様に向かってフッと笑った。

「そうできれば、実にありがたいと思っています。荒事は私向きの案件ではございませんから」

 ……神官長の嘘吐き! 荒事、めっちゃ得意でしょ!?

 そんな心のツッコミはともかく、今年の領地対抗戦や卒業式ではわたしの迂闊さを含め、神官長がいなければ困ることが多々あったので、来年も神官長に来てほしいと思うのが本音である。

「よしよし、来年は私が行くからな。何があっても安心だ、ローゼマイン」
「待ってください、ボニファティウス様。叔父上がいなければ、誰がローゼマインの体調を見るのですか?」

 ヴィルフリートが慌てたようにおじい様を止めようとする。養父様も深く頷いた。わたしも同じ気持ちだ。神官長以上にわたしの体調を熟知している者はいないし、領地対抗戦という誰もが忙しくする中で、常識がずれているせいで何をやらかすかわからないわたしの面倒を見られる者はいない。多分、おじい様には無理だと思うけれど、すでに行く気になっているおじい様を止められる気がしない。

「ローゼマインが領地対抗戦に出ることを諦めれば、ボニファティウス様と寮に閉じ込めておくことならばできるかもしれぬ」
「領地対抗戦を諦めさせるのは可哀想だと言ったのは其方ではないか、フェルディナンド」
「可哀想だと思うが、止むを得ない時はある」

 図書館で中央の騎士団長と話をしてから、神官長の様子がちょっとおかしい。これまでと違って、貴族院を忌避している感じが強いのだ。今の会話も、とどのつまり、神官長が貴族院に行きたくないということだろう。

 ……本当に何を言われたんだろうね?

 疑問には思うけれど、神官長がピリピリしている以上、わたしが首を突っ込んで良い問題ではないと思うので、様子を見るしかない。

「来年のことは来年で良いではありませんか。先に間近に迫っている祈念式のことを考えましょう。来年にはわたくしも成長して、フェルディナンド様がいなくても体調管理ができるようになっているかもしれませんから」
「それはないな」

 ……神官長、わたしの心遣いを台無しにしないで!

 うがー! と叫びたくなったのを堪えて、わたしは祈念式の話をする。祈念式は長旅の準備をしなければならないので、ヴィルフリートやシャルロッテとも打ち合わせが必要になるのだ。神官長も揃っている今は非常に都合が良い。印刷業を始める土地がどこになったのか養父様に聞いて、グーテンベルクの移動を考慮した上で、誰がどこに向かうのかを決めた。

「父上、領主の子が祈念式を行うのならば、メルヒオールはどうするのです?」
「洗礼式を終えても、メルヒオールはまだ魔力を扱ったことがないのだ。領主会議の時に魔力の扱いを覚えて、来年から担当させればよいのではないか?」

 わたしが眠ってしまったため、冬の社交界の期間に魔力の扱いを覚えて祈念式に向かったシャルロッテと違って、メルヒオールには練習期間がない。祈念式への参加は次の年からということで落ち着いた。

「そういえば、祈念式の儀式に必要な舞台の作り方についての記述は見つかったのですか?」
「残念ながら見つからなかった。これからも探してみるが、難しいと思う」

 ハルデンツェルには神官長を始め、文官を何人か同行させ、魔法陣や儀式の舞台について研究させることになっているそうだ。

「メルヒオールの洗礼式を行うので、わたくし、一度神殿に戻らなくてはなりません。衣装や小物も必要ですから」
「品物を持ってくるだけならば、側仕えに任せれば良かろう。何のために其方の側近に神殿への出入りを許可しているのだ?」

