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異世界に転生したんだけど俺、天才って勘違いされてない? <旧題  転生したんだけど俺なんか勘違いされてない?> 作者:にゅん

学院編 1年度 夏期休暇~新世界編~

53/77

最初の一歩は3人で

今年も宜しくお願いいたします! (`・ω・´)

どうでもいい事ですが今日は作者の誕生日です。(*/∇\*)
----荒川功樹 視点----

蓋を開けたソーダを飲みながら転生する前の日本で流行っていた『サブカルチャー文化』の説明をなるべく分かりやすいようにすると、信吾は難しい顔をしながら質問をしてくる。

「でもさ、あくまでアニメって子供向けでしょ? それをいきなり広めようって言っても無理なんじゃない」

「うん、それは分かっている。だから最初の一歩はキャラクター画っていうかポスターみたいな絵を売り出すところから始めようと思う」

「『絵』ねぇ……、でもイメージが分からなかったら誰も描けないよ。まさか功樹が描くの?」

「そうだよ、僕が描く。信吾にお願いしたいのは描いた絵をネットオークションで競売にかけて欲しいんだ。もしそれが売れたら本格的な行動に移るから僕に投資して欲しい」

信吾の言う通りで最初の一枚目は俺が描かないと周りにイメージが伝わらないから、なんとしてでも俺が頑張らないといけない。まぁ……、母さんからもらったクリエーションプログラムや最近は簡単な設計図もある程度は描けるようになったから、意外とどうにかなるだろ。
問題は何に描くかだよな───。ただの紙だと味気ないし、キャンバスを使うとなると水張りだっけか? アレをしないといけないし専用の道具もない。箱根基地で簡単に手に入って尚且つ物珍しい素材となるとパワースーツの正面装甲だな。
スクラップ置き場に転がっている廃棄用の装甲を白く塗ってから絵を描いて、描き終わったら上からコーティング溶液を吹きかければお手軽に高耐久のポスターがでっち上げれる。

「フヒ! 分かったよ。じゃあオークションでも反応を見てから投資するかどうか決めるね」

「それで良いよ。じゃあとりあえずお試しで絵を描いてみるからキャンバス代わりのスーツの正面装甲を拾いに行こうぜ! ついでに塗料と装甲を加工する道具も借りにいかないと」

「え……、スーツの装甲に描くの!? 怒られないそれ?」

「大丈夫だって、もともとスクラップだし最初は派手な素材を使って人目を引いたほうが効果的だしさ。おい、コンもいくぞ!」

心配そうな表情で問いかけてくる信吾に返事をしながら、食べかけのチョコを咥えてトコトコと走ってくるコンを抱きかかえて部屋を出る用意しているとインターホンの音が聞こえてきた。アリス達が帰ってくるのには早い時間だしマッチョや母さんはノア島にいる。
他に俺の部屋を訪ねてくるような人間は居ない筈なんだが一体誰だ? 内心で疑問を抱き返事をしながら扉を開けると、厳つい顔したスキンヘッドのオッサンが立っていた。

「あ、お久しぶりです。どうかしました?」

久しぶりに顔をみたスキンヘッドさんは、俺の質問に苦笑しながら答えてくる。

「いや、これといった用事は無いんだけどね。しいて言うなら巡回だよ、女史のほうからも偶に功樹君の様子を見るように頼まれているからさ。ところでどっかに出かける所だったのかい?」

上着を羽織って外にでる準備をしていた俺達の様子をみて疑問に思ったスキンヘッドさんが質問してくるが、正直にスクラップ置き場に行くと言うべきか悩む。というより『どうしてスクラップ置き場に行くのか?』と聞かれたときに理由を説明するのが面倒なだけなんだが……、言わずにおいて後からバレた時に面倒な事になりそうな予感がするな。そんな事を考えていると勝手に信吾がスキンヘッドの質問に返答していた。

「フヒ! 第3階層にあるスクラップ置き場に行こうかなって思ってたところです。功樹が絵を描くのにスーツの正面装甲を使うらしいのでそれを回収しにいきます」

「ははっ、絵を描くのに装甲板を使うとは……なんとも功樹君らしいな。しかしどんな絵を描くんだい?」

「あー、それは歩きながら説明しますよ。最初から説明すると結構長くなりますし実際に描いたものを見てもらったほうが早いです」

「そうか、ならご一緒させてもらおうかな」

しょうがない、面倒だけどスキンヘッドさんに説明しながらスクラップ置き場に向かうか。ポジティブに考えると保護者役の人間が居たほうが道具を借りる時もスムーズにいくだろうしな。俺は信吾にした説明をもう一度しないといけないことに多少うんざりしながらコンを抱え直して部屋の外に出た───。




