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本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 作者:香月 美夜

第四部 貴族院の自称図書委員

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ターニスベファレンの事情聴取 後編

「それは一体どういう意味でしょうか? 私は神殿で育ち、神殿のことを熟知しているつもりですが」

 わたしの言葉はヒルシュールの言った通り、毒を吐いたと解釈されたらしい。イマヌエルが静かにそう言った。感情の乏しい灰色の目が真っ直ぐにわたしを見ている。

 ……あぁ、神殿育ちに「神殿のことを知らなすぎ」って言っちゃったんだ。確かにそう言われると、わたしの言葉って、すごく嫌味だったね。

「先程の言葉は先生方に申し上げたのです。貴方の場合は神殿ではなく、貴族のことがわかっていないのですよ」

 むっと眉をひそめるイマヌエルと、同じようにわけがわからないという顔をしている先生方をぐるりと見回した。

「貴族院に入ることができず、シュタープを持たず、魔力圧縮さえ知らない青色神官や青色巫女と、貴族院で最優秀を得た領主候補生であるわたくしの魔力量を同列で語れると本気でお考えですか?」

 ルーフェンを始めとして、先生方が大きく目を見開いた。その目には納得の光が多い。
 イマヌエルは何か反論したくて、けれど、できないような顔で口を何度か開け閉めした後、奥歯を噛みしめたのがわかった。

「儀式を行うために青色神官が何人も、何日も、とおっしゃいましたけれど、ルーフェン先生の魔力量は青色神官の何人分でしょう?」
「何人分とは正確には言えませんが、複数人分の魔力供給を担当することはできると思います」

 それはそうだろう。ルーフェンは中央に移籍して、教師を務めることができる優秀な貴族だ。青色神官と比較するのも烏滸がましい。
 ルーフェンの言葉に納得したように何度か頷きながら、グンドルフが少しばかり身を乗り出し、わたしを見た。

「ローゼマイン様だけではなく、我々でも青色神官何人分かの魔力量を担当できることはわかりましたが……何日もかかる儀式を短時間でできるのはどういうことでしょうかな?」
「貴族は神官が持っていない物をたくさん持っています。それだけのことです。もちろん、単純な魔力量の違いもございますが、それ以上に大きいのが回復薬の有無です」

 わたしの答えに、「あぁ、回復薬か」と呟きながらグンドルフは自分の腰にあるベルトとそこに下げられている薬入れを撫でた。下手したら講義で魔力を使いすぎることもあるので、貴族は基本的に回復薬を持っている。

 神殿の神官達は貴族院の講義を受けないので、自分達で回復薬を作ることができない。自然に回復するのを待つだけだ。この差は大きい。
 わたしの回復薬は神官長が作っているので、貴族院で習う回復薬とは効力が全く違うが、そんなことを口にする必要はない。要は自然回復を待つ神官と違って、貴族には回復手段があることがわかれば良いのだ。

「つまり、ローゼマイン様は領主候補生なので、魔力量も多く回復薬も持っている。日をかけて回復を待つ必要も、儀式を中断しないように交代要員を置く必要もない。それだけの話だ、ということですな?」

 グンドルフが簡単にまとめると、なるほど、と納得したような空気が先生方の間に満ちた。これは良い流れだ。このまま流していけば良い。

「グンドルフ先生のおっしゃる通り、領主候補生であるわたくしが神殿長という役職に就いていることが特別なだけです。採集場所の再生は神具があり、祝詞さえ知っていれば、先生方でもできますから、全く特別なことではありません」

 綺麗にまとまった、とわたしがそっと息を吐いた瞬間、ルーフェンが顔を上げる。

「ローゼマイン様、再生の儀式で使う神具を作ったと伺いましたが、それに関しても詳しくご説明ください」
「偽物の神具を作り出すなど不敬ですよっ!」

 フラウレルムが口を挟んでくるけれど、もう皆が慣れてきたのか、ちらりと視線を移すだけで大して反応しなくなっている。わたしも同じように視線を一度向けた後は、ルーフェンに視線を移した。

「皆様もご存知のように、わたくしは神殿育ちですから、武器も盾も祭壇の神々が持つ物しか存じません。フェルディナンド様は普通の武器も神具も容易に作り出しますけれど、お恥ずかしいことに、わたくしはフェルディナンド様に比べると器用ではございません。ですから、最も使い慣れた神具にしか変化させられないのです」

