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本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 作者:香月 美夜

第二部 神殿の巫女見習い

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ヨハンの課題

 冬支度のために大勢の人が行き交う広場で、跪いたヨハンに懇願されたわたしは頭を抱えた。周囲の視線がちくちくと刺さってくる。ひそひそとした声で「まぁ、何?」「どうしたのかしら?」と言われているのがわかる。ものすごく居た堪れない。

「あの、ヨハン。ここは人目もあるし、非常にお話がしにくいので、ヨハンの工房へ伺っても良いかしら?」
「駄目だ。話をするなら、ウチの店でしろ」

 ヨハンの工房へ行こうか、と思ったら、ベンノが店に来るように言った。ヨハンがわたしのことをギルベルタ商会のお嬢さんと勘違いしているなら、店から離れた方がいいかと思ったのだが、ベンノはそれを許さなかった。

「お前が今度は何に首を突っ込むのか、把握しておいた方が良い。俺とルッツの前で話せ」
「わかりました。じゃあ、ヨハン。ギルベルタ商会に来ていただける?」

 わたしがヨハンに立ち上がるように言うと、ヨハンは顔を輝かせて立ち上がった。

「もちろん。お嬢さん一人が工房に向かうなんて、お父さんが心配されるのは当たり前じゃないか」
「親子じゃない!」

 わたしとベンノさんの声が揃った。
 仰天して目も口もポカンと開けているヨハンの前へ、ずいっと一歩進み出て、わたしはヨハンを見上げる。

「わたしはマインです。ベンノさんにはお世話になっていますけれど、ベンノさんとは親子でもないし、ギルベルタ商会の見習いでもありません」
「へ? でも、前はギルベルタ商会の見習い服で、商業ギルドのカードも持っていて……」

 動揺しながらも、親子認定した理由をいくつか述べるヨハンの顔色が一気に悪くなっていき、「親子じゃない?」と呆然とした様子で呟いた。

「マインは俺が後見をしている工房長だ。お前の年なら、例の試験だろう? 話だけなら聞いてやる」
「は、はい」

 ベンノが仕方なさそうな息を吐いて、わたしを抱き上げてスタスタと歩きだす。こういうことをするから親子扱いされるのに、ベンノはわたしの歩調に合わせるのがよほど嫌なようで、行動を改めようとしない。
 後ろをついてくる者のことは考慮していないベンノの速度に、ヨハンが早足で続き、ルッツは小走りになっている。

「なぁ、あの二人は本当に親子ではないのか?」
「違う。旦那様は独身だ」

 諦めきれないようなヨハンの声にルッツが呆れたような声を出した。ベンノにもしっかりと小声の会話は聞こえていたようで、じろりとヨハンを睨む。
 ヨハンはビクリと身体を竦ませたのが、ベンノの肩から見ていたわたしにはわかった。



 店の奥の部屋でテーブルにつくと、ルッツがお茶を入れるためにマルクに連れられて、奥の階段を上がっていく。
 鍛冶工房の職人であるヨハンは大店の旦那の執務部屋に通されたことなどないのだろう。恐れ多そうにおどおどと周りを見回しながら、勧められた椅子に座る。衆目を集める広場で「パトロンになってください」と叫んだのと同人物だとは思えない。

「ベンノさん、例の試験って何ですか?」

 よいせっ、と椅子によじ登ったわたしがテーブルに身を乗り出すように尋ねると、ベンノはすいっと視線をヨハンに向けた。

「ヨハン、お前の用件だ。お前が説明しろ」
「は、はいっ!」

 ベンノに睨まれたヨハンがビクッとして、姿勢を整える。わたしとベンノを見比べた後、ヨハンは言葉を探すように視線をさまよわせた後、ゆっくりと口を開く。

「……えーと、鍛冶協会では見習いのダプラが成人になった時、一人前と認められるための課題があるんだ」

 ヨハンはそれほど口が達者な方でもないようで、言葉を探しながら、静かな口調でポツポツと話し始める。

 工房に来る客の中で、自分の腕を認めてくれて、出資してくれるパトロンを成人式までに捕まえて、パトロンが指示した物を一年以内に作るというのが鍛冶協会の課題だ、とヨハンは言った。
 パトロンが求める物は、武器であったり、日用品であったり、様々だが、この課題で一番重要なのは、自分で自分の腕に出資してくれるパトロンを探すことらしい。

