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本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 作者:香月 美夜

第二部 神殿の巫女見習い

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撃退

「フェルディナンド! 今すぐアレを止めろ!」

 ジルヴェスターの怒声に、「無理だ!」と即座に神官長が怒鳴り返した。

「無理だと!? あれだけの規模の魔力で攻撃されたら、周囲にどれだけの被害が出るか、わからんぞ!? 境界を越えれば、宣戦布告だ! せめて、境界の結界を強化できるだけの時間を稼げ!」
「止めるのは無理だが、方向性を与えるのは可能だ」

 静かにそう言った神官長がライオンを天馬へと寄せてきて、わたしを見た。

「マイン! フラン達を守りたいなら、風に祈れ!」

 神官長の言葉を聞いて、祈る神を選びきれていなかったわたしの頭の中に、ヴィルマの描いた風の女神の絵が浮かび上がる。それと同時に自分が調べてまとめた女神の項目が頭を過った。

 風の女神 シュツェーリアは秋の女神だ。春の女神達に追い払われて、力をつけて戻ってくる命の神から妹神である土の女神を守る女神だ。育ち実った命の収穫を終えるまで、雪と氷で土の女神を捕らえようとやってくる命の神を風の盾で防ぎ続ける。雪と氷を押し流す水の女神とは違い、防御と守りに特化した女神である。

 ……絶対にフラン達を守る!

 下の方に見える黒い靄に覆われた馬車の列をキッと睨み、わたしは大きく息を吸い込んだ。

「守りを司る風の女神 シュツェーリアよ 側に仕える眷属たる十二の女神よ」

 神に祈り、その名を唱えることで、わたしの中で膨れ上がっていた魔力が方向性を持った。攻撃ではなく、大事な物を守るための力が全身から左腕へと流れて、渦巻き始める。

「マイン、闇の神の結界に魔力を食われぬよう、その上から更に包みこめ!」

 ジルヴェスターの声を聞きながら、わたしは眼下の黒い靄を見据え、小さく頷く。今までに儀式のためと言われ、暗記させられたいくつかの祈り文句のお陰で、言葉がするすると口から出てきた。

「我の祈りを聞き届け 聖なる力を与え給え 害意持つ者を近付けぬ 風の盾を 我が手に」

 神官長から借りているブレスレットの石の中、風の女神 シュツェーリアの貴色である黄色の魔石が一際明るく輝いた。魔力が明るい光となって迸り、馬車に向かって真っすぐに飛んでいく。
 ジルヴェスターに言われた通り、黒の結界に触れないように、大きくボウルを被せたように風の盾をドーム型でイメージすれば、魔力はわたしが脳内で思い描いたように動いた。

 キンと高い音を立てて、丸いドームが出来上がる。上から見れば、神具の盾を大きな琥珀に彫刻したようなドームの中に馬車が黒い靄ごと閉じ込められているように見えた。

「ぅおおおおお!」

 わらわらと武器を手に突進していた男達は突然目の前にできたもう一つの結界に気付かなかったのか、勢いがありすぎて止まれなかったのか、大声を上げたまま突っ込んでいく。
 先頭が結界に触れた瞬間、強風で一斉に男達が吹き飛ばされた。

「うわぁっ!?」
「何だ、何だ!?」

 将棋倒しのようになったところもあれば、数メートルくらい本当に吹き飛ばされた者もいる。何が起こったのか、わからないように困惑した顔で風の盾を見ていた。

「……見事だな」

 軽く目を張ったカルステッドが眼下の様子を見て、そう言った。フランやロジーナを守ってくれた神の盾に対する思いは、わたしが抱いていたものと同じだ。

「ですよね!? カルステッド様もそう思いますよね? さすが風の女神 シュツェーリアの盾! フランとロジーナを守ってくださった神に祈りを!」
「お前はこれ以上祈らなくて良い!」

 予想以上の盾の威力にわたしが興奮して、バッと手を上げた途端、ジルヴェスターに怒られた。

 ……でも、神様に力を借りたんだから、お祈りと感謝は必要じゃない?

