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異世界に転生したんだけど俺、天才って勘違いされてない? <旧題  転生したんだけど俺なんか勘違いされてない?> 作者:にゅん

序章

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決定

----荒川美紀 視点----

 功樹に軍用スーツを使って庭の草むしりをするのをやめさせる通信をしてから私は溜息をついた。けして功樹の暴挙についてではない、いや多少はそれもあるが主にこれから行なわれる会議についてだ。結論から言うと私の功樹を守るという行為は失敗に終わっていた。
 まさかあの子が自宅に兵器を使用するなど夢にも思っていなかったのだ。あの事件の時は修一さんと部下の皆さんが迅速に行動してくれたおかげでたいした被害はでなかったが、一歩間違えれば大量の人命を失う事態になっていただろう。結局、修一さんは上層部に内密の情報提供者として功樹の秘密を打ちあけた。
 その時の狂態といったら見物だった……。それはそうだろう、今まで私の発表した新理論や兵器システム、医薬品のすべてが幼い子供によって作られたものなのだから。その当時は社会的な混乱を避ける為に内容は明るみに出ることはなかった。だが事実は功樹という優秀な人材をどの国が所有するか? という問題で危うく武力衝突が起きそうになったのが原因だったのだ。
 そして今日の国連からの呼び出し……。恐らく功樹の行く末が決まったのだ、どうなるのかはまだわからない。だが、もしかしたら世界は功樹を危険とみなし排除するかもしれない。もしそのような決定が下ったら私はもてる限りの権力で対抗する、修一さんも同じように行動すると約束してくれている。修一さんの部下の中にも……母としては本当に不服だが主に女性隊員に功樹を守ろうとしてくれる人もいる。恐らく修一さんの部隊は武装蜂起することになるだろう、だがそれでも私は息子を守る。その決意を胸に会議室の扉を開いた……。




----合衆国大統領 ウイリアム・オールド 視点----


 会議室に一人の女性が入ってくる。恐らくこの会議がどのような内容を決める場なのかを理解しているであろうに、真っ直ぐに前を向き自信と誇りに満ちた歩きで証言台の前まできた。これが、『アラカワ ミキ』か……。悪魔の子と名高い『アラカワ コウキ』の手綱を握り、コントロールしてきた女性。ほぼすべての著名な研究機関に名をおき、各国の最重要軍事機密を作り上げた女性。『魔王アラカワ ミキ』……。彼女が一声かけるだけで彼女を信望する学者がどれだけの人数動くのだろうか?
 また夫である『アラカワ シュウイチ』も只者ではない、彼と彼の部下達は決して表には出てこない、出せないような極秘作戦を成功させ小国とはいえ一部隊で国家を落としたこともある化け物達だ。合衆国のような大国とは言え『アラカワ ファミリー』を敵に回したらいったいどれほどの損害がでるのだろうか?
 私は内心の不安と今にでも逆流してきそうな胃の痛みに耐えながら、なるべく明るい声でアラカワ女史に話しかけた。

「よく来ていただけました、アラカワ女史。多忙な中、ご足労いただきありがとうございます。」

 女史は片眉を僅かにあげ、軽く目礼しただけだった。いや、もうちょっとなんかあるだろう!!!! いいの? ここお前の息子の将来が決まる場所なんだけど? もう少し愛想よくしてもいいと思うよ。というか怖いんだけどそんな虫をみるような目でみないで! あ、吐きそう。国民と世界のプレッシャーで吐きそう……。ロシアの首相も真面目な顔してるけど机の下では足震えてるよ?中国の主席なんかさっきからやたら水飲んでるし、ねぇお願い誰か司会かわって! じゃないとこの会議終わるころには胃に穴開くんだけど。
え?なんで皆目そらすの……。いかん、落ち着け。

「どのようなご用件で私を召喚なされたのですか?」

 まずい! 女史はご立腹のようだ、あわてて言葉を紡ぐ

「御子息の扱いについての処置がきまったのでご報告したいとおもいます」

 あ、終わった……。女史の顔が本物の魔王の様になっている。愛する娘メアリー、パパは帰れそうにありません。この極東の地で眠りにつくことになります、パパが居なくてもママの言うこと良く聞いて……