 養父様にそう言われ、わたしはポンと手を打った。そんなことは全く思い浮かばなかった。神事に関することを城の側仕えに任せるという発想が全くなかったのだ。

「私もユストクスに取りに向かわせるので、合わせて、君の分を準備するようにフランに連絡しておこう」
「よろしくお願いいたします」

 神殿でのことに思いを馳せると、同時に下町のことが頭に思い浮かぶ。

「養父様、プランタン商会の本を販売するのはいつにしましょう? また連絡を取らなくてはならないのですけれど……」
「子供部屋に付けてある側仕えやモーリッツと連絡を取り合って決めてくれ。後で連絡をしてくれれば良い」
「わかりました。魔力圧縮の講義はいつにしましょう? 今年はシャルロッテも加わりますし、新しくわたくしの側近に加わったローデリヒもいます。受講者は決まっているのですか?」

 ローゼマイン式魔力圧縮を教えられる貴族はすでにリストアップされて、招待状が送られているらしい。わたしはそこにローデリヒとフィリーネを加えてもらう。フィリーネは契約を領地の分から国全体の分に変えなければならないのだ。

「それから、貴族院で集めた情報を各部署に売るのは、いつにするつもりだ? 其方の準備ができ次第と思っているのだが……」
「一度文官達とまとめたいので、二日後以降が嬉しいです」
「わかった。各部署とも連絡を取り、こちらで決めて連絡する」

 わたしと養父様で、パパッと貴族達がここにいるうちにしておかなければならないことについて大体の予定を立てていく。これを文書でやり取りすると時間がかかりすぎて、春を寿ぐ宴に間に合わなくなるのだ。

「ローゼマイン」

 神官長に名前を呼ばれて振り返ると、トントンとこめかみを軽く叩きながら神官長がわたしを見る。

「貴族院の情報集めの仕事はヴィルフリートやシャルロッテも加えて行いなさい」
「何故ですか?」

 来年からならばともかく、二人は全く関わっていなかったので、突然加わってもわからないと思う。首を傾げるわたしに神官長はゆっくりと息を吐いた。

「始めた当初はローゼマインの趣味で各地のお話を集めるはずだったと言っていただろう? 他の情報が集まったのは、むしろ、誤算だったはずだ。だが、各種の情報が各部署で重宝され、心待ちにされるようになっている。情報を各部署に売ることに関しては、次期領主となるヴィルフリートを外して行うことではない」

 神官長の言葉にハッとしたように顔を上げたのはヴィルフリートだった。各部署の上層部が集まって情報を吟味する場に毎年いるのがわたしだけでは、領主候補生の中で印象深くなるのはわたしになる。

「更に、契約を変更したことで、印刷業をアウブ主導で行うことになった以上、各地のお話を集めて本にするのはエーレンフェストの事業になっている。ローゼマインの予算のみで行うことではない」

 わたしは今でも印刷業は自分の趣味でやっている事業という気分だが、確かに契約を変更した以上、これはエーレンフェストの予算で行うことだ。

「後は、ローゼマインの担当する仕事を減らし、ヴィルフリートやシャルロッテの側近にも仕事を割り振っていった方が良い。何に関しても手を広げすぎる君に付いて行こうとする側近が勢い良く成長しているのは喜ばしいが、他の側近達との差が目立つようになっている」

 君は領主ではなく、領主夫人となるのだから突出しすぎるな、と神官長が呟いた。ヴィルフリートを立てろということらしい。

「お話集めも印刷も、わたくしは自分がやりたいことをしているだけですから、部下でもないヴィルフリート兄様やシャルロッテに振り分けろ、と言われても難しいです」
「難しくても、もう印刷は君だけの仕事ではない。そこは気を付けなさい」
「はい」



 次の日、ヴィルフリートやシャルロッテの文官も一緒に貴族院で集めた情報を分けることになった。ローデリヒに教えなければならないので、一緒に他の者にもやり方を教え、各部署に売れるように仕分けしていく。同時に、紙やインクの使用状況をフィリーネにまとめてもらい、その金額も計算してもらう。

「シャルロッテ、こちらの計算をお願いします。ヴィルフリート兄様はこれを表にまとめてください」

 二人に仕事を振り分けると、二人は自分の文官と一緒に仕事をこなしていく。ハルトムートならば一人で終わらせる仕事に三人が頭を突きあわせている状況を見ると、二人の側近との差が明確だった。