 わたしが口を噤んで下を覗きこんでいると、武器を構え直した男達が、もう一度挑戦するように突進するのが、見えた。先程と同じように強風が吹き荒れて、バッと吹き飛ばされ、周囲にいる者を巻き添えに飛んでいく。数回強風を食らったところで、それ以上突進する者はいなくなった。

「今、森の中に魔力の反応がありました」

 ダームエルの言葉に皆が一斉にダームエルを見た。
 魔力の反応があったということは、風の盾に魔力で干渉しようとしたか、吹き荒れる風を魔力で防ごうとしたか、何かした人物がそこにいるということだ。
 大きすぎる魔力を持つ者は、微弱な魔力を感知しにくいらしい。下級貴族であるダームエルにはわかっても、他の誰にも森の中に魔力の反応は感知できなかった。

 全員の表情が厳しくなり、神官長が全員を見回して指示を出した。

「我々は森へ探索に向かう。ダームエルはこのまま上空でマインを守れ!」
「はい!」

 神官長の指示に大きく頷き返事をした瞬間、「駄目だ!」とジルヴェスターが首を振った。

「ダームエル、もっとこっちに寄れ!」

 ジルヴェスターはそう言ったかと思えば、神官長のライオンの上に立ち上がった。そして、不自然なほど軽い動きで、わたしも乗っているダームエルの天馬の大きく広げられている翼の上へと飛び移る。

「ぎゃあっ!? 何をしているんですか!?」
「危ないですよっ!」

 元が石のせいか、天馬はジルヴェスターが乗ったところで、全く揺るぎはしなかった。ジルヴェスターは両手を広げてバランスを取りながら、トットッと身軽な動きで近付いてくる。

「お前は邪魔だ」

 ジルヴェスターはそう言ってわたしの脇に手を入れると、ぐんと高く持ち上げて、そのまま、ブンブンと大きくわたしを振り回す。
 振り子のように左右に大きく振られるわたしには、一体何が起こっているのか全く理解できずに目を瞬くしかなかった。

「フェルディナンド、受け取れ!」

 ジルヴェスターがそう言った直後、わたしは勢い良くぺいっと投げ出された。何もない空中へ。

「……え?」

 心の準備も何もなく、いきなり空中に投げだされたわたしは何が起こったのかわからないまま、呆然と目を見開いていた。腕を伸ばしてもつかむ物など何もない。ただ、目の前には大きな青い空が広がっている。

「巫女見習いっ!?」

 わたしと同じように信じられないと言わんばかりに大きく目を見開いたダームエルが腕を伸ばす様子と、ジルヴェスターがひょいっとダームエルの頭を馬跳びの要領で飛び越えて、後ろに座る様子がスローモーションで見えた。

 空中にぽんと投げされたほんの一瞬、勢いでふわりと浮いていた身体は、すぐに重力に囚われて落下を始める。
 ヒュッと自分の身体が空気を切りながら落ちていき、髪がビシビシと自分の頬を叩いた。その痛みにハッと我に返ったわたしは、心の準備も安全考慮もない紐なしバンジージャンプに、息を呑んだ。

「ひゃあああぁぁぁ!」
「っと……」

 ジルヴェスターの行動とわたしの落下地点を予測していたように、ライオンを移動させた神官長がガシッと受け止めてくれる。
 多分、実際には1メートルも落ちていない。けれど、わたしにとってはとんでもない距離に感じられた。自分ではどうしようもない空中に投げだされた恐怖は大きく、つかめる物を見つけたわたしの手が神官長の服をがっちりとつかんだ。受け止められた今になって、なす術もなく落ちていく恐怖に歯の根が合わない。

「こ、怖かっ……た」
「さもありなん」

 神官長は、ライオンに横座り状態でがっちりと服をつかんでいるわたしの肩を何度か叩いて、落ち着かせようとした。だが、そこにわたしを震えあがらせた元凶であるジルヴェスターの声が響き、わたしの全身が縮みあがる。