 作り上げたものの品質、出資したパトロンの満足度はもちろん、パトロンはその先、工房を維持するためにも必要なため、どのようなパトロンが捕まるかというのも、採点基準となる。
 そして、この試験に失格するとダプラ契約は打ち切られ、ダルア契約に落とされることになるのだそうだ。

「ヨハンは腕が良いから、パトロンくらいすぐに見つかるのではないの?」
「……いや、ダメなんだ」

 ヨハンは俯いて、ゆっくりと首を振った。

「その、オレは……非常に細かくこだわりすぎるから……だから、あまりお客さんから受けが良くないんだ」

 注文してくる物に細かい指示を欲し、しつこく質問を繰り返すヨハンは、客に受けが悪いらしい。細かく聞かなければ作れない腕の持ち主だと判断されるのだそうだ。大雑把な注文でも客の欲する物を作れるのが良い腕の持ち主らしい。
 それもある一面では正しいけれど、細かい指示に完璧に従うことができるヨハンの腕が悪いと言うのは、少し違うと思う。

 ただ、客受けが悪くても腕は良いので、工房に来る注文で細かい部分を今では全てヨハンが担っている。当然のことながら、鍛冶工房としてはヨハンを手放したくはないけれど、協会からの課題で結果が出せなければどうしようもないらしい。

「鍛冶協会でパトロンが決まっていない見習いダプラはオレだけで……。秋の終わりには成人するのに、本当に困ってて……」

 ここでは季節の初めに洗礼式があり、季節の終わりに成人式がある。ヨハンが秋に成人式ならば、秋が深まっている今、パトロンを探すために残された時間は本当に少ない。

「お待たせしました、旦那様」

 ルッツとマルクがお茶を持って、下りてきた。全員にお茶を配り、マルクは一礼して部屋を出ていく。ルッツはベンノの後ろに立った。
 コクリと一口お茶を飲んだベンノが眉を寄せながらヨハンを見る。

「ふん、話はわかった。マインは工房長だが、見るからに子供だぞ。お前のところの親方も難色を示していたはずだ」

 ヨハンは身の置き所がないように身体を縮めた。

「確かにそうなんだけど……」

 本来ならば、わたしは未成年なので、パトロンにするのは周りが反対するらしい。未成年が使えるお金などたかが知れているからだ。
 しかし、わたしは大口の注文をしてきた実績があり、自分のカードを持っていて、ヨハンの腕を買っている。おまけに、ヨハンの細かい質問に嬉々として応じて、腕を褒め、更にヨハンを指名した。ヨハンから細かい質問が来ることを理解していて、注文時に細かい設計図を持ってくるような変わった客はわたしくらいらしい。

 ヨハンを指名して仕事を注文した時点で、わたしはパトロンの資格を有することになったらしい。ただし、未成年なので、親なり、保護者なりの許可と保障は必要らしいけれど。

「鍛冶工房へやってくる客でオレのパトロンになってくれそうな人は、ギルベルタ商会のお嬢さん以外にいない。駄目でも仕方ないが、一回は頼んで来い! と親方に工房から追い出されて……」

 大店のお嬢さんなら、父親に頼みこんで表向きのパトロンになってもらえるかもしれない。そうして、ギルベルタ商会がパトロンになってもらえれば、ヨハンにとっても箔がつく。

 そう考えて藁にもすがる思いで、店を尋ねたら、「旦那様は商業ギルドに行った」と言われた。商業ギルドに行ったところ、二階の混雑の中でその旦那様に抱き上げられて、人ごみからぴょこんと頭が飛び出ていたわたしを発見したらしい。

