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異世界に転生したんだけど俺、天才って勘違いされてない? <旧題  転生したんだけど俺なんか勘違いされてない?> 作者:にゅん

学院編 1年度 夏期休暇~異世界編~

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月面遺跡

 遺跡の内部編です。次のお話が少し長くなるので今回は短めですが一旦切らせていただきました。
----月面基地警備隊 セドリック 視点----


「まずは、コイツを着てくれるかな?」

 俺が月面探査用のパワースーツを渡すとコウキ君は装備を確認するように一瞥した後、装着を始める。恐らくだが自分の生命を守るスーツが実用に耐えれる物なのかを吟味したのだろう、女史の方からコウキ君の詳細な資料を貰っているので彼の考えそうな事は予想できる。

『息子は、すべての事について妥協しません。美点ですが同時に短所でもあります』

 資料を渡しながら女史は俺の目を見ながら真剣にそう伝えてきたのを覚えている。最初は所詮子供だろうと考えていたが、資料を見た時にそんな考えは吹き飛んだ。本来なら俺の所有する情報レベルでは閲覧する事が適わない資料には、彼が今まで行ってきた事や開発した物の全てが書かれていた。天才と人はコウキ君を評価しているが、本当にその通りだと思う。
 新しい理論の構築・新技術の開発・軍事的な才能、『なんでも出来る』……コウキ君はそういう人間だった。ここ10年で世界の技術は飛躍的な進化を遂げたが、それは全て目の前にいる1人の少年が出した成果にすぎない。

「これで大丈夫ですかね」

 意識を飛ばしているとコウキ君がスーツの装着を終えて声を掛けてきた。うむ……見た感じは異常は無さそうだが、最終確認として腕部にある端末できちんとスーツが作動しているか確認しておく必要があるな。

「コウキ君、腕に個人端末みたいなのがついているね。それで現在スーツが正常に稼動しているか確認する事が出来るよ。スーツ本体の手でも内部からでも操作出来るから、確認してみて欲しい」

「えっと、グリーンの表示が正常なら問題は無いです」

「うん、グリーンなら大丈夫だよ。月面に出たら些細な事でも命取りになるから、イエローになったら直ぐに知らせてくれ。レッド表示ならスーツを破棄して外骨格装備だけになるようにね」

 よし、必要な説明は済んだ。女史の方も問題なく装着しているので心配は無いとして持って行く装備だな。遺跡に行くとすると護身用の武器を携帯するが、コウキ君は銃を撃った事があるのだろうか? 本人に持たせておくのが一番安全なのだが素人だと逆に危険になる。
 思案していると女史が、『護衛に関してはすべてそちらにお任せします』と秘匿回線で通信を送ってきた。一体、この人は何者なんだ? なんで俺の考えている事が分かるんだよ! 少し怖くなったので愛想笑いをしながら返答した。調査機材は……特に指定を受けてないので基本装備で良いか。

「コウキ君、特に必要な物が無ければ出発するけど良いかな?」

「はい! 楽しみです」

 出発を伝えると彼は年相応の笑顔を見せてくれた。そんな表情を見ると、こんな何も無い月面での任務も意外と悪くないと感じるのは俺だけでは無いと思う。




 移動用のシャトルに乗って1時間、それまでは大人しく座って居たコウキ君が突然端末の操作を始めた。情報を探しているらしいが見当たらなかったのだろう、俺に通信を送ってくる。

「あの、酸素の残量って何処で見るんですか?」

「外骨格の右腕に時間とパーセントが表示されているね、それが残りの酸素で活動できる時間と残量だよ。循環機能付きだから30時間は活動出来るけど、個人差があるから精確な活動時間はちょっと分からないな」

 しまった……最初に伝えておけば良かった。本来なら、地球上である程度の基本的な訓練を受けてくる筈なので失念していた。可哀想に不安だっただろう、俺は謝罪しながら他に疑問が無いか聞いてみる事にする。

「遺跡の資料は何かありませんか?」

 申し訳ないがそんな物は無い。そもそも地球から来た偉い学者先生達が、そろって首を傾げるような『象徴文字』しか書かれていない。『象徴文字』という事すらも怪しいレベルだし、回りにはその文字が書かれた入り口のようなモノしか無い。俺がそうコウキ君に返すと残念そうにしながらも、期待に胸を膨らませて居るようだった。

『そろそろ到着します』

 パイロットからの通信で外に出る準備を始める。特に危険は無い筈だが、万が一を考えて警備隊が先に降下して周辺の安全を確認した後にシャトルが着陸する手筈になっている。ハッチから部下3名が降下して行くのを見ながらオープンチャンネルでコウキ君に通信を送る。