「フェルディナンド、お前はここで残れ! あっちが囮とも限らんからな!」
「了解した」
「境界が近い。逃げられる前に捕らえるぞ。来い、カルステッド!」
「はっ!」

 そう言うと、二頭の騎獣は森に向かって飛んでいく。その後ろ姿を見ていた神官長が軽く息を吐いた。

「やっている事は乱暴だが、一応君の安全と合理性を最優先にした結果なので、許してやってくれ」
「え?」
「森にいる魔力持ちはダームエルとそう変わらない程度の魔力しか持っていない。感知するにはダームエルが同行するのが一番良い。また、あちらの魔力持ちが囮だった場合、ダームエルと君だけ残しておくのは危険だ」

 神官長は周囲を油断なく探るように眉を寄せている。
 わたしは今が本当に危険な状態で、空中に投げだされたことに震え上がっている場合ではないのだと肌で知った。

「マイン、彼らの武運を共に祈ってくれるか?」
「はい」

 上空で守られている自分にできることを提示されて、わたしはコクリと頷いた。何かやっている方が怖くない。
 神官長に祈り文句を教えられ、それを一緒に唱える。

「炎の神 ライデンシャフトが眷属 武勇の神アングリーフの御加護を彼らに」

 わたしと神官長、二人分のブレスレットが青く光りだす。青の魔石から飛び出した光がくるくると交差しながら、真っ直ぐに彼らに向かって飛んでいった。



 森の上空でジルヴェスターが光るタクトをブンと大きく振って、赤い大きな鳥を飛ばした。まるで不死鳥のようだと思いながら見ていると、その鳥は大きく羽を広げて、溶けていくように姿を消した。その鳥が羽を広げていた場所に赤く透けた壁が立ち上がる。
 そして、次に同じような黄色の大きな鳥が飛びだし、周囲をぐるぐると飛びながら、溶けて光る粉になって、周囲に降り注いでいった。

 赤い鳥が壁になったのとほぼ同時に、カルステッドは光るタクトを両手で持つ大きな剣に変化させる。

「うおおおおおおぉぉぉっ!」

 虹色に光る大きな両手剣を振りかざし、何やら大音声を張り上げながら、カルステッドがブォンと大きく振り抜いた。
 カッと眩い光が剣から飛び出し、森へと真っ直ぐに落ちていく。

「わぁっ!?」

 まるで隕石でも落ちたかのように、耳が痺れるような途轍もなく大きな音が響き、同時に地震が起こったように地面が揺れた。
 直後に大爆発が起こったように、森の一部が吹っ飛ぶ。

「無茶をする……」

 神官長の声にハッとしたわたしは、神官長を見上げた。

「馬車は、馬車は無事ですか!?」
「闇と風の二重結界になっているので、全く問題ないようだ」
「よ、よかった」

 神官長の言葉にわたしは胸元を押さえて、ホッと息を吐く。直後にくらりとした目眩に襲われた。

「どうした、マイン?」
「皆が無事だったって、わかって、身体の力が抜けたみたいです。ちょっと寒くなってきました」

 身体中がひやりとして力が抜けていく感覚を伝えると、神官長は眉を寄せて、わたしの首筋に片方の手を当てた。

「かなり冷たくなっている。もしや、魔力の使いすぎではないか?」
「……え? あ、そうかもしれません」

 そういえば、初めて奉納の儀式を行った後もこんな状態になったことがある。あの時は甘いものを食べて、奥の方の魔力をゆっくりと流してやればすぐに回復した。けれど、今は自分の中に、全身に行き渡らせるだけの魔力がない。

「神官長、魔力がないです。全身に回せるだけの魔力が、本当にないです」

 あり余る魔力を押し込めることは今までずっとしてきたが、魔力がなくなって足りないという事態は初めてで、どうすればいいのかわからない。

「薬は基本的に馬車の中だ。安全が確認できるまで戻れぬ。……とりあえず、これを飲んでおけ。応急手当のようなものだが、何もないよりマシだろう」

 神官長が帯に付けていた試験管のように細長い金細工の飾りを外して、小さな丸い石をグッと押した。それと同時に、カパと上の部分が開く。
 手渡された物をクンクンと嗅いでみたが、苦い薬草の臭いではなかった。傾けてコクリと飲めば、とろりとした甘みのある液体が口の中に広がっていく。記憶を探る魔術具を使う時に飲まされた薬に似ていた。もっと濃厚な感じだけれど、方向性は同じだ。

