挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 作者:香月 美夜

第二部 神殿の巫女見習い

109/677

イタリアンレストランの内装

 ロジーナが側仕えとして、苦手な計算や書類仕事に取り組むようになった。一人で下働きをするデリアはちょっと不満そうに唇を尖らせたけれど、成人が近くて読み書きができるロジーナにフランの負担を減らしてもらうこと自体には、文句を言わなかった。

 フェシュピールを弾く時間もきちんと守っていてくれているようで、デリアがこっそり楽しみにしているのも知っているし、興味深そうにフェシュピールを見ているのも知っている。「教えてほしいって頼んでみたら?」と言ったら、「そんなんじゃありません! もー!」と怒られたけれど、時間の問題だろうと勝手に考えている。

 そして、わたしはヴィルマに言われた通り、ロジーナを見ては自分の品の無さにガッカリする毎日を送っている。
 だって、一挙手一投足が違うのだ。ロジーナが歩くだけも、まるで舞いを見ているように軽やかで優雅だし、一つ一つの動作はゆったりとしていて、決して速くないのに、流れるようで、遅くはない。不思議なリズムを持っている。
 首の傾げ方やペンの持ち運び、衣装の裾さばき、どれもこれもが末端まで神経を使っているように上品だけれど、取ってつけたような感じは全くなくて、あくまで自然。

「ロジーナのような立ち居振る舞いなんて、本当に身につくのかしら?」
「立ち居振る舞いより、計算の方が難しいですわ。その年齢でマイン様がどのようにして計算能力を身につけたのか、教えて頂きたいです」

 顔を見合わせて、小さく笑う。苦手克服は練習あるのみだ。
 ロジーナの注意を受けながら、わたしとデリアは立ち居振る舞いに気を付ける。愛人になりたいという目的を持っているデリアの方が上達は早い気がする。

 神官長からランチのお誘いの招待状が届いた。指定された日時は十日後だ。「フェシュピールの練習の成果をついでにみるので、楽器を持ってくるように」と招待状にあって、血の気が引いたロジーナと二人で猛特訓したところ、神官長から与えられた第一課題は、三日で問題なく弾けるようになった。

 ……目標と締めきりは人を成長させると実感しました。

 初めてのご褒美として、フェシュピールの先生をしてくれたロジーナには外出用の服を贈り、カルタを仕上げてくれたヴィルマにはスケッチに使えるように紙の束を贈った。



「ベンノさん、インク工房に連れていってくれるのはいつになりそうですか?」

 冬になる前にインクを作ってみたいと思っているので、自作する前にインク工房の見学をしたい。わたしが神殿に行く前に、店によってベンノにそう尋ねると、ベンノは軽く頭を振る。

「インクは後回しだ。そろそろレストランの工事が終わる。内装についてもう少し話がしたい」

 インク工房に連れていってもらおうと思ったら、何故かイタリアンレストランに連れていかれることになってしまった。

「レストランに行って、何をするんですか?」
「外側が完成したので、次は内装だ。神殿の貴族区域を参考にタペストリーや美術品の飾りについて意見が欲しい。フランは絶対に連れて来いよ」

 ベンノの言い方ではフランの意見が欲しくて、わたしの方がおまけ扱いのような気がする。貴族の内装について、それほど詳しいわけではないので、仕方ないとは思うけれど。
 そう考えていたところでハッとした。もう一人、わたしの側仕えには美術品や内装に詳しそうな人材がいる。

「……美術品について意見が欲しいなら、ロジーナも連れて行きましょうか? 新しい側仕えなんですけれど、芸術好きな貴族に特別可愛がられていた子で、下級貴族より貴族らしい灰色巫女なんです。多分女性貴族の視点での意見が出てくると思いますよ?」

 フランは神官長の教育を受けているので、こうするべきという貴族の規定には詳しいけれど、四角四面で柔軟性が少し足りない。神官長自身が無駄を嫌うので、「シンプルが一番」という傾向があるのだ。
 その点、ロジーナは芸術巫女の薫陶をたっぷり浴びているので、何に関しても遊びの部分がある。物の配置や見せ方にセンスがある。ロジーナが来てから、部屋の中に花が増えたり、隠す収納から見せる収納に変わったりしている。

