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本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 作者:香月 美夜

第三部 領主の養女

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ハッセへの罰

 
 ギルベルタ商会の面々と神官達をハッセへと送り出した二日後の朝、わたしや神官長達の側仕えや料理人を乗せた馬車がハッセの小神殿に向かって出発した。ベンノ達と側仕えの出発に二日のずれがあるのは、ハッセの町長宛ての手紙をベンノに届けてもらうためだ。

 ハッセの罪状と罰の発表と町長達反逆者の処分のために、ハッセに向かう日時を書いてある。返事を待つ必要はない。この手紙はわたしが日付を書き込んだけれど、領主の印章が押された命令書である。

 わたしは5の鐘に向けて騎獣でハッセに向かうのだが、手紙はもう届いているだろう。今頃、ハッセの者はおそらく昼食も喉を通らないような緊張と不安の中にいると思う。罪状を伝えて、町長を断罪しなければならないわたしも正直気が重い。

 ゆっくりと溜息を吐いて、わたしはペンを置いた。書き終えた紙をひとまとめにして、フリッツに差し出す。

「フリッツ、これが冬の絵本の本文です。ヴィルマに渡して、イラストを描いてもらえるように頼んでちょうだい」
「かしこまりました」

 フリッツとギルには、夏の星結びの儀式までに秋の眷属と冬の眷属の絵本を作るように頼んである。秋の眷属に関しては、ほとんど完成しているので、ほぼ印刷するだけという状態になっているが、冬の眷属に関してはまだイラストができていない。

 朝早くに側仕え達を送り出したわたしの部屋に残っている側仕えは、工房の管理をするフリッツと、騎獣に乗って一緒に行動することになっているフランだ。
 二人に加えて、今、わたしの部屋の中には普段工房で働いている灰色神官が数人いる。青色神官に仕えていた経験がある灰色神官ばかり集めて手伝ってもらっているのは、専属料理人をハッセに向けて送り出し、側仕えもほとんどいない神官長を今日の昼食にお招きしているからだ。

「……ねぇ、フラン。料理の方は大丈夫かしら? フーゴに任せておけば大丈夫だと思うのだけれど……」

 エラが祈念式に出発してしまった今日の昼食に関しては、ギルド長とフリーダに頼んでフーゴともう一人の助手を借りた。イタリアンレストランの料理人の後継者が育ってきたようで、フーゴはわたしと繋がりを作りたいと考えたらしく、今日の依頼も二つ返事で承知してくれた。

「慣れない厨房とはいえ、孤児院長室の厨房とそれほど物の配置も違いませんから、問題なく料理をしています。神官長もご満足くださるでしょう」
「エックハルト兄様とユストクスも、ね」

 今日の昼食には、専属料理人をハッセへと向かわせた神官長をお招きしている。昼食を終えて一休みしてから5の鐘に向けてハッセへと騎獣で向かうつもりなので、エックハルト兄様とユストクスを昼食に招く必要はなかった。けれど、ものすごく期待していると述べるオルドナンツが飛んできてしまい、招かざるを得なくなったのだ。

「それよりも、早く書かなければ、神官長がいらっしゃいますよ」
「そうですね」

 フーゴに預ける予定の、フリーダへのお礼の手紙に、わたしは去年フーゴやエラによく作ってもらった季節のメニューを書き込んで、祈念式が終わったらまた食べに行くよ、と書き添える。
 封をしてフリッツに渡しておけば、本日の出張費を支払う時にフーゴに渡してくれるはずだ。

「……神官長かしら?」

 扉の向こうでベルが鳴り、来客を知らせる。フリッツが扉を開けると、そこにはザームと神官長、その後ろにエックハルト兄様とユストクスがいた。

「ローゼマイン、昼食を任せてしまってすまぬ」
「いいえ、騎獣で移動したいというわたくしの我儘を聞いてくださったのですもの。神官長には感謝しておりますわ」
「我々の分まで準備してもらってすまないな」

