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異世界に転生したんだけど俺、天才って勘違いされてない? <旧題  転生したんだけど俺なんか勘違いされてない?> 作者:にゅん

学院編 1年度 夏期休暇~新世界編~

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脱出

 お待たせしました。再び正常モードに戻ったにゅんでございます。ちょっと短めですがどんな内容だったか思い出しつつご覧になってください。
手動で更新しました、予約投稿の時間が18時に設定されていました。申し訳ありません。
----荒川功樹 視点----

 端末を操作して登録済みのアドレスからクレア・ドーントレスの名前を選択してコールボタンを押す。間違いなくブチ切れながら領空ギリギリで待機している筈なんだが……、どう言い訳しようか。

『……はい。クレアです』

 言い分けの内容を考えていると声が聞こえてきた。どうやら想定よりかなり早くクレアさんは応答してくれたようだ。物凄い不機嫌そうな表情をしているが視線は心配そうに俺の方を見つめている。
 よし、これなら全力で小鹿のように震えながら謝ったら許してくれる筈だ。少なくとも麻酔銃で撃たれる心配はない。

「クレアさん、ご心配をお掛けしました。今後はこのような事はしないと約束します」

『まったく……。そんな所だけ隊長にそっくりですね、そんな風に謝られたら怒る事ができないじゃないですか。まぁ、帰ってきたら美紀さんに厳しく言われると思うので私の方からは何も言いません』

 良かった───、母さんと違ってクレアさんは怒りだすと無表情で徹底的に相手の心を折る作業にはいるから怖すぎるんだよ。

『ただし、アントン! 貴方は別です。いいですか? 貴方の仕事は功樹を含める子供達を暗殺から守るのが仕事です。それなのに自ら危険な場所に連れて行くとはどういうつもりですか? 自分の職務に責任を持ちなさい!! そもそもですね───』

「クレアさん、ロシア側にこちらの声が聞かれているので今はその辺にして下さい。とりあえず迎えに来て欲しいのですが……、僕がロシアに来た時に降ろされた空軍基地に来てもらえますか? さすがに民間の飛行場に武装したノアの航空機は降ろせないと思います」

 クレアさんにそう言いながら中佐の顔を窺うと、中佐も大きく頷いている。やはり中佐というかロシア側もその辺りの心配はしていたが言い出せなかったのか。

『分かりました、それでは現時刻をもってロシア領空に入ります。到着予定時刻は約1時間20分後ですので……、え? 少々お待ち下さい』

 端末に映るクレアさんは耳に着けているヘッドセットに向かって何かを問いかけている。それに今までは通常の照明だった機内も仄暗い赤色の照明に切り替わったようだが、なにかあったのか? カメラの範囲外に退避していたアントンさんも眉間に皺を寄せて画面を凝視している。

『功樹君、残念ですがそちらには行けません』

「……はい?」

『時間が無いので端的に説明しますから理解できない場合はアントンに質問してください。現在私達は高度1万3000メートルを飛行中ですがUnknownに捕捉されました。こちらからの通信に反応なし、またIFFにも反応はありません。先程UnknownからAAMの発射を確認、現在回避行動をとっていますが恐らく撃墜されます。よって功樹君とアントンは自力でロシア国内から脱出を行ってもらいます。手段は問いませんのでアントンは全力で功樹君を護衛しノア本部・箱根基地に帰還しなさい。以上通信終了』

 どういう事だ? クレアさんが乗っている輸送機が攻撃されたって事か? なんでそんな事になるんだよ、今さっきの話し合いでロシア側は俺の提案に賛成しただろ。攻撃をかける必要なんて……、まさかっ!?

