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本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 作者:香月 美夜

第三部 領主の養女

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冬の終わりへ

 冬の主を討伐した後は少しずつ天気の良い日が増えてくる。そうは言っても、まだ雪の降る日もあるし、寒さが厳しいことに違いはないのだけれど。

 そして、この頃になると、ちらほらと貴族院から戻ってくる学生達が増えてきた。課せられた講義や課題を終わらせた者から戻ってきているらしい。
 騎士見習いは騎士団の練習に参加したり、騎士団の集まりに顔を出したりするし、文官見習いは文官の業務手伝いをしたり、文官の集まりに顔を出したりする。そういう予定がない時には、子供部屋に顔を出すこともあり、大きい子供達の姿が見られるようになってきた。

 今は貴族院から戻ってきた学生達とヴィルフリート達でカルタの勝負中である。文字も読めない、と軽く見ていた弟達に惨敗している学生達の顔色は悪い。

「……よぉし! 勝ったぞ!」
「はい、ヴィルフリート様。兄上に勝ちました!」

 学生達は軽い気持ちで相手を引き受けたものの、ほとんど絵札が取れなかった現状に愕然とした顔をしている。経験者と初心者なので、全く相手にならないのだ。
 自分の弟や妹にボロ負けしている学生もいて、頭を抱えている姿が見えた。

「ほら、皆、お兄様やお姉様方に勝てるくらいに強くなっているでしょう?」

 まだカルタの勝負でわたしは負け知らず。いくらやってもわたしに勝てない、とヴィルフリートが腐り始めたので、自尊心を満たせる勝負相手を準備してみたのである。

「お兄様方はすでに字が読めますから、絵札を覚えれば、あっという間に勝ち負けがひっくり返るかもしれませんけれど、この冬の間は負けませんよ。お兄様方も頑張ってくださいませ」

 領主の息子であるヴィルフリートはともかく、弟妹に負けたままでいるのは兄姉の沽券に係わるようで、戻ってきた学生達が意外と真剣にカルタに取り組み始めた。

「ローゼマイン様」

 子供部屋の人の目がある場所なので、コルネリウス兄様もわたしを様付けで呼ぶ。わたしはゆるりと首を傾げた。

「このカルタは複数あるようですが、売り物ですか? 今まであまり見たことがない物ですが……」
「あら? コルネリウスはご覧になったことがございませんでしたか? ヴィルフリート兄様が文字を覚えるための教材として、秋の半ばにわたくしが城に持ち込んでいたのですけれど」

 わたしの護衛騎士はヴィルフリートの部屋には入れず、部屋の外で待機していたので、コルネリウス兄様はカルタを目にしていなかったらしい。

「文字を覚えるため、とおっしゃいましたが、子供達は皆、神々の名前も憶えているように見えますが」
「えぇ、神々の名前はもちろん、どなたの眷属で何を司る神様かもわかっていると思いますわ」

 わたしは絵本とカルタを見せながら、冬の間にどのようなことをしたのか、説明する。

「これ、私が来年の貴族院で学ぶ内容なのですが……」

 コルネリウス兄様の言葉に周囲を見回すと、カルタを見て、ガックリと肩を落としている学生が数人いた。どうやら、今年の貴族院で学んだ内容が神様に関することで、記憶するのにずいぶんと苦労したらしい。

「では、この冬にカルタで遊んだ子供達はずいぶんと成績優秀になりそうですね。冬の終わりには城で販売する予定でしたが、少し予定を早めて貴族院の学生達に売って差し上げた方がよろしいかしら?」

 競争相手がいなければ伸びませんから、と呟くと、コルネリウス兄様が大きく頷いた。来年は楽をするんだ、と拳を握っている。わたしは不意に勉強が嫌いで騎士になったと言っていたアンゲリカが心配になった。



 販売の許可申請のため、養父様に面会依頼をする。
 こちらも話があると言われて、すぐに予定が決まった。

「あぁ、ローゼマイン。よく来たな」

 養父様と顔を合わせるのも久し振りだ。冬の間、昼食はもちろん、夕食でさえ、会食や宴に招かれているので、顔を合わせることがほとんどなかった。

 養父様の後ろにお父様が控え、神官長の後ろにはエックハルト兄様が立っている。エックハルト兄様が城の中で神官長の護衛騎士の仕事をしている姿も初めて見た。込み入った話をするので、わたしの護衛はダームエルだ。

