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異世界に転生したんだけど俺、天才って勘違いされてない? <旧題  転生したんだけど俺なんか勘違いされてない?> 作者:にゅん

学院編1年度 前期

9/77

入学式

 俺は、朝飯を食った後、いつもよりかなり長い時間洗面台の前にいた。なんと言っても人間は初対面の印象が大事だ! 不潔に見えないよう髪を整え歯を磨き、満足したところで部屋に帰り真新しい学院の制服に袖を通してもう一度洗面台の鏡の前にもどり確認する。
 よし、問題はない。どこから見ても清潔感あふれる好青年だ……。

「母さん、どう?」

 そう問いかけると母さんはいつもより優しく微笑んでとても似合っていると言ってくれた。時計を確認しまだ時間がある事を把握してからテレビの占いを見ようとすると

「こうちゃん、そろそろ迎えの車が来るから玄関で準備してて?」

 なんて事を言われた。そんな話を聞いていなかったので母さんに聞いてみると、どうやら母さんの息子……つまり「新量子学の母」の息子だということが問題らしい。あー、あれか。世界的に有名な科学者の関係者が技術学院に入学するとなると混乱もおきるかもな。そんな面倒に巻き込まれたくない俺は素直に迎えの車を待った。

「……なにこれ」

 迎えに来た車をみた俺は思わず家の中にUターンしたくなった。目の前には無駄に威圧感がある黒塗りの車……。前後は大型のバンが挟んでいる。頭を抱えそうになった瞬間家の中から母さんが出てきて

「じゃあ、お母さんも行くねー」

 といいながら黒塗りの車に乗ってさっさと行ってしまった。それについていく大型のバン……。残るのは普通のセダン型の車、良かった! めっちゃ安心した!! あの威圧感溢れる怖い人たちが乗りそうな車は母さんの迎えか、あんなんで学院に登校するはめなったらどうしようかと思った……。

「功樹君だね? さぁ、学院に行こう」

 残った車から出てきたのは、黒いスーツに黒ネクタイでスキンヘッドのオジサン。学院に着くまで俺は無言で震えていた。




「えーと、1-S……1-S……」

 迷った、というかでか過ぎ!! この学院はどんだけ金つかってんだよ。どうすっか、人に聞こうにも皆なぜか目を逸らすから聞けない。なんか中等学校時代を思い出すな、アレ……なんか目が熱くなって来た。
 そんな事を考えながらウロウロしていると後ろから走りよってくる足音が聞こえて振り返ると美人が息を切らせて目の前に居た。伸びそうになる鼻の下を必死に押さえ決して美人と知り合いになるチャンス!! とか思っている事など考えているのがバレないようにできる限り表情を引き締めにして自分の教室の場所を聞こうとした。

「ごめんなさいね、荒川君。こちらの手違いであなたを案内する人間が間に合わなかったの」

 先に向こうから話かけられたので、つい返答するタイミングを逃し頷くだけになってしまう。まずい……。これだとコミュ症だと思われてしまう。チラッと美人をの方を見ると目線を泳がせていた。

うわーーーないわーーー。コイツまともに会話できないの?キモーーーコミュ症かよ!

 絶対こう思われている。とりあえず落ち着け余裕を取り戻すんだ俺。なるべく余裕をもった声で俺はこう問いかけた

「そちらの事情は理解しました。とりあえず僕はどうすればいいですか?あなたが案内してくれますか?」

 よし、完璧だ。学院の事情を理解したことを認めた上でさらに美人に案内をお願いする作戦、これなら断ることはできまい。我ながら考えがゲスっぽいがとりあえず今は目の前の美人と渡りをつけなければ!! 様子をうかがってみるとなにやら考えていたようだがコチラを向くと笑顔で案内するといってくれた。美人の笑顔はそれだけで癒されるな!
 しばらく無言で後ろをついていくと学院長室の前で止まった。学院長に挨拶をするのかなと思っていると、そのままノックも無しに部屋に入り一番奥にあるデスクの前で振り返り、俺の方を向いて笑顔でこう言った。









