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異世界に転生したんだけど俺、天才って勘違いされてない? <旧題  転生したんだけど俺なんか勘違いされてない?> 作者:にゅん

学院編1年度 前期

20/77

研究棟完成 (挿絵あり)

プロローグの前に挿絵を挿入しました、御覧下さい。あと今回は勘違い成分は少しです。追記です、主人公の挿絵を挿入しました。
----荒川功樹 視点----


 学院での昼食の時間、最近では斉藤君とアリスちゃんの他に相川さんを含めたメンバーで食事をしているのだが、相川さんが思い出したように俺に向かってこう言った。

「そういえば、荒川くんの『研究棟』っていつ完成するの?」

 おい、そんな話を俺は知らんぞ。そもそも俺はこの学院だと倫理の授業を受けるだけでいいはずだ、研究室を持つ必要はない。そう考えていると

「確か噂では地下にも研究室があるんだよね? 私も気になる」

 アリスちゃんまでもが聞いてきた。俺の知らないところで何が進んでいるんだ? 不安になりつつ斉藤君に確認してみる。

「斉藤君、僕の研究棟って何?そんな話知らないんだけど」

「フヒ? 前に全員の端末に概要が送信されてる筈なんだけど、確か荒川君が多少危険な研究をしても平気なように第2研究棟の裏辺りに建設中の建物だよ」

 全く知らんぞ。俺は慌てて自分の端末を操作するが、そんな物の受信履歴は見当たらない……。斉藤君に頼んで同じものを転送してもらうと、頭が痛くなりそうな事が書いてあった。



 学院より、在籍中の生徒への連絡事項。

 現在、学院内にある特別高等研究棟の裏に新しい研究棟を建設中です。また危険物を保管する可能性も多分にあるために、内部情報は機密保持の目的で公表はされません。そのため、建設中の建物に許可なく近づいた場合は警備員に拘束される可能性があるのでご協力をお願いします。なお完成後は学院に在籍している『荒川功樹』君が使用予定です。


 え? なにこれ、俺どんだけ特別扱いされてんだよ! そういえば噂で建設中の建物の辺りをうろつくスキンヘッドが出没する話を聞いたが、まさかアイツも関係してるのか? いや、それよりも何故本人に通知がないままこんな事になってるんだ……。俺は必死に考えるが答えが出ない。とりあえず学院長に相談するべきだろう、俺はそう結論を下し

「ごめん、ちょっと学院長の所に行ってくる。今日はもう多分こっちに戻ってこないから、先帰っていいよ」

 俺は皆に伝えてから学院長室へと急いだ。




 学院長の部屋に入ると何故か怯えたような顔で俺を見ている。俺は何にもした覚えはないのだがとりあえず笑顔で質問を投げかける、

「僕の研究棟なのですが、あれはどういう事ですか? 何も聞いていなかったのですが」

「あら? 私は荒川君の家にある端末に内容を送信したわよ。ちゃんと返信も届いてるわ」

 そう言ってプリントアウトした紙を俺に見せてくる。そこには確かに俺宛に研究棟に関する内容と設備に対する要望がないかと書かれていたのだが、俺はこんなもの見た覚えも返信を書いた覚えもない。なにかおかしい、そう思い返信者のアドレスを確認すると『M-arakawa』と書いてあった……。
 おい! 母さん勝手に何やってんだよ!!! 息子宛に来た通信に返信してんじゃねーよ! しょうがないこの件は家に帰った時に母さんに文句を言うとして残りは『特別扱い』だ。そんな事されても俺は嬉しくないし、他の生徒に反感を買うだけだ。俺は学院長に文句を言うが

「それは気にしなくて良いわよ。特別予算も組まれているし、何より危険な研究を他の生徒が居るところでして欲しくないの」

 そう返されてしまった。危険な研究なんてしねーよ……なんでそんな勘違いされてるんだ、俺はアブナイ人間って認識でも持たれてるのかよ。駄目だ、これ以上なにか言っても俺の心が折れそうになるだけだ。俺は早々に諦め元凶である母さんに会うために家に帰る事にした。




「お帰り、こうちゃん」

 家に帰ると母さんが笑顔で出迎えてくれる、いつもなら俺も和やかに返事をするのだが今日はそうもいかない。

「母さん、コレなんだよ。なんで俺宛に来たヤツに返信してるの?」

 そう言って俺は、学院長から貰った紙を見せる。

「だってこうちゃん、研究に必要な物とか安全基準とか知らないでしょ」

 確かに知らないけど地下30メートルにある隔離研究室なんて必要なのかよ、この他にも放射線室や減圧室までもが揃っている。そもそも地上3階建ての地下付きの研究棟なんていらねーだろ! 俺は少し怒りながら母さんに伝えると、それ以上に怒りながら答えてくる。