「アントンさん!! この部屋にも襲撃の───」

 俺が話しかけるよりもアントンさんの太い腕に掴まれてそのデカイ背中の後ろに隠されるほうが早かった。滅茶苦茶頼りになりそうなのだが、ぶっちゃけ手に持ってるその小さな拳銃だけでどうにかなるのか? そんな事を考えていると、アントンさんが恐らく安全装置を解除したカチッという音と共に低い声で中佐に話しかけた。

「聞こえていたと思いますが、我々を迎えにきた輸送機が攻撃を受けました。あなた方がそのような行動をする意味が無いのは理解していますが、こちらとしては万が一の可能性も排除して置きたい……。現在の状況にロシア政府は関与しているのですか?」

「落ち着け少尉補。先程、政府から公式にアラカワさんを保護して日本に送りとどけるように命令が下った。つまり我々は一切関知していない事になる。これは恐らく新世界の犯行だ」

 やっぱりか……、ロシア側の攻撃じゃないなら残る選択肢は新世界しかない。というか新世界のヤツラは何処まで浸透しているんだよ? 俺がここにいるのなんて政府高官くらいしか知らないんだぞ、むしろ目的はなんだよ。俺を殺すのが目的なのか何かしらの情報を引き出したいのかまったく理解できん。
 とりあえずこの部屋からは出たほうがいいだろう、どこか安全な所は───。頭の中で今後の予定を考えていると今度は突然室内の明かりが消えて部屋が暗くなる。

「アントンさん停電ですか?」

「違うこのレベルの建物で予備電力に切り替わらないなんて事はあり得ない、人為的に明かりが落とされたんだ。功樹君、カーテンは掛かっているが絶対に窓には近づかないでくれ……狙撃される可能性がある。中佐! このホテルの防衛能力は?」

「30階の警備ルームには内務省の特殊部隊が詰めている。地下と正面玄関にはパワースーツ一個分隊5機が展開してるからそうそう突破されるとは思えん」

 中佐の話を聞く分には救援が来るまで持ち堪えるのも出来そうだが、俺はそれよりも先程から『全く反応しなくなった』個人端末が気になる。どのボタンを押しても画面は黒いままでスリープモード中に聞こえる筈の微かな駆動音も聞こえない。完全に機能が停止しているとしか考えられない状態だ。 徐々に暗闇に慣れてきた目を凝らすと、アントンさんの端末と中佐の腰につけている端末も同じように起動中を示す緑のライトが消えているので機能停止中だと判断してもいいだろう。

「アントンさんマズイです。恐らく下に居る特殊部隊の個人火器もパワースーツも機能しませんよ」

「どういう事だい!?」

「母さんお手製の魔改造端末が機能していません、それにアントンさんや中佐の持っている端末もです。ECMに対抗措置をしてある僕の端末を無効化したという事は単なるジャミングとは考えられません。恐らくEMP攻撃です……、正規軍が使用する火器に装着が義務付けられている個人識別用装置も破壊されている可能性があります。同じようにパワースーツも無力化されている可能性が高いです」

 ノアもマッチョの提案で対EMP用の装備が導入されているがアホみたいにコストが掛かるので母さんが頭を抱えていたのを覚えている。最新鋭の機材を扱っている一企業の私設軍隊ですらそれなのに、精鋭でもない国内警備専門のロシア軍部隊には配備されていないだろう。つまり俺達は200年近く前から形が変わっていない小型の旧式自動拳銃一丁でこの場を脱出しなければならないという訳だ。

「どうしますか?」

「功樹君1人でここを脱出してもらう。キミはロシア語を話せるから俺が付いていかなくても平気だね? 良いかい、ホテルを脱出したら自力でこのメモに書いてあるアパートに行くんだ。そこには万が一に備えて友人に頼んでおいた偽造パスポートと必要になる筈の現金が置いてある。それを手に入れたら───」

「ちょ、ちょっと待ってください! 俺だけなんて無理ですよ!? それにアントンさんはどうするんですか」

「功樹君!! 時間がないんだ黙って聞いてくれ……。それを手に入れたら列車でフィンランド国境を目指すんだよ。絶対に東側に向かっては駄目だ、逆側のフィンランドだからね? それにチケットを買うときも絶対に現金を使うんだ。クレジットを使うと間違いなく敵に捕捉される。フィンランドに着いたらメモに書いてある2個目の住所に向かうと良い。そこはノアのセーフハウスだからそこから救助を頼める。分かったね? この拳銃も持っていって良いから絶対に逃げ切ってくれ」

