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異世界に転生したんだけど俺、天才って勘違いされてない? <旧題  転生したんだけど俺なんか勘違いされてない?> 作者:にゅん

学院編1年度 前期

25/77

襲撃

 このお話はジプシースズキさんのコメントから発想を得ています。
 薄暗い空間の中で数人が声を潜めて話していた。独特な白い法衣のような物を身に纏い、まるで200年以上前にヨーロッパで流行した秘密結社の雰囲気がその場を満たしている。

「それで、悪魔の様子は?」

「日本にある国際科学技術学院で研究を行っています」

 蝋燭が灯された机の上にある『荒川功樹』の写真をその場にいる全員が苦々しく眺める、そして上位者と思われる人物がしゃがれた声で問いかける。

「悪魔の誘拐計画はどうなっている」

 その問いに『万事抜かりなく』と数人が答えた後、しゃがれ声の主は重々しく頷き声を張り上げる。

「時は来た! 我が神の祭壇に悪魔の生き血を奉げるのだ!!」

 それに呼応するように部屋に明かりがつく……、視界が広がったその空間には数百機に及ぶパワースーツが稼動状態で待機しているのが見えた。







----荒川功樹 視点----


 今日はパワースーツを使った実技講義があるのだが、いつものように俺は不参加だ。せっかくだし前に俺が壊した後に皆で作り直した新型スーツを装着したかったのだが、学院長から『荒川君は参加しなくていいのよ、むしろ研究棟に居て頂戴!』と言われた為にコンと留守番する事になってしまった。
 俺が何やったんだよ? クラスの女の子に良い所を見せようと思ったのに……、そんな事を考えているとアリスが困ったように話しかけてきた。

「功樹君、私のスーツなんだけどメンテナンス中に部品の劣化が見つかったの。良かったら個人用スーツ貸してくれないかな?」

 あー、別に構わないけど前にバラした後に組み直してあったかな、信吾に聞いてみるか。

「ねぇ信吾、前に新型作った時に僕の個人スーツ分解したけどアレ直ってる?」

「フヒ? カルテット製のヤツだよね? 直して倉庫に置きっぱなしだよ」

 直っているのなら大丈夫だな。俺はそう判断してアリスに『持って行って良いよ』と許可を出すとアリスは嬉しそうに倉庫に向かっていった。信吾もそろそろ講義場所に行くようなので俺は親友のスーツの装着を手伝う。
 しかしゴツイな信吾のスーツは、元々の使用目的はなんだ? 背面部にある分厚い追加装甲を固定しながら俺は質問してみた。

「このスーツは第2世代の軍用スーツだよ。古くなって民間に売却されたのを買って貰ったんだ、元々は爆発物処理とかに使ってたモデルだね」

 なるほどな危険作業用のスーツか、機動性は全く無さそうだけど確かに頑丈そうだ。取り付けが終わり各部の異常が無いかのチェックを済ませると、信吾は振り返りながら外部スピーカーで話かけて来る。

「講義場所はこの研究棟から見えるはずだから、屋上に上って見学してなよ」

 音量調節をミスしている為にとんでもない大音量で俺に伝えた後、ズシン・ズシンと重たそうな足音を響かせながら去っていった。俺は今の音量でひっくり返っているコンを拾ってから屋上に向かうために階段を上がった。





 屋上に上がって周囲を見渡していると、パワースーツが集まっている一角を見つけた。俺のスーツもその一団に混ざっているのが見えるしアレで間違いないだろう。しかしアリスと信吾は分かるが相川さんはどれだ? 持って来ていた双眼鏡越しに眺めるが、顔が出るタイプを装着している中に相川さんは居ない。
 あっ、後ろから信吾のスーツを蹴ったヤツが居るな……機動性が悪いせいで後ろを振り向く迄にその後ろに回られている、ここから見ると信吾が混乱している様子が見て取れる。近くにいるアリスが止めないし、周りのクラスメイトもロベルタ先生に言わないところを考えると、あの紫のスーツが相川さんか。
 そのまま様子を伺っていると、今度は信吾が相川さんを掴みあげてアリスに渡している。渡されたアリスは何を思ったのか隣のスーツに渡している、そして隣がまた……という感じで何故か相川バトンが完成していた。

