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異世界に転生したんだけど俺、天才って勘違いされてない? <旧題  転生したんだけど俺なんか勘違いされてない?> 作者:にゅん

学院編1年度 前期

26/77

出撃

2部目です。
----荒川修一 視点----


「これは今日の朝に調査途中の報告として送られて来た内容ですが、『アリス・アルフォード』という人間は存在しません」

 今日は俺の人生で一番『驚愕の報告』が入ってくる日のようだ。だがその報告は在り得ない功樹の友人関係は全て調査してあるはずだ、存在しない人間など最初の段階ですぐに報告が上がってくる……俺はそうルイスに言い返すが冷静に否定された。

「いえ、間違いなく彼女は突然現れているのです。『アリス・アルフォード』国籍はカナダで、高度医療の専門知識をかわれてカナダ政府からの推薦で学院の試験を受けた後入学を許可されています。
 最近では『欧州の悲劇』に効果がある治療薬の開発にも成功、正に才色兼備という言葉が相応しいですが10才までの過去の経歴が一切ありません。クレアにいたってはカナダ政府のメイン端末にもハッキングしたようですが該当する情報は無かったそうです、唯一判明したのは出生住所ですが……」

 ルイスは言い難そうに俺の表情を窺っている、俺の顔色を気にしてもしょうがないだろう。続きを促すように頷いてやる。

「出生住所ですが、カナダ政府所有の『遺伝子研究所』でした。ですが既にこの研究所は火災で機能を消失した為に閉鎖されています、その火災が起きた時期とアルフォードさんが公的な書類に登場するのが符合するのです。
 それと、国連情報部の古い記録の中にその遺伝子研究所の調査記録が載っていました。細かい内容までは不明だったようですが、進められていた研究の名前は『アリス計画』と名付けられていたそうです」

 ルイスが俺の顔色を窺った理由が良く分かった、もし仮に俺の想像が当たっていたらその研究所は倫理的に行う事を禁止されている研究をしていた事になる。だがまだ分からない、もしかしたら違うのかもしれないが捨て置くことも出来ない。

「ルイス、カナダ政府に公式に事情説明を要請しろ。渋るようなら我々の名前を出しても構わない、功樹に関係する事であれば上層部から独自裁量権を貰っている。だが非常にデリケートな問題だ、俺は息子を悲しませるのも将来の娘候補を傷つけるのも許可しない極秘裏に解決しろ」

 そう指示を出した後俺は腕を組んで考えを纏める。もし、今回の件にアリスちゃんが絡んでいるとしたらかなり面倒な事になるな。当初計画していた救出プランも変更しなければならないか? 

「隊長、テロ集団の身元が判明しました。例のカルト宗教です」

 別の部署と連絡を取っていたルイスが報告してきた。ふむ……この前の弾道ミサイルもそうだが今回の大規模なテロ活動も含めて考えるに、間違いなく背後にいるのは国家だろうな。資金・人員・装備などもはや一宗教がどうこうできるレベルではない。頭の中でこれからの予定を組んでいるとルイスが俺に自分の意見を伝える。

「今回の件、アルフォードさんが関わっている可能性は高いと思います。ですがもしかしたら完全に予想が外れている事もありえます。アルフォードさんが狙いなのでは無く、人工AI搭載型ロボットで小惑星から地球を救った『斉藤信吾』君や宇宙技術の開発で名前が知られている『相川恵美』さんも御子息の友人です。
 なんらかの理由で友人達を狙った可能性も捨て切れません。私としては詳しい情報が入るか状況に変化があるまで2人とも保護するべきだと考えます」

 その通りだな、全ての可能性を捨てきれない以上は今できる最善の手を打つべきだ。俺はルイスと部下に斉藤君と恵美ちゃんの保護を大至急行うように指示を出してから、再び思考を開始した。




