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異世界に転生したんだけど俺、天才って勘違いされてない? <旧題  転生したんだけど俺なんか勘違いされてない?> 作者:にゅん

学院編1年度 前期

23/77

肝試しに行こう!

 このお話は、孔明の罠~さんからのコメントで思いついたお話です。
 それと雷風さんから挿絵を頂いたのですが……、チャバネ君も一緒に書かれているので本編への挿入を断念しました。詳しくは『挿絵を頂きました、チャバネ君編』をぜひ御覧下さい。かなりカッコイイです!
----荒川功樹 視点----


「荒川君、肝試しに行かない?」

 コンが咆哮でブッ飛ばしたカップを片付けている最中、相川さんが突然言った。俺が『あー、疲れてるのかぁ』という目線で相川さんの方を見ていると、彼女は慌てたように否定してきた。

「ち、違うからね! 私は幽霊が居るなんて信じてないから。学院七不思議の噂を解明をしたいの」

 またベタな噂だな……、なんで学院に入学した挙句に七不思議の解明をしないといけないんだよ。しかもまだ6月だぞ! そういうのは8月とか夏の暑い時期にキャッキャ・ウフフしながら盛り上がるためのイベントであって、間違っても今の時期に、それも本気で取り組むような内容ではない。

「私は良いと思うけど」

 なんとなく一番反対しそうなアリスが乗り気で賛成してる中、俺は横目で信吾を眺めるが諦めたように首を横に振っている。これは付き合わされる流れか……最近の俺は周囲に流される事が多い気がするし正直面倒だから断りたい、そう判断してアリスに『僕はちょっと』と言おうとした瞬間、

「駄目かな? 功樹君」

 潤んだ瞳でダメ押しされてしまった。これは卑怯だ断れる訳がない、結局いつものように俺はなし崩し的に付き合う羽目になった。

「それで相川さん、その噂って何?」

 どうせ噂なんて尾ひれがついて話が大きくなっただけの筈だ、内容を聞けば大方の予想は付く……俺はそう考え相川さんに噂の内容を質問した。すると相川さんは怖がらせようとしているのか、いつもより低い声のトーンで話始める

「1つ目は枯れない桜の話。中庭にある桜の1本が他の桜が散っても『必ず』そのあとも暫くは咲き続けて一斉に花を散らすんだって。2つ目は医学研究棟の地下室。ここでは毎晩、男性の悲鳴が聞こえるとか。
 3つ目は物品庫の怪。中等教育部にある運動部の物品庫で夕方になると薄い人型が僅かにあいてる窓から覗くらしいの」

 ふむ、ここまでの噂なら予想は付くな。俺は何点か相川さんに質問した後に、満足する答えが帰ってきたので続きを促す。

「4つ目は踊る人影。人が居なくなると薬品研究棟の3階に踊る人影が現れるんだって。5つ目は時計塔の番人。時計が21時を指す瞬間に時計塔の中に居ると番人の怒りを受ける。
 6つ目は正門の消失。夜、学院から帰ろうと正門の前を歩いていたら目の前に居た学院生が一瞬で消えちゃった話。7つ目は……」

 7つ目の噂で押し黙る相川さんに俺達は『早く続き!』と詰め寄る、だがメンバー全員を見渡しながら相川さんはこう言った。

「しらない」

 その言葉を聞いた瞬間に皆が崩れ落ち、コンに至っては腹が立ったのか相川さんの足に噛み付いているのが見える。知らないってそれじゃ六不思議じゃねーかよ! 俺が文句を言うと

「7つ目が分からないから、それ自体が不思議なの!」

と逆切れしている。まぁ良い、とりあえず噂の内容と大体の真実は分かったから後は1つずつ説明していくだけだ。

「僕は取り合えず予想付いたけど、皆どうする? 実際の場所に行って説明した方が良いかな」

 俺がそう言うと全員で真相を確認しに行く事になった。面倒だが仕方ない、取り合えずアレとアレを持って……それにあの道具もあった方が良いな。俺が持っていく道具の算段をしていると相川さんが信吾に近寄り何事かを囁いている。

「シン君、怖いから手を繋ごう」

「フヒ!?」

 結局お前らはイチャイチャしたいだけじゃねーかよ! くそが! 妬ましいんだよ!! 口には出さないが信吾を殺せるくらいの眼力で睨みつける。それに気付いたのかアリスが笑いながら『私達も手を繋ごう』と言ってくれた、そんなアリスはやっぱり可愛い……。





「それじゃ時間的な理由もあるから、まずは2つ目の医学研究棟から行くよ」

 俺がそう言うとまだ明るいせいもあるが、皆特に怖がりもせずに付いてくる。信吾は『地下室って遺体安置室とかあるし』と若干腰が引けているが俺の予想だと、間違いなくアレがある。

「相川さん、さっきも聞いたけど今から行く場所って基本的に教職員の出入りはないんだよね?」

「うん、管理は生徒に任されている筈だけど」

 ほぼ決まりだな……、そう考えて居ると問題の悲鳴が聞こえる地下室の入り口まで来た。俺はちょっとイタズラ心が沸き信吾に扉を開けるように伝える、怖いのか渋る信吾に俺は『彼女に良いところ見せたくない?』と囁く。すると決心したのか、