 続いてエックハルト兄様がイイ笑顔で入ってきた。お父様と同じくガッツリ食べる健啖家に少しはすまなそうな顔をしてほしいと思うのは、わたしが狭量だからだろうか。



 久し振りのフーゴの昼食を終えると、フランが入れてくれたお茶を飲みながら、これから向かうハッセについての話し合いである。
 詳しい事情を知らないエックハルト兄様とユストクスにハッセの現状を説明しなければならない。

 神官長に差し出された盗聴防止の魔術具を皆が手にしたことを確認して、わたしは話を始める。領地に印刷業を広げ、わたしが出入りしやすいように神殿付きの孤児院兼工房が欲しい、と言ったのが全ての始まりだった。

「わたくしは無知だったのです」

 あの当時、わたしは洗礼式直後で、まだ貴族についてほとんど何も知らなかった。だから、下町の建築関係の工房に頼んで、孤児院や工房を建ててもらうつもりだった。実際、孤児院と工房だけならば下町に頼んでも問題はなかったのだ。

 けれど、わたしは神殿が欲しいと言ってしまった。神殿は貴族の血を引く青色神官が出入りするところなので、この発言の時点で、白の建物を作ることが決定してしまったのだ。

「わたくしが貴族について知っていれば、小神殿が欲しいなどと言いませんでしたし、食事にお招きした席でそのような要求を口にはしなかったでしょう」
「ジルヴェスターもおいしい料理に満足して気が大きくなっていなければ、すぐさま飛び出すようなことはなかっただろう。私もローゼマインが貴族の常識を知らぬことをよく考えるべきだったのだ」

 神官長が軽く息を吐いた。
 いつもなら、ジルヴェスターを止めるはずの神官長でさえ、わたしが料理で養父様や神官長を持て成して、気を引いて、自分に有利な立場で要求を通そうとしている、と考えた。ずいぶんと貴族らしいことができるようになった、と神官長は内心喜んでいたらしいので、意識と常識のすれ違いとは恐ろしいものである。

「結果として、その日のうちにハッセに小神殿が建ってしまいました」

 驚きの裏事情に目を見張るエックハルト兄様と違って、ユストクスは楽しそうに目を輝かせた。

「ほほぉ。真実とは、常に驚きに満ちている。だからこそ、情報を得るのは面白い。それで、どのような問題が起こったのです? さぁ、教えてください」

 そして、ハッセの小神殿を人が住めるように整え、孤児達を迎えに行くことになった。
 孤児を引き取ろうとしたのも、最初は面倒を見ているハッセの負担が減るだろうと考えていたからだし、可哀想な扱いの孤児達を助けてあげるつもりだった。

「売られそうな女の子とその兄弟を助けてあげることはできました。けれど、わたくしの行動でハッセの町は窮地に陥りました」

 貴族である文官とすでに契約を交わしていたハッセの町長は、そのまま引き下がるわけにはいかない。文官との約束を果たさなくてはどのような無理難題を突き付けられるかわからないし、手に入る金額で冬籠りの準備をするつもりだったのに、その金額が手に入らなくなってしまうのだから。

「わたくしはハッセの孤児達が共有財産のような扱いになっていることを、ギルベルタ商会の者に指摘されるまで知らなかったのです」
「普通は孤児の扱いなんて知らないだろう。エーレンフェストでは洗礼式を終えた子は職場が面倒を見るのだから」

 ユストクスの言葉に、エックハルト兄様が「そうなのか」と呟く。エーレンフェストの平民の孤児の扱いを知っているユストクスは、どう考えても普通の貴族ではない。

「神殿のことならば、前神殿長に頼めば何とかなると思ったのでしょう。前神殿長が亡くなったことを知らなかった町長は、強力な後ろ盾があると信じ込んで、女の子達を取り戻そうと小神殿に攻撃を仕掛けてきました」
「待て! 小神殿はフェルディナンド様の作った白の建物だろう!?」