----情報担当官 クレア視点----


 学院から功樹君を抱えて自衛軍基地まで撤退している最中、私はずっと生きた心地がしなかった。そもそも私の専門は情報分析であって実際にパワースーツを装着して戦闘を行うのは本分ではない、なんだって今日に限ってこんな事が起きるのだ! 
 しかも本来なら私の役目を担うスキンヘッドは学院の防衛戦に参加していたので、この撤退には随伴していない。あのハゲの任務は功樹君を守る事でしょうに!! 私達が防衛している最中にハゲが基地まで送り届けるべきなのだ。そんな事をブツブツ言っていると自衛軍の基地が見えてきた。
 非常事態宣言が発令されているせいだろう、かなりの数のパワースーツが稼動状態にあり周りには戦車が展開しているのが目に入る。そして基地のオペレーターから通信が届く。

「こちらは日本国陸上自衛軍である。そちらの所属を明かされたし、許可無く接近する場合は撃墜する」

 バカみたいな通信を送ってくる相手に私はついに我慢が出来なくなり怒鳴り返す。

「こちらは国連所属よ! すでにそちらの政府から通知が来ているでしょ!? 識別信号も出しているのにロックでもしたら即反撃するわよ。分かったらゲート開けて頂戴、このまま走り抜けるわ」

 そう宣言した後に速度を落とさずにゲートまで接近すると慌てたように横に開かれる、私達はその隙間を縫うようにして基地内へと走りこんだ。基地内の奥……厳重に警備された倉庫内で私は功樹君をそっと地面に下ろす。
 流石にあの速度で揺られ続けたのだ、まともに歩けないだろうと思っていたが意外にもしっかりとした足取りで歩いている。スーツを脱いで彼に駆け寄ると青い顔をしながらも私の事を思い出したようで、

「あぁ、ロケットのお姉さんでしたか。声に聞き覚えがありました」

「えぇそうよ、乗り物酔いが酷いでしょう? 薬を渡すから士官用の個室で休んでいて」

 私がそう言うと弱弱しく首をふりながら、しかし目だけはしっかりとした意思を湛えて反論してくる。

「アリスが心配なんです、通信用機材を貸してくれるか母さんに連絡を取ってもらえませんか?」

 功樹君には申し訳ないがそんな事は許可できない、取りあえず上に掛け合うと誤魔化しつつ個室で休んでくれるように促す。暫しの間考えている様子だったが、なんとか薬を飲んで休んでくれる事を約束してくれた……。彼を個室に送り扉を閉めた後、私は今日の朝自分が送った報告書を思い出す。
 もし自分の恋人が、アリス・アルフォードが『人工的に作られた人間』だと知っても功樹君はそれでも愛し続ける事が出来るのだろうか?




 数時間後、私は自衛軍が用意した秘匿回線を使用する通信室で映像通信を行っていた。画面には隊長が映っている、その横の画面には国連上層部の面々と各国の首脳に荒川美紀の姿もある。正に世界を動かしているメンバーを前にして緊張で心臓が早くなるのが分かった。

「それで、そちらの状況は?」

 隊長が代表して質問してくる、言葉に詰まりそうになるが落ち着いて返答する。

「現在、重要目標である功樹君は完璧に保護しています。また2時間程前に友人である斉藤信吾君と相川恵美さんも到着しました、こちらも厳重な保護下にあります」

 私が報告を終えると満足したように頷いて『ご苦労だった』と声を掛けて頂けた。隊長の隣に控えていたルイス副隊長が引き継ぐように説明する。

「我々、国連特殊作戦部では今回の一連のテロ行為は荒川功樹君の拉致に偽装した『アリス・アルフォード』さんの拉致計画だと断定しています、詳しくは皆さんのお手元にある報告書を御覧下さい。恐らくアルフォードさんの拉致が主目的であり、荒川君の拉致及び暗殺は副次目標だと推測されます
。カルト宗教を裏で操っている組織は『遺伝子研究所』になんらかの関係があるものと考えられますが現時点では不明です、この件に付きましてはカナダ政府から閉鎖された研究所の視察受け入れと、情報提供の約束を取り付けてあります」