「ほぉ、それはいいな。だったら、明日の午後、神殿に馬車を差し向けるから、レストランを見に行くぞ。それから、フーゴもレストランに向かわせるから、明日の食事は残りの人員で何とかしてくれ」
「はぁい」

 インク工房への見学があっさり流されたことにはガッカリしたけれど、レストランができあがったのは嬉しいことだった。ルッツと一緒に「楽しみだね」と話し合いながら、神殿に行って、明日の予定を伝える。

「明日は午後からベンノ様が馬車を差し向けるので、レストランの方へ来てほしいとおっしゃっているの。従者としてフランとロジーナが同行してくださる?」
「かしこまりました」

 フランとロジーナが頷いた。

「それから、フーゴにも厨房を見てもらいたいそうですわ。明日はフーゴをお休みさせて、ギルベルタ商会に向かうように伝えてちょうだい。……新しく入った料理人は大丈夫かしら?」
「エラがいれば、問題なく進められると思われます」

 フランを通して、フーゴ達にも通達してもらった。新しい料理人は不安そうだが、もともとフーゴだってエラと二人でずっと料理してきたのだから、何とかなるはずだ。

 次の日、昼食を終えた後、フランとロジーナには外出着に着替えてもらって、わたしもデリアに手伝ってもらいながら青い衣を脱いで、袖口の長い貴族っぽいブラウスに着替えた。現場に行くとフーゴがいるので、お貴族様な装いと立ち居振る舞いが必要なのだ。

「あたしも行きたかったですわ。もー! あたしばかりお留守番ではないですか」
「ごめんなさいね、デリア。今回はロジーナの意見が欲しいのです」

 恨みがましい目で見ながら、支度を手伝ってくれたデリアにそう言っておく。さすがに、どれだけ神殿長に伝わるかわからないので、デリアは連れていけない。
 それに、お留守番ばかりになるのはデリアが孤児院に行きたがらないし、森に行くより自分磨きがしたいと言ったデリアの意見を汲んだ結果なのだが、そういうことは都合よく忘れているらしい。

「いつもお留守番をして、部屋を整えてくれるデリアにご褒美が必要かしらね?」

 デリアにはそう言い置いて、わたしとフランとロジーナはベンノが差し向けてくれた馬車に乗り込んだ。
 フランはいつもの茶色の服で、ロジーナはモスグリーンのワンピースに幾何学模様の刺繍が入った深緑のボディスをつけている。ふわふわとした栗色の髪とよく合って、どこから見ても深窓の御令嬢である。
 クリスティーネ様に仕えている間も、神殿の中にいる以上、灰色神官の服しか着たことがなかったらしい。わたしがロジーナを褒めると、「褒めすぎですわ」と恥ずかしそうにスカートの裾を軽く引っ張った。

 ……照れ方が奥ゆかしい感じで、非常に可愛いのですが、わたしにも真似できると思いますか? いいえ、思いません。

 馬車の中でロジーナにイタリアンレストランの説明と今日の仕事内容を説明しておく。

「イタリアンレストランは貴族の食堂のような雰囲気を目指しているの。お客様として大店の旦那様のような富豪層を考えているから、内装も気を使うつもりなのです。貴族が使うと想定した上で、フランとロジーナの意見が欲しいのです」
「……クリスティーネ様のお部屋を整えるように考えればよろしいのですか?」

 ロジーナの言葉にわたしは頷いた。フランも神官長や神殿長の部屋を想定して意見を述べてくれるようにお願いする。

「では、我々が意見を出しますので、マイン様はあまり意見しないようにお気を付けください。フーゴがいるのでしたら、マイン様は必ず我々を通して意見をおっしゃるようにお願いいたします」
「……はい」

 ベンノと商売関係の話が始まったら、どうしても熱くなって口数が多くなるので、今日は思いついたことを書字板に書きこんでいくしかないようだ。

 ……お嬢様にだけはなりたくないよ。お喋りする自由もないなんて……

 ガタガコと揺れる馬車が外装の工事が終わったレストランに着くと、ルッツが入り口で待っていた。今日はわたしもお貴族様仕様だが、ルッツも貴族に対応する商人見習いらしく、姿勢を正している。

