挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 作者:香月 美夜

第三部 領主の養女

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

239/677

ベンノからのお願い

「試し刷りができたら、間違いがないか、原稿と見比べて校正します。慣れないうちは複数人で校正した方が良いですね。どうしても見落としがちになりますから」

 誤字脱字などをチェックして、修正をかけて、再度試し刷りだ。全てが直っていることを確認したら、一気に刷っていくことになる。

 印刷はそれの繰り返しだ。
 今までの片方のページしか印刷できなかった小さな孔版印刷と違って、見開きの2ページが一度に印刷できるので、速い。今日は試運転なので、一気に印刷はしないけれど。

「この印刷機の出来には大変満足いたしました。ハッセにも印刷機を入れたいので、同じ物をもう一つ注文いたしますね」
「あ、ありがとうございます」

 インゴとヨハンが引きつった笑みを浮かべた。設計だけのザックは自分が蚊帳の外に置かれているように感じたのか、不満顔だ。

 ザックに設計図を描いてほしい物はいくつもあるのだけれど、これを一気に広げてしまうと、かなり広範囲に影響が出ると思う。そして、どこが利益を得るかということで、工房間で結構激しい争いになるはずだ。結果として、わたしの代理人として仲裁に走ることになるギルベルタ商会の仕事を増やすことになる。

 ……専属が決められないのが、問題なんだよね。

 わたしはそっと息を吐いた。わたしはザックの発想と設計力を高く評価しているし、それを寸分違わず作り上げるヨハンの技術も高く評価している。どうしても、二人に仕事を分けることになるのだが、工房間の利益争いは結構激しいらしい。

 ……一つの工房になれば、楽なんだけど。

 むーん、と考えてたわたしは、ザックに視線を向けた。

「ねぇ、ザック」
「何ですか?」
「ザックが新しい工房の親方になるためにはどうすればよいのかしら?」
「はぁ!?」

 ザックが目を丸くしてわたしを見た。何を言っているのか、とインゴとヨハンもぎょっとした顔でわたしを見る。

「ザックとヨハンが組んで工房を作れば、わたくしの注文がとてもしやすい、と思ったのです」

 専属にできる工房がないなら、わたしのための鍛冶工房を作ってしまえばいいじゃない、と単純に考えた結果である。

「今は二人が別々の工房にいるので、利益配分や注文の仕方が面倒で大変でしょう? 人当たりが良くて、快活で発想力の豊かなザックを親方に据えて、ヨハンに作ってもらえば最強の工房ができると考えたのです」
「いや、ちょっと待ってください。俺もヨハンもダプラだから、親方にはなれないです」
「え? そうなのですか?」

 職人達の話によると、三年契約のダルアと違って、ダプラはその工房を盛り立てていくために終身雇用の契約をしているそうだ。有能な人材を抱え込んでおきたいのは、皆同じということである。

「あまりにも役に立たなかったり、問題を起こしたりしたダプラならば、契約解除もあるだろうが、ヨハンもザックもそれぞれの工房の稼ぎ頭だ。工房の親方も手放さないだろう」

 そうインゴに教えられた。
 インゴは自分の腕に自信があり、尚且つ、工房を開くための多少の蓄えがあったため、親方を目指していたそうだ。ダプラ契約を勧められても、色々な工房とダルア契約を交わし続け、腕を磨いてきたらしい。

「では、わたくしのグーテンベルク工房を作るのは難しいのですね」

 ガッカリしているわたしに、ヨハンが「とても難しいです」と真剣な顔で何度も頷く。

「いくつか設計してほしいと思っている大きな仕事があるので、わたくしの注文を受けるための専属の鍛冶工房を作った方が良いかと思ったのですけれど、無理ならば仕方ありませんね」
「……大きな仕事?」

 怪訝な顔をしたザックにわたしはコクリと頷いた。

「えぇ、井戸の水汲みが楽になる、『手押しポンプ』を設計してみてくれませんか? この設計図を買い取ります。そして、設計図は鍛冶協会に管理してもらって、誰にでも作れるようにしたいのです」
「何のために、ですか?」
「一つの工房が独占するには利益が大きすぎますし、『手押しポンプ』は一度に広がった方が良いと思うからです。水汲みに苦労しているのは、皆同じでしょう?」