 エックハルト兄様が目を剥いて声を荒げる。わたしはコクリと頷いた。
 貴族の住まう白の建物は領主、もしくは、領主の子にしか作れないもので、それに攻撃を仕掛けることは領主一族への攻撃と見做されるのだ。わたしも知らなかったけれど、知らなかったではすまない。

「小神殿の守りにより、こちらには何の被害もなかったけれど、ハッセは反逆者の町となってしまったのです」
「すぐに討伐を!」

 いきなりシュタープを取り出したエックハルト兄様を神官長が溜息一つで止める。

「エックハルト、落ち着け。ハッセはローゼマインの教材だ。勝手に壊されると困る」

 反逆者の町となってしまったことで、ハッセは神官長の中でどのように扱っても良い町となり、わたしの教材となってしまったのだ。

「ハッセは、ローゼマインが人動かすことを覚えるため、自分の望んだ結末を得るため、犯罪者を裁くことを知るため、そして、自分の行動がどのような影響を及ぼすのか考えるための教材だ」
「……教材ですか?」
「あぁ、そうだ、ユストクス。ローゼマインがハッセを消すのは嫌だと言うから、消さずに済むように反町長派を作り、育て、反逆者である町長を孤立させるという課題を出した。今回はその町長とその一派を処分するのだ」

 フッと笑った神官長の言葉にエックハルト兄様が不可解そうに眉を寄せて、わたしを見た。

「白の建物に攻撃を加えるような平民はただの害悪ではないか。取り除くのが正しいだろう? ローゼマインは一体何が嫌なのだ?」

 エックハルト兄様の言葉からもわかるように、わたしと貴族では常識が全く違う。
 うーん、とわたしは首を捻りつつ、自分の常識を述べてみる。

「わたくしの知る常識では、領主は民を守るためにいるのです。町一つを、多くの民を簡単に消してしまえるという考え方はどうにも理解できません。命を消すよりも、反省させ、生かした方が良いではありませんか」
「生かす? 何のために?」

 本気で理解できない、と言うようにエックハルト兄様は眉を寄せた。

「貴族にとって平民は税の担い手なのでしょう? でしたら、税を納めてもらえば良いと思ったのです。わたくしが養父様に提案したハッセへの罰は十年間の増税です」
「……ふぅむ。平民と貴族では根本が全く違うのだな」

 わたしが兵士の娘だったことを知っているエックハルト兄様は、常識の違いを貴族と平民の違いだと考えて、ゆっくりと顎を撫でる。

「確かにローゼマインの言うように、領主は民を守っている。魔力を満たし、生きる場所を与えているのだからな。税を納めることで、領民と認め、居住を許可しているが、守るべきは従順な民だけだ。領主の恩恵も知らぬ反逆者など、生かしておく必要もない」

 領主は魔力を与え、土地を活性化し、人が生きるための環境を作り、保っている。領地に住んで、領主の魔力、貴族の魔力の恩恵を受けておきながら、反逆の罪を犯したのだから、消されても当然だとエックハルト兄様は言った。

「ですが、ハッセ周辺の農村の者を含めれば千人ほど、除外するにしても、ハッセの町民だけで二百人近くいるのです。ハッセを潰してしまえば、税収が減って、結局領主も貴族も困るのではありませんか?」

 人情で攻めても無駄だし、階級による常識の違いも通じるわけがない。だからこそ、税収という方向で攻めてみる。
 しかし、全く効果がなかった。

「今は困らぬ」
「大して困らないな」
「え?」

 神官長とユストクスに即座に返されて、わたしの方が目を瞬いた。眉間に深い皺を刻みながら、神官長が不愉快そうに口を開く。

「貴族が不足し、神官が不足し、魔力が全体的に足りていない。今いる者を生かすためにギリギリまで魔力を薄めている状態だ。君が神殿に入り、各地を回る祈念式を行うことで魔力にほんの少し余裕ができたが、まだ魔力を供給する貴族に対して、消費する平民の方が多い。町の一つ分、減ったところで痛くも痒くもない。むしろ、助かる」
「ちょ、ちょっと待ってください!」