「楽しそうじゃねーか! ちくしょーーー!!!」

 思わず叫びながらコンを振り回すとイラッとしたコンに噛まれてしまった。やっぱ俺も参加するべきだったな……、そんな事を考えていると遠くから何かが破裂するような音が聞こえた。置いていた双眼鏡を構えて音がした方向を眺めると、街の方でパワースーツがジャンプしているのが見えた。
 市外地域での跳躍行動は禁止されてたはずなんだがな、それになんだあの数? 視界に映るだけで30以上はいるぞ。

タタタタッ!! ドンドン!!

「はぁ!? 銃声かよ、戦闘でもしてんのか」

 母さんと一緒に自衛軍の施設にも行った事があるので、さっきから散発的に聞こえていた音が銃声だと理解できた。この世界の日本は転生前と一緒で基本的に個人が銃火器を所持するのを禁止している、そんな中で銃声が聞こえるという事は銀行強盗などの凶悪犯罪でも起きたのだろうか? 野次馬のように興奮しながら更に近づくパワースーツを眺めて、俺は興奮していた気持ちが急速に冷えるのを感じた。

「肩に日の丸のペイントって、自衛軍じゃねーか」

 民間人が多数居る市街地で自衛軍が発砲するなんて、テロか戦争のどちらかしかない。まさか今日まで他国と平和に過ごしていたのに行き成り宣戦布告される事もないだろう、可能性が高いのはテロが起きたという事だ。
 学院はこんな近くで戦闘が行われているのを理解しているのか? 俺が皆が居る方に視線を移すと学院の警備員が避難誘導を開始している最中だった。とりあえずは安心だ……再び学院の外を眺めると自衛軍のスーツが撃墜される所が目に映った、しかもかなり学院に近づいてきている。
 これは俺も地下に避難した方が良さそうだな、そう思い立ち上がった時に屋上へ1機のパワースーツがジャンプしてきた。その肩に『UN』のペイントが書かれているのに気付き思わず声を上げる。

「国連軍? なんでこんな所に」

 俺が驚いて立ちすくんでいると、外部スピーカーから聞き覚えのある女性の声が聞こえた。

「功樹君、すぐにこの場所から離脱するわ。手荒な方法だけど許してね」

 俺の返答を待たずに目の前のスーツは俺を掴み上げて、そのまま戦闘が行われている方向とは逆に向かって移動を開始する。生身のまま抱きかかえられているので、揺れるし怖いしで漏らしそうになるが堪えつつ皆が居る方に顔を向ける。すでに学院を囲んでいる塀の一部が破壊され武装集団が講義場所に殺到しているのが分かった。
 まさかあいつ等の目的は『学院』だったのか? 信吾が相川さんを庇うように抱き抱えているのが見えたが、アリスが何処にいるか分からない。俺を運んでいるスーツの装着者の人に気になるから戻るように頼んでも、恐らく絶対に戻ってくれないだろうな。屋上にコンも放置してきちゃったしどうするか、悶々と考えていると更に国連所属だと思われるスーツが合流してきた。
 只事じゃないなコレは……、揺られながら黙って様子を見ていると周りのスーツが突然上空に向かって装備していたライフルを撃ち始める、俺も何を撃っているのか気になり空を見上げる。

「兵員輸送用のVSTOL機!?」

 間違い無い、あの機体は母さんが開発した新型輸送機だ。あんなモンまで出張って来るなんて本当にどうなってるんだ? その時、俺を運んでいるスーツが再び話しかけてきた。

「学院の塀を跳躍行動で一気に越えるわ、舌を噛まないように歯を食いしばって」

 言われた通りに奥歯をかみ締めて衝撃に備える。ドンッと一際強い揺れと共に塀を越える瞬間、輸送機に押し込まれる『俺のパワースーツ』の姿が目に入った……。





----荒川修一 視点----


「状況は?」

 俺がそう聞くと副官のルイスが説明を始める。

「本日0930時、日本海上空から日本本土に領空侵犯機が進入、能登半島から富山を経由し名古屋市への爆撃コースを取りました。0950時にスクランブル発進した航空自衛軍が侵入機を撃墜。しかしながら同時刻に東京湾沖合いに潜水艦が浮上、首都への攻撃を開始しました」