 それでも、設計図を公開する意味がわからない、と職人達は揃って首を傾げる。利益独占を優先する工房の職人に、便利な物はさっさと広げたいわたしの思惑は理解できないようだ。
 ならば、職人達にも理解しやすいように、きっちりと利益を取った方が良いかもしれない。ついでに、特許料のような考え方を普及していこう。

「も、もちろん、鍛冶協会に設計図の管理を任せますが、『手押しポンプ』を無料で広げるわけではありません。『手押しポンプ』を一つ作るたびに、元々の提案をしたわたしと設計図を作ったザックにはお金が入ってくるように鍛冶協会と契約魔術を結ぶつもりです」
「……なるほど。そうすれば、確かに商品を広げながら、きちんと利益も得られるな」

 インゴが顎を撫でながら頷き、利益を取ると言ったことでザックも納得の表情になった。

「テオシポンプはどんな物ですか? ローゼマイン様が提案するのですから、変わったものだろうと思いますけど」
「……そうですね。変わった物です」

 一番簡単というか、わたしが説明できる範囲で手押しポンプの原理を説明する。麗乃時代に「今の暮らし、昔の暮らし」を社会の授業でやった時にグループ活動で調べたことだ。図書館を使った調べ物はグループの皆に任されて頼られたのである。他人に頼られることが滅多になかったので、嬉しくて憶えている。

 そうは言っても、自分で作ったわけではないので、図を描いて、大まかな説明しかできない。けれど、ザックは灰色の目を挑戦的に細めて、図に見入る。

「これを動かすと、これが動いて弁が開く。……大体わかりました。やってみます」
「えぇ、挑戦してみてください」

 わたしは今回の印刷機の残金に加えて、新しい印刷機と手押しポンプの設計図のための手付金の決済をルッツとギルドカードを合わせて行った。インゴ達への報酬のやり取りや協会への報告など、その後のやり取りはギルベルタ商会に一任する。

「ローゼマイン様、こちらを旦那様から預かっています」

 ルッツからギルに渡された手紙がわたしへと回ってくる。
 わたしはカサリと手紙を開いた。それには、フーゴが宮廷料理人になりたい、と言っていると書かれていた。
 どうやら、イタリアンレストランの後進の教育が終わったようだ。

「できれば、ローゼマイン様の紹介を頂きたいそうです」

 宮廷料理人として雇うかどうかは最終的に領主の判断となる。フーゴは一応領主から声をかけられているが、正式な書面を交わしたわけではない。多分、わたしが口添えしなければ、城や貴族街に入ることさえ難しい。

「結局、星祭りの前に新しい恋人は見つからなかったのですね……」

 ……そういえば、フーゴも彼女に振られていたっけ。フーゴといい、ダームエルといい、なんか振られた人ばっかりかも。

 周囲の失恋率の高さに肩を落としながら、わたしはルッツを見た。

「わかりました。一度本人と話をしたいので、フーゴを連れてきてくださるように、ベンノに伝えてください」
「かしこまりました」



 それから、三日後。フーゴを連れてベンノとルッツがやってきた。面談するのは孤児院長室である。
 晴れ着を着せられたフーゴが恐縮したようにがっちりした体を小さくしているのが、ちょっと面白い。ここで料理人をしていた時には上がったことがない二階におっかなびっくり歩いているのがわかる。

 挨拶を終えて、椅子を勧めると、フランにお茶を入れてもらう。
 わたしはゆっくりとお茶を飲み、エラが作ったお菓子を食べて見せて、ベンノとフーゴに勧めた。

「どうぞ。エラの作った新作のお菓子です」

 フーゴが来ると知って、張り切ったエラが作った新作のお菓子はラングドシャの間にクリームと季節の果物のジャムが挟まったものだ。かつての師匠に成長したところを見せ付けてやる、と闘志を燃やしていたらしい。ニコラが笑いながらそう言っていた。

