挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異世界に転生したんだけど俺、天才って勘違いされてない? <旧題  転生したんだけど俺なんか勘違いされてない?> 作者:にゅん

序章

4/77

状況確認

「おめでとうございます! 元気な男の子ですよ」

 視界が弾けた瞬間そんな事言われた気がした。は? え、なに? 多少取り乱しつつ周りを確認する……。頭の上にある無影照明、緑色のリノリウムの床。手術着をきた女性……。病院、ソレも手術室か? やはり俺は植物状態だったのか。
 事故をおこしてから初めて目がさめたのか? なんで俺は持ち上げられているんだ? 成人男性を待ち上げられるほどこの女性は腕力が高いのか?いや……まさか……。

 俺の中で最悪の事態を想像した。

 まさか……事故が原因で手足を失ったのか? それなら体重はかなり減るはずだがまさか……って! さっきからいてーーんだよ! ババァ!! なんで人のケツをバシバシ叩いてんだよ。いい加減殴るぞこらぁ!

「先生この子、声を上げません!」

 看護師と思われる女性(声からして中年)がしきりに俺のケツを叩いてくる。ババァに叩かれて嬉しそうに声を上げる趣味なんてこっちはねーーんだよ! 隣に居た女医と思われる女性もこっちをじっと見つめながら指示を出している。

 なんだよ! なんだってんだよ! 今俺は状況確認で忙しいんだよ!

 ついに今度は女医が俺のケツを叩き始めた。あ、ちょっと何かに目覚めそう……。いや、落ち着け俺、超落ち着け。そうじゃない、そうじゃないんだ。その間もケツは叩かれている。わかったよ……わかった……

「おぎゃーー!おぎゃーー!(わかったっていってんだろうが!!!)」

 そう非科学的すぎて、あのまどろみの空間でも結論がだせなかった可能性。あまりにも荒唐無稽で小説の中だけだろうと思っていたおとぎばなし。



俺、転生したみたいだわ。


「はい、お母さん。だっこしてあげて」

 女医から俺の母親と思われる女性に抱き渡された。おい! 優しく持てよ! 生まれたての小鳥の雛を触るようにだ! そんな力を入れんな。大丈夫だ!ふむ……コイツが……いやこの人が俺の母親か? 飛びぬけて美人でもないがかといってブスでもない普通の女性だ。ただなんか優しそうな顔をしてる。それもそうか、俺はこの人の子供になるのだから我が子を抱いて鬼の様な顔をする女性もいないだろう。む? なんか困ったような表情になったぞ? あーそうか俺がなんにも反応しないから不安になったのか、
 どうするかなこういう時どうしたらいいか良くわからないな。とりあえず笑っておくか……

「きゃい、きゃい」

 お、笑った!母さん笑ったぞ! よし、どうやらこれで正解だったようだ。しかしこれからどーすっかな。考えてもどうしようもないのは理解できるが精神的には大人だからどうしても考えてしまう。とりあえずケツも痛いし泣いて疲れたから少し眠るか。
 次におきた時にはもっと周りを観察してみよう……。

「~~~♪~~~♪」


 ふと、声が聞こえて目が覚めた。やたら暖かくて気持ちいい。これはまどろみの中に居た時の感じだ、あーそうか! あれは母さんのお腹の中だったのか……なるほどそりゃー居心地いいわ。だって俺専用の空間だもんな。ん? まだ声が聞こえるな目をあけると微笑みながら母さんが俺を抱きしめ歌を歌っていた。これは……ドイツ語か? 発音は悪いが聞き取れる。子守歌か、それに近いものだろう。もともと知っている歌だったのかそれとも生まれてくる俺のために覚えたのか……。お礼もいえないし、拍手もできない。ここはとりあえず笑っておくか。

