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異世界に転生したんだけど俺、天才って勘違いされてない? <旧題  転生したんだけど俺なんか勘違いされてない?> 作者:にゅん

序章

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現在

 とまぁ、いろんな事があったんだわ。歴史の説明必要だっただろ? しかし母さんはすげーわ。俺のいたずら書きからヒントを得て新理論は完成させるわ俺の書いたパワースーツの絵から発想を飛ばして新型の核融合炉を作ってみせたり、はたまた新型航空機の設計をしてみたりといろんな分野で多才すぎてる。
 そろそろ新量子学の母じゃなくて創造物の母なんて声も聞こえてきそうだ。でもな、なにが一番すげーと言うとこんだけの事してるのに基本的に家に居ることなんだよな……。その分オヤジは家にいないけどなこの前はアフリカに行くとかいって家でてったし。少しは母さんを見習って家に居ろよ。この前母さんに

「父さんってあんまり家にいないよね?」

ってきいたら苦笑いしたぞ? そのうち離婚されんじゃねーの。まぁ、今日は母さんも家に居ないけどな。なんか重要な会議があるとかなんとか言ってたけど眠くてあんまり話聞いてなかったわ、ごめんよ母さん。しかし暇だな……。昔から父さんがいつ家に帰ってくるかわからんから家に誰か居ないといけないという我が家の約束ごとがある。
 正直面倒だが母さんが家を空けるときは必ず俺が家に居ないといけないんだよな……。まぁ友達いないから別に構わないけど。……かまわないけど。あ、涙でそう。


 家の中の掃除も終わったし、たまには家の庭の草むしりでもしてやろうかな?広いからチマチマやらないと直ぐ伸びてしまう。前に一度だけネットで見た家庭で作れるお手軽除草剤っていうやつを作って撒いてみたら、雑草どころか庭の草すべてが枯れて大変なことになった事があって、それから手でむしるようになった。母さんが父さんに電話して業者の人が庭の土ごと入れ替えたもんな。あの時はじめて父さんに怒られたんじゃなかったけ?

「お前の才能はわかったから住宅地でこういうことはやめろ!」

とか言ってたな。才能ってなんだよ……どうせ失敗作しか作れないっていう嫌味か! あのゴリマッチョ野郎、母さんがいないとき帰ってきたら復讐がてら下剤入りの飯を食わせてやる。
 さて、うちの庭は広い。それはもう広い。昔の武家屋敷の庭を想像してもらいたいアレくらいある。同じように家もそれなりデカイ、もちろん母さんの稼ぎがヤバイからだ。なんだって特許は200種類以上、さまざまな研究機関からは名前だけでも名簿に書かせてくれと泣き付いて来るほど引っ張りだこだ。母さんが所属するだけで融資額が3倍以上に膨れ上がるからそりゃ泣き付くわな。ちなみに言うと父さんの稼ぎは微妙らしい母さんいわく

「お父さんはお金は稼がないけど国連で人の為になる仕事をしているのよ」

らしい……。もう息子はその優しさに感動すら覚えたよ! ほんとあのマッチョに母さんはもったいないな。どーせマッチョの事だ国連っていっても下請けの下請けあたりで荷物でも運んでんだろ? アフリカに行くって言ってたしVIP職員の肉壁位には役立つだろ。
 あ、話がそれすぎた、さっさと庭の草むしりでもするか。そうだ! このまえ母さんと一緒に作った作業用のパワースーツを試してみよう、最近こういった労働用のパワースーツも一般家庭で使われるようになってきている。もちろんこのタイプは母さんお手製の万能タイプだけどな。これ着たまま料理とか細かい作業までできる優れもので、恐らく母さんはいずれはどんな人でもパワースーツを動かせるようにするためにプロトタイプとして製作したんだと思う。うむ、装着感はばっちりだ! さーて雑草よ、覚悟はいいか?

「ピピピ! ピピピ!」

 気持ち良く草むしりしていると個人端末から通信がはいった。お、母さんからかだ……

「こ、こうちゃん……。今なにしてるの?」

 なぜか少し困った声でそう問いかけられた。素直に庭の草むしりをしていると答えると

「う……うん。草むしりはいいから家の中でテレビでも見てていいのよ。今日は、こうちゃんが好きな自然のドキュメンタリーが放送するはずよ」

 マジか!? この世界の自然は俺が居た世界とは違い絶滅した動物たちがまだ生息している。俺はそんな動物が好きだ、それに環境が違うせいなのか見たこともない生き物も存在している、そんな生き物を特集してくれるドキュメンタリーは大好きで子供のころからよくみていた。そんな放送を母さんは家の手伝いなんかしなくていいから、みなさいと言ってくれる。さすが優しい俺の自慢の母さんだ! 俺はお礼を言ってから通信を切って、いそいそとパワースーツを仕舞い家に入ろうとしてふと、庭の隅に目が止まった。
 珍しい鳥がいる……。もっと近くに寄って観察しようとした瞬間飛んでいってしまった。俺は首をすくめながら家に入るのだった。







