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異世界に転生したんだけど俺、天才って勘違いされてない? <旧題  転生したんだけど俺なんか勘違いされてない?> 作者:にゅん

学院編 1年度 夏期休暇~異世界編~

39/77

政治工作班、交渉せよ!

 今回は少し長いです、いつもの約1.5倍です。どうか最後までご覧下さい。
----荒川功樹 視点----

「方位0-0-1より、砦へ出向いていたスーツが帰還してきます」

「了解、後部第2ハッチに着艦させろ。誘導員は準備急げ」

 陸上戦艦アリスの薄暗い青色の明かりが灯された戦闘指揮所(CIC)では、オペレーターの言葉に艦長が指示を出している。確か、あの艦長はトルストイの艦長だった筈だ。なんで陸上戦艦なんてモノに乗艦して指揮をしているのだ? そんな事をぼんやりと考えていると、艦長は自分の席から立ち上がって『俺の方』に歩いてくると敬礼しながら話しかけてきた。

「閣下、偵察員が帰還しました。予定通り1時間後にアリスは発進致しますが、宜しいですか?」

「お任せします」

 俺の言葉に敬礼して戻っていく艦長を眺めていると、今度はクレアさんが話しかけてくる。

「閣下、まだ時間があります。お飲み物はいかがですか?」

「そうですね、貰います」

 笑顔で『準備いたします』と去っていくクレアさんの後ろ姿を眺めながら、俺は自分の椅子の背もたれに頭を預ける。眼下では30人程のCIC要員が忙しそうに動き回っているが、何も仕事をしていない俺に文句を言ってくる人間は居ない。凄まじい程の居心地の悪さを感じていると、コーヒーを持ったクレアさんが帰ってきた。

「熱いので、お気をつけください」

 渡されたコーヒーを飲むと、芳醇な香りが広がりリラックスできた。腕につけている端末で時間を確認するとノア島を出発してから既に4時間経っている事が分かったので、そろそろこの状況にツッコミを入れても良いだろう。

「クレアさん、少し良いですか?」

「はい、なんでしょうか」

「どうして僕は提督席に座らされているのですか?」

 クレアさんは、変な事を聞かれた時のように首を傾げながら答えてくる。

「功樹君……いえ、失礼しました。特務少将閣下は『将官』で在らせられます。提督席にお座りになるのは妥当な判断かと思われますが───、作戦開始まで自室でお休みになられますか?」

「いえ、ここで良いです。それと変な事を聞いて申し訳ないです、仕事に戻ってください」

 俺の言葉にクレアさんは『2番艦クレア』と連絡を取る為に通信装置の操作を始めた。だが、そうじゃねぇ。そういう意味じゃねぇんだよ! 俺が言いたいのは、何で俺が1番艦の提督席に座って先遣隊2万5千名の総司令官に就いているのか? って事に文句を言いたいんだよ! しかも誰もその事について疑問視しないとかおかしくねぇか。俺が今から『全軍、砦に向かって総攻撃!』とか言ったら従うの!? 止めよう……これ以上考えだしたらキリが無くなる。
 母さん達が乗艦している2番艦からの連絡がくるまで、地球で録画してきた『海亀の生態』を記録したドキュメンタリーを見よう。決して現実逃避じゃない……、俺はそう心で言い訳をしてから端末で映像の再生を始めた。

「閣下、閣下?」

 海亀達が海に帰っていくシーンを見ているとクレアさんが話しかけて来た。どうやら結構時間が経っていたようだ、冷めたコーヒーを飲みながらクレアさんに顔を向けると現在の状況を報告をしてくれる。

「現在、2番艦が予定地点を通過しました。これにより1番艦には『所定の作戦行動を開始せよ』との通信が届いております。現時刻をもって1番艦アリスは発進。メルカヴァ王国の砦に向かいたいと思いますが、宜しいですか?」

「はい」

 俺の了解を得たクレアさんはそのまま艦長に復唱する。こういう指示を良く分かっていない俺は基本的に、『はい・いいえ・お任せ』の3択しかしないからな。クレアさんには世話を掛ける……、あっそうか! 副官役のクレアさんはお飾りの俺の穴埋めでこの艦に乗っているのか、やっと俺が提督席に座っている理由が分かった。
 なら俺が間違った指示を出したとしてもクレアさんが訂正するか反対してくれるな、今度何か聞かれた時は安心して発言してみよう。そんな事を考えていると艦長が発進準備を始めているのが目に入った。