「国際技術学院にようこそ、荒川功樹君。私が学院長の山本香よ」






----要人警護班 隊員 視点----

 今俺達はピリピリとした緊張状態の中に居る。今この家の周囲には32名の陸上自衛軍の特殊レンジャー部隊、そして俺たち20名の要人警護班が包囲している。

「こちらスキンヘッド、まもなく荷物が家から出荷される。警戒を怠るな」

 俺のスキンへッドという名の識別名はもちろん自分の髪型からきている。まぁそんな事はどうでもいい……。あまり緊張しても問題なので関係のないことを考えて多少はリラックスしなければならない。
 俺たちの任務は荒川功樹の護衛である。しかも学院を卒業するまで3年間登校日は毎朝これを繰り返すのだ。 事前に渡されている資料で護衛対象はどれだけ日本に必要な存在なのか嫌というほど知っている、それに倫理観が欠如した凶暴性も……。決して失敗はできない、今回我々が使用する護衛方法は単純な囮を使った警護の方法だ。まず囮要員として母親の荒川美紀が先に警護車両と一緒に先発する、これは母親が自分で志願して役目を引き受けてくれた。
 その後、本命の荒川功樹が一台だけで出発し別ルートを行く。本命の警護は一台だけとはいえ上空には航空自衛軍のステルス攻撃機が旋回しながら上空待機している。このタイプは地上襲撃機なので比較的広域を守ることができ、さらに通るルート上には各所に偽装装甲車が配備されている。

「こちら、特1。囮の出荷を確認」

予定通りに荒川美紀が先発した、こちらも本命を確保しにいく。

「功樹君だね? さぁ、学院に行こう」

 そう彼に話しかけると、だまって車に乗り込んできた。普通なら俺のような外見の人間をみたらなにかしらの反応示すのに、無言なのだ……。それどころか、両脇を男に囲まれて車に乗るのが嫌なのだろう。イラついているのを示すように貧乏ゆすりをしている。
 彼の機嫌を損ねても困る。明日からは情報部に頼み込んである程度腕の立つ女性隊員を派遣してもらおう…………。









----山本香 視点----

 なんでこうなったの! 私は叫ぶのこらえながら学院の中を走り回っていた。警護班から荒川功樹の到着の報告を受けた時、担当の人間は事の重大性を認識していなかったようで向かう場所だけを告げて彼を捨て置いたのだ。私に報告が来た時彼はもうその場にいなかった。
 国連から直々に丁重に扱うようにと連絡が来ているのにとんでもない事をしでかしてくれたものだ……。しかも警護班からは今日の彼は機嫌が悪いと連絡がはいっている。下手をすれば学院内で腹いせに毒ガスでも撒きかねない!! やっと彼を見つけて走り寄り話しかけた時には、もはや私は手遅れだと感じた。振り返って私を確認した瞬間に怒りで目つきが変わったのだ、その目はまるで



迎えもよこさないのか?能無し共。



 そう言っているようだった……。私が

「ごめんなさいね、荒川君。こちらの手違いであなたを案内する人間が間に合わなかったの」

と謝っても彼は頷くだけで、たいした反応を示さない。必死に次の手を考えていると

「そちらの事情は理解しました。とりあえず僕はどうすればいいですか?あなたが案内してくれますか?」

 彼はこう言って来た、正直私は恐ろしくて拒否したい。彼と2人っきりになるなんて無理だ、だが彼の言い方は拒否を許さない……。それにこれ以上機嫌を損ねたら今晩私の家に間違いなく彼が作った巡航ミサイルが飛んでくる。私には笑顔で了承するしか選択肢はなかった。
 結局なにも良案が浮かばないまま自分の部屋についてしまう。こうなればやけだ……、私は後ろを振り返りできる限りの笑顔でこう言った。





「国際技術学院にようこそ、荒川功樹君。私が学院長の山本香よ」





----荒川功樹 視点----


「国際技術学院にようこそ、荒川功樹君。私が学院長の山本香よ」

 目の前の美人、いや学院長はそう言った。え、どうしよう? 俺学院長に案内させたのかよ? 絶対怒ってるだろ、なんでわざわざ私がこんな生徒相手にしないといけないんだ!とか絶対思ってる……。よし、とりあえず笑おう。幼い時から培って来た俺の奥義笑ってゴリ押す作戦だ!