 やはりあの子が関係していたのか、ならばここに来てから考えていた私の推測は当たっているのではないか? だがさらに説明は続く。

「全ての事実を明るみにする為にも、この事件の可及的速やかな解決が求められます。現在、国連常備軍を主体とした救出部隊を組織していますがテロ組織の規模が巨大な為『救出軍』と言い換えたほうが妥当かもしれません。 またテロ組織が日本から撤収した後、東南アジアにある無人島に全部隊を収容した事を確認しています。周囲が視界良好な海に囲まれているので接近は困難を極めます、この問題に付きましても解決方法を模索しています」

 その説明を聞いて私の推測が確信に変わった。表情の変化に気付いたのだろうか……隊長が私に意見があるのなら発言するように促してくる、私は情報分析官として今までの情報を自分なりに分析した考えを口にする。

「まず最初に結論を述べます、なんの苦もなく接近する事が可能なパワースーツが世界に1機だけ存在します。皆さんはお忘れではないですか? 単独で3200キロの距離を飛行可能、最高速度は音速を突破する事が出来て、大気圏外から地球に再突入すら可能であり光学迷彩も搭載している……まるでこの為だけに作られたような『第8世代機』がある事を」

 私がこう言うと画面に映る全員がざわめき出す。『全てを予測して解決方法を先に作る』これが功樹君が『悪魔の子』と呼ばれる所以の1つだろう。

「なぜ、海上で事故が起きた時に危険であるはずの試作機で現場に急行したのか? 人命救助が第一目標だと思いますがこれは試作機の実地試験を兼ねていたのでしょう、事実彼はスラスターの全力噴射を行っています。
 次になぜ『覗き』という下らない理由で光学迷彩を開発したのでしょうか? これは開発を急ぐ必要性があったが、周りに対する言い訳が思い付かなかった為の苦肉の策だったのだと推測できます。
 実際に開発が終了してスーツに搭載してからはそのような愚劣な行為は一切行っていません、そして何よりも試験機を海中投棄しているのにもう1度同じスーツを製作しているのが私の考えを証明すると思います」

 全てを言い終えると、画面に映る人たちが『そんな馬鹿な』『本物の悪魔なのか』『一体彼はどこまで先を見通しているのだ』等の声を出しているのが聞こえた。そんな中1人だけ沈黙を続けていた荒川美紀が発言する。

「では、貴女は息子が今回の状況になるのを予測していたにも関わらず放置していたと仰るのですか?」

 違う! 私が言いたいのはそういう事ではない!! お願いだからそんな虫を見る目で見ないで欲しい、私は冷や汗が流れる中必死に弁明する。

「そうではありません、恐らく功樹君は全て自分で解決するつもりだったのではないでしょうか。これは先ほども議題に上がっていた恋人であるアルフォードさんにも深く関わる事です。ここから先は根拠もない完全に私の推測ですが……。
 功樹君は独自のネットワークからアルフォードさんの出生の秘密を知ったのだと思います。確かに私達は功樹君の通信記録を調べていますが、全てを把握しきれるかと言われると不可能です。そして恋人の秘密を知った時、彼は拒絶するのではなく彼女を守る事を選んだのです。愛する人を傷つけないように全て極秘裏の内に始末するつもりだったのでしょう。
 私は最初にこの情報を見た時に『人工的に作られた人間だと知っても功樹君はそれでも愛し続ける事が出来るのだろうか?』と考えました、ですが彼が行った行動を説明の付くように考えると私の考えが酷く醜いものだと理解しました。功樹君にとってそんな事はどうでも良かったのだと思います。
 ただひたすら恋人とその秘密を守る為に誰にも相談せず行動した……、ですが予定外だったのは組織の規模が想像してたよりも遥かに巨大だったという事です」

私の推測を皆黙って聞いている。そして合衆国大統領が小さく言葉を漏らす、

「我々は、子供がたった1人で戦う決心をしているのに無駄な会議に時間を消費しているのか」

 その言葉を皮切りに会議は急速に進み始める。まず決まったのが救出作戦の囮役として功樹君に協力を要請する事だ、これは要となる第8世代機が彼にしか動かせない為である。
 この状態になってまでも子供に頼る事しか出来ない自分達に腹が立つが諦めるしかない。次にこの作戦の為に国連軍は全兵力の20パーセントを投入する、また混乱が続く日本以外の主要国からも援軍としてかなりの数の兵力が供給される事になった。そして肝心の作戦内容だが……荒川美紀の口から常識では考えられない方法が提案された。





