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異世界に転生したんだけど俺、天才って勘違いされてない? <旧題  転生したんだけど俺なんか勘違いされてない?> 作者:にゅん

学院編 1年度 夏期休暇~新世界編~

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開戦

【異世界に転生したんだけど俺、天才って勘違いされてない?】第三巻、本日発売!!
----荒川功樹 視点----

 壁に掛かっている時計の針が午前零時を示すまで後10分、箱根基地の地下指令センターは張り詰めた空気が充満していた。だが仕方がない事だと思う、10分後にはノアは公式の記録上初めて軍事作戦を開始することになるのだ。
 目標は南極・新世界本部基地。ロシア連邦軍、メルカヴァ・ウルスナ義勇軍と協力してこれを強襲する。母さんは3日前に国連に新世界に対する武力制裁を行う旨の通知を行っている。それにノアチャンネルでもプロパガンダ放送を…………。

「お、ツモった」

「またお前かよ! イカサマしてんじゃねぇのか?」

「あ? てめぇが弱いだけだろうが」

「なんだとコラァ?」

 またかよ……。最近、暇つぶしに麻雀を覚えたチェルノボグの隊員たちは一局終わるごとに喧嘩になる。正直なところ最近の改造のせいで半数以上が人外の外見になってきた彼らの喧嘩を止める勇気は俺にはない。というか作戦センターで麻雀をしていたから隣のここに隔離されたのを理解していないのか? 思わずため息を吐きながら隣で静かに腕を組んでいる大尉に声をかける。

「大尉、どうにかなりませんか?」

「指揮官殿、緊張をほぐすのも必要な事だ。だが、まぁ少し気を抜き過ぎか……」

 大尉は少し考えるように殴り合いをしている隊員を眺めると、おもむろにホルスターから銃を抜きスライドを後退させた、そして静かに、怒っている風もなく数を数えた。

「5、4、3、2、────」

 その姿をみた隊員たちは慌てて敬礼すると雀卓をしまう。まぁ多分、0で大尉は本気で撃つつもりだったんだろうな。今の彼らなら拳銃弾くらいなら頭に食らわない限り致命傷にならないし。

「ありがとうございます。聞くまでもない事だと思いますが、本隊の準備の方は?」

「完了してある。もっとも我々は上陸作戦に参加するのだから海軍次第だがな。本当にノアの艦隊は新世界の潜水艦部隊に勝てるのか?」

「厳しい戦いになるとは思います。ノア艦隊が囮になっている間にどれだけクラーケン族が頑張ってくれるかにかかっていますね」

 作戦開始とともにノアの艦隊は新世界の防衛ラインだと思わる海域に突入する。その時に予測される敵潜水艦からの攻撃をクラーケンと共に排除、制海権を奪取したのち簡易の転移ゲートを展開して俺たち地上部隊が上陸する流れになっている。

「それともう一つ……、先日お話した件については?」

「それも大丈夫だ。【我々】はお前の部隊だ。敵施設に侵入後はそれとなく偽の情報を流してノアの妨害をする。だが、本当に実行するのか?」

「えぇそのため虚数兵器です。それにしても僕に付き合ってくれる対価が本当にアレでいいのですか?」

「うむ。それで充分だ」

 この前、大尉の部屋に呼ばれた時に俺はあるお願いした。大尉はそれについて不服そうな表情をしていたが協力を約束してくれたのだ。そしてその代わりにチェルノボグの指揮官として要求された対価は────。

「結婚の自由……、そんことに許可なんて必要なんですかね。隊員の中にG-88でいい人でもできた方でもいるのですか?」

「何人かはいるようだが、むしろ結婚するのは私だ。この戦いが終わったらアントンと一緒になる」

「えっ?」

「あいつはいい男だ。私だって好いた男と添い遂げたいさ」

 そうか、アントンさんがどうしてユリヤ大尉の為に命を懸けたのか謎が解けた。そして多分このままだと大尉は間違いなく死ぬ。絶対に死ぬ。出撃前に【この戦いが終わったら結婚する】なんて【この戦いで死にます】と同義だ。フラグが立ちまくっている。問題はどうやって回避するか………。

「大尉、アントンさんに作戦終了まで絶対に箱根基地を出ないように厳命してください。たとえどのような事があっても絶対にです。必要ならば僕からも指揮官命令として命令書をだします。最悪の場合は営倉で監禁しても結構です」

「了解した。だがなぜだ?」

 不思議そうな顔で問いかけてくる大尉を無視して俺は必死に考える。とりあえずこれで何かの拍子に巻き込まれたアントンさんをかばって死ぬという事態は回避できると思う。というか普通ならアントンさんと大尉が逆だろうが! ヒロインをかばって死ぬのが主人公であって、なんでヒロインが戦場にいくんだよ!? とりあえず撃たれた主人公が助かる原因はなんだ? ヒロインの祈りで復活とかがあるけどアントンさんはG-88世界の住人じゃないから却下だな……。あとはお守りか?

「大尉、アントンさんは煙草を吸いましたよね? オイルライターを借りてきて胸ポケットに入れておいて下さい。それとその上からきちんと防弾服を着用する事を命令します」

「……なるほどな。お前が繰り返し経験した未来では今の私、アントンとの結婚を夢見てる私は【死ぬ】のか」

 いえ、勘違いしているところ悪いですが違います。でも今はその考えの方が都合がいいな……。ここはもっともらしく深刻な表情をしておこう。

「必ず回避します。ですから指示に従ってください」

「了解した指揮官殿。少しアントンの所に行ってくるがすぐ戻る」

 踵をかえして部屋を出ていった大尉を見送りながら時計を見ると零時20秒前だった。指令センターのメインスクリーンにはノア艦隊が海上を航行している姿が映し出されていた。他の画面には各艦の艦橋からの映像やレーダーが表示されている。旗艦にはマッチョと一緒にメルカヴァとウルスナの術者達もコンが創った魔力が込めてある宝石を手にして乗っている。
 大丈夫だ、きっとうまいくし予定通りに進むはずだ。一度深呼吸して再び顔を上げると丁度時計が午前零時を示した────。
ユリヤ大尉の死亡フラグを全力で回避するぜ(`・ω・´)
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