「ローゼマイン、其方、冬の主の討伐ではずいぶんと活躍したらしいな。カルステッドから聞いたぞ」
「わたくしではなく、フェルディナンド様の活躍です。わたくしにできたことは神具に魔力を込めるだけでしたもの」

 わたしはレッサーバスで待機して、騎士の皆に守ってもらっていただけだ。神具に魔力を込めるのも魔石が必要だったからだし、弱らせてもらった魔獣に神官長の補助付きで止めを刺しただけだ。胸を張って「活躍しました」なんて言えない。

「いや、武勇の神アングリーフの加護ももらったし、あれで仕留めてくれたからな。騎士団への被害も必要経費もかなり少なくて済んだぞ」

 カラカラとお父様が笑い、神官長は満足そうに頷いた。

「他の素材を犠牲にした甲斐がある、最高品質の魔石が手に入ったからな」

 本来ならば、皆でじわじわと弱らせていくので、魔獣が瀕死状態になると解体して素材を回収し始めるらしい。魔石を取ってしまうとどろりと溶けてなくなるので、魔石を取らないように気を付けながら、毛皮や肉、骨など、利用できる物はすべて剥ぎ取るのだそうだ。

 今回は品質重視で異なる魔力が混じらないように、魔石だけを取ることを目的としたので、わたしの魔石以外に収穫がなかったらしい。素材を売ったお金が騎士団の貴重な収入なので、今回はわたしが補償することになった。魔石代や護衛代だと思えば、惜しくない。

「では、ローゼマインの話を聞こうか。絵本の販売と言ったか?」
「そうです。すでにご報告している通り、今年の冬は子供部屋でカルタや絵本、トランプを使って、就学前の子供達はわたくし達と同じカリキュラムで全員が共に勉強しました」
「ふむ。それで、どうなった?」

 領地の子供達全員の底上げをしたい、ということで始めた子供教室の結果をジルヴェスターが身を乗り出して聞く。

「結果として、全員が基本文字を書けるようになり、カルタで神の名前や属性を暗記し、一ケタの足し算引き算はできるようになりました。良い教師を得ることができない下級貴族の子供達のフェシュピールの腕前もかなり上達しています」
「ほぉ……」

 この時しか良い教師に学べる機会がないとわかっている下級貴族の子供達は、必死に練習していた。その姿を見て、下級貴族に負けるわけにはいかない、と中級貴族、上級貴族の子供達も必死に練習する。結果として、全体のレベルがかなり上がった。

「それから、これはコルネリウス兄様から伺ったことなのですが、貴族院での講義に神の名前を覚えるというものがあるそうです」
「あぁ、あるな。面倒で大変で、せっかく覚えても自分にあまり関わりがない神についてはどんどんと忘れていくのだ」

 講義をクリアするための暗記になりがちだそうだ。養父様が遠回しにそのようなことを言って肩を竦めた。同じような笑みを浮かべているお父様やエックハルト兄様も身に覚えがあるらしい。

「その講義を受けた学生より、今ではヴィルフリート兄様の方が神々についてよく知っているのが現状です」
「……何だと?」

 大きく目を見開いた養父様が驚愕の表情になった。それはそうだろう。秋の初めには基本文字が半分も書けなかったヴィルフリートが貴族院の学生より神に詳しいなど、誰が信じるだろうか。

「貴族院から戻ってきた学生達が今、ヴィルフリート兄様達に勝とうと頑張っています。弟妹に負けるわけにはいかない、と必死です。今の、競争相手がたくさんいる時の方が伸びるので、早い内にカルタや絵本の販売をしたいと考えています。城内での販売許可を頂けますか?」

 子供達で遊べるように、と持ち込んだカルタは3つ。今は競争率が激しく取り合いがひどい。そして、取り合いに勝つのはやはり兄姉なのだ。

「良いだろう。販売は子供部屋で行うので良いか?」
「はい。それから、さすがに、わたくしが販売するわけにはまいりませんから、わたくしの御用商人として、ギルベルタ商会を入れる許可も頂きたいです」