 ……わたしの側近は神官長に育ててもらったわけだし、次はわたしが二人の側近に課題を与えて教育しろ、ってこと? それこそ、わたしの仕事じゃないと思うんだけど。

 神官長に質問したら、「余計な仕事を抱え込むな、と何度言えばわかるのだ?」と、とても冷たい目で見られた。二人の側近の教育は二人に任せれば良いらしい。

 そして、ヴィルフリートとシャルロッテは各部署の上層部との話し合いにも出席させた。無事にお金をもぎとり、情報収集者を集めて分配していく。「其方は病み上がりの去年もこんなことをしていたのか」とヴィルフリートが溜息を吐いた。

「叔父様がお姉様からお仕事を取り上げたがるのもわかります。お姉様はもう少しわたくし達を頼ってくださいませ」
「ありがとう、シャルロッテ」

 わたしがシャルロッテにお礼を言うと、ヴィルフリートは深く頷いた。

「私は其方の婚約者なのに、全く何も知らされていないではないか。父上と仕事の話をする時はこちらにも声をかけてくれ」
「わかりました、ヴィルフリート兄様。今度からはそうします」

 魔力圧縮講座を終えると、ローデリヒが魔力酔いで気持ち悪くなりながら必死に魔力を圧縮する姿が見られるようになる。その頃には家に帰ってこないローデリヒがわたしの側近となったと社交界で知られるようになっていて、ローデリヒの父親がわたしに面会を求めてきた。けれど、面会依頼は却下され、ローデリヒの父親とは養父様が話を付けてくれることになった。

「今日は子供部屋に参ります。プランタン商会の宣伝もしなければなりませんし、下級生からも側近候補を見つけるように、と言われているのです」
「……側近候補をお探しでしたら、わたくしの妹を紹介してもよろしいでしょうか? もちろん、取り立てるかどうかはローゼマイン様次第ですけれど、わたくしが卒業した後の上級側仕え見習いの候補として考えると悪くないと思います」

 ブリュンヒルデがそう言って、わたしを見た。本当は去年の時点で紹介したかったそうだが、わたしが自分の側近にさえ馴染んでいないので見送ったらしい。貴族院では王族を始め、大領地とのやり取りばかりをすることになるので、わたしの側仕え見習いには上級貴族が一人は絶対に必要になる。

「ぜひ、紹介してくださいませ」
「ローゼマイン様、わたくしの弟も紹介してよろしいですか?」

 ユーディットがそう言って目を輝かせる。そういえば、ユーディットは一番上で弟妹のためにも頑張らなければ、と言っていたはずだ。わたしは笑って頷いた。
 子供部屋に着くと、二人が自分の弟妹を呼び寄せる。「お姉様」と笑顔で近付いて来る様子がとても可愛らしい。

「ローゼマイン様、紹介させてくださいませ。わたくしの妹、ベルティルデです」

 ベルティルデはブリュンヒルデによく似た雰囲気の女の子だった。子供部屋にいる全員の子供達の挨拶を受けているはずだが、接点が少なければ全員を覚えることは難しい。

「ローゼマイン様のお話はお姉様からよく伺っています。こうしてお話できて嬉しいです」

 小さい時からブリュンヒルデの流行に関する話し相手で、わたしに仕えるようになってからブリュンヒルデが生き生きと流行発信側に立っているのを羨ましく思っていたらしい。

「わたくしも貴族院に入る頃にはローゼマイン様にお仕えできるようになっていたいです」
「ベルティルデは早くエルヴィーラ様の合格をもらわなければ、ローゼマイン様にはお仕えできませんよ」

 ベルティルデが貴族院に入るのは二年後で、今はまだ親族の女性であるお母様に仕える訓練中の身だそうだ。お母様に仕えているということは、確実にわたしの側近とするための教育中と考えて間違いないだろう。

 ……ベルティルデ、よし、覚えた。

「ローゼマイン様、わたくしの弟のテオドールです。来年、貴族院に入るのです」
「姉上、離してください。自分で挨拶しますから」

 ユーディットが引っ張ってきたのは、顔立ちはユーディットに似ているけれど、しっかりした感じの男の子だった。何となくはしゃぐユーディットを押さえる役目を普段から負っていたような感じがする。

 ……性別が違うから雰囲気も違うんだけど、アンゲリカとリーゼレータみたいな感じ?