 そう言いながらアントンさんは俺に拳銃を渡してくる。俺の手には大きくずっしりと重い拳銃をベルトの間に押し込んで上着で隠すと、アントンさんは俺の頭を撫でながら諭すように口を開いた。

「大丈夫だよ、功樹君はノア島で対市街地用の射撃訓練もしただろう? 今回は戦わないでただ逃げるだけなんだから余裕さ」

「分かりました。ですが、そもそもどうやってホテルから脱出するんですか?」

 まさかダストシュートから逃げ出せなんていわないよな……、ここは83階だから逃げ出す前に死んでしまう。そんな事を考えていると中佐が這いよってきて俺に話し掛けてきた。

「このホテルの裏側には大きな河が流れています、水深は15メートル前後ありますから無稼動状態のパワースーツでも十分に衝撃は吸収できる筈です。この階にある緊急用スーツを手動で装着して河に飛び込んでください。アラカワタイプなのでスーツは炸薬点火でパージ出来ます。点火装置には半導体は使われて居ないのでEMP影響下でも使用できるでしょう。私も装着を手伝いますのでどうぞこちらへ」

 中佐に誘導されながら慎重に扉を開けて外を確認しながら廊下にでると、中佐は飾ってある絵画を外して後ろに隠してあったレバーを下げた。恐らくわざと旧式の装置にして信頼性を高めてあったと思われるレバーは、正常に起動して壁が持ちあがりパワースーツが目の前に現れた。

「『ロシア軍第5世代機・ミラーシ』です。本来ならば稼動状態でアラカワさんに装着して頂きたいですが今回はそうも行きませんね。ぜひ次は稼動状態で装着して性能に驚いて下さい」

 中佐は笑いながら冗談ともこの状況に対する皮肉とも取れる事を言っているが、ロシア語で蜃気楼を意味するミラーシと呼ばれるパワースーツはもし稼動可能な状態であるなら、簡単に敵を撃破してくれそうな力強さを感じられる重装機だ。
 横にある専用の工具でコックピット部分を強制開放させるとユーリさんとアントンさんが押さえている内に俺が乗り込みベルトを付ける。ついでに今回は使用しないがHUDが内蔵されているヘルメットを被り、通常の装着手順通りにサムズアップすると外部からゆっくりと開放部が‏閉じられた。

『アラカワさん、10秒カウントした後でホテルから強制射出します。恐らくですが背中側から着水するので衝撃に備えてください! 恥ずかしながら我国にどれだけ新世界の協力者がいるか分かりません。公的機関は全て潜在的な敵と考えてください……、少尉補からも説明があったと思いますがどうにかして逃げ切って下さい───。どうかご無事で』

「了解しました!! ですから中佐もユーリさんもアントンさんも無理せずに投降して下さい」

『……カウント開始! 10、9、8、7』

「聞いてますか!? 約束ですよ!!」

『3、2、1、射出!!』

 俺の言葉に返答が無いまま爆発音が聞こえ一瞬だけ浮遊間感を味わった後、背中から地上に向かって猛烈な速度で落下しているのが分かった。正直に言って怖くて泣きそうだがそれよりもアントンさんやクレアさん達の方が心配でやり切れない。
 絶対に助けにいくから無事で居て欲しい……、そんな事を考えているとどうやら無事に着水した俺は凄まじい衝撃と共にスーツごと水中へと沈んでいった───。
 急展開を迎えたアリス計画編です。ぶっちゃけこの後に続く視点を入れようかどうかガチで30分程悩んだ結果入れないという選択になりました。(。・ω・。) 次回はきっと予想できない展開となりますのでお楽しみにして下さい。

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