「発進準備! 光学迷彩解除、機関起動せよ」

「機関起動、原子炉は出力35パーセントで安定しています。展開していた護衛のスーツ……収容完了、固定アンカー……回収完了、発進できます」

「良し、アリス発進せよ!」

 うぉぉ! 格好いいぞ、なんかこう前世で見たアニメの中に入ってきたみたいだ。身を乗り出して興奮していると艦長がストップウォッチを見せながら俺に話しかけてきた。

「閣下、機関完全停止状態から発進まで98秒です。いかかでしょうか?」

「素晴らしいと思います。皆さん良く訓練されていますね」

 速さに関しては良く分からないが、艦長が笑顔で言ってくるのだから褒めるべき速度なのだろう。取り合えずベタ褒めしてクレアさんの方を見ると笑顔で頷いているのが見えた、良し良し……どうやら正解だったようだ。
 それに先ほど考えたクレアさんが『俺の穴埋め』というのも間違っていないようだな。俺は自分の勘が冴え渡っている事に満足しながらコーヒーのお代わりを頼んだ。

「報告! 砦前に王国側騎士団が展開しています。数およそ8000、拡大します」

 1時間程コーヒーを飲みながら座っているとCIC要員が報告してくる。内容に思わず驚きそうになるが拡大された映像を見て落ち着きを取り戻した。 確かに数が多いが展開している騎士団は全員ピカピカに磨き上げられた甲冑を着て、騎士団の旗と王国の旗をはためかせている。多分俺達の到着を待っていた儀仗兵達だろう、一瞬でも戦争を仕掛けてくるかと思った自分が恥ずかしい。

「閣下、どう致しましょうか?」

 クレアさんが俺に質問してくるが抜かりは無い! 今までの俺なら『どうしよう?』とか言いながらオロオロするところだが、今回は予習してきた。母さんに『部屋でゆっくりしてて良い』と言われてから、外交儀礼を受けた場合に相手の儀仗兵達に返礼する方法をちゃんと調べてきたのだ。
 マッチョが砦内部で地球のマナーを使ってクロヴィエンスさんと対等に接していたのだから、他の地球のマナーも適応されると思う。確か……儀仗兵が整列している時に他国の戦闘艦が行う返礼は『祝砲21発を発射する』だったよな。一度全砲門を空にする事で『交戦する意思は無い』とアピールする必要がある筈だ、俺はクレアさんに自分の考えを伝える。

「クレアさん、空に向かって主砲を正射4連。弾種は空砲で良いです、空砲は準備してありますよね?」

 アリスには26センチ3連装砲が2門搭載されているので、正射4連で24発だから3発多いが多い分には構わないだろう。

「は、はい。空砲で宜しいですね、艦長! 空に向かって主砲正射4連。弾種は空砲」

 うむ、クレアさんも特に反対しないという事は判断は正しかったようだ。美人さんに賢いところをアピールできて上機嫌の俺は、ニコニコ顔でCICの人達の作業を見守る事にした。




----アリス型陸上戦艦 艦長 ディラン視点----

 ノア島に元トルストイの乗組員達が集結してから15日後、私は今乗艦している『アリス型陸上戦艦・1番艦アリス』の艦長に就任する事が人事部から通達された。最初は陸上戦艦など大層な名前が付いているデカイ戦車くらいにしか考えて居なかったが、功樹君が発案したと聞いて内心期待していた。 その巨体からノア島ではなく、大陸に新しく作られた最前線基地に転移してきたアリスを初めてみた時……私は驚愕した。戦略空母打撃群の旗艦とほぼ同等の大きさを持つアリスは、まさに陸上の戦艦と呼ぶのに相応しい姿だった。潜水艦乗りに過ぎなかった私にアリスの艦長は大任過ぎると、ノアの社長である荒川女史に直訴しに行ったが女史は笑いながら否定してきた。

「1番艦には功樹が乗艦する予定です。操艦には細心の注意を払って頂く必要がありますが、それは最新鋭の攻撃型原子力潜水艦を指揮していたディラン艦長と艦長の部下の皆さんにしか出来ないと考えています。夫とも相談しましたが最善の人事だと判断しています、どうか宜しくお願いします」

 そう言って頭を下げてくる女史に私は感極まって言葉が詰ってしまった。地球ではミサイル防衛技術の発達と核兵器の全面放棄により、攻撃型原潜は無用の長物と化している。その為に各国では無いよりは在った方が良いという位の認識しか持たれていない。
 我々が視界の無い深海でどれ程繊細な操艦技術を磨いても評価される事はないし、一般的な意見も潜水艦は弱者の兵器としか認識されていなかった。そんな中で女史は頭を下げて私に艦長への就任を頼み、更には功樹君を乗艦させるという栄誉まで与えてくれた。私は女史のその姿勢に、

「全身全霊を込めて、艦長を勤めさせていただきます」

と返答する事以外に答える術を持たなかった。そして今日初めて功樹君が乗艦している状況で作戦行動に出発したが、功樹君───閣下は何を聞いても『お任せします』としか反応が無かった。
 通常であれば、そんな態度に『ヤル気が無い』と私も部下達も反発する所だが、閣下とは救出作戦で協力体制を取った事があるのでそのような感情は沸かない。前の時のように、必要な時には自ら命令を下されると信じている。