「テオドールと申します。よろしくお願いいたします」

 テオドールを見ていたコルネリウス兄様が「側近に加えることを考慮しても良いと思いますよ」と言った。アンゲリカがその隣で同意するように頷く。

「わたくしもテオドールが訓練しているところを見たことがありますが、なかなか筋は良かったです」
「あ、ありがとうございます。お二人にそう言っていただけるなんて光栄です」

 テオドールが照れたように顔を赤らめながら、ユーディットによく似た菫色の瞳でコルネリウス兄様とアンゲリカを見上げる。二人はおじい様の愛弟子として周知されているので、騎士見習いを目指す子には憧れの的らしい。

「テオドール、わたくしに対する態度とずいぶん違いませんか?」

 ユーディットが不満そうにそう言った。シャルロッテの素敵なお姉様になりたいのに、その座を誰かに盗られたと考えれば、弟妹を盗られたように感じるその気持ちは何となくわかる。

「来年、貴族院に入るのでしたら、テオドールを側近にすることも考えましょうか」

 わたしがそう言うと、テオドールがものすごく困った顔になった。おろおろとコルネリウス兄様やアンゲリカとわたしを見比べ、最終的には俯く。

「あ……あの、私は……ローゼマイン様の側近にはなれません」
「テオドール、何を言っているの? ローゼマイン様のお申し出を断るのですか?」

 まさかそんなことを言うとは、と目を丸くしたのは、ユーディットだった。わたしは軽く手を挙げてユーディットを押さえると、ニコリと笑う。

「すでにメルヒオールと約束しているのかもしれません。目くじらを立ててはなりませんよ、ユーディット。誰に仕えるか決めるのは本人ですから」
「いいえ、違います。メルヒオール様ではなく、私は将来父上と同じように、ギーベにお仕えしたいのです。ですから、領主一族の護衛騎士にはなれません」

 領主一族の護衛騎士を断るなどとんでもない、と思っているのだろう。申し訳なさそうに体を小さくしてテオドールがそう言った。けれど、「父親のような騎士になって、父と一緒にギーベに仕えたい」というテオドールの将来の夢は、「父さんと同じようにこの街ごと皆を守るよ」と約束しているわたしの心にズキュンと突き刺さった。テオドールへの好感度がぐぐんと上がる。

「なんて素敵な夢でしょう。わたくし、テオドールを応援いたします。ですから、貴族院でわたくしの側近をしませんか?」
「……はい?」

 わたしの申し出にきょとんとしたのはテオドールだけではない。わたしの周囲にいる側近達が揃って目を丸くした。

「テオドールがわたくしに仕えるのは貴族院の期間だけです。将来、ギーベに仕えるための勉強と訓練として、貴族院にいる間、わたくしの護衛騎士をするのはいかがでしょう?」

 完全雇用ではなく、パートタイムの護衛騎士として勧誘すると、テオドールの心が揺れたのがわかった。リヒャルダが「ローゼマイン様、少しお待ちくださいませ」と止めるのを制して、わたしは言葉を重ねる。

「わたくし、エーレンフェストにいる間の護衛騎士は足りているのです。どうしても必要なのは貴族院にいる間の護衛騎士ですから、貴族院の期間だけ、わたくしに仕えてみませんか?」
「……考えてみます」

 テオドールがそう言って、小さく笑った。
エーレンフェストに帰還です。
パパッと春を寿ぐ宴まで行きたかったのですが、色々ありすぎて難しいですね。
ブリュンヒルデとユーディットの弟妹が初登場です。
活躍するのはもっと後なので、今、頑張って覚えなくてもいいと思います。

次は、プランタン商会の販売会です。
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