挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異世界に転生したんだけど俺、天才って勘違いされてない? <旧題  転生したんだけど俺なんか勘違いされてない?> 作者:にゅん

学院編1年度 前期

29/77

彼女の気持ちとコンの能力

 活動報告でも書きましたが、風邪に罹ったので更新と修正が少し遅れます。
----相川恵美 視点----

 露天風呂に続く扉を開けると、今までに見たことが無いほどの大きなお風呂が目に入った。間違いなく、昔連れて行ってもらった北海道の登別温泉で泊まったホテルで見た大浴場の2倍はある。

「わぁ、大きいね! めぐみん」

 アリスちゃんが無邪気に喜んでいるが、そんなレベルの話ではない広さだ。コレを作るのに一体どれ程の苦労をしたのだろう……、シン君は『受け取ってくれるかな?』なんて言っていたが、コレを見たら受け取らないはずは無い。

「入ろうよ」

 そう言って、かけ湯をしてから温泉に入るアリスちゃんにならって私も湯に浸かる。湯加減も丁度いい感じで思わず声が出てしまう。

「ふにゅー」

「アハハ、めぐみんが猫みたい!」

 私の声を聞いたアリスちゃんがからかってくるが、そのまま気にせずに湯船の奥の方まで移動する。

「まってよ、めぐみん」

 後ろから追ってくる声が聞こえるが私は止まらない。一般客が居ないココでなら私の夢の1つである、『お風呂で泳ぐ』事が叶えられるのだ! 中央まで移動してから大きく息を吸い一気にお湯の中に潜った。息が切れてお湯から顔を出すと、アリスちゃんが高速でバタフライをしながら私に迫ってくる姿が見えて少し驚く。

「酷いよ、私を置いて泳いでいっちゃうなんて」

「ごめんね、つい嬉しくなっちゃったの。でもなんで『バタフライ』しながら追いかけてきたの? 別に普通に泳いで良かったんじゃ」

「私、バタフライ以外できないもん」

 私が問いかけると、すこし脹れたようにアリスちゃんが答えてきた。だがバタフライ以外の泳ぎ方が出来ないという事は、荒川君と海とかに行った時も彼の後ろを『バタフライ泳法』を駆使しながら高速で追いかけるのだろうか? それは多分……いや、確実にホラーだ。
 他の泳ぎ方を教えたほうが良いのではないか? 私はそう考えてアリスちゃんに問いかけると、

「ホント? なら私クロールを覚えたい」

 そうじゃないのアリスちゃん、私が言いたいのはもっとこう……彼氏と海に行く時にキャッキャウフフできる泳ぎ方の事よ。



 しばらく泳ぎ方を教えた後、湯船の縁に座って体を冷ます。2人でぼうっとしながら空を眺めているとアリスちゃんが思い出したように喋り始めた。

「コンも連れて来てあげれば良かったね。あ……でも、お湯に入れたらびっくりするかな?」

 どうだろうか? 確かにドラゴンが温泉に浸かるなんて話は小説でも読んだことはないが、意外とあの子なら喜んでプカプカ浮いていそうなイメージが想像できる。そんな事を考えていると突然、

シュバッ! シュバッ!

と小型のロケットが飛んでいく飛翔音が聞こえた。辺りを見回すと周囲に向けて玄関辺りからロケットが飛んで行くのが目に入った。何をしているのだろうか? 私が疑問を口にするのより早く、アリスちゃんが大声で荒川君に向かって問いかけていた。

「功樹君、何やってるの?」

『害獣避けのロケットを撃ってる。次のヤツ撃ったら信吾お手製の花火も上げるから期待しててね』

 遠くから聞こえてくる荒川君の返答を聞いて私は理解に苦しむ、それならば『爆竹』でも良いのではないか? なぜわざわざロケットにする必要があるのか理解できない。まぁ、恐らくシン君に聞いても『フヒ! ロマンじゃないか』とかいう不可解な回答が返ってくるのが目に見えてはいるが。



ヒュー……パーン!