「艦長! 現時刻をもって1番艦アリスは発進。メルカヴァ王国の砦に向え」

 通常の作業をしながらもそんな事を考えていると、閣下の副官であるクレア中佐が指示を出してきた。その指示に従いアリスの発進準備を整える。ストップウォッチで発進までの時間を計測していると、完了まで98秒という好成績だった。
 最初の頃は120秒を越えていたので今回の数値は満足する速度だ。そのままストップウォッチをリセットせずに閣下の所まで持っていき『98秒』だったと報告する。

「素晴らしいと思います。皆さん良く訓練されていますね」

 閣下は笑いながら我々の出した数値に満足して、お褒めの言葉を口にしてくれた。その言葉にCIC要員も嬉しそうに口元を緩めている、恥ずかしくないように厳しい訓練をこなした甲斐があったのだ! 私はコーヒーのお代わりを頼む閣下を姿を見つめてから指揮に戻ることにした。
 そのまま何事も無く1時間程移動したところで前方に砦が見えて来た。索敵員がカメラをズームして砦の様子を窺うと顔色を変えて報告してくる。

「報告! 砦前に王国側騎士団が展開しています。数およそ8000、拡大します」

 慌てて拡大された映像を確認すると、王国側の騎士団が陣形を組んで展開しているのが分かった。若い頃に興味で古代史を学んだ事があったが、確かあの布陣はローマ式陣形の『レギオー』ではないか? 
 既に王国側は戦闘準備に入っている様子だ。一旦撤退して後続隊に報告したほうがいいだろう、私はそう判断して閣下に意見具申を行おうとした所で部下に止められる。

「艦長、どうやら王国側は儀礼装備です。戦闘の意思が無いとも取れますが……難しいですね、撤退するにしても政治的な判断が必要になります」

 むぅ、困った。ここで撤退した場合王国側の圧力に屈した事になるが、素直に出向いた場合は攻撃される恐れがある。閣下のご判断に任せるか? そう考えて提督席に座る閣下を見守ろうとすると、中佐に向かって意外と早く指示を出されていた。

「クレアさん、空に向かって主砲を正射4連。弾種は空砲で良いです、空砲は準備してありますよね?」

「は、はい。空砲で宜しいですね、艦長! 空に向かって主砲正射4連。弾種は空砲」


 馬鹿な!? 威嚇射撃を行うというのか? 既に展開を終えている騎士団を前に威嚇射撃を行うなんて、下手をすれば王国側と即時開戦する可能性もある。そのような事態を把握しているのだろうか? 私は本当に射撃して良いのかもう一度確認を取ろうとして固まる。閣下は『楽しそうな笑顔』を浮かべていたのだ、なるほど……閣下にしてみればこのような事態は既に想定済みか。
 中佐も威嚇射撃の命令に戸惑ってはいるが、騎士団に向かって直接『榴弾』をブチ込めというような命令ではないので止めるつもりはないようだ。私は声を張り上げて射撃指揮官に命令する。

「主砲正射4連、発射用意! 弾種、空砲弾」

「艦体固定アンカー射出……固定完了! 随伴車両の危険域からの離脱を確認。目標、左舷上空40度に設定。発射用意良し」

「撃てぇ!!」

ドォォン! ドォォン!

 射撃を開始すると空砲弾とはいえ凄まじい衝撃が艦体を揺らす。大きさのわりに重量が比較的軽いアリス型は、艦体を固定するアンカーを地面に射出して砲撃を開始しなければ反動で浮き上がってしまう。よって行進間射撃は不可能なのだが、その欠点を埋めるのが後部に搭載されている40機のVLSだ。
 他にも主砲・VLS共に使用不可能になった時の為に『秘匿兵器』が搭載されているが、今回はそれらの出番は無いだろう。

「正射完了、砦正面を再びメインスクリーンに映します」

 映し出された映像には、展開していた王国側の騎士団が総崩れになって撤退している姿があった。その姿に満足していると黒色の甲冑を身に着けた騎士団だけは砦前面に止まっているのが分かり、その度胸に感服すると同時に黒色の騎士団の危険度を自分の中で上げて置く。

「閣下、次はどういたしますか?」

 私がそう聞くと、閣下は先程と変わらない笑顔で命令してくる。

「随伴しているパワースーツを向かわせて、砦に入る許可を貰ってください」

「主砲発射に対する説明はいかがしましょう?」

 威嚇射撃に対して王国側に言い訳が必要なのだが砲艦外交として押し通すつもりなのだろうか? まぁ先に圧力を掛けてきたのは向こうなのでそれで良い気もするが……。閣下の返答を待っていると、ニンマリと笑いながら口を開いた。

「僕の名前で『そちらの儀仗隊は大変見事でした。返礼として祝砲を送りました』と伝えてください」

 なるほど……完全に外交儀礼として押し通すのか、どうやら閣下は政治的なセンスも高いようだ。私は部下に指示を出しながら───、若く才能溢れる特務少将閣下がこの先どのような人生を送るのか想像を膨らませた。