 緊張して小さくなっていたフーゴが、料理を前にした職人の顔になった。グッと背筋を伸ばして、厳しい目でお菓子を見つめ、一つを手に取る。角度を変えて、色々と見た後、口に入れた。
 一口食べて、フーゴはむっと眉を寄せる。「くっそぉ、成長してやがる」と悔しそうに小さく呟いたので、エラの渾身のお菓子はフーゴの自尊心を刺激することに成功したようだ。

「それで、宮廷料理人になりたいというお話ですけれど……」

 わたしが切り出すと、ベンノがコクリと頷いた。

「領主よりお言葉を賜っていると伺いましたが、正式な書面ではございませんので、ローゼマイン様のお口添えを頂きたいと思っております」
「イタリアンレストランの方はフーゴを手放すことになるのですが、それでも良いのですか? フリーダはどのように言っていますか?」

 イタリアンレストランから宮廷料理人が出るのは、店の箔付けにもなるので、行きたいならば行けば良い、ということで、フリーダとベンノの意見は一致しているらしい。

「そう。では、フーゴが宮廷料理人になれるように口添えするのは構いません」
「恐れ入ります」

 ホッとしたようにベンノが胸の前で手を交差させる。フーゴもそれに習った。
 わたしは軽く頷きながら、視線をフーゴに向ける。

「けれど、前回レシピを教えるために城にいた時とは全く待遇が変わると思うのです。レシピを教える教師役の立場ではなく、下働きから始めることになると思うのですけれど、その辺りはどのように考えているのかしら? せっかく料理長の立場にいるのに、宮廷料理人になれば、また下働きからやり直しですよ」
「それでも、お願いします」

 ぐっときつくフーゴが膝の上の拳に力を入れる。

「あと、気になっているのが、フーゴに今まで教えたレシピは契約魔術で保護されていることです。フーゴを宮廷料理人として雇ったとしても新しいレシピが流れないのであれば、料理人の間でどのような扱いになるのか、わたくしにはわかりません」
「ベンノの旦那からも同じようなことを言われました。けれど、俺は……」

 フーゴの意思は強固だ。

「それから、これも大事なことなのですけれど、一度宮廷料理人として貴族街に入ってしまうと、雇い主の許可なく下町には戻れません。ご家族がいるでしょう? 家族と離れて、大丈夫なのかしら?」

 家族と離れたくなかったわたしを知っているベンノはわずかに視線を落とす。だが、フーゴは、家族と離れてでも宮廷料理人になりたい、と言った。

「どうして、それほど宮廷料理人を望むのでしょう? イタリアンレストランにそれほどの不満がありますか? 他の料理人のためにも、大きな不満があるならば聞かせてください」
「いえ、職場に不満があるわけでは……その、かなり、私的な理由で……」

 言いよどむフーゴに変わって、真面目くさった顔のベンノが目にからかうような光を浮かべて、事情を説明してくれた。

 なんと、前の恋人が自分のご近所さんと付き合い始めて、毎日仲の良い姿を見せつけられているので、少しでも早く宮廷料理人になって、家から離れたいらしい。可哀想に。

「恋人が欲しいならば、イタリアンレストランでそのまま働いていた方が、きっと出会いも多いと思うのですけれど。城の料理人は男ばかりなのでしょう?」

 うっと一瞬息を呑んだフーゴがぶるぶると頭を振った。

「俺は料理に生きるんです」
「まぁ、それもフーゴの人生ですから、後悔しなければ良いと思います。ただ、宮廷料理人の志望理由が今の職場や住処を離れたいというものでしたら、わたくしの専属料理人として、住み込みで雇うこともできますよ?」
「……はい?」

 目を丸くするフーゴに、わたしはにっこりと笑って見せる。
 フーゴほどの腕を下働きにするのはもったいないし、わたしのレシピをすでに知っているのだから、イタリアンレストランから出るならば、わたしがフーゴを確保したいのだ。

「料理人がエラ一人では大変ですから、専属料理人を増やそうと思っていたのです。フーゴならば、エラとも馴染みがありますし、腕も確かだと知っておりますから、下働きからやり直すようなことはありません」