「なに言ってるの! コレくらいの安全基準は普通なのよ。こうちゃん、研究者っていう者は他の人間の安全を考えないと駄目よ。ウイルスの研究を行う時だって『自分だけワクチンを接種しているから大丈夫』じゃなくて事故が起きた時には建物ごと閉鎖するのが普通なの! だからこそお母さんが要望を出して規定を満たす建物にしてもらったのよ」

 なんで、俺がそんな危険なモノを研究する前提で話進めてんだよ! おかしいだろ。というかそんな事言って母さんも自分の部屋で研究してただろ、アレはいいのかよ。

「お母さんの部屋は鉛製の枠で覆われてるのよ? 問題があれば中にいる人間ごと閉じ込めるようになってるの」

 そうなの!? そんな事15年くらいこの家で暮らしてたけど初めて知ったわ!! くそ、文句を言うはずだったのに微妙に常識がない俺が悪い的な状況で終わるのが悔しい……。
 せめて何か反撃したい、俺はそんな子供みたいな事を思いに駆られ内容を考える。そして1個だけだが、母さんが言い返せない内容が浮かび口にする。

「シャワールームは兎も角、仮眠室とか調理室まではいらないでしょ? 衛生面とかでも問題あるし」

 俺が少々勝ち誇った顔で言うと、更に勝ち誇った顔で母さんが俺に返してくる。

「そうね、必要ないかもしれない。でもねこうちゃん、それがあると研究棟に泊まれるわよね? という事は『アリスちゃん』が徹夜で研究する時とかにシャワーが使えると喜ぶと思うし、調理室でご飯を作るかもしれないわね。まぁどうしても要らないって言うのなら、今からでも別の機材を搬入してもらうけど」

「申し訳ありませんでした母上、二度と口答えは致しません。ですので後生ですからそのままにして下さい」

 俺はそう言って何処かに通信を送ろうとする母さんを止めるために土下座をするしか無かった。




「という事があってさ、なんで僕が危険人物になってるんだよ」

「フヒヒ、荒川君も大変なんだね」

 翌日、早めに学院に来た俺は学食のテーブルで斉藤君に愚痴を漏らしていた。話を聞いている斉藤君はいつもの様に俺の心境を理解してくれる、親友が出来てよかったなとしみじみ感じているとある事を思い出した。

「斉藤君、僕たち親友だよね」

「うん、ボクはそう思っているよ」

 ふむ、俺と同じように考えてくれるならきっと大丈夫だと思う。断られたら不登校になりそうだけど頑張ってお願いしてみるか。

「じゃさ、これから信吾って呼んでいい? 僕の事も功樹でいいからさ」

「フヒ!? 良いの?」

 おう、勿論だよ! むしろ俺はもっと早く言いたかったのだが切っ掛けが掴めなかった。アリスちゃんと付き合う事にもなったしそろそろ斉藤君とも名前で呼び合ったほうがいいだろ。

「そうだ荒……じゃなくて功樹が昨日帰ってから、学院長に研究棟のセキュリティーカードを渡してくれるように頼まれてたんだ。今日から入れるって」

 信吾は鞄の中から俺にカードを出して渡してくる。後から全員で見に行こうかなと考えていると、ちょうど良い時にアリスちゃんと相川さんが来た。

「今から僕の研究棟見に行かない? 信吾からセキュリティーカードも貰ったし、今日から入れるって」

 俺がそう言うと信吾も相川さんも賛成してくれたがアリスちゃんが黙っている。そして俺を振り返り

「私もアリスがいい」

と言い出した。なんの事だ? 理解が出来ずに質問すると脹れたようにジタバタしながら

「呼び方! 『アリスちゃん』じゃなくて私も斉藤君を呼ぶみたいに『アリス』って呼んで」

そんな事か……、俺は笑いながら『アリス』と呼ぶと嬉しそうにしてくれた。




「ここが、功樹君の研究棟なの? 凄い」

 アリスが驚いているようだが俺も驚いている。なんだよコレは、この前に行った次世代科学研究所と同じくらい凄いぞここ。正面の入り口は3重に保護され、内部の主要な部屋は全て網膜と静脈のスキャンを行わなければ入室出来ないシステムになっている。こんな所1人で使い切れんぞ……、俺が思わず口にすると

