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本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 作者:香月 美夜

第三部 領主の養女

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会食と販売会

 星結びの儀式の二日後、今日の午後に本の販売会が行われる。儀式の折にも紹介されたようで、例年よりも貴族街に残っている貴族が多いらしい。
 そのため、この二日間でダームエルの求愛は城中に知られるものになり、あらゆる人からからかわれていた。

 目の前で物語のような求愛を見た女性からは比較的好評だったが、男性からは、下級貴族であるダームエルが中級貴族のブリギッテに釣り合うほどの魔力を得るなんて無理だろう、と無謀な求愛を笑われているようだ。それでも、元婚約者からブリギッテの名誉を守った点は評価されている。「一年後が楽しみだな」とニヤニヤ笑いながら肩を叩かれている姿が時々見られた。

 そして、求愛されたブリギッテは「一年後の結果がどうであろうと、わたくしの名誉を守ってくださっただけで十分嬉しいです」と言っている。その場で自分を守るための言葉で、実現は無理だろうと考えているのがわかる表情だ。

「一年後……。ダームエル、間に合いますか?」

 魔力が増える速度は人によって違う。ダームエルにはわたしの圧縮方法を教えたけれど、どのくらい役立つのか、ダームエルとブリギッテの魔力差がどのくらいなのか、全くわからない。

「……わかりません。ですが、猶予が得られただけでも良かったと思っています」

 自分で期限を定めて、覚悟を決めたダームエルの顔は、いつものちょっとへたれた表情とは違って、凛々しく見えた。



 販売会がある今日は、昼食がてらギーベ・イルクナーとの面会が予定されている。ブリギッテに衣装を作ることになった時に、お礼のための時間を取ってほしいと言われていたのだ。
 渡りに船である。プランタン商会の紹介とイルクナー行きについての話もしたかったので、わたしは面会日を販売日と同じ日に指定した。

「お待たせいたしました、フェルディナンド様、ギーベ・イルクナー」

 わたしが会食のための部屋に向かうと、すでにギーベ・イルクナーと神官長が待っていた。
 神官長はこの度、正式にわたしの後見人となったため、わたしが貴族に言い負かされたり、妙なトラブルを起こしたりしないように、印刷業に関する話し合いには同席することになっているそうだ。

 第一の保護者である養父様は領主なので、わたしに関する全ての会合には出られない。お父様は騎士団長で領主の護衛なので、やはりずっとわたしに付いていることができない。そのため、神官長に白羽の矢が立ったそうだ。
 神官長はすでに「還俗するのではなかった」と溜息を吐いている。ご愁傷様です。

 貴族同士で交わされる長い挨拶を終えると、昼食が運ばれてくる。それをわたしが一口食べて見せると、神官長とギーベ・イルクナーもカトラリーを手に取った。
 一口食べて、ギーベ・イルクナーが嬉しそうに唇の端を上げる。

「冬の社交界でローゼマイン様の考案された料理を口にして、あまりのおいしさに本当に驚きました。ブリギッテからは時折食事の自慢をされますし、私は今日の会食を心待ちにしていたのです」

 職場のご飯がおいしいと家族に自慢していたらしいブリギッテは、暴露された恥ずかしさに頬を染めながら軽く兄を睨む。その視線を受けたギーベ・イルクナーがフッと目元を緩めながら本題に入った。

「星結びの儀式では我が妹ブリギッテに新しい衣装を賜りましたこと、感謝の念に堪えません。ローゼマイン様のご厚意により、妹の名誉は回復され、求婚者も現れたようです」

 ギーベ・イルクナーはちらりとダームエルに視線を移しながらそう言った。思い出し笑いに近い表情が微かに浮かんでいる。どうやら、ギーベ・イルクナーはバッチリその現場を見ていたようだ。