 いや、しかし……とフーゴが呟く。宮廷料理人になると言って、イタリアンレストランを辞めるのに、宮廷料理人になれないのは、カッコ悪いそうだ。
 なるほど、男の自尊心というやつだろうか。

「専属料理人になれば、わたくしと一緒に城と神殿を往復する生活になりますから、宮廷料理人と言っても完全に間違いではないですよ」

 フーゴの目が軽く見張られ、少し止まった後、ぶるぶると頭を振った。

 ……あ、ちょっと揺れてる。よしよし、このまま畳みかけよう。

「それに、わたくしの厨房では知っているレシピを全て作ることができますし、新しいレシピも一番に入る立場です。イタリアンレストランにもこちらから新しいレシピを送っているのですから」

 新しい調理器具も一番に手に入りますし、と付け加えると、料理人としての興味がそそられたのか、フーゴの目が揺れた。
 フーゴの隣に座るベンノは面白そうににんまりと笑ったまま、成り行きを見ている。

「神殿にいる時ならば、申請してくれれば、下町に帰ることもできます。ご家族も少しは安心できるのではないかしら?」

 ぐらぐらとフーゴの心が揺れているのを表すように、頭がゆらゆらとしている。もう一押しだ。

「それに、わたくしの厨房はエラがいます。ニコラとモニカが助手として出入りします。男ばかりのむさくるしい城の厨房より、可愛い女の子ばかりの職場の方が良いと思いませんか?」
「ローゼマイン様、よろしくお願いします」

 きりっとした顔でフーゴが陥落した。
 口元を手で押さえて、笑いを堪えたベンノを介して、専属の契約を結ぶ。こうして、フーゴもわたしの専属料理人になった。

「明日、フーゴに与える部屋を掃除しますから、荷物を運び込んでください。モニカ、フーゴを神殿長室の厨房に案内してちょうだい。今日は厨房の場所を教えるだけでいいです」
「かしこまりました。フーゴ、こちらへどうぞ」

 モニカについてフーゴが出て行く。入ってきた時と違って、鼻歌でも歌いだしそうなほど上機嫌だ。
 わたしは階段を下りていくフーゴを見送って、ベンノに視線を向けた。

「ベンノ、オットー達の教育の日が決まりました」

 オットー達の教育が行われるのは、わたしが城に行っている間だ。わたしが不在の時は側仕えに比較的余裕があるので、その間に教育が行われることになっている。
 わたしは城の図書室で本の読み放題である。……嘘です。領主会議で領主が不在の間、ヴィルフリートと一緒に魔力供給をするように神官長から言われている。

「お忙しいところ、大変恐縮でございます」

 そう言った後、ベンノはちらりと隠し部屋へと視線を向けた。あちらで話したいことがあるのだろう。
 わたしは軽く頷いて立ち上がる。

「ダームエル、ギル、あちらの部屋に向かいます」
「はい」

 わたしはベンノとギルとダームエルと一緒に隠し部屋に入って、椅子に座る。
 座って視線を合わせると、商人らしい笑みを湛えていたベンノの顔が渋い顔になった。

「何かあったんですか、ベンノさん?」
「最近、貴族との付き合いが増えてきたのは知っているだろう?」
「はい」

 冬のお城で教材を売っていた時にお母様が声をかけたことで、貴族との繋がりが一気に増えて、てんてこ舞いになっているらしい。ルッツの愚痴をギルから聞いた。

「ローゼマイン工房で作っている教材の問い合わせが増えているんだ。貴族だけではなく、富豪からも、だ。そうなると、ギルベルタ商会は服飾を扱う店だろう、と大店の旦那から文句を言われるようになってきた」

 ベンノはガシガシと頭を掻いて、ゆっくりと溜息を吐いた。

「手を広げすぎたんだ。それだけならば、文句を言われることもなかったかもしれないが、全てにお前が関係していて、莫大な利益を得ている。貴族との取引も一気に増えたから、やっかみがひどい」