 シュタープを持っていれば、青色神官が作り出せるのも神具になると思いますよ、と付け加えておく。普通の貴族にとって、神具は縁がないものなのでイメージできない。だから、シュタープを変化させることも難しいのだ。

 わたしの主張に先生方が納得したところで、それまでおとなしく聞いていたヒルデブラントが明るい紫の瞳を輝かせた。

「ローゼマイン、神具というのはどのような物ですか? 私は見たことがないので、見てみたいです」
「……え?」

 おとなしく成り行きを見ているはずの王族から突然の発言があり、その場が一瞬シンと静まった。アルトゥールがそっとヒルデブラントの肩を押さえ、ヒルデブラントがしまったというように口元を押さえる。

「ローゼマイン様の作り出す神具ですか。拝見できる物でしたら、私もぜひ拝見したいですな」
「ローゼマイン様が講義の折に作られたライデンシャフトの槍は青く輝く美しさでした」

 グンドルフとルーフェンがヒルデブラントの失言を取り繕うようにそう言い出した。わたしはそっと隣のヒルシュールの様子を窺う。ヒルシュールは少し考えた後、小さな声で助言してくれた。

「見せて差し上げてもよろしいのではございませんか? 神具を作り出すという言葉自体を疑っている先生もいます。神具を作り出せば、ローゼマイン様のお言葉の正当性は主張できます」

 ヒルシュールの視線から、わたしの言葉を頭から疑ってかかるのがフラウレルムだということはわかった。囁くように付け加えられた言葉によると、ヒルデブラントの失言をフォローすることで王族に、正確にはその側近に恩を売っておけ、ということだった。

「わかりました。シュタープを変形させる神具をお見せいたしましょう。ここで出すことを考えると、ライデンシャフトの槍は危険ですから、土地の再生の儀式に使うフリュートレーネの杖に変化させますが、ヒルデブラント王子はそれでもよろしいですか?」
「ありがとうございます。嬉しいです、ローゼマイン」

 自分の失言におろおろしていたヒルデブラントがホッとしたように笑う。
 わたしもニコリとヒルデブラントに笑い返すと、その後、隣のヒルシュールに向かって手を差し出した。お手伝いがないと優雅に立ち上がれないのだ。
 数秒間の沈黙の後、わたしの意図に気付いてくれたヒルシュールが手を差し出してくれる。なるべく優雅に見えるように立ち上がると、わたしはシュタープを出した。

 シュタープ自体はシンプルな物だ。ヴィルフリートと違って凝っているわけではない。けれど、そのシュタープを一斉に皆が身を乗り出すようにして見た。表情はさほど変わらなくても、目が真剣になり、食い入るようにこちらを見ているのがわかる。一番興味深そうにこちらを見ているのは騎士団長だ。

 多くの視線を受けて、わたしはコクリと息を呑んだ。きちんと脳裏に思い浮かべなければ、シュタープは変化しない。この場で失敗したら大変である。わたしは一度軽く目を閉じて、フリュートレーネの杖を思い浮かべた。

「シュトレイトコルベン」

 次の瞬間、わたしの手には思い浮かべた通りのフリュートレーネの杖があった。細かく装飾された長い柄にずらりと並ぶ小さな魔石、緑の大きな魔石を包むような細かく複雑な金細工。わたしの魔力で作る神具は、常に魔力が満ちている状態だ。緑の大きな魔石はゆらゆらと揺らめくような光を帯びていた。

 ガタリと音を立てて突然イマヌエルが立ち上がる。感情の乏しかったイマヌエルの灰色の目に驚愕と陶酔の光が宿った。まるで酔っ払っているように頭がゆらりと動き、身を乗り出して、食い入るように杖を見つめる。

「フリュートレーネの杖……」

 呆然としたような掠れたイマヌエルの呟きで、わたしが手にしている杖が間違いなくフリュートレーネの杖だと皆に伝わった。
 ざわりとその場がざわめき、驚きと興奮の表情に変わる。そんな中、ヒルデブラント一人だけが無邪気な感嘆の溜息と賞賛の眼差しをわたしに向けてきた。