「ありがとうございます学院長。改めて紹介させていただきます、荒川功樹です。これから3年間どうかよろしくお願いします」

 決まった! 俺は軽く微笑みながら言った。大丈夫、人間は笑顔を見せれば大抵どうにかなるはずだこれ迄そうだったし、これからもきっとそうだ!そう思いながら学院長の方を見ると……。うわーーー微妙、なんかミスった感じの空気感がヤバイ。
 例えるなら合コンでお目当て女の子に冗談ぽくメアド教えて? とか言ったときに『え?』って顔をされた時の空気に近い。学院長と俺、お互いに無言で相手の出方をうかがう……。しばらくしたのち凍りついた空間を壊すように学院長が声を出す。

「そ、そうだ。私功樹君に聞きたいことがあったのだけどいいかしら?」

 とりあえず助かった。こんな空気がずっと続いたら多分泣きながら家に帰るところだった。

「なんでしょうか」

 ここは相手の知りたいことを素直に教えてポイントを稼ぐところだ!美人の友達は美人が多い、それに相手はこれからお世話になる学院長だ少しでも好感を得なければ。

「あなたの事を少し教えてもらいたいの」

「俺の事? あ、いや失礼しました。僕のことですか、いいですよ」

 ふぁー! いきなり美人の学院長から『あなたの事を知りたい』なんて言われたからついびっくりして素で答えちまった!! まて俺、いやらしい顔をするな紳士だ。常に紳士の心構えだ顔を引き締めろ。

「いやならいいのよ」

 学院長があわてた様子で話しかけてきた。嫌なわけないじゃないですか! むしろご褒美です。なんですか? 俺の何が知りたいですか? 息が荒くなりそうにるのをこらえながら問いかけると学院長は少し考えるそぶりを見せながら質問してきた。

「あなた、12才の時に海岸から花火を打ち上げたわよね。アレは何をしたかったの?」

 ふむ……12才? そんな事したかな、というかむしろなんでそんな本人も覚えていないようなことをこの人は知ってるんだ?まぁいいか。とりあえずは思い出そう……。花火、花火……。あ!?アレか! たしか珍しくマッチョが家に居た時にアイツが仕事に使うとか言ってた組み立て式のロケット花火を見せてもらったんだっけ。
 アフリカやアマゾンなど未開の地に仕事にいくようなマッチョの事だ野生動物でも追い払う為に使うんだろうなって思いながら話半分で聞いているとどうやら、飛行高度が高い為すぐに発見されてしまうという問題があったようだ……。それを聞いてから試しに海岸で打ち上げたら80メートルくらいの高さで飛んでいった、たしかにこの高さで飛んだら見つかるわなって思い母さんに相談した所、速度を上げて高度下げたらいいといわれたので、『こんな感じ?』と適当に花火の形と飛んでいる姿をスケッチして渡したら半年くらいで新しい花火を作ってくれた。
 天才の母さんが作ってくれたのは時速1200キロで高度2メートル以下を飛んで自動で障害物を避けるという代物だった。ためしに再び海岸で打ち上げたらものすごい勢いで水平線の彼方に消えていった……。そういえば、あの日の夜やたらと戦闘機だと思う光が飛んでいたのが印象的だったな。それを教えると学院長は感心したように頷いていた。よし、マッチョという碌な人間じゃない父親のために一肌脱いで母さんに頼み込むという息子の鏡の様な俺の心遣いに関心したんだな!これはポイントが高いぞ。

「じゃ、13才の時に自宅の庭から打ち上げたのは?」

 えーと確かそれは、マッチョの仕事仲間の女性が地球が見たいって言い出したのが始まりなんだよな、いつもマッチョがお世話になっているから母さんに相談して前に作ったロケット花火を更に改良してもらったんだ。
 んで、これまた母さんお手製の小型の人工衛星を乗っけて飛ばした。その時の女性は後から衛星から送られてくる青い地球の映像をみてよろこんでくれた『とても細かいところまで良く見える!』なんて興奮してくれたもんな、頑張っただけあったよホント。ちなみにその衛星以外に母さんに内緒で2回ほどロケット花火である物を打ち上げてあるがそれは内緒だ……。

「衛星の他に打ち上げたものは教えてくれないの?」

 だめだ、アレだけはダメだ! 絶対に教えることはできない……。そんな聞きたそうに目を潤ませようが絶対に教えないぞ!! どうにかして興味をそらさなければ。そんな時、ノックの音が聞こえた