----アドリエンヌ 視点ーーーー


 使者が帰った後、私とクロヴィエンスが止めるのも聞かずに馬鹿な貴族達が砦前に陣を構えると言い出した。必死に『相手を刺激しないで下さい!』と伝えるが白金騎士団と黒金騎士団以外はノアを見たことが無いので、私達を『臆病者』と罵るだけだ。
 このままではノアが訪れる前に、騎士団同士での争いが起こりそうだったので陛下が渋々ながらも砦前に展開する事を許可した。砦から出る前に、クロヴィエンスが私の近くまで歩み寄ってきて耳元で囁いた。

「もしもの場合は我々がノアを足止めします、その隙に姫様達と陛下は砦から退去して下さい。間違いなく勝つ事は出来ませんが……どうか遺言だと思って王都まで逃げ延びて下さい」

 そんな悲痛な覚悟と共に出撃していったクロヴィエンスを見送ってから暫くして、前方を遠見の魔法具で監視していた物見が声を張り上げる。

「砦正面より……や、山が近づいてきます!」

 山? どういう意味だろう? そう考えていると私の目にも大きなナニカが砦に向かってくるのが見て取れた。そしてその周りには小さな鉄の箱のようなモノが、馬にも地竜にも曳かれずに付き添うように移動している。

「アレは一体なに?」

 私が口に出すと、将軍であるオーギュストが震える声で説明をしてくれた。

「北の帝国では、『大砲』という名前の鉄の丸い弾を遠くに飛ばす武器があります。私も一度だけ実物を見た事がありますが、あの山と鉄の箱に付いているのは大砲に良く似ています。
 ですが大きさが比較になりません……ただでさえ大砲は威力が高い武器と聞いております、あれ程の大きさの大砲なら一体どれ位の威力があるものやら」

「もしアレが使われたら、騎士団はどうなりますか?」

「一撃で粉砕されるかと」

 やはり身を挺してでも騎士団の出撃を止めるべきだった。もしノアが展開している騎士団を儀仗兵ではなく敵だと認識したら王国は滅んでしまう! 私は今からでも騎士団を砦の中に戻そうと体の向きを変えた所で、オーギュストに抱きとめられる。

「姫様! 申し訳ありませんがご辛抱下さい。山に動きがあります」

 オーギュストが言った瞬間、ドォォン! ドォォン! と雷鳴を何倍も大きくしたような音が鳴り響いた。体が震える程の音が鳴り響く中でオーギュストの腕の中から山を見ると、音が鳴る度に山全体が炎に包まれていた。その姿はまるで騎士団の姿に怒り狂った山の神が咆哮を上げているように私の目には映った。

「判断を間違えたわ……。私達は完全に下手に出るべきだった」

 カシス姉様が悔しそうに言葉を漏らす。私の事を信用していなかった訳ではないだろうが、ノアがここまで圧倒的な戦力を準備しているなんて私も考えていなかった。ノアは最初から外交なんてするつもりは無いのだろう、恐らく今日か明日にでも王国に対して全面侵攻を開始する筈だ。
 まだ直接的な攻撃を受けた訳でも無いのに、総崩れになって砦へ撤退してくる騎士団を見ながら溜息が零れる。そんな中でも黒金騎士団だけは踏みとどまってノアと対峙しているが、数分も持たないで全滅する事だろう。

「山と箱の周囲からナニカが向かってきます!」

 物見の言葉にハッとしてノアの方を見ると、10人位のスーツを纏った兵士が黒金騎士団の方に向かって行くのが見えた。ここから騎士達が虐殺されるのを見る事になるのか? その光景を思い浮かべていると、想像とは違いノア側は騎士団の前方で止まって、この前見せた『降伏の合図』をしてからゆっくりと騎士団と接触した。

「開戦の文書でも渡して居るのかしら?」

 カシス姉様が不思議そうな顔して騎士団を見守っているが、少しして騎士の1人が砦に向かって走り始めた。取り合えず危険を考えて陛下には砦内部に留まって頂く事にして、私とカシス姉様だけで広場へと向かう事にした。私達が広場に来ると同時に伝令兵も到着して報告をしてくる。

「報告します、ノア側が砦に入る許可を求めています」

「許可? ノアの入城では無くて?」

 カシス姉様が心底疑問そうに伝令兵に聞き返す。私も同意見だ、降伏勧告や退去命令とは違うのか?