「きゃい♪きゃい♪」

 よし! 嬉しそうに笑ったぞ! どうだ? 母さんの顔が嬉しそうだ。よしとりあえずはなんかあったら笑う方針にしよう。人間笑顔をみせれば大抵のことはどうにかなる!……はず!
 しばらく母さんの歌聞きながらうとうとしているとノックの音が聞こえてきた。ふむ……どうやら個室らしいな。生まれたばかりの子供と母親を個室に入れるとするなら相当手間が掛かるはずだ手間=金。ということはある程度金銭的には不自由していない環境のようだな。世の中金があれば良いという問題でもないがあるならあるほうがいい。
 んで、誰このおっさん? やたらなれなれしく俺に触るけど、ちょっと痛い。痛い。いてーーーーって馬鹿かよ? 生まれたばかりの子供にかける力じゃねーだろほらみろ! 母さんが怒ってる。おい……そんな小さくなるなよ。どんだけ母さんに怒られたのがショックなんだよ。話してる内容を聞く限りどうやら父親らしいな。さっきも来たが俺は寝てたのか。悪かったなオヤジよ。しょうがないから抱っこされてる状況だったのでサービスとしてネクタイのあたりに顔を擦り寄ってやった。お、嬉しそうな顔して抱きしめてくる。痛い。痛い。母さん痛い! 助けてくれ!


「おぎゃーー! おぎゃーー!!!」

 ちょっと痛そうに泣いてやった。無様なオヤジはまたしても母さんに怒られてやがる。ざまーみろ!しかし体力がないなこの体は……すこし泣いたらまた眠くなってきた……。次はもう少し起きていた……い。





-----荒川美紀 視点-----

 妊娠がわかってから、私はずっと不安だった。母になることがではない、無事に産んであげることができるかということにだった。元々私は妊娠が望めない体だった。おそらくほんの30年前までくらいなら不可能といっていい状態しかし今の医療技術なら不可能ではなかった。夫の修一さんとも何度も相談した。修一さんは子供はいらない、ただ私にそばにいて欲しいと言ってくれた……。涙がでるほど嬉しかったが私はやはり2人の愛の結晶が欲しかった。
 修一さんにわがままを言って最先端の医療を受けた結果私に命が宿った。とても嬉しくて。いとおしくて、お腹が大きくなるにつれて日に何度もお腹をなでてしまった。そして今日、やっとこの子が生まれてくるのだ。陣痛の痛みに耐えて功樹が誕生した瞬間。私は凍りついた。

「先生この子、声を上げません!」

看護士の滝川さんが必死に功樹のお尻を叩くが、功樹は声を上げない。ピンッと手術室の空気が張り詰めたのが私にもわかった。

「先生!お願いします。どうか、子供を功樹を助けてください!!!」

 私の声はきちんと聞こえただろうか? きっと不安と功樹を亡くす恐怖でうまく声になっていないのではないだろうか? 先生が功樹を抱きしめながらお尻を叩いた時、初めて声を上げた。私は安心と疲れで気が遠くなるのを感じたが我が子を抱きしめるまでそれはできない。

「はい、お母さん。だっこしてあげて」

私は初めて功樹を抱きしめて…………凍りついた。












なんだ、この目は子供の目じゃない……。まるで黒い丸い穴が開いているような目。まるで実験対象を観察するような、感情のない目。
 ゾワリ…………と肌に鳥肌がたった。心の奥を掴まれるような気持ちの悪い感情が私の中を埋め尽くしていった。私が恐怖に負け、功樹を投げ捨てそうになった瞬間。

「きゃい、きゃい」

 功樹が笑った。無邪気に私を母親だと認めているかのような笑い。私はハッとした、同時に自己嫌悪にもなった。ほんの数瞬前まで私はこの子になんて感情を抱いたんだろう。一生懸命生まれてきて、今も必死に生きようとしているこの子に最愛の我が子に気持ち悪いなどという感情を感じてしまった。私がぎこちない笑顔で笑いかけるとソレを感じたのか功樹はそのまま私の腕の中で眠ってしまった。私はこの時に決心した。たとえこの世界が功樹を否定しても私は功樹を守り続ける。母親として絶対この子を悲しませたりしないという事を。



 眠る功樹を抱きしめながら歌を歌う。この子のために必死で覚えた優しい歌詞の子守歌だ。腕の中の功樹の息遣いが変わった……どうやら起きたようだ。声が大きかったのだろうか? そう思い顔を覗き込むと


「きゃい♪きゃい♪」

 まるでもっと歌って! って言うような笑い声だった、産まれて間もないこの子にドイツ語の歌詞などわかるはずもないのに……私はよりいっそう心をこめて歌うのだった。


3月1日、編集完了
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