「学院長、そろそろ入学式が始まるお時間です。」

 ちょうどいいタイミングで学院長を呼ぶグラマラスな金髪のお姉さまが入ってきた……。






----山本香 視点----

「国際技術学院にようこそ、荒川功樹君。私が学院長の山本香よ」

私がそう言うと彼はまるでせせら笑うかのように

「ありがとうございます学院長。改めて紹介させていただきます、荒川功樹です。これから3年間どうかよろしくお願いします」

と返して来たその表情と場の空気は明らかに


それくらい知っている。貴様はそんな事も理解していないのか?馬鹿な女だな……


と訴えてくる。どうにかしてこの無言の空間を壊さなければ……。私は必死に打開策を考えそして実行してから後悔した。

「そ、そうだ。私功樹君に聞きたいことがあったのだけどいいかしら?」

 私は何を言っているのだろう。うまく回らない頭で自分が何を言っているのかよく理解できない。彼は目だけは笑っていない表情で私に続きをうながしてくる……。まるで悪魔の囁きに従うように私は次の言葉を口にしてしまった。

「あなたの事を少し教えてもらいたいの」

 口にしてから、はっとする。私は今なんて言ったのだ! 目の前の青年に恐らくはもっとも言ってはいけない言葉を口にしてしまったのだ彼の方をみると厳しい顔しながら肯定してくれた。
 ここで止めたほうがいいのではないか? 心の中にそんな考えがよぎる。だがすでに私の中では研究者としての探究心が膨れ上がり押さえがきかなくなってしまっている。悪魔の子……。この青年はそう呼ばれているのを改めて思い出した。これ以上話を聞いたら私はもう後には引けなくなるだろう、そして私もこの青年の本当の姿を隠す歯車のひとつになるのだ。だがそれでもいいそれよりも私は事実が知りたい。

「あなた、12才の時に海岸から花火を打ち上げたわよね。アレは何をしたかったの?」

 そう聞くと、彼はにこやかに教えてくれた。彼の父親が使う巡航ミサイルの欠点に対する相談を受けて試しに発射してみたところ彼の水準ではとても実用に適さない物だったらしい。そこで彼は改良型の設計を行い母親に製作を依頼し作らせた……。出来上がったミサイルは今までの物を凌駕する性能だったようだ。彼は自衛軍が威信をかけて行った必死の迎撃をまるで子供が騒いでいる程度にしか考えていないようだ。その証拠に


あの日は戦闘機の光が印象的でした。


なんて言っている。五月蝿いハエどもがいくら群がってもどうすることもできないという自信の表れなのだろう。私は研究者として自分が作った物に対する絶対の自信に感心して頷くばかりだ。更に私は13才の時に打ち上げたロケットに関しても聞いてみる。


 どうやら庭から打ち上げたロケットはどうやらスパイ衛星だったようだ。父親の同僚、それもスパイ衛星をほしがるとするならば恐らく国連軍の情報部関係の人間だろう……。その人間が『とても細かいところまで良く見える!』なんて言うのだからその性能は考えるまでもなく既存の衛星の性能から大きく逸脱しているはずだ。
 だが3回打ち上げたはず、私はそのことについて聞くと彼は直ぐに秘密だと言った。こころなしか少しあわてている様にも見える、そして小声であんなモノがばれたら終わりだと口走っている。彼程の人間があわてる内容で尚且つ、宇宙にまで飛ばさないと隠せないもの……。ひとつだけ私の中に考えが浮かんだ。




『ウイルス兵器』


 間違いないだろう。感染力が高いのか致死性が高いのか、恐らくその両方だろうが地球上で管理できないようなウイルスを宇宙空間に捨てたのだ。私は泣きそうになった、彼は人間が管理できないような物すら平気で作り上げるのだ……。これは倫理的な教育だけでどうにかなるのだろうか?そう思い彼の方を見ていると



「学院長、そろそろ入学式が始まるお時間です」

彼のクラスを担当する予定のロベルタ・スカーレットが入室してきた。






----ロベルタ 視点----

 2人を案内しながらわたくしは隣を歩く青年を横目で眺める。とても不思議な人です、大抵の男性はわたくしの胸を凝視するのにこの人はそんな素振りはみせません。それどころかまるで、わたくしなんか興味ないように歩いています。こんな事は初めてで少し戸惑ってしまいました、ですがまさか『胸をみないのですか?』なんていえる訳もなく案内を続けます。この青年はわたくしが受け持つクラスに入ると学院長に言われていますが、まだどんな子なのか良くわかりません……。この時間で少しでも理解できたらなんて事も思いましたがどう話かけて良いか分からないまま会場についてしまいました。
 そのまま彼を席に案内してわたくしは自分の席に向かいました。はたして、わたくしはこのような感じで1年間彼のような生徒の指導ができるのでしょうか? 不安でなりません…………。
3月1日、統合しました。
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