「わたくしは祝福を終えてすぐに退場したので、その現場を見ておりませんの。どのような状況でしたの?」

 兄視点で見たブリギッテの状況は恋物語というよりも勧善懲悪の物語のように聞こえた。お母様視点とは違っていて面白い。
 そんな話を聞きながら、昼食を終える。

「お礼となるかどうかわかりませんが、ぜひイルクナーへお越しください。ローゼマイン様のために多種多様な木材を準備したいと存じます」

 食後のお茶を飲みながら、ギーベ・イルクナーが提案してくれたことに、すぐさま飛びつこうとした途端、「待ちなさい」と神官長が軽く手を挙げて止めた。

「ローゼマイン、ギーベ・イルクナーとしては、領主の養女の後援がブリギッテにあることを元婚約者に見せつけ、これから先に面倒が起こらぬようにしたいのだ。それを踏まえた上で、返事をしなさい。何かあれば、巻き込まれる可能性があるぞ」

 神官長は静かにギーベ・イルクナーを見ながら、そう言った。
 わたしとしては衣装を考えた以上、ブリギッテを全面的にバックアップするつもりだ。ブリギッテを通してギーベ・イルクナーの後援をすることに抵抗はない。

「わたくしとしましてはブリギッテを傷つけるような殿方は苦手でございますし、イルクナーで植物紙研究をさせて頂くことで、イルクナーのためになるならば、それで構わないと考えています」

 ギーベ・イルクナーはわたしの後援が欲しい。わたしはイルクナーの木材と研究場所が欲しい。お互いに得る物があるので、心苦しさもなくプランタン商会を派遣できる。

「植物紙の研究、ですか?」
「えぇ、印刷するためには紙が必要ですもの。印刷業をエーレンフェストに広める前に植物紙の工房を作らなくてはなりません」
「……それをイルクナーにお任せいただけるのですか?」

 ギーベ・イルクナーが軽く目を見張った。領主の養女が主導する新しい事業に初期から参加できるのだ。他の貴族にわたしの後援を明確に見せつけることができるだろう。
 そして、わたしは心置きなく植物紙の研究ができる。

「イルクナーで新しい植物紙を研究する傍ら、植物紙の作り方をお教えするのはやぶさかではございません。同じように林業を産業とする周囲より、一歩先んじることは可能でしょう」
「恐れ入ります」

 わたしの後援が確実なものとわかり、ギーベ・イルクナーが表情を緩める。わたしもニコリと笑った。

「そのためにわたくしの工房と植物紙を扱う商人であるプランタン商会の人間をしばらく預かっていただきます。生活の場は収穫祭や祈念式で神官が宿泊する離れがあるでしょう? あちらを使えば、すぐにでも始められると思うのです」
「……すぐに、ですか?」

 目を瞬くギーベ・イルクナーにわたしは満面の笑みを見せて、大きく頷いた。

「わたくし、先日地理の授業で習ったのですけれど、イルクナーは南にあるので、エーレンフェストと違って、冬でも川が凍らないのでしょう? でしたら、製紙業を冬の手仕事にできるかもしれません」
「……それは、非常に助かります」
「植物紙を作った時の詳しい利益配分については、プランタン商会に説明させますね。おそらく運搬費が必要なので、わたくしの工房と全く同じ利益にはならないでしょうから。オティーリエ、販売会の部屋にプランタン商会が到着しているはずです。ベンノを呼んでちょうだい」

 別室で販売会の準備をしているプランタン商会のベンノを呼ぶように頼むと、少したってベンノともう一人、見慣れない青年が一緒に入室してきた。

「火の神 ライデンシャフトの威光輝く良き日、神々のお導きによる出会いに、祝福を賜らんことを。……ギーベ・イルクナー、私はプランタン商会のベンノと申します。以後、お見知りおきを」
「プランタン商会に火の神 ライデンシャフトの祝福を」

 ギーベ・イルクナーの祝福が二人に届いた。
 挨拶が終わったので、わたしはベンノに呼び出した理由を説明する。ギーベ・イルクナーとの面会予定と呼び出しの可能性については前もって連絡していたので、ベンノの顔に焦りはない。わたしも少しは成長するのだ。うふふん。