「神具とはとても綺麗なものなのですね。初めて見ました。私の我儘に付き合ってくれてありがとう、ローゼマイン」
「おそれいります、ヒルデブラント王子。……リューケン」

 ヒルデブラントが満足した時点でわたしは変形を解除した。一瞬で杖は消えてしまう。ハッとしたように先生方が乗り出していた姿勢を正す。イマヌエルは目を見開き、しばらくわたしを見つめた後、ゆっくりと椅子に座った。そして、ゆっくりと目を閉じ、「本当にシュタープで神具が作れるのですね」と呟いた。

「これでよくわかりました。ローゼマイン様の魔力量と青色神官の魔力量では大きな差があって当然だ」

 ルーフェンの言葉に事情聴取が収束していく空気を感じて、わたしは膝の上でグッと拳を握った。

 ……よし、納得させた。丸め込んだ。これで帰れる!

 そう思っていたら、イマヌエルがゆっくりと目を開けながら、「私はまだ納得していません」と言った。それまで変わらない静かな声、丁寧な物言いなのに、先程までと違って、目だけがやたらとギラギラしている。

「確かに儀式に関しては魔力量の差が大きいでしょう。貴族だけが使える薬を飲みながら行えば、時間を短縮することができるでしょう。ですが、闇の神の祝福に関しては納得できません」

 イマヌエルの言葉に、先生方がピクリと耳を動かすようにして顔を上げた。せっかく終わっていた議論がまた再燃である。もう帰ろうという気分だったわたしは、神官長のようにこめかみを押さえて「余計なことを」と言いたくなった。

「ローゼマイン様は中央神殿の聖典が間違っているとおっしゃった。初代王より託され、それを守ってきた中央神殿の聖典に欠損などあろうはずがございません。エーレンフェストの聖典こそ適当な加筆をされているのではございませんか?」

 イマヌエルの指摘にわたしは何とも返答できずに押し黙る。確かに前神殿長のカンペらしき落書きがあるので、わたしの聖典は加筆されているのに間違いはないのだ。もちろん、祝詞は加筆されたものではないけれど。

 ……くぅっ! 前神殿長め!

「答えがないということは加筆されてますのね!? んまぁ! んまぁ! なんて非常識な!」

 叫んだフラウレルムに心の中で「前の神殿長だからね!」と返していると、ルーフェンがフラウレルムをじろりと睨んだ。

「フラウレルム、少し静かにしてくれ。今は神殿側の話をしているのだから、貴族院の教師が口を挟むところではない。品位に欠けるぞ」

 指摘されたフラウレルムが「んまぁ!」ともう一度叫んだ後、ツンと顔を逸らした。正面のヒルデブラントがハラハラとしているようにわたしを見ているのがわかった。

 ……まぁ、聖典は神殿長の権威の象徴でもあるから、欠損を認めたくないのはわかるけどね。その言い分、おかしいよ。

 わたしはゆっくりと息を吐くと、頬に手を当てて、こてりと首を傾げてイマヌエルを見た。

「それは大変斬新なご意見ですね。エーレンフェストでは適当な祝詞を加えたら、闇の神の祝福を賜ることができるようになったということでしょうか?」
「そ、そういう意味では……」

 今度はイマヌエルが言葉に詰まる。その途端、クッと騎士団長が堪え切れないような笑いを漏らした。今まで発言しなかった騎士団長が隣のイマヌエルを見ながら、口元を歪める。

「適当な祝詞を並べただけで、神から祝福を得られるのであれば、中央神殿よりもエーレンフェストの神殿の方が優秀ではないか」

 同じ中央の人で並んで座っているので、わたしの頭の中では何となく同じグループに組分けをしていたけれど、あまり友好的な関係ではなかったようだ。騎士団長は挑戦的に笑いながらイマヌエルを見る。

「聖典による正しき王を、と主張する中央神殿の聖典に欠損の可能性があるのか。ならば、そのような聖典で選ばれた王は本当に正統たり得るのか?」

 ……あれ? もしかして、この騎士団長って、聖典原理主義者にイラッとしてる人?