「そのまま目を閉じて眠っていなさい。目が覚めたら、今度は苦い薬と説教だ」

 わたしはコクリと頷いて目を閉じた。



「マイン様、気が付かれましたか?」
「……ロジーナ」

 様子を見るように顔を覗きこんできたロジーナに気付いて、わたしはゆっくりと身体を起こした。直後、まるで貧血のように頭がくらりとして、ボスッと枕に頭が落ちる。

「急に動いてはなりませんわ。襲われた馬車を守るために、ずいぶんと無茶をされたのでしょう? 神官長達が呆れておりましたよ」
「後でお説教だと意識が途切れる前に宣言されてますから、覚悟しています。それより、ロジーナもフランもエラ達も、皆、無事? 怪我したり、痛い思いをしたりしなかったかしら?」

 わたしはちゃんと皆を守れたのだろうか。魔力の使い過ぎでぶっ倒れて、苦い薬とお説教が待っているのに、意味がなかったのでは悲しすぎる。

「えぇ、私を含めて、一行の中に怪我人もなければ、壊されたり、盗まれたりした物もなかったようでございます」
「そう、よかった」

 わたしをもう一度寝かせながら、ロジーナは馬車に起こったことを教えてくれた。
 突然、黒い闇に囚われて馬車が急停車し、窓から様子を伺っていると、森の奥から武器を持った農民が出てきたことに驚いたこと。その後、強襲されると構えていたら、何かに弾かれるように飛んでいったこと。
 突然空が光って、大音声と爆発音がしたけれど、馬車には風圧一つなかったため、何が起こっているのか全くわからなかったこと。その後、神官長達が現れて、守ってくれたことを知ったこと。

「一番被害が大きかったのはマイン様ですわ。一人だけ意識を失って、冷たい身体で震えているのですから」

 ロジーナの説明を寝物語に、わたしの意識は落ちていく。

「……農民と灰色神官を秤にかけた場合、優先されるのは、作物を作り、税を納める農民ですもの。マイン様のお陰で、私達は全員助かりました。ありがとう存じます」



 次に起きた時には、神官長が見舞いと称して、ものすごく苦くてまずい薬を持ってやってきた。小瓶に入った緑色の薬をずいっとわたしの前に差し出す。

「これを飲みなさい」
「ひぅっ……」

 身体を引いても、ベッドに起き上がって座っているだけのわたしに逃げ場はない。
 飲まされることがわかっていても尻込みするわたしに、神官長はじろりと鋭い視線を向けた。

「少しは魔力が戻ってきたか?」
「……まだまだです」
「さもありなん。いつまでもここに留まっているわけにもいかぬ。鼻を摘まんで無理やり飲まされたいか?」

 わたしの魔力が回復しなければ、出発できない。皆に迷惑をかけていると言われれば、どんなに苦くてまずい薬でも飲まないわけにはいかないだろう。
 神官長が差し出す薬を手に取って、わたしは嫌がって震える手を総動員して口に流し込んだ。

「んぐぅ……!」

 涙が浮かび上がるほどのまずさと苦みに口元を押さえて、わたしはベッドの上でのたうつ。そんなわたしを神官長は満足そうに見下ろして、一つ頷いた。

「薬が効いてくるまでの間、そうやって口元を押さえて聞いていなさい」

 そう前置きした上で、神官長が教えてくれたのは、馬車に闇の神の結界を張った犯人とその裏が全くわからなかったという衝撃の事実だった。

 なんとカルステッドの攻撃で敵が粉微塵になってしまったため、背後を探ることができず、ゲルラッハ子爵が関与しているのかどうかもわからなくなったらしい。

 わかったことは、ダームエルが感じ取れたことからも、実行に来ていた者は魔力がそれほど大きな相手ではなく、二人いたということと、その魔力量から考えても闇の神の結界を張るには力不足なので、間違いなく上に貴族がいることだ。
 そして、それが領地外の貴族ではないかと推測されたらしい。

