見つけたものは小さな綿毛
少女たちの世界はぼくにはわからないけど、優しいところもありそう
昼下がり、天気は下り坂。学校からの帰り道も下り坂。
「××ちゃん、一緒に帰ろーよー」
だめなの、今日は寄るところがあって・・・。
私が誰にも言えないことをしているのは、決して悪いこととは思わないけど、なんだか絵空事のよう。
みんなの親し気な表情を尻目に、私は走った。すぐに、そこに行きたくて。
学校からの帰り道、長い下り坂の中腹。そこにある長いようで短い階段を下り、世界の半分を覆う海が見える。今日は天気が悪いせいか、少しくすんでるようで残念。でもこれじゃないの。
階段の手すりを軽快に叩きながら進むと、また二つに分かれた道。私は左に折れ、長い一本道を通る。松の木で覆われたこの一本道。「神の道」なんていう高尚な名前がついてるけど、今は地元のウォーキングスポット。昔は、神様が通っていたのかな?みんな左右に、上手に沿って歩いていくの。
今日はこの道には誰もいなかった。そんな日だから。
私はみんなとは違い、堂々と胸を張って「神の道」の真ん中を歩く。
昨日、今日、いつもの世界を思い出す。学校で仲良くしてる子たち、家に帰って優しく相手をしてくれて、温かいご飯をくれる人。これが私の日常。私の為にできた世界。ありがとう。
もう少しで「神の道」をぐぐりぬけそうなところで、ふと横にあった公園に目が行く。たんぽぽが咲き乱れ、朗らかで暖かい光がそこを照らしてあった。
「あ、綿毛」
目の前をふっと、通りすぎた綿毛。きっとあの公園から風に乗って、この神の道を通る神様に挨拶しにきたんだ。こんにちは。
私は神の道の途中で折れ、松を抜け、公園にやってきた。綿毛の正体はきっとこの公園にあるぞ。
きっとたくさんの綿毛をつけたたんぽぽが迎えてくれるだろう。
「××ちゃんじゃん!どしたの?先に帰ったんじゃなかったの?」
「私もまだまだいっぱい遊びたい」
「学校であったばかりじゃん、そんなこわい顔しないで」
また小さな綿毛が、優しく私の髪の上に止まった。
大切にしたいね