「中央神殿の聖典こそが正しいのです。失礼な物言いは慎んでいただきたいものです」
「さて、それはどうだか。エーレンフェストの聖女はそのようには言っていなかったではないか」

 どうやらわたしの発言はとんでもないところに火種をまき散らしていたらしい。聖典の欠損によって、今の王派と聖典原理主義が火花を散らしている中に燃料を投下した結果になった。今更と言われれば、今更だが、心の中で神官長に土下座する。

 ……ごめんなさい、神官長! 大変なことになったかも! でも、わたしはそんなに悪くないよ。闇の神の祝福を得たと最初に発言したんだから、祝詞の在処で嘘を吐くことなんてできないし、ウチの聖典に欠損なんてないからね!

 騎士団長とイマヌエルが睨み合うのを見ながら、神官長に言い訳を考えていると、グンドルフが「お二人とも少し落ち着かれてはどうかな?」と声をかけた。柔和な笑顔でおじいちゃん先生に仲裁され、二人は口を閉ざすと前を向いた。つまり、わたしの方である。

 イマヌエルには物言いたげにじっと見つめられ、騎士団長には面白がるような目で見られ、わたしは即座に逃げ出したくなった。グンドルフはそんな二人とわたしを見比べながら、口髭を軽く撫でる。

「ふーむ、ここは中央神殿とエーレンフェスト、両方の聖典を持ち寄り、比較してみるのが良いのでは? 神殿と関わりがない上に、どちらの聖典も見ていない我々は、どちらの言い分が正しいのか、判断できませんからな」

 仲裁を建前に持って来ているが、グンドルフの目はむしろ、実際に聖典を見てみたい、になっている。研究魂に火がついただけだと思う。聖典原理主義にも、王の正統性にも、わたしの言い分にも興味はないように見えた。

「それは良い考えですね、グンドルフ先生。二つの聖典を並べてみれば、確かにどちらの言い分が正しいか、わかりますもの」

 わたしの隣に立つヒルシュールが目を輝かせてグンドルフに賛成した。面白そう、と考えていることが弾んだ声からもわかる。これは神殿側の話なのだから、マッドサイエンティスト達は余計なことを言わずにちょっと黙っていてほしい。

 だって、その提案は非常にまずい。ウチの聖典には奇妙な魔法陣や文字が浮かんでいるのだ。見えない振りをするように、と神官長には言われていたけれど、妙なボロを出しそうだし、他に見える人が出たら、今の王への挑戦になってしまう。どうするのか。

「エーレンフェストの聖典を持ち出すのは難しいです。あれは、各神殿に置かれているものではありませんか。写本であれば、持ち出せますけれど」
「あら?……まぁ。では、エーレンフェストの聖典が加筆された物かどうか、徹底的に調べた方が良いでしょう。今のローゼマイン様の反応は後ろめたいことがあるような反応ですわ!」
「う、後ろめたいことなどありません!」

 フラウレルムの声に反論した途端、イマヌエルがギラリと目を光らせた。

「お互いの神殿長の聖典を持ち寄って、比べた方が良さそうですね。神殿長にお願いしてみましょう」

 表情がほとんど変わっていないけれど、イマヌエルがやる気になってしまった。非常にまずい。これは間違いなく神官長に怒られる展開になってきつつある。それだけはわたしにもわかった。何とか回避しなければならない。聖典をここに持って来ずに穏便に終わらせなければ、わたしの読書時間が減ってしまう可能性が高いのだ。

 ……えーと、ここは「ウチの聖典は持ち出せないので、祝詞が載っていなくてもそちらが正しいことにしましょう」と言うのはどうだろうか。……ダメだ。更に喧嘩を売っている感じになっちゃうから、絶対に持ってこいって言われる流れになる。ああぁぁ! いい考え、いい考え、出てこい!