「ようこそおいでくださいました」
「お招きありがとう存じます」

 わたしとルッツの間では考えられない茶番のような挨拶を済ませて、案内されるまま、中に入る。お互いの澄まし顔に笑いださなかっただけ上出来だ。
 装飾的な大きな木の扉が開かれて足を踏み入れると、そこは私の部屋の一階に似た感じの小さなホールになっていた。

「こちらが受付や勘定をする待合室、左が厨房で右が食堂になっています」

 ルッツがそう言いながら、右側を示せばこれから扉が入る予定なのか、四角に穴の開いた白い壁が見えた。奥にはベンノの姿が見える。

「マイン様、ようこそおいでくださいました。こちらがレストランの食堂になります」

 ベンノもしっかりと貴族対応の言葉遣いで出迎えてくれる。
 内装の基本は、ベンノにとって一番身近な貴族の部屋であるわたしの部屋がモデルになっているらしい。

「……殺風景ですね」
「もちろん腰壁を張り巡らせる予定です。ただ、彫刻に凝った腰壁がなかなか納品されてこないのです」

 喋ることを制限されているわたしは書字板に「腰壁の納期」と小さく記す。

「腰壁や飾り棚はどのような物にするか決まっておりますが、まだ棚に飾る美術品が決まっていないのです。タペストリーや絵画、彫刻、植物などを選び、どこにどう配置するか、ぜひ、マイン様の意見を伺いたく存じます」

 わたしの意見を聞きたいと言いながら、ベンノの視線はフランとロジーナに向いている。

「こちらに置かれるのは、どのような飾り棚を予定していますの?」
「大きさや幅、色によって、飾る物も変わるのでは?」

 二人の質問にベンノが答える。
 貴族に出入りする商人なのだから、ベンノは貴族の中の流行は知っている。けれど、美術品や飾りのセンスは予想通りロジーナの独壇場だった。
 そして、ロジーナの意見にフランが金額的に安い代案を出したり、ここまでは必要ないと華美になりすぎるのを押さえたりしている。
 わたしは口を挟まず、二人の意見を聞きながら、ちょこちょこと書字板にメモを取っていた。傍から見れば、どちらが従者かわかるまい。

「マイン様は内装に必要だと思われる物はございますか?」
「……そうですね。片隅に本棚を置くと、とても素敵だと思います」

 ぐわっと目を見開いたベンノが「阿呆! 却下だ。どれだけ金をかけるつもりだ!?」言いたいのを、辛うじて呑み込んだような顔でわたしを睨んだ。

「マイン様、飾りとして本を揃えるのは、さすがに金額的に無理ではないかしら?」
「食堂に置くと、匂いも移りますから」

 側仕えの二人にも却下され、わたしはコクリと頷く。無理な事はわかっている。欲しいなぁ、と思ったから、一応意見として述べてみただけだ。
 口を閉ざして、わたしはおとなしく二人の側仕えが話しているのを聞いておくことにした。

「開店が春以降になるなら、タペストリーよりカーペットを重視した方がよろしいのではないかしら? 貴族の部屋にはカーペットが必ず敷かれていて、足音やワゴンの音を消しています」
「ワゴンを動かしやすく、かつ、厚みがある物を探すのは大変ですが、それだけの価値はありますね」

 貴族としてだけではなく、給仕する従者としての視点からも意見が出てくる。わたしとベンノは書字板に二人の意見をメモしていった。
 テーブルの数、椅子の数、予備を置いていくスペースについて、どんどんと話が進んでいく。

「これくらいか……」
「貴族の食事という雰囲気を出したいなら、テーブルクロスではなく、ナプキンを使うのはいかがでしょう?」

 フランがそう発言した。
 テーブルクロスは麗乃時代のように見栄えをよくするためにあるのではなく、食事で汚れた手を拭いたり、口元を拭ったり、ひどい時には鼻をかんだりすることに使われている。新品ならまだしも、何度か使えば食べ物の染みは落ちないし、ここの衛生状況では不衛生極まりない。不潔すぎて赤痢などの疫病のもとになることもあるらしい。