 シン君の事を想像していると、急に空を照らす花火が上がり始めた。確かに花火大会よりは幾分小さい花火ではあるが、心が籠められた暖かくて綺麗な大輪の花が夜空を染める。

「綺麗……」

 そう声を出すとアリスちゃんが頷いているのが分かった。そのまま花火を眺めていると隣にいるアリスちゃんが真剣な声で話しかけてきた。

「めぐみん、めぐみんは何で斉藤君の事が好きになったの?」

『何で』かは分からない……だけど気付いたら好きになっていた。初めは『変な笑い方をしてる気持ち悪い人』という認識しか無かったのを覚えている。そこから何故好きになったのだろうか?  記憶を探る内にはっきりと思い出す事が出来た。
 たしか最初に印象が変わったのは、放課後に探し物をしていた時だ。研究のデータを入れたディスクを紛失した時に、たまたま通りかかったシン君が3時間も一緒に探してくれたのだ。ディスクが見つかった時、私は何か見返りを求めてくるのでは無いかと身構えていたがシン君は、『良かったね! じゃあボク帰るよ』と言ってお礼を言う暇も無く帰ってしまった。あの時に私の中で『変だけど良い人』のイメージになったはずだ。
 その後暫くしてから、街で買い物をしている時に不良に絡まれた事があった。腕を掴んで無理やり連れて行かれようとした時に、突然シン君の声が聞えた。

『ねぇ、離してあげなよ』

 少し震えながらであるが……大きな荷物を地面に置いて私を助けようとしてくれる彼が、とても頼もしく感じたのを鮮明に覚えている。案の定、不良に殴られそうになったシン君は地面に置いた荷物を開けて中からチャバネ君を起動させていた。
 あの時はまだ喋れなかったチャバネ君を使って私を助けてくれた時に『変だけど勇気のある格好良い人』になった。私がそうアリスちゃんに教えると、

「結局、変な人ってイメージは付いたままなんだね」

と笑っていた。だってシン君は変なんだから仕方ない……今はそういう所も好きではあるが。それよりアリスちゃんは何で荒川君を好きになったのだろう? 疑問になって問いかけると、『秘密』なんて言いながら答えてくれない。私だけ答えてズルイと少し怒りながら言うと、

「花火も終わったし、そろそろ上がろう? ご飯たべながら夏休みの予定たてなきゃね!」

といいながら脱衣所に逃げていってしまった。完全にはぐらかされたので次回は必ず聞くことに決めて、私は花火が消えた空を見つめながら考える。





 今年の夏休みは楽しい事が沢山ありそうだ。




----スキンヘッド 視点----

 部下と一緒に功樹君が居る建物の付近に潜みながら、夕食の携帯食料を口に入れる。冷えていてお世辞にも旨くはないが取り合えず腹が脹れるので良しとする。丁度良い感じの岩に背を預けながらもくもくと食べていると、部下が不満そうに口を開く。

「くそっ、なんで俺達ばっかりこんな任務なんですか? 今頃は功樹君は温泉に浸かりながら可愛い女の子と宜しくやってる頃ですよ。それなのに俺達は虫に噛まれながら冷えた飯を食ってるなんて……不公平にも程がありますよ」

「お前はこの仕事で給料を貰ってるんだろうが? グダグダ言ってないで、良いからさっさと飯を食え。この前の襲撃の件だって真相は良くわかって無いんだ警戒を怠るな」

 テンプレートの返答を返すが納得は出来ないようで不満を漏らし続ける。他のメンバーの顔も窺うが、どうやら皆同じ意見のようだ。しょうがない……緘口令が敷かれているわけでもないので『ある情報』を教えてやる事にした。