「フヒ! 開けるよ」

と言いながら扉を勢い良く開けた。



目に入ってきたのは『マージャン卓』だった。



 俺は想像通りの光景に小さくガッツポーズをするが、横では扉を開けた信吾も隣に立っているアリスもポカーンとした顔しているので説明する事にした。

「教職員も来ない『特別高等学部』の研究棟で、夜な夜な男が集まってやる事といったらマージャンくらいしかないよね。しかも心霊話で人も来ないってなったら尚更だよ、悲鳴も負けた人間が出してたんだと思う」

 俺の説明を聞いたアリスが『なーんだ』と呆れている。噂なんてそんなモンだよ、俺がそう言うと笑いながら肯定してくれた。さて次は……って今何時だ? 時間によって向かう場所が変わるんだが。俺がそう考えながら端末で時刻を見ようとしていると、それを察したのか信吾が

「16時30分だよ」

と教えてくれた。さすが親友だな! 俺が尊敬の眼差しで見つめていると相川さんが、

「シン君、時計いつもとつける腕逆なんだ」

と珍しいものを見るように言った。まぁ、信吾だって気分によって変えたりするだろ俺も端末つける腕を日によって変えるしな。しかし16時か……なら次は3つ目だな。





 俺達は学院の端にある運動部が使う体育館の3階テラス部分に来ていた。ここからなら丁度良い感じに物品庫の裏側が見える、持ってきた双眼鏡で眺めているとゆっくりと窓が少し開いたのが分かった。

「やっぱりだった」

 俺がそう溢すと相川さんが俺から双眼鏡を奪い物品庫を眺める、そして怒ったように声を上げた。

「あれ、タバコ吸ってるんじゃない!?」

 そう……、相川さんの言う通りにアレは中等部の生徒が『シケモク』を吹かしているのだ。ちょっと悪ぶってみたい年頃なので気持ちは分からんでもないが、いかんせん場所が悪い。下手をしたら火災の危険性もあるので注意をしようかと思ったのだが、いち早く相川さんが生活指導の教員の端末にメールを送っていた。
 そのまま暫く眺めていると教員が走って来て物品庫の中に飛び込んでいったのが分かった、あれはコッテリと絞られるな。

「あんなところで危ないし、法律違反はいけないわ」

 相川さんは怒りが収まらないのかまだ怒っている、それを宥める信吾を見ながら俺は次の場所に皆を誘導することした。





 着いた場所は学院付属の植物研究所……、確か中庭の桜はここの管轄になっている筈だ。アリスはもう予想がついた様子で1人で頷いているが、俺はアリスに中庭の桜について研究員に聞いてみるように促す。

「ああ、中庭の桜かい? アレは我々が品種改良した桜で長い間花をつけるんだよ。もっとも不完全で散る時は一晩で散っちゃうから、そこが改善点だけどね」

 アリスに質問された研究員の男性は実に簡単に答えた。簡単に七不思議の謎が解明されるにつれて、皆のテンションが下がってきたのが感じられる。というかぶっちゃけ予想通りすぎて俺が帰りたい! たしか今日は18時から大好きな動物のドキュメンタリーが放送されるんだが、今すぐ帰ってそれを見たい。もう解散で良くないか? そう思い聞いてみる

「まだ続ける? 他の噂も真相はこんな感じだと思うけど」

「どうせなら全部知りたい!」「コン!コン!」

 相川さんとだけではなく、まさかの『コン』が続行を提案した。信吾とアリスも『ここまできたし』と半ば惰性で続けたいようだ、俺は溜息が出そうになるが次の場所に移動する。たしかココの2階から薬品研究棟が見える場所がある、全員でその場所に向かい薬品研究棟を眺めているとコンが何かに気付いたように鳴き始めた。

「人が踊ってる?」

 アリスが薬品研究棟の端にある部屋に人影がいるのに気付いた。俺もその部屋を見つけるが、またしても予想が当たったのにいい加減うんざりしてきた。あれならいつも俺の研究棟で見れる光景だ。

「換気だよアレ。いつもアリスが帰る前に研究室でやってるでしょ? 匂いとかを外に出すために団扇とかで扇いでるんだよ、アリスと違って動きがバカっぽいから踊っているように見えるけどね。『人が居なくなったら』ていう理由も帰宅する時にやってるんだから人間はあの人以外にいないよ」

「私も外から見たらあんな変な動きしてるのかな……」

 アリスがしょんぼりしながら囁くのが聞こえたが、気にせず5つ目の時計塔へと向かう。




「えっと、今は18時50分時だから丁度いいね」

 俺がそう言うと信吾が不思議そうな顔して俺に質問してくる。

「功樹、問題の時間は21時じゃなかった?」

 俺はその質問に笑ったまま答えず、持ってきたグラスに水をいれてから時計塔の中に入り置いてきた。そして皆の方を振り返り説明する、

「後3分で時計塔の鐘がなるから、耳を塞いだほうが良いよ。コンお前は一旦僕の鞄に入って小さく丸まってろ」

 そういうと全員耳を塞ぎ、コンはいそいそと俺の鞄に入り丸まった。その時大音量で時刻を知らせる鐘が鳴り響くが、これがまたアホみたいにウルサイ! 最初は中に入ろうかとも思ったがやっぱりグラスだけ入れて正解だったな……。鐘が止んだところで俺は時計塔の扉を開けて中に置いたグラスを見せる。