「ベンノ、新しい紙の研究についてギーベ・イルクナーとお話をしていたのです。プランタン商会はいつからイルクナーに向かうことができますか?」
「ローゼマイン様のお召があればいつなりと。紙作りに必要な道具と人員、どちらの準備も整っております」

 相変わらずお仕事が早くて優秀ですこと、とプランタン商会を褒めながら、ギーベ・イルクナーに視線を向けると、ギーベ・イルクナーも顔を上げてわたしを見た。

「ローゼマイン様、こちらも離れを開放するだけでしたら、いつでも受け入れられます。ですが、滞在はどのくらいになるのでしょう? 収穫祭には神官が来るので、離れが必要になるのです」
「滞在期間はイルクナーの収穫祭までです。収穫祭にはわたくしが赴き、収穫祭と同時に研究結果を聞き、プランタン商会や工房の者を連れ帰ります」

 そうすれば、何も問題ないはずだ。基本的には直轄地を回るわたしがイルクナーに向かえば、わたしがイルクナーに目をかけていることはわかるだろう。

「フェルディナンド様、収穫祭ではわたくしをイルクナーに向かわせてくださいませ」
「考慮しよう」

 神官長はわたしの言動を止めることもなく、ゆっくりと頷いた。

「出発はわたくしの工房の準備が整ってからになりますね。詳しい日程については、ブリギッテを通じてオルドナンツで連絡いたします」
「かしこまりました。お待ちしております」

 ギーベ・イルクナーの了承を得た後、ベンノが発言を求めた。

「フェルディナンド様、ローゼマイン様、ギーベ・イルクナー。プランタン商会からイルクナーに向かう商人を紹介させて頂いてよろしいでしょうか」
「えぇ」
「彼はダミアン。エーレンフェストの商業ギルドでギルド長を務めるグスタフの孫にあたります。ローゼマイン様とは数年前に一度お会いしたことがあると伺っております」

 ベンノの後ろに立っていたダミアンがすっと両手を交差させ、その場に跪く。淡い栗色の髪と琥珀のような瞳。身長はベンノと同じくらいだ。成人して数年という容貌にもかかわらず、この場でも落ち着き払っている姿は、貴族との交渉に慣れている豪商だと感じさせた。

 こうして紹介されているのだから、フリーダの兄に違いないはずだけれど、わたしの記憶では十代前半くらいの少年っぽい印象しかない。こんなに大きくなかったし、大人ではなかった。

「グスタフとフリーダにお世話になった時に一度だけお会いいたしました。けれど、ずいぶんと印象が違いますね」
「一年で急に背が伸びたので、少し会わなかった方には別人のように見られます」

 ダミアンの紹介が終わると、わたしは書字板を取り出し、イルクナー滞在に関する要望を伝える。

「こちらが植物紙の作り方を教える代わりに、彼らの食事の準備はイルクナーにお任せいたします。灰色神官を毎日一名はお手伝いに出しましょう。イルクナーで作られた植物紙の販売や利益に関することはイルクナーでベンノと話し合ってくださる?」

 その後は基本的にはプランタン商会とイルクナーの話だ。わたしはどちらにも不利益が出ないように調整したり、商人の言い分をそれとなく伝えたりするだけだ。

「ローゼマイン、もう少ししたら5の鐘が鳴る。販売会の方に向かわねばならないぞ」

 何を見て時間を判断しているのか、神官長から注意が飛んできた。
 ベンノやダミアンを退室させ、ギーベ・イルクナーと挨拶を交わす。長ったらしい挨拶も要約すれば、「噂の中心となってしまった妹をよろしく」というものだった。



 ギーベ・イルクナーとの挨拶を終えて、販売会が行われる部屋に向かうと、そこには何人もの商人がいた。指示を出しているベンノとマルク以外は知らない顔ばかりだ。余所の店から送り込まれてきたダルアだろう。よく教育されているようで、動きや物腰は申し分ないものだ。