 わたしが必死に考えている間に、少し考えていたルーフェンが口を開いた。

「星結びの儀式や王族のお披露目の際に中央神殿の聖典は神殿長と共に貴族院へ持ち込まれます。領地から全く出せないということはないでしょう」
「その通りですな」

 ……いやいや、持ち出せたら困るんだって。わたしが神官長に怒られちゃうんだよ。

 何とか回避する手段を考えるけれど、すぐには思い浮かばない。ぐるぐると考えている間に、話し合いはどんどんと進んでいく。

 ……ちょっと待って。今、何か考えるから。

 でも、無情にもわたしが必死に考えているうちに、聖典検証会議の予定が決まってしまったようだ。「また後日」と先生方が席を立ち始める。

「では、ローゼマイン様。そういうことで、よろしいですか?」
「わたくし、わざわざ見比べなくても、中央神殿の聖典が正しいということで構わないのです。皆様、お忙しいのに時間の無駄です……」

 だから、こんな検証会議止めよう、と続ける前に、フラウレルムが「やはり後ろめたいことが!」と叫ぶ。そんなフラウレルムを押さえて、ルーフェンがニカッと笑った。

「大丈夫です。ローゼマイン様が嘘を吐いているとは思っていません。闇の神の祝福を得られた以上、祝詞は聖典にあるのでしょう。それを証明して欲しいだけなのです」
「別に証明しなくても、中央神殿の聖典が正しいということで良いではありませんか」

 証明する必要がないと考えているのはわたしだけのようで、研究欲を刺激されている先生方も含めて、皆が検証会議に積極的だった。一番積極的なのはイマヌエルを挑発するように見下ろしている騎士団長である。

「このような機会がなければ、中央神殿の聖典が本当に正しいのかどうかもわからぬ。きっちりと調べておきたい。王もおそらくそれをお望みになるだろう。エーレンフェストの領主候補生にはぜひとも協力いただきたい」

 ……協力したくなくても、命令するから問題ないってことですか。

 わたしは肩を落としながら、「かしこまりました」と答える。こちらから自主的に協力したのと、嫌がって命令が下されるのでは保護者達の気分も大きく違うだろう。

「では、ローゼマイン様。貴族と神殿、両方の言い分を理解できるフェルディナンド様に聖典を持って来ていただきたい」

 ……へ? フェルディナンド様? なんでいきなりその名前が?

 目を瞬くわたしにルーフェンが爽やかに笑いながら、木札の招待状を手渡してきた。

「何に関してもローゼマイン様のご説明にはフェルディナンド様のお言葉や行動がございました。黒の呪文と祝詞の違いに関しても、お話を伺わなければならないと思うのです。……それに、この機会にローゼマイン様の騎士コース参加に関しても、ぜひお話をしておきたいですから」

 ……最後のは全く関係ないよね!?

 皆を丸め込んで終わらせると思ったはずなのに、気付いたらわたしが丸め込まれていた。

 ……おかしい。こんなはずでは。

 わたしは手渡された招待状を手に、半ば呆然としながら小広間を後にした。



 寮に帰った途端、事情聴取であったことを報告するように、とヴィルフリートに言われ、わたしは側近達に囲まれた状態で流れを説明した。

「はぁ? 保護者呼び出しだと!? 一体何をすれば、そのような事態になるのだ!? よほどの問題を起こして、貴族院を辞めさせられるかどうか、ということでもなければ、保護者が呼び出されるようなことはないはずだぞ」

 今回のことはそんな個人的な事情に留まらない。きっともっと大変な事態のはずだ。でも、一応少しだけ皆の衝撃を和らげたくて、口を開いた。

「……エーレンフェストの聖典を確認したいそうなので、保護者とはいっても、呼び出されるのは養父様ではなく、フェルディナンド様なのです。貴族院を辞めさせられるようなことにはなりません」
「そう言うことを言っているのではない! 保護者が呼び出されるということが珍事なのだ!」
「それはそうでしょうけれど……」

 わたしだって好きで呼び出されたわけではない。これでも何とか回避しようと考えたのだ。思いつかなかっただけで。

「叔父上にしっかり報告書を書くように。叔父上の追及は厳しいぞ」
「存じています」

 本日の事情聴取の報告書と共に、わたしはルーフェンから預かった招待状を添えてエーレンフェストに送ってもらった。呼び出しは三日後の午前中である。

 ……あぁ、わたしの読書時間が消えていくよ。儚い幸せだったなぁ。

 こうして、わたしはエーレンフェスト史上初、保護者呼び出しを受けた領主候補生になった。
ヒルデブラント王子の一言で神具を見せることになりました。
そして、事態はどんどんと厄介な方向に。
今回は神官長まで呼び出されました。

次は、聖典検証会議です。
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