「ナプキンとは?」
「個人個人で手を拭くために、テーブルクロスを小さく切った物だと考えて頂ければよろしいかと存じます。最近、貴族の間ではテーブルクロスではなく、ナプキンを使うようになってまいりましたので、参考までに」

 フランの言葉にわたしはパァッと顔が輝いていくのがわかった。

「フラン、その意見は素晴らしいわ」
「マイン様?」
「汚れの落ちていないテーブルクロスを使うと高級感がなくなりますもの。個人個人で使う大きさならば、汚れても新しい物に変えやすいですよね? 飲食店は清潔感が第一です。テーブルクロスがあれば、使うお客様がいらっしゃるに違いありませんもの。いっそテーブルクロスは退けて、ナプキンを準備することにいたしましょう」

 ふぅむ、とベンノは何か考えるように顎を撫で、わたしはロジーナにそっと肩を叩かれて、口を閉じるように示された。

 ……興奮しすぎましたか? でも、ホントに汚いテーブルクロスは嫌だったんだもん。

 そして、食堂の方の打ち合わせが終わったので、次は厨房へと足を運んだ。自分の部屋とほぼ同じ作りだが、やや広くなっている厨房をぐるりと見回す。
 厨房では、フーゴがマルクと話をしていた。調理道具や食材、薪についての話である。どんな話がまとまったのか、フランに聞いてもらう。

「基本的にはマイン様の厨房で使い慣れている道具と同じ物を準備してもらうことにしています」

 そうフーゴは答えた。聞こえているけれど、それをまたフランが復唱し、わたしの意見を求める。

「調理道具は同じ種類の物を揃えるので、問題はないと存じますが、大きさだけはよく考えて注文してくださいね。忙しくてすぐに洗えない時のために、小さめの調理道具は複数準備しておいた方が良い物もございます」

 フランに囁くように意見を述べると、フーゴは目から鱗が落ちたような顔をした。マルクがいつの間にか作っていたらしい書字板にメモしているのが見える。

「食材は新鮮であることと味の良い物を提供してくれるところを3つほど確保した方がよろしくてよ。それから、薪はオーブンを使うことになると大量に必要になるでしょう? 余所の街から仕入れることも視野に入れて、早目に確保を始めてくださいませ」

 厨房でのまどろっこしい意見交換を終えると、マルクとフーゴを残して、残り全員で馬車に乗って、ギルベルタ商会へと向かった。
 店の中で忌憚なく意見交換をするためだ。

 店の奥に入ると、わたしはぺいっとお嬢様の仮面を投げ捨てた。ロジーナが顔をしかめたけれど、ベンノと商談するのにお嬢様らしい態度では、意見が通じたのか通じてないのかわからなくて、まどろっこしい。
 書字板を開いて、わたしは気になったことをベンノに質問する。

「じゃあ、わたしが気になったところから質問します。……腰壁の納品が遅れていると言っていましたけれど、いつになるんですか? 内装の要ですよね? 腰壁がなかったら絵を飾ることも、棚を入れることもできないじゃないですか」
「工房でも急いでくれているようだが、確実に冬は越えるだろうな。腰壁だけではなくて、扉や窓枠もあるからな」

 時間がかかっても仕方ないと、ベンノは言うが、わたしはその言葉にものすごく引っ掛かるものを感じた。

「えーと、もしかして、一つの工房に頼んでいるんですか?」
「……普通は専属の工房に頼むだろう?」

 複雑な彫刻を依頼しているのに、腰壁だけではなくて、扉や窓枠もって、明らかにオーバーワークだ。

「それは納品が遅れても仕方ないでしょう。いくつかの木工工房に分けて注文すればいいじゃないですか。一つの工房に頼んでいたら、完成するのは一体いつになるんです?」
「だが、これまでの付き合いもあるからな……」
「レストランを作るにあたって、専属契約していないなら、別に問題ないでしょう? 腰壁はここ、内扉の装飾や窓枠の装飾はあそこ、飾り棚や家具はそこというように割り振らないといつまでたっても完成しないと思うんですけど」