 首都東京への攻撃を許すなんて一体どうなっているのだ? 俺はやり場の無い怒りを静めるためにコーヒーを口に運ぶ。

「1010時、日本政府は一連の事態から大規模なテロ攻撃を受けていると認定、国民保護プログラムに基づき国家非常事態宣言を発令しました。1015時、自衛軍の全部隊に戦闘準備命令と即時反撃許可命令が下りこれにより自衛軍は現在戦闘行動中です。
 1030時、東京湾に浮上していた潜水艦を撃沈しました。ですが1045時、学院都市沖に同型の潜水艦3隻が浮上し搭載していた兵員を展開、『国際科学技術学院』に向けて進撃を開始しました。報告を受けた都市防衛隊が阻止作戦を行いましたが壊滅、1103時に学院への侵入を許しました。
 御子息に付きましては、侵入を許したのと同時に今日の護衛担当だったクレアの部隊が救出に成功しており最寄の自衛軍基地に避難しています。またクレアの独断で部隊から一部を選抜、学院の防衛に当たらせました。先ほど学院を掌握したと報告が来ております」

 取りあえずは胸を撫で下ろす……もちろん被害にあった人間もいるだろうが父親としてはやはり息子が一番大事だ、それにクレアも良くやってくれたな。ルイスも『学院での死亡者は0です』と言っている。だがやはりテロ集団の目的は功樹だったのか? その辺りの調査の進展を聞く。

「現時点では、一連のテロ集団の行動は御子息を拉致した後に日本政府から追撃を回避する為の妨害工作だと推測されています。これは何らかの理由で御子息のパワースーツを装着していた『アリス・アルフォード』が拉致された事からも濃厚だと思われますが」

『思われますが』なんだ? 何を言い淀んでいるのだルイスらしくも無い。

「私見ですが、私は違うと思います」

 ほう、全ての状況が目的は『功樹』だと示しているのにルイスは否と言うのか。これは聞いてみる価値はあるな……

「なぜそう思う」

「ここまでの武力・組織力を持つような集団が、はたして目標を『間違える』事があるでしょうか? 確かにアルフォードさんは御子息の個人用スーツを装着していました。
 ですが御子息はこの前『第8世代機』を開発されています、そしてソレをつかって大規模な事故に対する救助活動も行っています。あの行動はニュースにもなり世界中に報道されていますよね」

 確かに功樹はこの前、大型客船とタンカーの衝突事故の時にいち早く駆けつけて救助活動を行っている。あの勇敢さは父親としても鼻が高い。

「それならば普通は『第8世代機』の方を装着していると考えませんか? それにもう一点。アルフォードさんの事についても疑問があります。御子息がお付き合いされているとの事でしたので、クレアとエリスが彼女を調査していました」

 そんな事を頼んだ記憶は無い。まったくあいつ等は功樹を可愛いがるのは良いが、仕事の権限と機材を使ってなにをやっているんだ! この件が片付いたらコッテリと絞ってやろう……。

「これは今日の朝に調査途中の報告として送られて来た内容ですが、『アリス・アルフォード』という人間は存在しません」




今日は俺の人生で一番『驚愕の報告』が入って来る日のようだ。




2102年6月30日、日本は未曾有のテロ攻撃に晒される。全ての状況からテロ集団の目的は『荒川功樹』の拉致と推測されるが現状ではその目的に失敗、間違いで拉致した『アリス・アルフォード』をつれて日本国内から撤収を開始している。
 少し長くなる予定の4部作の始まりです。この4部作は既に書きあがっているので毎日更新になります。実は昨日の夜に予約投稿間違えて今日の設定にしていたのをさっき気付いたのは秘密。
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