「コウキ君、これからはこの周波数で通信を固定するよ。基本的に個人間通信は禁止だから宜しくね」

「────分かりました」

 周波数の変更に手間取っていたようだが、きちんと変更してくれたようだ。数分してから降下した部下から『問題なし』の連絡が入ったのでシャトルが着陸する。完全に止まったシャトルから全員が降りて、コウキ君と女史を囲むように移動しながら問題の遺跡前に来ると、気を利かした部下が持ち運び型の照明で遺跡の文字を照らす。コウキ君はその文字を眺めながら暫く無言で居たのだが……ぽつりと言葉を漏らした。

「端に立って、壁を押す? いやコレだと叩くなのか」

「こうちゃん!? 読めるの!?」

 女史が驚いたように声を出しているが俺も驚いた。まさか……、人類がこの遺跡を確認してから150年間も『謎』と言われていた文字をこんな僅かな時間で解読したとでも言うのか? そしてコウキ君か俺達の方を振り返りながらその場にいる全員に告げる。

「どうします? 開けちゃいますか?」

 俺は意図せずに、人類の新たな一歩を目撃する事になるようだ。




----荒川功樹 視点----


 シャトルから降りた後、オッサン達に囲まれながら遺跡の前まで来た。暗くて見えないぞ! と思っていたら周りを囲んでいた人の1人が照明を点けてくれたので良く見えるようになった。めっちゃ気が利く良い人だな、基地に帰ったらあの人に売店でなんか買って御礼しよう。さて問題の『象徴文字』なんだが、眺めていると予想通り過ぎて笑いそうになった。確かにこれは学者先生や考古学者の人が読めるはずがない、


これは『絵』だ。


 シャトルの中で『象徴文字』だと教えられた時から考えていた事だが、果たして恒星間航行や別の星に遺跡を作る事が出来るような高度な技術を持った生命体が居たとして、下級生物……つまり人類に自らの存在を教える時に『文字』なんて使うだろうか? 
 もし俺なら使わない。ある程度の文明レベルがあれば理解出来るような、『絵』を使って教えるだろう。そして読めない理由の極め付けが解読の仕方だ。普通……まぁ地球にとっての普通だが、文字は基本的に左から右に読むか、右から左に読む。上から下に読むタイプもあるが、間違いなくこの遺跡のように『下から斜めに読んで途中で別方向』なんて事はしない。
 地球にいる学者達は人類の事を『生態系の頂点』とか言って、さも全知全能だと思っているが、この遺跡を作った生命体から見れば『アメーバ』みたいなモンだろ。そんな固定概念があるから読み方の発想の転換が出来ないんだと思う。決して俺に常識が無いから読めたとかじゃない! そうじゃない。 

「端に立って、壁を押す? いやコレだと叩くなのか」

「こうちゃん!? 読めるの!?」

 俺が解読しながら口に出すと母さんが興奮しながら聞いてきた。待ってくれ解読中だ。えーっと、端に立って叩いた後に右下を押すのか……ここで読む方向が変わるから別の所を探さないとな。少し時間をかけて開け方を理解した後で俺は全員に問いかける。

「どうします? 開けちゃいますか?」

 俺としては今すぐ開けて中に突撃したい。多分だが、自らの存在の証明なので別種族に危害を加える可能性もないだろう。冷静に考えると、文明を残せるレベルの知的生命体が明確な目的も無く攻撃してくるとは考え難い、もし攻撃したとしてその種族が『反撃する手段』を持っていたり進化した場合に反撃する可能性があるからだ。
 ドキドキしながらオッサンと母さんの決断を待っていると、母さんが真剣な声で聞いてきた。

「こうちゃん、貴方はどう思うの。安全だと思う?」

 俺は先ほど考えた意見を話す。母さんは納得したようだが、オッサンは不安そうにしている。

「身の危険を感じた時点で引き返せば良いのではないでしょうか?」

 オッサンに向かって母さんは譲歩案を提案する。それを聞いたオッサンは、扉を開ける事を決断したようで部下の人に指示を出す。部下の人が緊急事態に備えて銃を構えて居る中、俺は扉を開ける操作を始めた……。右端に立って、左下を3回叩いてから今度は逆側に立って同じ事をする。すると絵が青色に点灯して、扉が斜め右上に開いた。
 そうか……、これを作った種族は基本的に斜めが好きなんだな。なんとなく込み上げてくる笑いを堪えながら内部へと入ると、廊下だと思われる通路が目の前に広がっていた。壁には同じような絵が書いてある。