廊下を歩きながらスキンヘッドさんにアニメや漫画の事だけではなく、サブカルチャー文化というこの世界には無い概念を教えていると眉を顰めながらポツリと口を開いた。

「なぁ、功樹君が言っているのはこういう感じのモノかい?」

そう言いながら自分の持っている個人端末を見せてきたが、俺はそのデスクトップに表示されている画像をみて絶句した。俺の感覚では多少古い……、元の世界でいう所の1980年代風のロリバニーガールのキャラクター画像がデスクトップに表示されていたのだ。
まさか俺が知らなかっただけで意外とこういうのは広まっているのか? そんな疑問を抱きながら慌ててスキンヘッドさんに質問する。

「これどうしたんですか? もしかしてこういうの専門に扱っている交流サイトとかあったりしますか」

「いや、これはね……。その……、俺が描いたんだ」

「はぁ!?」

待て待て! 目の前にいる確実に何人か邪魔者を消してそうなオッサンがコレを描いただと? 絶対嘘だろ。 むしろスキンヘッドさんはこういうの興味がない部類の人間なんじゃないのか。俺と信吾が呆然とした顔で眺めているとオッサンは慌てたように顔の前で両手を振りながら喋り始めた。

「待ってくれ! 功樹君達が何を勘違いしているかは分からんが決して俺が少女趣味というか小さい女の子が好きなわけじゃないぞ! いやまぁ、嫌いなわけではないがそれも変な意味じゃなくて『可愛い』という意味で好きなだけだ」

「分かりましたから落ち着いてください! 廊下で『小さい女の子が!』なんて大きな声で喋ってたら只の不審者ですよ」

「あぁ、すまない。柄にも無くちょっと慌ててしまった。とりあえず説明するから信吾君、そんな犯罪者を見るような目で俺を見るのをやめてくれないか?」

確かに信吾の方を見ると完全に犯罪者を見るような目でオッサンを眺めている。しかも手は端末を操作して……って、あの画面は保安部の回線に直通している緊急用の通報画面じゃないか!? 

「おい! 信吾、とりあえず話を聞こうよ。通報はそれからでいいだろ」

「フヒ!? ごめん。なんか反射的にヤバイと思った」

俺の言葉に信吾はハッと我に返り、保安部に通報するのを思いとどまってくれた。よし、じゃあ気を取り直してオッサンの言い訳……もとい説明を聞くか。俺は目線で話を続きを促す。

「俺はもともとロシア軍に所属していたんだ、最終軍歴は外務省直属の特殊部隊だが一番最初は空軍所属だったんだよ。そこで航空機のノーズペイント───、戦闘機とかにパイロットが独自に自分用のパーソナルマークを描くんだけどソレを描く部署に居た事があってね。それで絵が描けるようになったんだ」

「なるほど、絵が描ける理由はわかりましたけどなんで『小さい女の子』の絵をデスクトップに?」

「うん? あー、軍隊っていうの今も昔も男の比率が高くてさペイント自体もセクシーな美女とかの注文が多かったんだ。でも俺はセクシーよりは可愛い系の女の子が好きでね、それで今も小さい女の子を俺のパーソナルマークにしているんだ」

結局はアンタの趣味じゃねーか! 否定はしねぇけどやっぱり保安部に通報したほうが良いんじゃないのか? 完全に紳士の顔しながら自分の趣味を熱弁してくるオッサンを眺めながら判断に迷っていると、信吾が呆れたように声をだした。

「人の趣味はそれぞれだからボクからはなんとも言えないけど、絵が描けるなら功樹の作業を手伝ってもらったら?」

ふむ、確かに言われてみればそれもそうだな。俺がイメージしている絵とオッサンの描く絵だと多少違うからどっちがこの世界の人達に受けが良いかの指標になる。
それになんだかんだオッサンも絵をかいたりするのが好きなようだし、サブカルチャー文化への理解もあるから案外と同士になってくれるかもしれんな。俺はそう判断して、オッサンを仲間に加える為に部屋で信吾に言った言葉をもう一度繰り返す事にした───。






----スキンヘッド 視点----


少し離れたところでパワースーツのスクラップを漁っている功樹君と信吾君を眺めながら、手元の個人端末を操作する。今朝方に届いた女史からのメールには『そろそろ息子が何かをやらかす頃なので厳重に見張って置いてください』と記載されていたが、まさか本当に行動を起こすなんて思っていなかった。
 息子の行動を先読みできる女史を褒めるというべきか、それとも父親の修一さんに似て常日頃から問題行動を起こしているから簡単に行動を先読みされる功樹君を諌めるべきか……判断に迷う所だな。