「その前に、私から少しよろしいでしょうか?」

 もう殺されるのだろうか、まだ娘に渡す手紙の内容を考え終わっていないのだがここで口を挟むと手紙を書く事すら許されなくなりそうなので先を促す。

「ありがとうございます、まずは可能性の話をしたいと思います。もし功樹が本気で技術開発をおこなったら自宅の台所においてあるような物で永久機関を作り上げたり、スーパーで買えるものを使って私が作った核融合炉の能力をはるかに超えた物を作れるとおもいます」

 うむ、それはそうだろう。なんていっても彼の凄いところは既存の物を使って改良してしまうところだ。通常なら鼻で笑うところだが彼ならば本当にやりかねない。

「で、あるならば功樹が世界に見捨てられたと感じた場合どのような事をするでしょうか?」

 む、我々が彼を見捨てる? 何をいっているのだ……。もはや彼が居ないと世界の技術は停滞してしまうかもしれないところまできているのにそんな貴重な彼を我々が見捨てる?

「もしも、皆さんが愚かな判断を下し功樹を消そうとした場合」

 そうか! まずい、女史は何かを勘違いしている! このままでは大変なことになると予測した私は真剣な声で女史の言葉に割って入った。




----荒川美紀 視点----

「もしも、皆さんが愚かな判断を下し功樹を消そうとした場合」

 私が決意と同時に次の言葉を出そうとした瞬間大統領が手で制しながら割って入ってきた。

「私には7歳になる娘がいる。名前はメアリー、とても可愛いくて私の自慢の娘だ」

 突然そんなこと言い出した。今の状況となにか関係があるのだろうか? 私はだまって先を促す

「だが先月、小児ガンを患っていることがわかった。私達家族は絶望の淵に立たされた……。可愛いメアリーが何故こんな病気になってしまったんだと神を恨んだ」

 珍しいことではない、どの家庭でも起こりえる事態だ。だがもし功樹がそのような病気になった時私ははたして冷静でいられるだろうか?

「しかし、メアリーは4日後に完治した。偶然にも最寄の病院に新型の医療用ポッドが配備されていたからだ」

 そういえば、抗癌用の医療ポッドが民間に配備され始めたと聞く。恐らく大統領の娘は運よくソレを使う機会があったのだろう、だが今は功樹の処置についてでメアリーは関係ない。私は苛立ちと同時に口を挟もうとして、押し黙った……。

「その医療用ポッドの名前は『Type-ARAKAWA』。女史……、貴女の御子息が考案したものだよ。確かに御子息を悪魔と呼ぶ声があるのは否定しない、だが私の家族の中では間違いなく彼は天使だ。そして世界中の人間は多少なりとも彼の作り出した物にかかわって生きている、今更我々は彼を排除して生きていくことなどできないのだよ。もっとも、これは醜い人間の考え方であり天使である彼には迷惑なのかもしれないがね」

 私は希望が見えた気がした。世界は功樹を見捨てるのではく受け入れるのではないか? そしてそれは次の言葉で確信にかわる。

「それでは決定事項を読み上げます」

 大統領はそれまでの父親の表情ではなく会議の進行役としての顔に戻して書類を読み上げた。

「国連加盟国は『アラカワ コウキ』に対し国家として干渉する事を禁止する。また個人の意思を尊重し、いずれどの国に所属しようと妨害を行なわないことを明記する。しかしながら『アラカワ コウキ』は倫理観に問題ありとされるため、高等教育から日本にある『国際科学技術学院』に入学させ科学者、研究者としての倫理観を育成させる事とする」















この日、表の歴史書には載らない重要な条約が発行された。すべての国連加盟国がサインした条約は「アラカワ条約」という。



2102年1月4日 アラカワ条約、即日発効。


それは、世界が功樹を受け入れた記念すべき日だった。
3月1日、編集完了
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