「どうしてわかったんですか?」
「馬車を襲った人間の半数以上が領民ではなかったからだ」

 どのようにして判別したかは、教えてくれなかったが、恐らく闇の結界を張れる貴族も領地外の者で、カルステッドの攻撃が落ちる前に領地の境界の外へと逃げたのだろうと推測されたらしい。

「……犯人を捕らえるのではなかったのですか?」
「何でも、いつも通りにしたはずが、予想外の威力になってしまったようだ」

 技を振るったカルステッドの方が驚くような威力が出たらしい。
 神官長が気まずそうに、そっと視線を外したことで、わたしはそうなった原因に思い当たった。

「……もしかして、わたし達の加護は余計でしたか?」
「そうかもしれん。聞かれるまで黙っておけ」
「了解です」

 そして、すでにジルヴェスターとカルステッドは街へと戻っていったらしい。今回の件は至急調査が必要な案件になるため、報告と処理のために騎獣で帰ったと言った。

「本来なら、神官の乗る馬車が襲われるなど考えられないんですよね? 領主様にご報告して、しっかり調査して頂かなくてはならないってことですか?」
「……まぁ、そういうことだ」

 神官長は一つ頷いた後、表情を引き締める。そして、もそもそとベッドに座り直すわたしを見た。

「マイン、君は本当に家族と離れたくないと思っているのか?」
「もちろんです」
「では、何故あの場で魔力を暴走させた?」

 神官長の言葉に、グッと息を呑んだ。

「フランやロジーナが危ないと思ったら、カッとなって……」
「あの時は暴走した魔力が強固な守りとなったことで事なきを得たが、君は自分が危険視されるようなことをしすぎだ。何より、今回は魔術具を持っていたから、神に祈りを捧げ、魔法が発動したが、なければ暴走した魔力で君が死んでいたぞ」

 魔力を放出するには基本的に魔術具が必要だ。だからこそ、魔術具を持っていない身食いは成長と共に膨れ上がる魔力に食われて死んでいく。
 神殿で魔力を奉納することで命を繋いでいるわたしだが、我を忘れて魔力を暴走させれば、どこまで身体がもつか、わからない。

「君は魔力を暴走させて死んでいく者が一体どのようになるか知っているか?」

 神官長は微に入り細を穿つように事細かく、魔力を暴走させた貴族の死に様を語ってくれた。淡々としている口調が尚一層怖い。

「体内の魔力が漏れ始め、それが続くと、全身から一気に魔力が流れ出すことになる。そうなってしまえば、もう魔力を留めておくための器である身体が持たない。皮がボコボコと膨れ上がる。そう、湯を沸かした時のようにだ。そして、皮がそれに耐えきれなくなった瞬間、パチンと弾けて、肉が……」
「ぎゃー! ぎゃー! ぎゃー! 聞こえない! 聞きたくない! いやああああぁぁぁぁ!」

 わたしは耳を押さえて、布団にもぐったけれど、神官長はバサッと布団を剥いで、わたしの手を耳から引き剥がした。

「こら、マイン。まだ終わっていない」
「ごめんなさい。ごめんなさい。もうしません! 絶対に魔力を暴走させないから許してくださいっ! 痛いの嫌い! 怖いの嫌い! やめてえぇぇぇ」

 ベッドの上で、本気で泣きながら土下座すると、神官長は、ふむ、と軽く頷いた。

「では、次に暴走させた時は、耳を塞いだり、逃げ出したりできないように君を椅子に縛り付けて、耳元で最後までじっくりと語り聞かせることにする」

 椅子に縛られて、延々と痛くて怖い話を聞かされる自分を思い浮かべてしまったわたしは、ブンブンと首を振って、必死でその想像を振り払う。

「二度としませんっ! ホントにしませんっ!」

 わたしの本気の反省に、神官長は実にイイ笑顔で「これは今後も使えそうだ」と、とてつもなく恐ろしいことを呟いた。
 ババーンとちょっとやりすぎて、撃退は終了。
 神官長はマインを反省させる術を覚えました。
 これで祈念式は終了です。

 次回は、やりたい放題の青色神官です。
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