「これは指揮官以上の階級しか知らない事だがな、荒川女史はあの建物周辺の土地だけを買ったわけではないんだ」

 俺が話始めると、不満を言い続けていた口を閉じて俺の言葉に集中する。なんの事は無い、コイツ等だってプロなのだから一時の不満を解消してやれば任務を継続できるはずだ。俺は話を続ける。

「もちろんこの事は功樹君は知らないし、彼のキャッシュから引かれたのはあの建物と周辺の土地の金額だけだ。だが女史はこの辺り一帯の土地を丸々買い上げたんだよ、理由は俺達が潜む護衛の為と……」

『為となんですか?』部下どもは興味を持った様子で俺に質問してくる。話の続きを喋る前に、『文句を言わないで今晩の任務を継続する』約束を取り付けてから続きを教えてやる。

「護衛の為と『周辺の基地化』だよ、この辺り一帯は荒川所有の要塞になるんだ。もちろん表向きは唯の山だがメインは地下要塞だ、詳しくは俺は知らないが収容予定の兵員数は1800名でそれなりの武装も整えられると聞いた。
 例の襲撃で女史が息子の安全に危惧を抱いた様子でな、国連に許可を押し通したんだ。つまり……女史は日本では自衛軍に次ぐ規模の武装集団を率いることになる。いや、質の面を含めれば最大規模でも良いのかも知れんな、なんと言っても伝説の修一さんの部隊も駐屯する事が決まっている」

 部下がえらく興奮しているのが分かる。早い話が俺達も地下要塞に収容されるメンバーに入っているのだ、大変名誉な事だと思う。それにしても……功樹君の頭脳に女史の資金力と修一さんの武力、この3つが本気で稼動したら国連すら意のままに操れるのか。
 なにか恐ろしいモノを見た気持ちで腕を組んでいると、建物の方からロケット弾の発射音が聞えてきた。まさか襲撃か!? 俺が慌てて立ち上がると無線連絡が入ってきた。

『現在、護衛対象が害獣避けの警告弾の発射を行っています』

 なるほど、なら心配しなくても大丈夫だ。俺は再び座り直し部下の話に耳を傾ける。

「この辺りで地下要塞を作るんなら、風呂はやっぱ温泉だろうな! 楽しみだぜ」

「おう! 部隊の女性陣も喜ぶだろうよ、上手く行ったら覗けるかもな」

「覗けるかもで思い出したが、あのアリスって子は可愛かったな。こっからスコープで風呂を覗けねぇか?」

 馬鹿な部下がそんな不謹慎な事を言った瞬間、


ヒュー……ガンッ!!!!


 俺が背を預けていた岩に『ロケット弾』が直撃した。一瞬で静まる部下達……、不謹慎な事を言った本人は泣きそうな顔で腰を抜かしている。さすがに偶然だろうと俺が言ってやると、

「でもそれ、不発弾ですよ」

と震える声で指摘する。その事に気付き俺はぞっとする、適当に撃ったロケット弾が偶然に俺達の所に飛来して、偶然不発だったなんて事はありえるのか? 無理だそんな事は在り得ない。間違いなく狙って撃って来たのだろう、だが最初だけは警告射撃で済ましてくれたのだ。
 倫理教育を行っている学院長に感謝すべき所だな、帰ったら『倫理教育の効果大』と報告書を書かなければ。俺は部下にこれ以上の不謹慎な発言を控えるように命令をして考える。




 害獣避けの効果は分からんが、あのロケット弾には『女性を覗こうとする』害獣には効果があったようだ。





----学院長 山本香 視点----


 私が執務室で書類を整理していると、扉を引っ掻く音が聞えたので顔を上げる。もしかしてあの子が来たのだろうか? 立ち上がり扉を開けると足元に小さなドラゴンが居るのが分かった。

「コン!」

 『こんにちは』とでも言いたそうな表情で、私を見つめるコンちゃんを抱きかかえながら、私はこの子が初めて来た日から常に置いてあるトマトを冷蔵庫から取り出した。
 モグモグと嬉しそうに食べている姿を眺めながら、この小さいドラゴンと初めて逢った時の事を思い出す。あれは、学院が襲撃された日の夜だった筈だ……。