----荒川功樹 視点----


 部屋で薬を飲んで暫く眠った俺は冷静な頭で物事を考えられるようになった。アリスが連れ去られた時は慌てて居た為にそこまで気が回らなかったが、アリスは『俺のパワースーツ』を装着していたのだ。あの母さんがルイン社に個人注文したスーツだ普通のモノじゃないとは思っていたが新型機を作る時に読んだ仕様書には、こう書いてあった。


『お客様のご注文されたパワースーツは最高レベルの要人保護用モデルを改良しています』


 つまりだ……あのスーツは30桁以上のパスワードを打ち込まない限り外から開けることは出来無いし、緊急モードにすれば2日間は中に篭ることが可能だ。それに座席の下には保存食や水も積んであるからなんにも心配はいらない。この事は一緒に仕様書を読んで苦笑いしていたアリスも知っているから今頃は緊急モードに変更して立て篭もっているだろう。
 例えパスワード抜きで無理やり開けようとしても『主力戦車の砲撃』にすら耐える装甲を持っているのだから簡単に開くはずもない、しかも無理に開けようとしたら周囲に催涙ガスが散布される鬼畜仕様だ。当事者であるアリスは不安だろうが、中で眠っていれば直ぐに救出部隊が迎えに行くはずだ。

「心配事が無くなったら腹減ったな……」

 俺は部屋から出て何か食べ物を恵んでもらう為に行動しようとしたが、タイミングよくこの基地まで運んでくれたお姉さんが部屋に入ってくる。

「功樹君、『日本宇宙開発団』のメガフロートに移動するわよ。それとお腹減ったでしょう? 移動中に食べれるようにサンドイッチを用意したわ」

 本当にこの美人なお姉さんは気が利くなマッチョの部下にしておくのは勿体無い、仕事やめて母さんの所に来ればいいのに……そんな事を考えながらヘリに押し込まれて移動を開始する。機内で渡されたサンドイッチを食べながら疑問に思った事を口にする、

「なんで僕だけ学院から連れ出されたんですか? 母さんの息子だからですか」

 このせいで特別扱いされるのは好ましくない。俺だけが危険な場所から逃げるというのは皆に対して申し訳なくなるし、俺のスーツを装着していたアリスが誘拐されたという事は犯人達の目的は『俺』だという事になるはずだ。その辺の事をきちんと聞いておきたい。俺がそう質問するとお姉さんは、諭すように教えてくれた。

「まずは、特別扱いだけど功樹君の友人である斉藤君と相川さんも保護してあるわ。貴方達は欧州の悲劇に効果がある治療薬を作ったのよ世界中のどの国でも特別扱いを受ける『義務』があるわ、自分達が出した成果に対する自覚を持って頂戴。
 相川さんは仲が良い友人だから特例措置ね、今回の襲撃で狙われる危険性があったから保護することが決定したの。次にアルフォードさんが誘拐された件だけど、正直分からない……功樹君を狙ったのかも知れないし彼女本人を最初から狙っていたかも知れないわね、どちらにせよ事件が解決したら捜査班が調べるべき内容で私の管轄外よ」

 そう教えてくれた後はお互い無言だった。俺は今言われた内容を考える時間が必要だし、お姉さんも手元の端末をずっと操作していた。1時間ほどして窓の外にメガフロートが見えてきた、こんな所まで来て何をするのだろうか? 俺はここまで来てやっと根本的な疑問を思い浮かべた。その事を質問しようとするより早くお姉さんが俺に指示をだす。

「降りたら直ぐに中央管制室に行って頂戴、そこで功樹君のお母さんが待っているから今後の予定を聞いてね」

 あーはい。そうですか……もうなんか全てが予定通りに進行している訳ですね、俺は付いていくだけで精一杯です。





 ざわざわと声が聞こえている管制室に入ると一瞬で周りが静かになった、俺は居心地の悪さを感じながらも母さんの所に向かう。俺が近づくのに気付いたのかこっちを見るなり口を開く。