 フェシュピール演奏会では側仕えを総動員して売り子をしてもらったけれど、本来の側仕えの仕事ではないし、客人が多くて仕事が多い冬に余計な仕事を増やすわけにはいかない。

「ギルベルタ商会か……。まぁ、よかろう。日取りや段取りに関しては、子供部屋の世話係と話し合うように。きっちり決まれば、報告しろ。周知が必要だろう」
「報告はしますが、周知は必要ありません。今回はお子様がいらっしゃる貴族の方限定で販売させていただきますから、子供達の口から伝われば十分かと考えています」

 わたしの言葉に養父様はもちろん、神官長やお父様も、軽く眉を上げる。

「何故だ? 広く売りたいものではないのか?」
「多くの方に買っていただきたいとは思っていますが、手作業で作っているものですから、数に限りがございます。わたくしとの繋がりを求める貴族達に一度に押しかけられても困るのです」

 子供の数よりは多く作成しているけれど、全ての貴族が購入できるほどの数の商品は準備できていない。繋がりのために購入されて、本当に必要な人が購入できないようでは困るのだ。

「ふむ。子供達の教育で其方は実績を作った。ならば、任せる。思った通りにやるが良い」
「恐れ入ります」

 販売許可が得られたので、一度神殿に戻って商品を持って来なければならないだろう。ついでにギルベルタ商会にも連絡を取らなければ。
 書字板にメモをすると、わたしは視線を上げる。

「わたくしからのお話は以上ですけれど、養父様からのお話は何でしょう?」
「あぁ、其方のレシピがずいぶんと評判が良くてな……」
「では、貴族達を驚かせることには成功したわけですね」

 わたしやヴィルフリートは接する貴族を厳しく制限されているので、貴族との会食には顔を出していない。だから、料理を食べた貴族の反応はよくわからないけれど、会食に招かれた貴族達はずいぶんと料理に関心を寄せているらしい。
 領主母の失脚と料理が相まって、神官長の家も、お父様の家も、例年より会食に招待されたがる人が多かったようだ。

「レシピをぜひ知りたいと言う者が実に多い」

 多分、料理のレシピをネタに色々な取引で有利な立場を取ったのだろう。レシピを広げていく方法を考えてほしいと養父様は言った。

「おいしい料理は生活の基本ですものね。いっそレシピ本でも作りましょうか?……養父様やお父様の料理人に教えたのと同じレシピが載ったレシピ集を大金貨二枚で」

 30のレシピで大金貨三枚を支払ったジルヴェスターが目を吊り上げた。

「ローゼマイン、我々が買った時より安いではないか」
「それはそうですよ。他の誰もが持っていない情報と、すでに他の人が知っている情報では価値が違いますもの。それに、レシピ集を売るだけで、出張費を出しても教えに来てくれる料理人がいないのですから」

 まだ納得できないというような顔をしている養父様にわたしは軽く肩を竦めて見せた。

「わたくしのレシピは調理方法が今までと違ったり、下拵えの手順が多かったり、と面倒なのです。レシピだけですぐに全く同じ物が作れるとは思えません。レシピ集を販売しても、数年は羨望と賞賛を浴びることができますし、もっとわかりやすい賞賛を集めるために新しいレシピが必要でしたら、お売りいたしますよ」

 また私から金を取る気か、と養父様は眉を上げたけれど、それは当然だ。お金はしっかりと頂く。わたしは騎士団に支払う金額を稼がなくてはならないのだから。

「どちらにせよ、すぐにできる物ではありませんから、レシピ集を作って販売するのは来年の冬の話です。取引材料にするなら、できるだけ価値を吊り上げた方が良いかもしれませんね。いっそ、大金貨二枚ではなく、先着百名の限定販売にして、値段を吊り上げてみましょうか?」

 プレミア感をつけるのは良いかもしれない。それ以外の人は更に次の年までレシピが手に入らない、となれば、もう少し値段を上げることができるかもしれない。
 うーん、とレシピ集の値段について考えていると、養父様がじっとりとした眼差しで神官長を見た。