 思いもしなかった言葉にわたしが思わず立ち上がると、神官長はじろりとわたしを睨んで、「急に立ち上がるのではない。はしたない」とお小言を口にする。

「……君がそう言うから、私は待っているだろう? 無礼で愚かな町長を処分することもなく、町長以外の町民をなるべく助けたいという君にとっての最適解が出るように、こうして待っているではないか」

 神官長のことを意地悪だとか、鬼畜だとか、色々思っていたけれど、どうやら、わたしは神官長から最大限の譲歩をされていたらしい。
 しかし、その態度が煮えきらないように思えたのか、エックハルト兄様は不満そうにわたしを睨んだ。

「ローゼマイン、恩恵を受けておきながら、領主一族に武器を向けるような愚か者はいない方が良い。面倒な真似をして残さなくても、さっさと消してしまえば良いではないか」
「いや、エックハルト。私は姫様の細く長く搾り取るという案に賛成だ。税金を納められる年頃に育つまでには時間がかかるから、平民が減りすぎても困る。平民はちょっとした病気が流行ればすぐに死ぬのだぞ」

 徴税官をしているユストクスらしい意見に、わたしは肩を落とした。やはり、貴族の考え方にはどうにも馴染めない。

「では、そろそろハッセに向かうとしよう。今回は町長派を反逆者として処分する。ローゼマインの策がどれほどの人間を動かしたのか、見せてもらおう。君の望んだ通り、反町長派が増えていると良いな」

 神官長が唇の端を上げる。
 キリキリと心臓が締め付けられる気がした。



 神殿の正面玄関に騎獣を出す。わたしのレッサーバスに乗るのは、フランとザームだ。そして、護衛のためにブリギッテが助手席に乗る。助手席はブリギッテの指定席となっていた。

「姫様、こちらの荷物を姫様の騎獣に置かせていただいてよろしいですか?」

 ユストクスが大きな箱を灰色神官に運ばせて来る。厳重に鍵がかけられている大きな箱だ。大人の男ならば何とか一人で運べるくらいの大きさで、わたしにはちょうど良い椅子の大きさだ。
 騎獣で運ぶには難しい大きさなので、わたしはすぐに了承する。

「えぇ、構いません。どうぞ」

 灰色神官が運んできた箱を、フランとザームがレッサーバスに乗せる。そして、わたしがレッサーバスに乗り込もうとしたところに、ユストクスがニコリと笑った。

「私も乗せてください、ローゼマイン様」
「ユストクス!」

 即座に神官長の雷が落ちた。収穫祭の時と同じ展開に、ユストクスは学習能力がないのか、と軽く息を吐いた直後、ユストクスがフッと笑みを深めた。

「この箱の管理者は私ですから、離れるわけには参りません。フェルディナンド様もこれの重要性はご存知でしょう?」

 どうだ、と言わんばかりに胸を張るユストクスと怒鳴りつけたくて仕方がなさそうな凶悪な顔になった神官長がしばし見つめ合っていたかと思うと、神官長がわたしに視線を向けた。

「ローゼマイン、くれぐれもユストクスの話には耳を貸すな。気を取られて、落ちるぞ」
「フェルディナンド様のお許しが出ました。さぁ、乗せてください、姫様」
「え? え? 今のは、お許し、だったのですか?」

 まごつくわたしに背を向けて、さっさと自分の騎獣を出した神官長と、「さぁ、さぁ」と催促するユストクスを見比べて、わたしは仕方なくレッサーバスの入り口を開ける。

「フラン、シートベルトの締め方を教えて差し上げてください」
「かしこまりました」

 はしゃぐユストクスをレッサーバスに乗せて出発したけれど、「姫様、これは何ですか? どのように使うのですか?」と質問に質問を重ねるユストクスがうるさい。
 最初は丁寧に相手をしていたけれど、神官長が「気を取られて落ちる」と言った発言が本当になりそうで怖い。

「姫様、では、最後の質問です。どのようにしてこの騎獣を作ったのですか?」
「どうのように、と申されましても……。こういうものだと思って作ったので、説明は難しいです」
「それは残念です。同じような物が欲しかったのですが……」