「まさか、親子じゃなかったなんて……」

 ヨハンはがっくりと肩を落とした。ベンノが工房だけではなく、商業ギルドでもわたしを抱き上げて移動したり、ルッツと二人で見習い服を着て高額の注文に来たりしているところで、完全にギルベルタ商会のお嬢様認定したと言う。

 そういえば、周りから見ると親子に見える、とオットーも前に言っていた。年齢差を考えれば妥当なのかもしれない。だが、独身のベンノにとっては苛立ちを感じるようで、険しい目でわたしを睨んだ。

「マインが俺の娘なわけがない。俺が親だったら、こんなボケボケした危機感のない考え無しには育てん。せめてコリンナくらいの注意深さは身につけさせる」

 独身でも親を早くになくして妹を教育したベンノの言葉に、むぅっとわたしは唇を尖らせた。ベンノを睨んだが、わたしと親子扱いされたベンノの方がむすぅっとしている。

「あの、親子じゃないなら、無理だろうから……」

 ヨハンは諦めた顔でそう言って、立ち上がろうとした。
 わたしはその袖をハシッとつかむ。パトロンなんて関係なしに頼みたいことがあったけれど、ヨハンがパトロンを探しているなら、これは好機だ。

「ベンノさん、ベンノさん。うふふ~……」

 ヨハンの袖を掴んでわたしがベンノに笑顔を向けると、ベンノは予想済みだと言うようにこめかみに手を当てて、ゆっくりと息を吐いた。

「……やるんだな?」
「えぇ。わたし、ヨハンに作って欲しい物があるんです」
「わかった。後見人として許可を出し、俺が保証人になろう」

 ベンノはパタパタと軽く手を振って、簡単に許可を出した。
 あまりにも簡単に許可が出たことに驚いたのは、むしろ、ヨハンの方だった。

「あの、保証人はパトロンのお金が尽きた場合、代わりに……」
「お前な、商売人が保証人の意味も知らんはずないだろう? 心配はいらん。マインの場合、お金がなくなる心配がないから、保証人になるのも躊躇う必要がないんだ」

 例えお金が足りなくなっても、今印刷している絵本を売れば、すぐに元が取れるし、臭いがしない蝋燭の作り方を売るだけで、鍛冶工房の出資分くらいはすぐに回収できる、とベンノが肩を竦めた。

「金の心配がない、という意味では、良いパトロンを引いたぞ、お前」

 大金持ちのパトロンは誰もが喉から手が出るほど欲している。ヨハンはベンノの言葉にぱぁっと顔を輝かせた。

「すごいです、お嬢さん!」
「お嬢さんじゃなくて、マインです!」
「あ、すまない。オレのパトロンになってくれるか、マインちゃん……さん?」

 わたしを見て、呼び方をどうするか考えあぐねるヨハンの頭をベンノがベシッと軽く叩いた。

「おい、パトロンには様付けが基本だろう? 年齢と見た目からはマインに様付けなんか似合わんが、曲がりなりにもお前のために出資してくれる相手だぞ」
「すみません。マイン様」

 ヨハンは慌てて頭を下げる。
 わたしは軽く笑って、気にしなくていいよ、と手を振った。呼び方なんて別に何でも構わない。大して重要な事ではないからだ。わたしにとって重要なのは、ヨハンにこれから作ってもらう課題作品である。

「では、ヨハンに作ってほしい物の設計図と一覧表は明日にでも工房に持っていきますね」

 今日、これからの時間、腕によりをかけて設計図と作り方をまとめようと思う。腕が鳴るわ、と気合を入れていると、ヨハンが驚いたように目を瞬いた。

「え? い、一覧表? あ、あの、試験のために作る作品は一つだと決まっているんだが?」
「うん、一つで間違いないです。活字を作ってもらうから、全て揃って一つですもの」

 ここで使われている基本文字35文字には、アルファベットの大文字小文字、日本語ならひらがなとカタカナのように、同じ音で二種類の文字がある。当然、両方の活字を作ってもらう。母音は50ずつ、子音は20ずつあれば、ひとまず足りるだろう。