「しかし、『僕と一緒に新しい文化を創りましょう』なんて言われるとは思っても見なかったな」

 今年で35になる俺が自分の半分をやっと生きたくらいの少年の言葉で胸が熱くなるなんて焼きが回ったのかもしれんな。俺には大した才能はない……、修一さんやゴースト隊の隊員のような武勇がある訳でもないし、女史や他の研究員のように頭が良い訳でもない。
 ただ一般人よりは軍事的なスキルが身についているがそれにしたって箱根基地では下から数えたほうが早い筈だ。このまま大多数の人間に埋もれたまま歳を取って忘れ去られていく───、そう思っていた。ただ功樹君はそんな俺に夢を見せてくれた。

『スキンヘッドさんの絵の才能は今僕が一番必要としている才能です! いっしょに新しい事をやってみませんか? 失敗したところで何も変わりませんが、もしも成功したら歴史に名前が残ります。男ならでっかく夢を見てみませんか?』

 そう言って歳相応の汚れていない笑顔を見せる功樹君はとても眩しかった。でっかい夢か……、いつから夢をみなくなっただろうか? 軍にはいった時か、いやそれより前に俺はいろんな事を諦めていた。そんな俺がもう一度だけ最後にでっかい夢を見ることなどゆるされるのか。
 そんな事を内心で自問自答していると丁度良い大きさの装甲板を見つけた功樹君が近寄ってきた。

「スキンヘッドさん! ちょうど良い感じに未塗装の装甲を見つけましたよ。大きさも良い感じなんで直接これに描いちゃいましょう! 今までの思いをぶつけて好きな絵を好きなように描きなぐって下さい」

 功樹君に笑顔で手渡された装甲板は予め表面を白く塗られたプロトタイプ用の装甲だった。たしかにこれだと白く塗る必要はないな、しかし好きな絵を描いていいと言われても一体何を描いていいのか分からんぞ。
 暫く悩んでから功樹君にどんな絵を描けばいいのかを聞こうとして俺は固まった。彼が自分の装甲板に描いていたのは日本独自の民族衣装『着物』を着飾った可憐な黒髪の女の子だったのだが、その頭の上には狐の耳が描かれている。

「なんて……可愛い女の子なんだ」

「ありがとうございます。スキンヘッドさんも自分の好きな絵を描いて良いんですよ? ここにはこういうのが好きな人間しかいないですから、恥ずかしがらないで自分の趣味全開で描いてください」

 自分の趣味か……、なら前々から考えていたアレを描こう! 絵のタッチは功樹君の真似をしつつ装甲板の大きさをフルに使って絵を描くことを覚えてからずっと暖めていたアノ絵を描いてやる! きっと今の俺なら過去に描いたどんな絵よりも上手く描ける筈だ。
 そう考えて一心不乱に自分の装甲板に絵を描き続けていると、ふと人の気配がして下げていた頭をあげる。

「随分と集中してましたね。僕の方は描きあがりましたけど、スキンヘッドさんはどうです?」

 功樹君が笑いながら俺にそう問いかけてくるが、もうそんなに時間がたったのだろうか? 疑問に思い個人端末で時間を確認すると驚いた事に描き始めてから3時間も経過していた。

「すまない。熱中していて思ったより時間が掛かってしまったが、もう完成するよ」

「フヒ……、これは───。功樹、これ凄いとしか言えない絵だね」

「あぁ、まさかこんなにレベルが高い絵を描けるなんて想像してなかった」

 俺の絵を見た2人が口々に褒めてくれるが、なんとなく恥ずかしくて思わず絵を手で覆ってしまった。そんな俺の姿みて功樹君が苦笑しながら質問してくる。

「最初に説明したように絵はオークションにかけますが、その絵の題名は何にしますか? まぁ相応しい題名は1つしか想像できませんけど」

「そうだね『月光の少女』なんてどうかな」

 初めて得た同士とも言える少年達2人に自分の中の最高傑作といえる作品の題名を告げると、2人は『最高の名前だと思います』と言ってくれた。年甲斐もなく自分の顔が赤くなるのを感じながら改めて絵をみるが、やはり今までで最高の出来だと思う。これならもしかしたら高値で売れるかもしれない。
 もし……、もし仮にこの絵が売れたら俺の人生で最後の一度だけでっかい夢を見よう。功樹君と信吾君と俺でこの世界に名前を残すようなでっかい事をしてみよう。俺は絵の中から『月の光に照らされて微笑んでいる少女』を見つめながらそう心に決めた。



 メールで頂いたご指摘の通りに、くどい言い回しをなるべく止めてお話に直接関係のない文章をカットするように推敲したらボリュームが減った……。それに何か寂しいような気がする(´・ω・`)

やっぱりいつも通りの方がいいですかね?


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