 ……ルッツにもこういう面での教育がもっと必要かもね。

 販売のための準備はほとんど終わっているようで、台の上にはずらりと本が並べられている。最高神と五柱の大神の絵本と各季節の眷属の絵本に加えて、騎士物語の短編が5つ。楽譜が6曲分ある。ハッセの工房も含めて、孤児院の皆が頑張ってくれた成果だ。
 それに加えて、冬の手仕事で作られたカルタやトランプ、リバーシなども数多く準備されている。

「ローゼマイン様」

 わたしに気付いたベンノが跪き、それに習って商人達がザッと跪く。

「挨拶は先程受けたから必要なくてよ。それより、準備は良いかしら? そろそろ皆様がいらっしゃいます」
「準備はほぼ整っております。ローゼマイン様がご覧になって、不足はございませんか?」

 ベンノの言葉と共にザッと立ち上がった商人達が残りの準備のために動き始めた。その動きは滑らかで、見る見るうちに準備が整っていく。

「ベンノ、例の物の準備はできていますか?」
「もちろんです」

 販売は5の鐘が鳴ってからと伝えてもらっていたけれど、それより前から挨拶のために貴族が訪れ初めた。

「ローゼマイン様、わたくしのお願いを聞き届けてくださってありがとう存じます。全ての季節の本が欲しかったのです」

 冬の社交界の子供部屋で、事前告知していたので、予習しておきたい学生とその親がこぞって眷属の絵本を買いに来る。わたしは椅子に座って挨拶を受けながら、商品を勧めていった。

「わたくしの護衛騎士によると、この絵本をよく読んで憶えておけば、三年生の講義はとても楽になるそうです。お勉強、頑張ってくださいませ」
「こちらは何でしょう?」

 眷属の絵本を胸に抱いた少女が、フェシュピールを弾く男性のシルエットが描かれた表紙を指差した。

「フェシュピールの楽譜ですわ。女性の絵が表紙になっている分は、わたくしの楽師が編曲した子供向きの練習曲で、男性の絵が表紙になっている分はフェルディナンド様が演奏会で披露してくださった曲です」

 ロジーナが書いていた楽譜は、わたしが弾いたり歌ったりしていた学校唱歌がアレンジされたものだった。領主会議が終わって神殿に戻った時にはすでに楽譜が印刷されていたのだ。

「んまぁ、ローゼマイン様が作曲されましたの?」
「わたくしは作曲というほどのことはしておりません。何となく、その、口ずさんだ曲を楽師やフェルディナンド様が耳にしただけなのです」

 少女は「それでもすごいですわ」と言いながら、子供用の練習曲の中でも難易度が高い物を手に取って、購入していった。

「どうしてもトランプが欲しいとねだられてしまったのです。お茶会でもずいぶんと評価が高かったので、一つ頂こうと存じます」

 中級貴族か、下級貴族の奥様は男の子にせっつかれるようにして、やってきた。冬には字の勉強のためにカルタを買ったけれど、トランプも欲しくて仕方がないらしい。

「計算の練習にもなりますし、順位とご褒美がつきますから、皆が必死なのです。これで次の冬には勝てるかしら?」
「一生懸命に練習して、お菓子をもらいます」

 トランプを抱えて嬉しそうに笑った少年の次には、比較的お年を召した貴族がやってきて、それぞれの表紙を覗き込む。

「ほほぅ、これが印刷ですか?」
「これからエーレンフェストの大事な産業となる印刷物です。ぜひ、お手に取ってご覧くださいませ」

 今回は子供優先ではないので、印刷業に興味がある貴族やわたしとの交流を希望する貴族も集まっている。印刷がどのようなものかを知りたい、と本をパラパラと捲る。
 字が詰まった騎士物語が売れた。