「はい、『許可』です。また先程の攻撃ですがアレは攻撃では無く、こちらの儀仗兵に対する返礼として行われた『祝砲』という儀式だそうです」

 返礼……間違いなく嫌味で言っているのは理解できる。簡単にノア側の言い分を纏めると『先程のは見逃してやるから、さっさと砦に入れろ。次は直接攻撃するぞ』と言いたいのだろう。
 取り合えず交渉できる可能性が見えたので早急に許可を出した方が良い、カシス姉様の方を窺うと同じ結論に至ったらしく伝令兵に指示を飛ばしていた。

「許可します、『お茶の準備をして待っています』と伝えてください」

「砦に入れる人数は何名まで許可しますか?」

 この伝令兵は馬鹿なのか? この状況で私達が注文を付けれると本当に思っているのだろうか。声を荒げそうになる寸前でカシス姉様が冷静に答える。

「『武装した状態で好きなだけ連れて来て構わない』と伝えてください」

 伝令兵は不服そうな顔をしながらも私達の指示を伝える為に前線へと戻っていった。これで良い、少なくとも時間を稼がなければ王国は成す術無く消滅してしまう。私はカシス姉様と共に広場でノアの面々を迎えるために陛下を呼びに戻った。




 半刻ほどしてから砦の正面に現れたノアは総勢200名だと告げてきた、その中央で陣取ってる例の悪魔を模した甲冑の中からコウキ様が降りてきて挨拶をしてくる。

「お久しぶりですね、アドリエンヌさん。初めてお会いする方も居るので改めて自己紹介します。コウキ・アラカワと言います、どうぞ宜しく」

「神聖メルカヴァ王国、国王のカルロスです」

「同じく、第1王女のカシスと申します」

 カシス姉様は兎も角、陛下までもが敬語を使った事に驚いた。やはり陛下自身も存亡の危機だと認識しているのだろう、最大限の敬意を払って接している。私はお互いの挨拶が済んだところで『お茶の準備が整っています』と案内をしようとしたが、コウキ様に止められる。

「待って下さい。申し訳ありませんが先遣隊の皆さんは疲れている様子です。宜しければ砦の外で待つ人達は自由に休ませたいのですが、宜しいですか?」

「構いませんよ、どうぞご自由になさってください」

 陛下が了承するとコウキ様は直ぐに隣に控えていた女性になにやら指示を出している、指示を出された女性が腕元を触ると砦前に展開していたノアの面々が砦を『包囲』するように動き始めた。確かに……確かに、『自由にして良い』とは言ったが包囲して構わないとは言っていない!
 しかしこちらから許可を出したので文句を付ける訳にいかない。それに山の大砲がしっかりと私達の方を向いているので余計に文句を付けられる状況では無い。
 その状況に満足したのか、コウキ様は『行きましょうか』と案内を催促してくるので私達は冷や汗を流しながら砦の内部へと入っていった。

「コウキ様、あの山のようなモノは何ですか?」

 メイドが淹れた紅茶を飲みながら陛下がコウキ様に問いかける。付き添いの警護兵にも紅茶を勧めたのだが、丁重に断られてしまった。

「山? あぁ、あれは陸の上を走る戦艦です。大きな大砲を積んだ自動で動く船だと理解して下さい。この前遭遇したワームに驚きましてね、少し怖かったので持って来たのですよ。ハハハハ」

 嘘を付くな! A級指定を秒殺した癖に何が『少し怖い』だ。サンドワーム以上の魔物など、それこそドラゴンやフェンリルくらいしか存在しない。そんなモノ達がホイホイ出現してたまるか!

「因みにアレは『アリス』と名前が付いていまして、僕の恋人から名付けたのですよ。格好いいでしょう」

「そ、それは……まさしく優雅で神々しい姿にぴったりの名前ですな! さぞかしアリス様はお美しいお姿をしているのだと思います」

 陛下が返答に困って目が泳いでいるのが分かる。というか武器に自分の恋人の名前をつけるセンスが信じられない、私ならそんな恋人は全力で拒否する。そのまま陛下が幾つか質問をするが、コウキ様のどこかずれた返答を返してくる姿を見て真剣に城に帰りたくなってきた。
 不毛なやり取りが続くかと思った時、横で控えていた女性がコウキ様になにやら耳打ちをしていた。それに2・3頷いたコウキ様は真剣な表情で私達に話し掛けてきた。

「予定より早いですが本隊が到着したようです。早速ですが交渉担当の者が参りますので、国交の樹立に向けた話し合いに入りたいと思います」

 予定では明日の筈だったが、これから私達は王国の存亡を賭けた武器を使わない戦争に臨まなければならないようだ────。





----カシス 視点----

 砦内の円卓会議場にノアの外交官を迎える準備をしていると、陛下である父上が話し掛けてきた。

「カシス、交渉はお前に任せる。王国にとって最善だと思える内容で交渉してくれ、メルカヴァの名が残るのであれば最悪は属国でも構わない。頼んだぞ」

「分かっております」

 父上は決して無能な国王ではないが有能な国王とも言えない。平時であれば凡庸な国王として一生を終えたであろう人物だ。だが時代が悪すぎた……常に魔王軍の襲来に悩まされ、北と東は成長著しい大国に囲まれている。
 そのような環境のせいで実際の年より老けて見える父上の励ましを貰いながら、私は最低でも王国の主権をノアに認めさせるのを決意する。

「それと、連合国会議についても宜しく頼む」

「はい」

 忘れていたが、あの頭の痛い会議にノアも出席して貰う約束を取り付けなければならない。2つの大きな仕事の責任に押しつぶされそうになるが必死に自らを奮い立たせていると、会議場のセッティングが終わるのと同時にノアの外交官が警護兵付きで入室してきた。