 ハッセまでの空のドライブはそれほどの時間は必要ない。わたし達はほどなくハッセに到着した。



 収穫祭の時と同じように、広場に降り立とうとすると、ザッと人々がその場を退き、場所を空けてくれる。収穫祭の時と違って、場所を空けると同時に皆が跪いた。深く頭を垂れているその横顔は、どれもこれも沈痛なものばかりだった。子供達もその雰囲気を察しているようで、騒いでいる子供はいない。不安そうな顔で親にしがみついているか、大人と同じように跪いている。

 現状を皆が認識しているのだろうとわかる重い雰囲気に、わたしはきゅっと唇を引き結んだ。本当に町長だけの処分で終わるだろうか。
 先を歩く神官長を見上げてみるけれど、神官長の真意はつかめない。

「……ギルベルタ商会から手紙を預かり、お待ちしておりました」

 ベンノに渡してあった手紙はきちんと届いていたらしい。
 舞台の上にはリヒトを中心に数人が跪いて、待ち構えていた。おそらく周辺の農村の村長だろう。
 町長が断罪され、リヒトが代表として、冬の館を取りまとめたのだろう。リヒトが代表として挨拶を始める。

「神殿長、神官長。ようこそハッセにお越しくださいました。水の女神 フリュートレーネの巡り合わせに心からの感謝を捧げます」

 貴族に向けた丁寧な挨拶を受け、わたし達は軽く頷いた。跪いたリヒトが顔を上げると、わたしと目が合う高さになる。

「神殿長、その、ハッセは……」
「ごめんなさい、リヒト。お手紙にも書いた通り、小神殿への攻撃は領主一族への反逆罪なのです。わたくしがいくら養父様にお願いしても、それだけは変わりません」

 わたしはリヒトにそう言うと、広場に集まる民に向かって呼びかける。フェシュピール演奏会の時に使った、声を増幅させる魔術具を持って。

「ハッセの皆様、小神殿への攻撃は領主一族への反逆罪です。わたくしがいくら養父様にお願いしても、それだけは変わりません。反逆罪は貴族であっても処罰を受けるほどの重罪です。町長の指示による襲撃であり、多くの町民が参加したハッセの場合は、領主に敵意を抱く危険な町として、町を丸ごと潰されるくらいの罪なのです」

 ざわりと広場がざわめく。「町長は何てことをしたんだ」「農村の俺達には全く関係がないじゃないか」「完全なとばっちりだ」と悲痛な声が目の前から聞こえてくる。

「けれど、ここには普段農村で過ごす農民もいます。町長に脅されたり、騙されたりした方もいるでしょう。わたくしは、連帯責任でハッセを丸ごと潰すというのはお考え直しくださいと、精一杯お願いして、考え直していただきました」

 おぉ、と驚愕の声が上がり、皆の顔色が喜色に塗り替えられていく。
 わたしは期待値が膨れ上がる前に、慌てて付け足した。

「それでも、何の罰もないわけではございません。ハッセへの罰は、今年の祈念式への神官の派遣の禁止と十年間の増税です。命は助かりましたが、ハッセに課せられた罰は決して軽くありません。力の及ばなかったわたくしを許してください」

 今度こそ喜びの声が湧き上がった。良かった、と胸を撫で下ろしたり、抱き合って喜んだりする民の姿が見える。

「連帯責任を逃れられただけでも、十分でございます」
「ありがとうございます、神殿長」

 広場が盛り上がる中、神官長が静かに進み出て、わたしの手から声を増幅させる魔術具を取り上げた。
 そして、その魔術具を手に、冷ややかな声を出す。

「反逆者を出せ。処分する」

 広場が一瞬で静まった。ゴクリと息を呑む音が聞こえるほどの静寂がその場を支配する。
 リヒトが一度きつく目を閉じ、「かしこまりました」と頷いた。
 ハッセへの罰が公表されました。

 次回は、神官長と町長のターンです。
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