「フェルディナンド様が演奏会で弾かれた楽譜ですって? ぜひ、購入させてくださいませ。……ローゼマイン様、演奏会で販売された絵姿はございませんの?」

 最後は小さな声でこっそりと問いかけてくるご令嬢に、「ございません」と答えながら、わたしはベンノに「例の物を」と指示して、ニコリと笑った。

「この騎士物語は虚構の作り話であり、登場する団体・人物などはすべて架空のものです。似て見えても別人なのです」

 さっと薄い板で作られたファイルを取り出したマルクがわたしに手渡してくれる。わたしはそっとそのファイルをご令嬢の前で開いた。
 薄い板と板の間には騎士物語の挿絵が綴られている。本を並べても、表紙だけでは中のイラストが見えないので、騎士物語の特選イラスト集を作ったのだ。イラストの下にはタイトルを書いているので、好みのイラストから買いたい本を選べる優れものである。

 バーンと看板のように張り出したり、騎士物語の奥にそれぞれのイラストを立て掛けたりすることも考えたけれど、神官長に禁止される恐れがあったので、なるべくこっそりと見られるようにしてみた。

「ローゼマイン様、この挿絵集を頂けませんか?」
「これは売り物ではございません」

 ご令嬢は差し出されたイラストに目を輝かせながら、じっくりと吟味して、騎士物語を一つ購入していった。直後にファイルはマルクに返す。
 ご令嬢がすぐさま言いふらしたようで、騎士物語を買いに来る女性客がぐっと増え、皆がファイルを見たがった。

 大量に売れた。

 一番売れたのは、フェシュピールの楽譜だった。
 神官長のフェシュピール演奏会で演奏された曲は、あの時限りの演奏で、しかも、全く知られていないオリジナル曲だったので、楽譜を求めている貴婦人やご令嬢が予想以上に多かったのだ。

 練習して弾きながら演奏会の様子を思い返したい方や自分の楽師にひかせて聴き入りたい方、女性を口説くのに使いたい男性まで、様々な客層があったのが面白い。

 そして、騎士物語が女性に売れた。一番人気は魔物を倒して、魔石を姫に捧げる騎士の物語だ。甘い笑みを浮かべて求婚する騎士のイラストが女性の心を鷲掴みにしたらしい。
 神官長がモデルかもしれないが、ヴィルマフィルターを通すと完全に別人である。神官長はあんなに甘くて優しい笑顔なんて浮かべない。もっと毒がある怖くて綺麗な笑顔なのだ。



「それにしても、絵の販売がないのが残念ですわね」

 騎士物語も楽譜も大人買いしたお母様は、それでも残念そうに溜息を漏らす。

「そうですね。一番売れるので、本当に残念なのですけれど、フェルディナンド様に禁止されましたもの」
「これほど望まれておりますのに、何とかならないかしら?」

 ちらりとわたしを見るけれど、できないものはできない。わたしは緩く首を振りながら、ハッとして顔を上げた。

「わたくしには絶対に無理なのです、お母様。……わたくしには」

 最後を強調すると、お母様もハッとしたように目を輝かせ、頬に手を当てる。

「あら、そうね。そうだわ。ローゼマインには、無理なのですよね?」
「そうです。困ったことに、わたくしは、禁止されているのです」

 意図が通じたようだ。わたしがニコリと笑うと、お母様もニコリと笑う。

「ローゼマイン、アウブ・エーレンフェストは印刷業を広げたいをお考えなのですよね?」
「えぇ、お母様。20年くらいかけて、印刷業を領地全体に広げてエーレンフェストの産業としたいとお考えです」
「わたくしのお兄様に、可愛い娘の事業をお手伝いくださるように頼んでみましょう。冬には相談に乗ってくれるでしょう?」
「もちろんです」

 領地内に印刷業を広げるのは、領主の意向である。問題ない。
 そこで仮に神官長のイラストが印刷されるようになっても、わたしには関係ない。

 早速絵師を見つけて育てなければ、とお母様は目を輝かせて、これからの計画を立て始めた。
 ブリギッテのお兄様との話し合いで植物紙の工房をイルクナーに作ることになりました。
 そして、お母様の暗躍は成功するのでしょうか。

 次回は、プランタン商会がイルクナーに向かいます。
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