「初めまして、ノア代表のミキ・アラカワです」

 アラカワ!? 外見から考えてコウキと名乗った少年の母親だと思われるが、まさか女王自ら交渉に赴いたのか? それならばあの異常な数の兵士も納得できる。私と父上が驚いている中でノア側の自己紹介は続く。

「政治交渉官のクレア・ドーントレスです」

「同じくエリス・ドーントレスです」

「わたくしは秘書官のロベルタ・スカーレットです」

 こちらも自己紹介をしながら4人の外交官の様子を窺う。服装は少年が着ていた軍服のスカート式で、色は白でなく間逆の黒で統一されている。その風貌から威圧感が漂うが問題は交渉官と後ろの警護兵が持っている巨大な鞄だ、一体アレには何が入っているのだろうか?
 国力の差を考慮して王国側はノアに対して持ち物検査などは行っていない。武器などが入っていればそれだけで私達は終わりだ。

「1つお願いがあります。ここにいるロベルタには翻訳魔法を使用しないで下さい、彼女には後々の為に皆さんが使用する言語を覚えてもらう必要があります」

「分かりました」

 私が翻訳魔法の範囲から指定された女性を除外すると、エリスと名乗った女性が同時に通訳を開始した。しかしそんな簡単に自分達とは違う言葉を覚えれるのだろうか? 疑問に思いつつも交渉を切り出そうとしたところで、ミキが交渉の口火を切った。

「最初にこちらをご覧下さい。この紙は我々が作った地図ですが、赤い印が付けられた島と大陸の一部はメルカヴァ王国の領土で間違いありませんか?」

「間違いありません」

 私はまるで空から地上を切り取ったように精巧な地図を見て腰を抜かしそうになった。いけない───、ここで表情に出すと付け込まれる……そう考えてなるべく表情に出さないように意識しながら返答すると、ミキは印の意味について説明をしてきた。

「この印は現在我々が前哨基地を設置している場所です。現状では我々がメルカヴァ王国の領土を不法占拠している状態となりますので、まずはこの件についての『賠償金』の支払いを行いたいと思います」

 ミキがパチンッと指を鳴らすと、後ろに控えていた警護兵が大きな鞄を開いて中身を取り出す。ゴトンと大きな音を立てながら机の上に置かれたのは巨大な金塊だった。
 更に交渉官が自分が持っていた鞄を机の上でひっくり返すと、中からはダイヤ・サファイア・ルビーなどの宝石類が大量に出てきた。その輝きから高純度の最高級品だという事が遠目にも理解できる。

「その金塊は我々が使用する重さの単位で10キロ在ります。賠償金として500キロ……金塊で換算すると50本を無条件で譲渡します。もし王国では金に価値が無いのでしたら、その他の宝石類500キロ分を譲渡致します。好きな方をお選び下さい」

 一体何を考えているのか全く理解できない。今私達に渡しても後で回収できるからと考えているのか? 私がミキの方を見ながら訝しんでいると彼女は笑いながら話し掛けてきた。

「引き連れてきた戦力が過大だった事についてはお詫びします。誤解して欲しく無いのですが、我々は武力を背景に貴国を属国化する事も不平等な条約を押し付ける事も望んでいません。我々が望むのは唯1つ───、対等な立場での国交樹立です」

「申し訳ありませんが、信用できません」

「分かっています。そうですね……ではまず我々の生い立ちから説明しましょう。少し長くなりますがお付き合い下さい」

 そう前置きしてから彼女が話し始めた『ノア』の生い立ちに私は衝撃を受ける事になった。



 『ノア』───、そもそもは国では無くギルドのようなモノだったらしい。しかも驚くことにノアは別の世界、異世界からこの世界に移住して来たというのだ。ノアの面々が暮らしていた世界では大きな戦争は150年以上前に終結して世界は概ね平和な状態であった。そして今から15年前、その世界に1人の子供が生れ落ちた。

 その子の名前は『コウキ・アラカワ』あの白い軍服を着た少年の事だ、生れてから暫くして彼はその異常な頭脳を開花させた。たった3歳で高度な魔法数式の理論を完成させて母親を驚かし、自分1人の頭脳だけで世界の発展を50年以上加速させた。

 そんな多大な恩恵を受けた筈の世界は、やがて手の平を返すかのようにコウキ君を危険視した。本人は自然と動物を愛する心優しい少年なのに世界は『悪魔の子』と呼んで彼を虐げたのだ。だが一部の善良な大人たちは今までに受けた恩を返すべく立ち上がる事にした、直接戦争をするのは彼の心を傷つけるので絶対に出来ない。

 ならば……彼を嫌う世界そのものから脱出すればいいのではないか? そんな御伽噺のような事を真剣に考えて実行に移した。その途中で彼を慕う他の人間を集めながら移住先の異世界を探していたところ、私達の世界に行き着いたというのが真実らしい。余りにも壮大すぎて現実感が無いが、ノアが使用している武器や服装から考えると、恐らく真実を話しているのだろう。