----ルイス・コールマン 視点----

 私が隊長の御子息、いや……私達が隊長の御子息の護衛と監視任務に就いたのは4年ほど前だっただろうか? 切欠は、御子息が起こしたある事件だった。なんと自宅の庭の雑草が気に入らないという理由だけで、庭に猛毒の混合枯葉剤を散布したのだ。しかもそれをホームセンターで買えるような市販の薬品を使用して作ったのだ。
 それをみた奥様は直ぐに隊長に通信を送ってきた。隊長は大至急、対化学兵器装備を持つ班に出動準備をさせた。我々は笑っていた演習にしたってもっとマシな言い訳があるだろうと……。わざわざ民間業者に偽装したトラックで現場に行くと目の前には地獄があった、散布から数時間しかたっていないのに庭は一面茶色に変色して、装置で汚染度を計測すると中心部は触れただけで即死するような濃度だったのだ。それなのに御子息はまるでいたずらがばれたような顔していた。理解できるだろうか? この幼い子供は、その気になれば都市を壊滅させるだけの兵器を作りそれを使用したのだ。
 この事件は隊長から国連の上層部に提出され、恐らく高度な政治的判断によりもみ消された。しかし我々には御子息の護衛ともう二度とこのような事態を起こさないように監視任務が言い渡されていた。もちろん表向きは、母の数式の発見者であり、新量子学の母である奥様……荒川美紀の護衛という名目である。


 そんな御子息は今、庭に出てきている。どうやら草むしりをするようだ、あの事件のあとは薬品などは使用せずに単純な肉体労働で抜くように隊長からきつく言われたらしく今日もそうだろう…………。






と思っていた……。思いたかった……。


 御子息は倉庫からパワースーツを装着して出てきた。ただのパワースーツなら別に構わない、労働用のパワースーツなら一般家庭でも普及している。がアレは……。










「第6世代の軍用スーツ……。」




 私は思わずめまいがした。正面から主力戦車を殴るだけで撃破し、ミサイルの直撃を受けようが搭乗者を保護する生存性、単独で一個戦闘師団と互角に戦う兵器。まちがっても庭の草むしりに使用する物ではない。そもそもなんであんなものが一般家庭にあるのだ? いや、この家は一般家庭ではないかもしれないが、アレは研究所においておくようなものだ。私は隊長に通信を送った……。もうこれは私ではどうにもならない。

「隊長……、私です」

 もはや力の入らない声で隊長に呼びかける。しばらくノイズが入っていたがやがて隊長の声が聞こえる。

「おう? どうした?」

 馬鹿に明るい声で隊長が答えてきた……そうかたしか今、隊長はアフリカでVIPの警護という名目のバカンス中か。別にアンタは現場に出ないだろうに。

「御子息が庭の草むしりをしています。パワースーツで」

 隊長は笑いながらそれがどうした? というような返答を返してきた。挙句に息子自慢が始まる、だがこれを聞いてもそのまま能天気な馬鹿父ではいられないだろう……。


「御子息は軍用スーツ、正確には試作型第6世代スーツを装着しています」

 隊長は一瞬で笑うのをやめ、妻に通信を送ると言って通信をきった。最後に、御子息が街にでるようであれば体をはって止めろと私に指示して。いったいどうしろいうのだ? 戦車を軽く撃破するような相手に生身でどうすればいいのだ? 私が、必死に方法を考えていると御子息がスーツを解除した。どうやら奥様から御子息に連絡が伝わったようだ。そのままいそいそと家に入ろうとして、止まった。そして……




こちらをじっと見つめている。




 私は恐怖で心臓が止まりそうだった。普段は母親の言うことをよく聞くいい子を演じているのかもしれないが、間違いなく御子息は自分の家の庭に戸惑いもなく兵器を使用するような方だ。そのような方が自分の行いを止められたらどう出る? 殺されるのか……。
 いや、しかし私の今の姿は肉眼で目視できないように光学迷彩を使用している。ばれているはずがない……そもそも私が隊長に連絡したことなんて知られるはずもない。
 だが本当にいいきれるのか? もしかしてあの軍用スーツには通信を傍受する機能があるのではないか。いや、まさか……。私の頭の中ではめまぐるしくどうすれば最良なのかという考えが浮かんでいた。その時御子息が一歩踏み込んできた!


殺される……。


 私はそう思いすべてをあきらめた。しかしなにもおきない、ゆっくりと目をあけて御子息を見ると首をすくめて家に入るところだった。生き残った、戦場でもないのに私の胸にはそんな思いが渦巻いていた。恐らく御子息はほんのちょっと私を脅かしたかったのだろう。だが、私は無様に怯えてしまった。国連軍特殊部隊で数々の修羅場をくぐり抜けたはずなのに……。きっと御子息はこう思ったんだろう、所詮その程度かと。
 だがそれでもいい、とりあえずは生きている実感を味わいながら腹が立つ程晴れている空を眺めた。
3月1日、編集完了
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