「……フェルディナンド、これも其方の教育か?」
「ギルベルタ商会の教育だろう。商売に関しては専門外だ」

 神官長は「何もかもを私の責任にするな」と養父様を睨んで、フンと鼻を鳴らした。
 睨まれても「あぁ、悪い、悪い」と全く悪いことをしたとは思っていないような顔で軽く手を振った養父様が、不意に顔を引き締めて、わたしを見つめる。

「ローゼマイン、もう一つ話し合っておかなければならないのはハッセのことだ。フェルディナンドから一応の報告を受けているが、其方はハッセをどのように動かすつもりだ?」

 わたしは背筋を伸ばして、一度神官長を見た後、養父様に視線を向けた。

「そうですね。ハッセがどのような結論を出すのか、ということが一番重要なのですけれど、神殿襲撃の責任を町長派に被せて、貴族への態度を改めさせます。貴族への対応をどのようにしなければならないのかについては、ギルベルタ商会を使って、噂や体験談を交えて情報を流してもらっています」
「ふむ。だが、小神殿への襲撃をたった一度の罰で済ませるつもりか? 神官を派遣しないのは、農民にとっては苦しいが、一度だけならば大した苦労でもない」

 領主一族への襲撃の罰としては軽すぎる、と養父様がわたしを静かに見据えた。

「町を取りまとめる者が失敗すれば、それは共同体の責任になる。たった一回祈念式に神官を派遣しない程度で済ますには、罪が重すぎるぞ」

 デリアへの罰を考えさせられた時のような圧迫感と緊張感に、わたしはコクリと息を呑んだ。
 領主一族への襲撃は重罪だ。それを周囲にもわからせて、尚且つ、養父様が納得する罰が何かあるだろうか。

「……で、では、十年ほど税率を上げるというのはいかがでしょう? 税収のために農民は必要ですもの。ハッセを一つ潰すくらいのこと、養父様には簡単でしょうけれど、後々を考えると、細く長く搾り取る方が良いのではありませんか?」

 大量の人が反逆罪で処分されるより、お金で解決できる方がよほど良い。実に穏便な罰だと思ったが、養父様はわずかに顔を引きつらせた。

「……其方は甘いのか、厳しいのか、わからぬな」

 じわじわとなぶるより、いっそ一思いに殺してあげた方が……などと物騒な提案をされて、わたしはぶるぶると頭を振った。貴族の立場から考えれば、後腐れがないように消してしまった方が、面倒が少なくて早いのかもしれないが、死んだら終了だ。

「まぁ、いい。税収が上がることに関しては歓迎する。ハッセは町長派の処分と十年間の増税で決着をつけるとしよう」
「では、祈念式に行ってもよろしいですか? 収穫がなければ増税もできませんもの」
「いや、今年は派遣しない。これは決定だ」

 深緑の目がきらりと光った。領主の決定を覆すことは、わたしにはできない。わたしは頷いて了承する。

「ハッセには其方が赴き、罰の公表をしてくるが良い。聖女の慈悲により、罰が軽減されたと宣伝してこい。……ただし、ハッセの者が今回の罪を理解していなかった時は、わかっているな?」
「……はい」

 自分で自分を慈悲深い聖女だと宣伝してくることが、甘い処分を下そうとしたわたしへの罰であるらしい。神官長がいい気味だ、と言わんばかりに唇を歪めている。

「あと一つ。祈念式のことだが……」
「何でしょう?」
「其方が直接祝福を行った土地と小聖杯を渡しただけの土地で収穫量に違いがあったらしい」

 養父様がいくつかの木札を持って来て、並べていく。収穫量と徴収した物を控えた徴税人の資料のようだ。見てみたけれど、それほどの違いがあるようには見えない。

「……あまり変わりませんけれど?」
「いや、他と変わらないというところが違うのだ。ここ数年、神官や巫女が減って、祈念式の折の祝福も激減して、直轄地の収穫量が目に見えて減っていたのだ。だが、今年は周辺貴族の土地をやや越えるほどの収穫だった」