「功樹、時間がないから要点だけを言うわ。アリスちゃんの救出戦に協力して欲しいの」

 はぁ!? なんで俺がそんな事するんだよ? いや俺に出来る事ならなんでもするが、ただの学生に出来る事なんてあるのかよ。俺がそういうと母さんはニヤリと笑いながら『こうちゃんにしか出来ない事よ』と言って来たがこれはアレだ……何かとんでもない事をさせられる予感がする。

「説明するから良く聞いてね、質問は後で纏めて聞くから今は内容を頭に叩き込んで。何度も言うけど本当に時間がないから集中して頂戴」

 母さんはそう言って大型スクリーンに映像を映し出す。

「捜査の結果アリスちゃんは東南アジアの無人島に連れ去られた事が分かったわ、ここがテロ集団の本拠地でもあるわね。現在、国連軍と主要国の軍隊が共同で奪還作戦を展開中よ。ただし問題があるの……島の周りは見通しの良い海で島に近づいた場合は即座にバレてしまうわ、よって海からの進攻は不可能、上空もレーダー網が張り巡らされてるから同じように不可能ね。
 そして最悪なのがこの海域に低気圧が近づいているという事、9時間後には大嵐になる予定で通過するのは約3日後。つまりはアリスちゃんが装着しているパワースーツが無力化する事になる、ここまでは良い?」

母さんの説明を噛み砕いて理解すると、9時間以内にアリスを救出しなければヤバイという事だ……俺は頷いて先を促す。

「でも1つだけ解決方法があるの。それは功樹が開発した新型のパワースーツを使って単機で島に強行突入、スモーク弾とレーダー網を阻害する電子妨害弾を島中にばら撒く事よ。その隙に上空から奪還部隊が降下して、アリスちゃんを救出した後速やかに撤退する方法よ」

 俺しか動かす事が出来ないアレを使うから俺に協力を要請したのか……成る程、理解できた。

「では手順を説明するわ。功樹には今から1時間30分後に打ち上げ予定の弾頭部に特殊なスペースを取り付けた弾道ミサイルに搭乗してもらう。衛星軌道上に到達した所で弾頭から分離、目標の島の手前30キロに向けて再突入を開始。
 この時の計算は地上からお母さんがするから心配しないで良いわ、上空1万メートルで忘れずに光学迷彩を発動させてね。その後2千メートルから自立飛行開始、レーダー網を避けるために高度15メートル以下を飛行しながら島に接近。島に到着するのと同時に高度40メートルまで上昇、後は手当たり次第に辺りに持ってきたミサイルをばら撒く……。
 終わった後は急速離脱して、反対側の迎えの船を準備させて置くから其処に着艦して頂戴。以上質問は?」

 質問は? じゃねーよ!! 言いたい事は山ほどある。そもそも成功するのかよ? 失敗した時は? 嵐が予定より早く到達したら? 考えたらキリがないが『俺しか出来ない』なんて言われたら答えは1つしか無い。ましてアリスを助けるためだ、俺は母さんに向かって返事をする。

「無い」

「いい返事よ、さすが自慢の息子ね。さぁ準備があるから向こうで着替えて詳しい搭乗の説明を受けて」





 詳しい説明を受けた後、俺は直ぐにパワースーツを装着させられてミサイルに押し込まれた。緊張しながら待機していると打ち上げを告げるアナウンスが聞こえてくる。

『打ち上げ、50秒前……49・48・47』

 正直怖い、ぶっちゃけ死ぬかも知れないのだから足が震える。

『30・29・28・27』

 だけど俺が行かないとアリスを助ける事は不可能になる、あの笑顔が見れなくなるなんてそんな事は絶対に嫌だ。

『10秒前……9・8・7』

 アリスが俺に言った『大好きだよ』というあの声が聞こえるような気がする。

『5秒前……4・3・2・1、発射』



「くそが!! 待ってろよアリス!! 必ず助けてやるからな」

 そう声を出し、俺は宇宙に向けて飛び立った。
+注意+
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