「じゃあ、このメンバーで使えば良くない?」

 信吾が名案でしょ? とばかりに俺に言ってくる。それもそうだな、他のメンバーに聞いて賛成してくれるならそれが一番だと判断して聞いてみようとしたら

「じゃ、私は3階を使うね。アリスちゃんは2階でいい?」

「うん、私は薬品とか使うから頑丈な薬品棚がある方が良いしね。斉藤君は一番危険が少なそうだから1階の奥でいいと思う」

 女性陣がすでに使用する部屋を割り振り始めていた。そうかこの流れだと俺が『地下』になるのか、俺は信吾の方を泣きそうな顔で眺めるが速攻で目を逸らされる。

「信吾、僕は地下に行きたくない」

「無理だよ、ボク達が何か言っても恵美ちゃん達は絶対に聞いてくれないよ?」

 甘い! 甘すぎるぞ信吾、そんな事は最初から分かっている。俺が言いたいのは『一緒に1階を使おう』という事だ、俺の考えを教えると

「ボクは良いけど、功樹は良いの? 『友達』を家から持って来るつもりなんだけど」

こう返されてしまった。仕方ないが諦めるしかない、信吾の『友達』と仲良くするのは俺には無理だ。結局その後暫くして決まった部屋の割り振りは


3階と屋上にある高速通信設備……相川さんが担当。
2階と薬品関係の機材……アリスが担当。
1階奥と電子工学設備……信吾が担当。
地下にある隔離研究室……俺が担当。


 その他の設備、例えば仮眠室やシャワールーム等の共有部分は全員で担当することになった。皆はにこやかに自分の研究室から使っていた物を移動する準備をしていたが俺はどうも明るくなれない。
 結局俺だけ地下30メートルとか意味の分からん所に隔離される事になったせいだ。やっぱり信吾の所に行こうかと考えながらいじけていると、アリスが照れた様子でこう言った。

「功樹君が地下なら、誰にも邪魔されないで2人だけになれるね」




案外、地下でもいいと思います!!





----荒川美紀 視点----


「はい、えぇ分かりました。それでお願いします、それでは」

 私は少し疲れながら通信を切る、今まで話していたのは功樹の警備担当者だ。功樹の身に何かあった場合に備えて、研究棟の壁にある『秘密部屋』の中に常に警備の隊員が待機するようになる。
 警備の他にもあの子が血迷って『極度に危険な物』を製作しようとした場合に止めに入ったり、『事故が起きた場合』は即座に救出と避難誘導を行う事になる。そうだ……もう1つ忘れていた、私は警備隊が必要な装備を思い出しもう一度通信を送る。

「申し訳ありません、もう1つ必要な装備をお伝えするのを忘れていました。必ず人数分の『CBRNE防護服』を揃えて下さい、足りなければ私の方でも調達します」

 通信の向こう側で渋る声が聞こえるが、私はイラつきながら担当者に怒鳴る。

「重要性を理解していないようですね。いいですか? あの子は過去に自宅の庭にさえ化学兵器を使用したのですよ、あなた方は防護服も無しに功樹の研究室に入る勇気がありますか」

 こう言うと担当者はやっと理解したようで慌てて準備すると言いながら通信を切った。後は学院長か……、

「山本さんですか? 荒川美紀です、いつも息子がお世話になっています」

 私が通信を送ると学院長は少し慌てたように返事をしてくる。

「確か貴女は自衛軍と親密な関係にあるそうですね? いえ……、そうです。別に咎めている訳ではありません」

 どうやら私が功樹に対する自衛軍の派遣要請に対して怒っていると勘違いしているようだ、その件については多少の怒りはあるが今回はその用件ではない。だが言葉に棘が出るのは多めに見て欲しい……

「その自衛軍の防衛部隊に、功樹の研究棟で事故が起きた場合は『全力で熱攻撃処理』を行うようにお願いできませんか?」

 もちろん、功樹と友人達が無事に脱出してからだがと付け加えながらお願いする。しばらく考えている様子だったが、意味を悟ったのだろう自衛軍と掛け合ってくれるそうだ。
 よし、これで功樹が何を作っても対処できるようになった筈だ。あの子が核兵器でも作らない限りは大丈夫……だが本当に作らないだろうか、何かの拍子に『イラッとしたから核兵器でも作ろう』とか思わないか? いや、流石に私の考えすぎだろう国際条約に違反してまで作る筈がない。






「もしもし修一さん? あのね、功樹が万が一だけど核兵器を作った場合は……」

 私の睡眠時間は今日も少なくなりそうだ。


挿絵(By みてみん)


主人公のこれからの拠点をやっと追加しました。ここまで来るまで寄り道し過ぎましたね、反省しています。
+注意+
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