「では本当に、対等な立場での国交を求めているのですね?」

「はい、ですが1点だけ注意があります。息子の功樹についてですが『不必要に刺激』する事は絶対に止めてください。母親として恥ずかしい事ですが、息子は世界に虐げられたせいか倫理観に問題があります。
 その……、大変言い難い事ですがメルカヴァ王国程度の国であれば息子がイラついたら半日で陥落させる事も可能です。最近は倫理教育で改善はされているのですが、どうかよろしくお願いします」

 訂正したい、ノアの面々が異世界に居られなくなった理由の3割くらいはコウキ君にも原因があると思う。一瞬そんな事を考えたが、私は気を取り直してノアと正式な条約を取り交わす為の話し合いを再開した。




----荒川美紀 視点----

 アリス型陸上戦艦の2番艦・クレアに戻ってから私はどっかりと提督席に座り込んだ。普段は白衣ばっかりで中々着慣れない制服を疎ましく思っていると、修一さんが声を掛けてきた。

「お疲れさん。交渉はどうだった?」

「まぁまぁね。お互いの文化が違いすぎて細部はこれから時間を掛けて詰めていくけど、一応は調印文書にサインしてきたわ。私達はノア島と大陸の限定的な租借権、向こうは国家主権の保護が条件だったから調印自体に問題はなかったわ。ただ物凄く面倒な事が判明したの」

「なんだ?」

「連合国会議の出席」

 修一さんは眉間を押さえながら『なんだソレ?』と言っている。王国側からの話を聞くと、この大陸では魔王軍の攻撃に備えて5カ国連合軍を組織しているらしい。その中でもっとも国力的に弱小のメルカヴァ王国は殆ど4カ国の言いなり状態になっていると言って過言ではない。
 そんな中で私に頭を下げながら『お願いします! 会議に参加してください』と、半泣きで頼んでくるカシス王女の姿を見たからには断る訳にもいかなかった。正直そんな面倒な場所に行きたくないので『何とか理由をつけて拒否する方法がないか?』と修一さんに相談するが、愛する夫は私が1番困る事を口にした。

「約束したのに行かなかったら功樹が『約束を守らない母さんなんて、嫌い!』って言い出すぞ」

 それは本当に困る、あの子に嫌われたら生きていけない。

「そういえばさっき功樹と飯を食ってきたんだが、『母さんって仕事が出来て格好いいよね、3番艦は母さんの名前を借りてミキにしようと思うんだ』って言ってたな」

 やっぱり友好国の為にも連合国会議に参加すべきだと思う! よく考えたら他国とも関わる事になるのかも知れないのだから、1度顔合わせをしておいた方が良いだろう。心の中で功樹と面倒さを天秤に掛けていると修一さんが質問してくる。

「ところで、その連合国会議とやらは何処でやるんだ?」

「王国の王城で行うそうよ。会議室に遠い場所と話せる『魔法具』が設置してあると言っていたわ」

「映像通信装置みたいなモンか」

 それっきり黙りこんだ修一さんを放って置いて、私は別の事を考える。最初に思い浮かぶのは『ロベルタ』さんの事だ……。彼女はノア島に来てから基本的に何かを食べる事しかしていなかったが先程の会談が終了した後、突然王国で使用されている言語を流暢に喋り始めた。
 彼女曰く『単語さえ覚えてしまえば簡単ですよ』と話していたが普通の人間は無理だ、功樹の言っていた通りで言語の習得スピードは化け物クラスだった。ただ1日に軍人が食べる食事の15人前を消費するのは本当に勘弁して欲しい、クレアに乗艦している調理班の人間がいつも食堂にいる彼女に悲鳴を上げている。
 次に考えるのは『魔王軍』についてだ。5カ国連合軍ではないと対処しきれない程の戦力を保有しながら、なぜ1国に対して総攻撃を仕掛けないのか? まるで本当は戦争をしたく無いような動きに疑問を覚える。王国側もわざわざ巧妙に隠した防御陣地を作っている事が腑に落ちない、2カ国間で何かあるのではないか? つらつらとそんな事を考えていると、いつの間にか夜が更けていった。



 2日後、王国側の移動速度に合わせてゆっくりと王都に着いた私達は早速王城の中へと案内された。城の中は嫌味にならない程度に飾りつけられていて、好感が持てる落ち着いた調度品が並んでいた。
 サロンか何かで休息を取るのでないかと思っていたが、予想外に直ぐ会議室に通された。中で案内役のカシス王女が伏し目がちに状況を説明してくる。

「申し訳ありません、連合国の皆様が既にそれぞれの会議場で待っているのです。その、お疲れだとは思いますが何卒……」

 なるほど早く新顔に逢わせろとせっつかれているのか、私は笑顔で『構わない』と伝えてから会議場の椅子に腰掛ける。さて───、この2日間でクレアさん達と決めたのは取り合えず下手に出て様子を窺ってみるという事だった。
 王国のメンツもあるだろうし、私達としても無用な争いは可能な限り避けたい。それを思い出しながら会議が始まるのを待っていると、目の前の鏡に多少ブレながらも4人の男性が映ったのが分かった。どうやらコレが会議用の魔法具らしいので私はなるべく優しい笑顔で挨拶する。