「わたしがパトロンになるなら、作ってほしい物は金属活字。細かくて、量が多くてとても大変だと思うけれど……どうしますか、ヨハン? わたしをパトロンにして後悔しません?」

 軽く活字について説明すると、思いもよらない課題だったようで、ヨハンは目を白黒させて、助けを求めるようにベンノとルッツに視線を向けた。
 ベンノとルッツは顔を見合わせて、軽く頷く。

「他人の言葉は注意深く聞け。俺は、金の心配がないという点では、良いパトロンだと言ったはずだ」
「マインの無茶振りについて行けないと思うなら、諦めて他のパトロンを探した方が良い。いつもこんなんだから」

 助言だか、追い詰めているのかわからないような二人の言葉にヨハンは膝の上で拳を握って、ぎゅっと固く目を閉じる。
 しばらくの逡巡の後、ヨハンは腹を括ったような強い目でわたしを見た。

「……お願いします。オレのパトロンになってください」



 わたしはその日のうちに張りきって、設計図と作り方を詳細に示した依頼書を作った。そして、次の朝には工房に持ちこんだ。
 本当に昨日の今日で持って来るとは思わなかったと、ヨハンはビックリしていたけれど、依頼書を見て、やる気を燃やしていたので任せておいて問題ないと思う。

「ルッツ、これで活版印刷にまた一歩近付いたね」
「……楽しそうだな、マイン」
「楽しいよ。ここを乗り越えたら、活版印刷がぐぐっと近付くんだもん。ヨハンの活字ができたら、圧搾機を改造して印刷機を作るの。でも、これは春になってからの仕事だね。冬の間にたっぷり稼がなきゃ」

 うふふん、と鼻歌交じりにわたしは神殿に向かう。門のところで待っていたフランが手を交差させて、軽く膝を曲げた。

「おはようございます、マイン様。体調は良くなられたようですね」
「なぁ、フラン。今日のマイン、かなり浮かれて興奮状態だから、気を付けて見ていてくれ。放っておいたら、笑いながら熱出してぶっ倒れてそうだ」

 ルッツの言葉にフランは軽く眉を上げて、わたしを見た。そして、やんわりとした笑顔で、首を振る。

「ルッツ、それほど心配しなくても大丈夫です。マイン様が神殿にいらしたら、重要な話があるということで、神官長から呼び出しを受けております。隠し部屋を使うとおっしゃられていたので、マイン様の浮かれている気分はすぐに吹き飛ぶと思われます」

 神官長の隠し部屋は、わたしにとっては説教部屋だ。あの部屋に呼ばれているとわかれば、浮かれていた気分なんて、あっという間に消えてなくなる。

「もう楽しい気分なんて吹き飛んだよ。何のお説教だろう? 身に覚えがないんだけど」
「まぁ、マインのことだから、無意識に色々やらかしたんだろ? 諦めて怒られて来い」

 ハァ、と溜息を吐くわたしの肩をルッツが苦笑しながら軽く叩く。

「オレは工房で印刷の様子を見てるから」
「うぅ、いってきます」

 わたしは部屋で青の衣に着替え、今日はフェシュピールの練習もせずに神官長の部屋へと向かうことになった。足取り重くのそのそと歩いていても、神官長の部屋にたどり着いてしまう。

「神官長、おはようございます」
「あぁ、マインか。おはよう。フランから話は聞いているだろう? こちらに来なさい」

 少しばかり厳しい顔で神官長はスタスタと隠し部屋へと向かう。これはお説教確実だ。わたしは胃の辺りを押さえながら、神官長が開いた隠し部屋へと入っていった。

「そこの資料は全てこちらに寄こしてくれ」

 長椅子の資料を端に避けて、いつもどおりにわたしが座ろうとしたら、神官長がそう言って手を差し出してきた。わたしは、長椅子の上の資料を全てまとめて神官長に渡す。
 バサリと机に資料を置き、神官長はいつも通りにガタンと椅子を引き出してくる。ただ、その手には金細工に赤の石が付いた装飾的な環と手の平に隠れるくらいの大きさの瓶を持っているのが見えた。