「コン!?」

 コンが酷く驚いているのが分かる、まぁ生まれたばかりのこいつに『割れたグラス』の理由を理解しろって言うほうが無理か。他のメンバーもあまり理解していないようなので簡単に説明する。

「音の振動だよ、それが番人の怒りの正体。さっきコンが研究棟で咆哮を上げた時にテーブルの上のカップ類が吹き飛んだでしょ? アレと一緒。人がこの中でまともに鐘の音を聞いたら脳震盪で倒れると思う、音響手榴弾とかも同じような原理だし」

 そう教えると、納得したように頷く。よし、最後は正門の謎だけで終わりだ! これが終われば帰れる……俺は面倒事から解放される嬉しさで軽い足取りのまま正門へ向かった。




 正門に着いた俺は場所を考えて皆を待機させる。多分あそこなら大丈夫だと思うんだが自信がない、失敗したらまた車が来るのを待つ羽目になる。そんな事を考えていると学院内から車が来た! ふむ、丁度良いタイミングで道路側からも車が来たな。俺は待機している皆に聞こえるように声を張り上げる。

「一瞬だけだから、良く見ててね!」

 そして、俺を中心に車のヘッドライトが重なる……。上手くいったか? 不安な気持ちで皆の方を眺めると『消えた!』と騒いでいる、どうやら成功したようだ。車が通過した後に信吾が走り寄って来て俺に詰め寄る。

「フヒ! 今のなに? 何が起きたの」

「蒸発現象だよ、グレア現象とも言うね。夜間車のヘッドライト同士の中間地点にいると姿が見えなくなる事があるんだよ、交通事故の原因にもなる危険な現象の1つだね。たぶんこの瞬間に正門の横を曲がって視界から完全に外れたら、本当に居なくなったって誤解する事もあるかも知れない」

 俺が少し得意げに説明すると、感心したように頷いていた。結局噂なんて全部、話が大きくなっただけなんだよな。すこし不思議な事があるとすぐに広まる、それが楽しいって事も理解できるが巻き込むのはやめて貰いたい。その時もう一台車が学院内から出てきて俺の前で止まるとウインドーを下げて話かけてくる。

「あら? 荒川君じゃない。こんな所で何をしてるの、貴方は登下校は車の筈よね」

 窓から顔を覗かせて聞いて来たのは学院長だ、俺が今までの説明をすると笑いながら苦言を言われてしまった。

「そうなの、でももう遅いから帰りなさい。斉藤君も相川さんもアルフォードさんも居るんでしょ? 皆帰って夕食の時間ね」

 そう言い残して去っていく学院長を見送りながら、俺達もそれぞれ家路についた。






 家に帰り、夕食を食べていると俺の個人端末がなった。『こうちゃん、食事中よ』と母さんに小言を言われるが聞き流しつつ、受信したメールを開く。

『功樹、ごめんね! ボク途中で帰ったけど七不思議は全部解明したの?』

 信吾のメールにそんな事が書いてあった。何を言っているんだ? お前は最後まで一緒に居ただろう、俺はそう返信するが直ぐに返ってきたメールを見て凍りつく……

『なに言ってるの? ボクはマージャン卓を見つけた直ぐ後に用事があるから帰ったし、恵美ちゃんとアリスちゃんも『中庭の桜』を解明した後に一緒に帰ったって連絡来てたよ? 功樹は気になるから続けるって1人で薬品研究棟に向かったらしいけど、違うの?』







俺は今日『誰』と一緒に居たのだろう。






---山本香 視点----

 私は車を運転しながら笑いを堪えていた。あの荒川君も子供らしい一面があったようだ、まさか七不思議の解明をしているなんて真顔で言われるなんて思っても居なかった。彼はなにか勘違いしていたが、きちんと7つ目の不思議な噂はある。
 私がこの学院に着任した時に生徒から聞いた話だが、確か『写し鏡の噂』だった筈だ。内容はこの学院のどこかにある鏡の前を通ると、自分の知っている人間を真似するナニカに騙されるという内容だった筈。そんな何処にもあるような子供が喜びそうな噂だ……。

「それにしても」

私の口からポツリと言葉が出る。

「それにしても、荒川君は『1人』で正門の前に居たけど他の人は何処にいたのかしら?」

 私が来たから皆驚いて隠れたのかしら? そんな事を考えながら私は家に向かって車を走らせ続けた。
 今回は今までと違ってホラー風にしてみました。勘違い要素は主人公が回りの友達を本当の友達だと思っていたところです。
 分かり難い勘違いですけど、たまには良いのではないでしょうか? それと次の更新ですが、また3日くらい空きます。私用でゴタゴタしているので申し訳ありません。
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