 学院が破壊され生徒が1人連れ去られたと報告が入り、私は関係する各所に連絡を取るの忙しかった。その連絡も一段落して後は無事に生徒が戻ってくるのを願っていた時に、開いたままの扉から荒川君のペットが入ってくるのが目に留まった。
 確か『新種のトカゲ』だと本人から聞いていたので、爬虫類が苦手な私は追い出したかったのだが『荒川君』のペットなので下手に刺激して怪我をさせる訳にもいかないので見守るしか出来ない。私の方を見つめながらトコトコと歩いてきたトカゲは、やがて机に飛び乗ると近くにあった朱肉を手で触ってから何も書いていない紙にその手を擦りつけた。

『ごはんください』

 下手糞な文字だったが、間違いなく目の前のトカゲは紙に日本語を書いた。私が驚いて『アナタは何? トカゲの癖に言葉が理解できるの』と聞くと、更に紙に文字を書く。

『わたしはドラゴンです。トカゲとはちがいます。ごはんください』

 ドラゴン……このトカゲは自分の事をドラゴンと言った。普通なら笑い話だが、荒川君ならドラゴンをペットにしてても違和感が無いのが腹立たしい。だが食事と言ってもこんな状況で食べさせる物は無い、なんでも良いのなら都合できるかもしれないのでドラゴンに聞いてみる。

『やさいがすきです。でもなんでもいいです』

 野菜なら私が昼食用に買ったサラダが残っているはずだ……サラダを渡すと嬉しそうに食べ始めた。可哀想に相当お腹が減っていたのだろう、一心不乱に食べている。食べ終わると再び紙に文字を書き出したのでそれを見る。

『ありがとうです。なまえはコンです』

「そう、アナタはコンちゃんと言うのね」

 私はコンちゃんを撫でながら自分が笑顔になるのが分かった。今日は酷い事が沢山起きた……最後くらい多少の癒しがあっても良いだろう。そう思いながら撫で続けているとコンちゃんは机にあった文鎮を触ってから再び紙に文字を書く。

『これはてつですか』

「ええ、それは鉄製の文鎮よ」

 私がそう答えるとコンちゃんの羽が光始める、そして紫色の閃光が輝いた瞬間……鉄製の文鎮は、光り輝く『純金製』の文鎮になっていた。

『おれいです。かえります』

 そう書いてからコンちゃんは、来た時と同じようにトコトコと部屋から出て行ってしまった。




「コン、コーン?」

 コンちゃんが鳴いているのに気付き、私は急に現実に引き戻される。渡したトマトを食べ終えたようで、私の万年筆を使って紙に文字を書いている。

『ご馳走様でした。美味しかったです』

「だいぶ文字を覚えたようね」

 私がそう言って褒めると、誇らしげに胸を張っている。その姿が可愛くてついつい撫でてしまう、そしてコンちゃんは更に文字を書く。

『お礼ですが、いつも金では芸が無いので今回は別のやつにしましょうか? 価値のある貴金属や石を教えてください』

 それを見て私は初めてコンちゃんに対して眩暈を覚えた。この子は自分の行っている行為の価値を理解しているのだろうか? まぁ、それは後でちゃんと教えるとして……




 今は、大きなブルーダイヤを作ってもらう事に決めた。
 相川さんの気持ちとコンの隠れた能力でした! コンは、文字で意思疎通ができるだけで喋れません。これからも進化して突然喋ったりはしません。

 後、コン魔法つかえるじゃん! って思う方も居るかも知れませんが主人公は『飛行とブレス』が出来るかどうかの確認しかして居ないので、コンも他の能力については別に伝えていませんでした。因みに魔法と言うより錬金術です。等価交換ではありません。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