「マイン、これを飲みなさい」

 神官長が手を開いて、小瓶をわたしに向かって差し出してくる。少し厚めで透明度はそれほど高くないガラス瓶の中で赤い液体が揺れていた。

「何ですか、これ?」
「私が調合した薬だ。魔力を通しやすくする効果がある。この魔術具を使うために必要だ。まずかろうが、苦かろうが、我慢して飲むように」

 有無を言わせぬ迫力で神官長が目の前に薬の瓶を突きつけてきた。そんなことを言われたら、ものすごく飲みたくなくなった。まだわたしはあの極悪な薬の味を忘れていない。
 躊躇うわたしを見ていた金色の目が、すぅっと細められ、神官長の唇の端がわずかに上がる。

「鼻を摘ままれて、喉に薬を流し込まれる方が好みか?」

 本気だ。神官長はそれが必要だと思ったら、表情一つ変えずにやる人だ。
 わたしはふるふると首を振りながら、神官長が差し出す赤い薬が入った小瓶を受け取った。

「……自分で飲みます」

 今度は一体どんな味なんだろう。恐る恐るわたしは瓶に口を近付けた。それほど変な臭いはしない。ゆっくり飲んだら、まずい時にそれ以上飲めなくなる。わたしは気合を入れて一気に口に流し込んだ。

「……ん?」

 別に苦くもまずくもない。どちらかと言うと、ほんのりと甘みがあっておいしい。

「神官長、これ、別に苦くもまずくもないですよ。ほんのり甘くておいしいです。あの時の回復薬もこれくらいおいしかったらよかったのに」

 空になった瓶を神官長に渡しながら、殺人的な苦みだった薬の味を思い出してそう言うと、神官長は意外そうに目を見張った。

「君は甘く感じたのか?」
「はい。そうですけど?」
「……そうか。まぁ、いい。これを付けなさい」

 神官長は手に持っていた赤い石のついた金色の環をわたしに差し出した。抵抗しても無駄なので、わたしはおとなしくそれを手に取った。

「何ですか、これ? どうすればいいのですか?」
「その魔石が額に当たるように被ればいい」

 神官長に言われるまま、わたしは環を被るようにして赤い石を額に当てる。魔術具の指輪を借りた時のように、わたしの大きさにシュッと変化して、サークレットのようにピタリとはまった。

「神官長、これを魔術具と言いましたよね? 何ですか?」
「以前、領主に頼んでいたのだが、やっと届いたものだ」
「あの、何に使うのか……ん? あ、あれ?」

 サークレットをはめた直後から、ものすごい眠気が襲ってきた。頭が白くなって、くらりとして、勝手に瞼が下がっていく。

「あ、あれ? なんで? 眠い……」
「そのままゆっくりと横になって眠りなさい。抗う必要はない」

 神官長の言葉がぼんやりと聞こえる。聞こえているのに、理解するのに時間がかかるような感じで意識に幕がかかっていく。
 ひとまず、抗う必要はないと言われたので、襲いかかってくる睡魔に身を任せて、わたしはいつも通り寝る体勢を取った。簪を引き抜いて、靴を脱ぎ、長椅子にゴロリと横になる。身体を横たえると、意識はすぐさま深淵に落ちていこうとする。

「おや、すみ……なさ」

 最後の力を振り絞って、挨拶していると、神官長の指先がわたしの前髪を掻き分けるのを感じた。神官長が近くにいるのか、直接耳に吹き込まれているように声がずいぶんと近くで響く。

「これは領主が直々に裁かねばならないほど、重大な事件の犯人や証人が嘘を吐いていないか、記憶を探るための魔術具だ。……君が言った夢の世界を見せてもらうぞ」
 マインがヨハンのパトロンになりました。
 ヨハンには多分鍛冶協会で一番細かくて量が多い、面倒な課題が与えられました。

 次回は、神官長視点で閑話 夢の世界です。
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