 小聖杯に加えて、貴族達は自分の治める土地が豊かであるように、自分の魔力を注ぐらしい。そのため、青色神官の質が落ちたここ数年は、貴族の土地と直轄地であからさまな差があったそうだ。

「……ローゼマイン、悪いが、今年の祈念式も其方に回ってもらいたい」

 わたしが以前に多忙であることを訴えたためだろう。養父様はひどく言いにくそうな顔で口を開いた。

「ジルヴェスター」

 神官長が溜息交じりに呼びかける。

「ローゼマインが回るのは直轄地だけで良いな? 小聖杯を貴族の土地に持って行くのは他の青色神官に任せるぞ。そうでなければ、青色神官の仕事を全て奪うことになるし、春の素材の採集にも差し障る」
「直轄地だけで構わぬ。それで頼む」

 ふむ、と頷きながら、神官長がトントンと軽くこめかみを叩いている。おそらく祈念式の日程を考えているに違いない。

「こちらの話は以上だ」
「では、ギルベルタ商会の商品を販売する時に、お預かりしていた小聖杯も持って参りますね」
「あぁ」



 まだ色々と話し合いが続きそうな養父様や神官長に挨拶して退室すると、わたしはレッサーバスで子供部屋へと向かった。

「皆様、アウブ・エーレンフェストから許可を頂きました。カルタと絵本とトランプをこの部屋で販売いたします。欲しい方はご両親にご相談してみてくださいませ」

 わたしは子供部屋で遊んでいる子供達に声をかけた。パァッと顔を輝かせた子供達がピッと背筋を伸ばして、こちらへと向かって歩いてくる。

「では、カルタを買えば、夏の館に戻ってもできるのですか?」
「えぇ、来年の冬までにしっかり練習してくださいませ」
「はい!」

 初めて兄に勝つことができた少年は、やる気に満ちた笑顔で頷いた。「カルタを買って練習すれば、すぐに私が勝つさ」と少年の兄がニィッと笑う。

「ローゼマイン様、絵本は全て販売されますの?」
「もちろんですわ」

 むしろ、絵本の普及こそがわたしの第一目的だ。できれば、新しい絵本を販売したいと思っているくらいだ。本文はできているし、ヴィルマの絵もほとんどできていたはずだ。急かしたら、新作絵本として売れるかもしれない。販売までの日程に少し余裕を持たせて、子供達の数だけでも先に本を作ってもらおうか。

 そんなことを考えていると、コルネリウス兄様の同期である令嬢が躊躇いがちに尋ねてきた。

「ローゼマイン様、わたくし、来年の講義の前に神々について憶えようと考えておりますの。秋や冬の眷属の絵本はございませんか?」
「……それが、まだ準備できていないのです。秋の眷属の絵本は、工房の皆にお願いすれば……皆様がお帰りになられる頃にはできるでしょうけれど、冬の眷属の絵本は来年ですわね」

 ルッツやギルに一応お願いしてみるけれど、販売までに新しい絵本ができるかどうかはわからない。わからないことは約束しない方が良い。

「とてもよくできている絵本ですから、欲しかったのですけれど……」
「そのように楽しみにしてくださって嬉しいですわ。そうですね、星結びの儀式の頃にはできていると思いますから、星結びの儀式の辺りで販売できるようにアウブ・エーレンフェストにお願いしてみましょう」

 星結びの儀式自体は成人の祭りだが、その辺りに販売日を設定すれば、騎獣を持っている学生ならば、買いに来られるはずだ。

「そうすれば、冬の貴族院には間に合いますわね」

 楽しみにしております、と淑やかな笑みを浮かべた令嬢が下がっていき、代わりに、別の令嬢が全て購入できるように、親におねだりしなくては、と弾んだ声を上げた。

 皆がどれを買ってもらうのか、と楽しげに話をする。
 それを横目で見ながら、わたしは子供部屋に付いている世話係の側仕え達と教材販売の日時について話し合う。
 浮かない表情のフィリーネが目に付いた。
 冬の主を倒して、冬は終わりへと向かいます。
 前回が戦闘だったので、今回はジル様とのお話でまったり、と。

 次回は、教材販売です。
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