 しかし、ベンノが言うところによると、こちらでは一つの店を作るにもずいぶんと時間をかけるのが普通らしい。これまで工房の準備はすでに設備があるものを買い取るだけだったので、それほど時間がかからなかったというだけで、これが一般的らしい。

「色々な工房と繋がりを作るのも悪くないと思いますけれど、一つの工房に任せるのが一般的だと言うなら、商人の世界のことはベンノさんにお任せします。……ただ、木の素材とデザインを細かく指示すれば、職人なら普通に仕上げてくれると思いますよ?」
「……考えておこう」

 ベンノが木札に何やら書きこんでいるうちに、わたしは次の項目に視線を移した。

「食器はどうするのですか? 貴族の食器に木の器はあまり使われませんけれど?」
「……一応ピューターの皿を想定して、注文を出しているが、これもまた時間がかかりそうだな。同じもので数を揃えるのが大変なんだ。貴族は使い回ししないからな」

 安い食堂なら手づかみが当たり前だし、最近は少しずつ減ってきたけれど、食器の共有も珍しくはない。ただ、貴族は違うらしい。
 全員分食器を準備しようと思ったら、基本的に手作りなのだから、時間がかかるのは当然だ。だからこそ、あちらこちらの工房に依頼すればいいのに、と思う。

「テーブルごとに工房を変えても良いんじゃないですか? あとは、料理の値段によって変えるとか……」
「お前は少し急ぎすぎだ」

 複数の工房に一度に依頼するのは、あまり歓迎されないことらしい。ベンノの苦い顔にわたしも軽く溜息を吐いて、同業ではない工房を使うことを考える。

「だったら、ピューターだけじゃなくて、銀食器や陶器にも手を出してみたらいかがです?」
「高すぎるぞ」

 ベンノが嫌そうに眉を寄せた。

「上等の客だけに使うとかで、プレミア感を付けるんですよ。普段は飾っておけばいいじゃないですか」
「……なるほどな。二人はどう思う?」

 ベンノがフランとロジーナに視線を向けると、フランが口を開いた。

「マイン様の意見は比較的有効だと思われます。貴族でも招く主賓とそれ以外でお皿を変えることもございますから。ただ……」

 フランやロジーナによると、貴族は食事に行くのに、自分のカトラリーとコップを持参するものらしい。その品質を自慢し合うこともあるし、代々引き継がれる食器もある。食器というのは財産なのだ。毒殺を考慮する者は皿まで準備することも珍しくないと言う。

「平民にはそのような習慣はないな」
「ないなら、貴族の習慣を広げればいいじゃないですか。店にも準備はしておくけれど、最初の試食会の招待状には貴族の習慣としてカトラリーとコップを持参してもらう旨を書けばどうですか? 富豪なら自慢の食器を持っていそうだし、自慢したくて新しく準備する人もいるかもしれませんよ。ベンノさんは自慢の食器ってないんですか?」

 わたしの言葉にベンノが小さく唸る。

「……ある。自慢合戦が始まったら収拾がつかなくなる気がするが、持ってこいと言われたらいそいそと持っていきたくなる物がある」
「じゃあ、貴族の習慣を取り入れたらいかがです? その後も基本的に持参してもらうようにすれば、店で準備するカトラリーはそれ程多く必要ないと思うんですよ。高価な食器をお客様に盗まれる心配も減りますし」

 内装を貴族の館のように整える上で一番の心配事が、客による盗難や略奪、破壊だとベンノは言った。店の物を盗むというのがわたしには理解できないが、珍しくはないらしい。

「あぁ、そういえば……以前に支払いの踏み倒しや盗難防止の策を思いついたと言っていたな? 説明してくれ」

 わたしはグッと胸を張って答えた。

「それは、ですね。『一見さんお断り』です」
「何だ、それは?」
 レストランの外側と厨房が一応完成しました。
 内装には側仕えの意見が反映されます。

 次回は、このまま内装やレストランのシステムについて話します。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