「えーっと、このまま真っ直ぐ進んで行くようです。多分ですが、『攻撃するつもりは無い』と書いてあります」

「コウキ君、そんな詳しい内容まで理解したのかい?」

 ビクビクしながら辺りを見回していたオッサンが質問してくる。入り口に書いてあった絵で扉を操作していた生物が武器みたいな物を捨てて、別の生き物に対して手招きをしているから合っていると思う。俺は適当にオッサンに返答しつつ奥に進む。400メートル程進むとまた『絵』があった。今度は、手招きされていた生物が武器を持っていてそれを別の生物が止めているような感じだ。

「『この扉を開けると、驚くような事があるけど無闇に武器を使うな』と書いてあります。部下の人に無闇に撃たないように伝えてください」

「わ、分かったよ」

 了解が得られたので扉を開けると……、青い髪の女性が椅子に座って微笑んでいた。コレは驚くわ! 注意書きが無かったら腰を抜かしたかもしれん。視界の端で、オッサンの部下の1人が銃を向けようとしたが母さんに蹴りを入れられて止められたのが見えた。『息子の話を聞いて居なかったのですか?』と怖い声でその隊員に言っている。
 発砲を止めたのは有難いが、異星人とのファーストコンタクトなんだから地球の恥を晒すのはやめてくれ!! 思わず頭を抱えそうになった時、女性が初めて口を開いた。

「初めまして、地球人の皆さん」

 透き通るような声で女性が挨拶してきた。ん? 待てよ、合成音じゃない!? 今この人は日本語で喋っているのか? 俺が驚いているのを理解したのか、クスクスと笑いながら更に言葉を続ける。

「入り口の扉を開けたのはアナタですよ、荒川功樹君。その時点でこの場所の所有者になったのです、所有者の使用する言語で会話をするのは当然です」

 いや、開けたのは俺だけど所有者になるのは困るぞ。というかなんで俺の名前を知っているんだよ! さらに突っ込むと何で日本語が出来るんだよ!! もっとこうさ、未知との遭遇なんだからジェスチャーとかで意思表示とかしたかったんだけど。まぁ便利だから良いけどな。

「日本語が出来るのは私が今まで地球の情報を集めていたからです。それとお望みなら、私達の種族の言葉で会話しても良いですが理解するのに時間がかかりますよ」

 おい……今俺は口に出してないぞ、なんで俺の言いたい事が分かったんだ。心でも読んだのか?

「いいえ、心という不安定なモノを読む事は出来ません。考えた事のごく表面的な内容だけは読み取る事ができます」

 分かった、凄い事なのは分かったから止めてくれ。『人類』は言葉という『音』で会話する生き物なんだ、そちらが今している行為は人類として許容できる事ではない。

「分かりました、では『言葉』を使用します。詳しい説明の前にそのスーツを脱いだらいかがですか? この場所は地球型に整えてあります」

 俺は女性に言われた通りにスーツを解除しようとして母さんに止められる。母さん曰く『危険』だと言うのだが、この女性は人類に合わせて言葉で会話することを約束してくれた。それならば俺達も敬意を払うべきではないか? 俺がそう言うと母さんは少し考えた後に、『母さんが先に解除する』と言って来た。
 すると今度は警備のオッサンが『いや、安全の為に俺が先に』と言ってきたので面倒になった俺は、勝手にスーツを解除して外骨格のヘルメットも脱ぐ。大きく息を吸って深呼吸すると女性が驚いた顔で俺の方を見つめながら声を出す。

「本当に脱ぐなんて……、地球人というのはもっと狡猾な生き物だと勝手に判断していました」

「一部はその通りです。ですが大多数はそんな事はありません」

 俺が答えると、優しく微笑みながら頷いてくれた。なんとなくこの女性は母さんに雰囲気が似ているので、多分そのせいで信用できたんだと思う。俺に続いてスーツを解除したメンバーを確認してから、何について聞こうか考える。内容を母さんに相談すると『好きな事を聞けば良い』と言われたので、まず目の前の女性が誰なのかを確認する事にした。


 そして俺は女性が話す……ある銀河に存在した種族の途方もない長い旅と悲しい話を聞く事になる。
 コメント欄で『歴史の流れのせいで人に被害が出るのでは無いか?』等の指摘を頂きましたが、作者的に『特定の人物・団体』に対して悪意等がある訳ではないのでご理解下さい。
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