 イタリアンレストランはギルド長とフリーダも巻き込んでいるし、むしろ、ベンノは最近あまり出入りできていないので、出資しただけという印象になっているらしい。
 それでも、わたしに関係することで印刷関係の仕事がぐっと増え、貴族にもものすごい勢いで顧客が増えているので、何とか利益を奪おうと大店の旦那も必死なのだそうだ。

「それに、新しく顧客となった貴族の間でギルベルタ商会が服飾の店であることを知っている者は少ない。これでは、コリンナやレナーテに継がせるのが難しくなる。だからな、オットーの教育が終わり次第、ギルベルタ商会と印刷関係を請け負う店を分けようと思う。お前が新しく流行らせようとしている衣装が出る前に……」

 店を分けて、利益を分けることで、やっかみを少しでも減らすつもりらしい。それで本当に減らせるのか知らないけれど、商人に関しても大して詳しくないわたしが口を挟むことではない。

「本に関係する新しいお店はベンノさんとマルクさんとルッツで始めるんですか?」
「あぁ、それに、領主の新しい事業に一枚噛みたくて仕方がない大店の旦那方がダルアを一人ずつ送り込んでくることになっている」

 余所のダルアをギルベルタ商会に入れたくなくて、店を分けるというのが本当の理由らしい。どうしてダルアを受け入れなければならないのか、商人の世界はよくわからない。

「それで、わたしにどうして欲しいんですか?」
「名前が欲しいんだ。お前のお墨付きで始めるということがわかるように、新しい店にお前から名前をくれないか?」

 ギルベルタ商会の初代も同じように貴族から名前をもらって、店を始めたらしい。これからギルベルタと名乗れと言われ、初代自身もギルベルタと名乗っていたそうだ。

「えっと……それって、新しいお店がローゼマイン商会になるんですか? ベンノさんがローゼマインを名乗るんですか?」
「俺は名乗らん! 新しく名前を付けてくれれば良いんだ」

 誰が女性名を名乗るか、と怒られて、わたしはうーん、と考える。グーテンベルクは称号として使っているので、他に印刷業に関係のある名前が良い。わたしの頭に思い浮かんだのは、一つだ。

「ローゼマイン工房があるから、商会の名前も同じにするとわかりにくいですし、プランタン商会でどうでしょう?」
「……どこから出てきた名前だ?」
「秘密です」

 ふふっとわたしは笑った。言ってもわかるはずがない。
 プランタンは聖書を印刷したことで異端審問にかけられ、逃げながら、多言語対訳聖書(ポリグロット・バイブル)という印刷物を生み出した、印刷に人生をかけた人の名前である。ちなみに、プランタンの印刷工房は世界遺産にもなっている。ベルギーにあるプランタン・モレトゥス博物館がそれだ。

「プランタンか。まぁ、グーテンベルクでなかっただけ、良しとしよう」
「……似たような出典ですけど。そんなことより、ベンノさん、せっかくですからプランタンって名乗りましょうよ」
「断る」

 即座にお断りされてしまった。
 まぁ、本当に名前を変えられたら、わたしが混乱しそうなので、そのままで問題ない。

「ベンノさん、ベンノさん、プランタン商会として、どんどん本を作って売りましょうね。わたし、20台の印刷機が入れられるような工房が欲しいです」

 20台の印刷機をフル稼働してガンガン印刷していたプランタンを見習って、印刷業を発展させたいものである。
 わたしが野望を語ると、ベンノはものすごく嫌な顔をした後、わたしのおでこをピシッと弾いた。

「……お前、性急さを直せ、と言われたんじゃなかったのか?」
「そうでした。自重、自重……自重、捨ててもいいですか?」
「いいわけがあるか、この阿呆!」

 ベンノに雷を落とされ、あぁ、このテンポがいいなぁ、と和んでいたら、頭をぐりぐりされた。痛い。
 専属の鍛冶工房はできませんでしたが、フーゴが専属料理人になりました。
 そして、近いうちにベンノさんがギルベルタ商会からプランタン商会として独立します。

 次回は、領主会議のお留守番です。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