「初めまして皆さん、ノア代表のミキ・アラカワです」

「ほう、国家間の重要な会議に女がでるのか? 底が知れるな」

 右から2番目の男性が早速嫌味を言ってくるのを聞き流していると、耳に装着しているイヤホンからカシス王女の声で『ラーギレ公国の代表です』と説明が入る。次に1番右の男性が口から唾が飛びそうな勢いで叫んでくる姿が目に留まった。

「小国風情が! 立って挨拶をしろ」

 一体どういう判断基準で私達を小国と決め付けているのだろうか? 可笑しな基準に笑いを堪えながら会釈をすると顔を真っ赤にして怒鳴り続ける。どうやらこの男性は『リクル教国』の代表らしい。

「まぁまぁ、野蛮人にマナーを説いたところで理解できませんよ。 ハハハハ」

 1番左の自身が毛むくじゃらで猿人類みたいな男性は北に位置する『リンクドルブ帝国』の代表だと説明が入った、私個人の感想としては生理的に受け付けないタイプの男性だ。最後に一言も喋らずにこちらの様子を窺っている白髪の老人は、『キャプス王国』の代表だと説明された。
 よし、方針を変えよう。この馬鹿共にカシス王女のような高度な政治的会話を求めても恐らく無駄だ、私は単刀直入に4人に向かって問いかける。

「連合国会議と申されましたが、皆さんも我々ノアと国交をお求めですか?」

 私の言葉に一瞬場が静まりかえるが内容を理解したのか、案の定リクル教国の代表が血管が切れるのではないかと心配になる剣幕で怒鳴り散らしてくる。

「ふざけるな! 私達が魔王から貴様らを守ってやると言っているんだ! 立場を弁えろ馬鹿が」

「必要ありません、既に私達の持てる技術でA級指定の魔物程度は楽に討伐できる事が証明されています。それに私達は魔王側と交戦する意志もありません、むしろ和平交渉を行いたいと考えています」

 何かを勘違いしているリクル教国の代表にそう言い放つと、それまで黙っていたキャプス王国の代表が初めて口を開いた。

「よろしい、ノア側の方針は理解した。ではそのノアと同盟関係を結んだ亜人の国家であるメルカヴァ王国は、我々の連合から離脱すると判断して構わないのだな?」

 キャプス王国代表の言葉で疑問だった最後の謎が解けた。功樹から聞いていたようにメルカヴァ王国を構成している種族はエルフ族だ、説明では人間よりも魔族や精霊に近い存在だと教えられている。
 だからこそ同属意識からか魔王側と本格的に戦う意思を持たないで、『遅延戦術』なんていう回りくどい手段を取っていたのだ。しかし王国はどうするつもりなのだ? 返答次第で私達も覚悟を決める必要がある。カシス王女の出方を窺っていると、凛とした態度で魔法具の前に現れてハッキリと自国の方針を宣言する。

「我々、神聖メルカヴァ王国は建国以来初めて『対等な国交関係』を結んでくれたノアと共に歩みます。ノアが連合に属さないと判断を下すのであれば、王国も連合から離脱する事を宣言します」

「亜人風情が人間を裏切るのか!? ただでは済まさんぞ!」

 方針を明確にした王国側に4カ国が罵声を浴びせかけるが、私達と共に歩むと宣言してくれた王国を守る為にノアのこれからの方針を連合国に述べておく必要がある。私はこれまで浮かべていた笑顔を消して国の代表達に宣言する。

「申し訳ありませんが、ノアは連合への加盟を拒否します。また既に王国側と我々ノアとの間では国交樹立の調印が交わされています。仮に皆さんの中で1国でも王国に対して経済制裁・軍事力の行使を行った場合は『安全保障条約』に基づき、我々ノアが4カ国に対して即時宣戦布告───、徹底的な報復攻撃を行います」

 私の宣言に怒り狂った4カ国の代表達は次々に魔法具を切断して姿を消していくが、ただ1人最後まで残ったキャプス王国の代表が私を睨みながら『覚えておけよ』と言ってくる。その姿に我慢の限界を超えた私は久しぶりに本気で怒鳴り返した。

「いつでも相手になるわ。我々はノアよ! 立ち塞がる者は全力で排除する!」

 スッキリとした気持ちで言い終わるのと同時に切れた鏡を見ながら、私はこれからのプランを頭の中で立て始めた。

最後の最後で美紀がブチ切れたお話でした。

ちなみに……、ノアが準備した金塊・宝石類はコンが無農薬トマトと引き換えに必死に鉄屑とその辺の石から錬金しました。今はぐったりしながらノア島でトマトを齧っております。

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