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異世界に転生したんだけど俺、天才って勘違いされてない? <旧題  転生したんだけど俺なんか勘違いされてない?> 作者:にゅん

学院編1年度 前期

17/77

アラカワ粒子

活動報告でも書きましたが、主人公が主人公らしさを取り戻すためにお送りする、全3話のお話の1話目です。プロローグだと思ってください。
 『重大事故発生、研究ブロックE-2は閉鎖されます。研究員は至急避難して下さい、繰り返します……』

 無機質な機械音声が警告を告げる中、俺は何でこんな事になったのかと頭を抱えていた。反対側のブロックから母さんが喚いているのが見える……。もういいよ、早く避難しろって! 俺がこの装置の停止プログラムを打ち込むから何も心配すんなよ。
 元々は俺が余計な事をしたからこんな事態になったんだ。責任ぐらい取るさ、俺はまだ避難もせずに何かを叫んでいる母さんの方を向いて

「今まで育ててくれて、ありがとう」

となるべく伝わるように、大きく口を開けて言った。それから目の前にある『粒子変換機』にプログラムを打ち込む、どうやら自己崩壊が始まったようだ……、俺の周りの景色が急速に歪み始める。




やがて、唐突に視界が消えた…………。




----荒川功樹 視点----

 今日は、学院を休んで母さんがメインで働いている『空間粒子研究施設』に来ている。なんでも、新粒子の観測を手伝って欲しいと母さんに言われたのだ。俺が居ても全く役に立たないのだが、笑顔で「お願いね」なんて言われると断るに断れない……というか多分断ったらマッチョの二の舞になるから無理だ。

「功樹君、こっちだよ」

 施設の人が案内してくれる。ふむ、しかし随分と色んな物が置いてあるな、あそこに置いてるのなんて個人用の重粒子ライフルだろ? なんであんな物がここにあるんだよ。そんな事を考えながら横目で見ていると案内をしてくれている人が俺の視線に気付き説明してくれる。

「あれは、粒子の研究に使うんだよ。全く関係ないかもしれないけど、何処にヒントがあるか分からないからね」

 その説明をしながら更に、母さんが待っているE-2ブロックには軍用スーツから試作の重力崩壊弾まで保管されている武器庫があると教えてくれた。斉藤君が聞いたら、テンションが上がりまくって変になるだろうな……と思いながら歩いているとどうやら目的の場所に着いたようだ。

「功樹も来たわね、では5分後に実験を開始します」

 母さんは目で俺に挨拶をすると、自分はいそいそと実験の準備に入る。なぁ……俺、本当に場違いだよなこれ。周りの研究員達も俺の方をみながらヒソヒソと声を交わしている、大方『なんで餓鬼がきてんだよ』とか話してるんだろう。俺が見ると速攻で目を逸らすしな、ちょっと泣きそうになって来た。
 邪魔にならないように……、むしろ他の研究員の目に入らないように部屋の隅に置いてある机に移動して、大人しく座っておく。そして正直『早く帰って家でごろごろしたい』等という内心を顔に出さないようにしながら実験を見守る。

「それでは、実験開始」

 母さんが宣言した後、部屋に警報が鳴り機械が作動する。だが、なにも起きない……。もう一度母さんが機械を操作するが何も起きない、部屋に微妙な空気が充満する。そして研究者が一斉にバッ!! と音を立てながら俺の方を向いて

「どう思われますか?」

と聞いてきた。知らんがな……だいたい何で俺に聞くんだよ! 研究内容も理解してないし、目的もしらねーよ。どんな反応が出たら成功なのかを母さんに聞いてみると、どうやら一瞬だけ光るらしい。母さん曰く、粒子が理論通りに観測できた場合は、別の空間とのトンネルが繋がってあの機械の周りだけ一瞬別の空間に飛ぶそうだ。その時に粒子が崩壊して熱量を開放するため、一瞬だけ光るという訳だ。
 ふむ……、まったく分からん。だが、コレだけ期待されてる中でそんな事を言える訳もなく、適当にそれっぽい事を言ってみる事にする。

「観測場所を暗くして、僅かな発光も見逃さないようにしましょう。そしてもう少し機械の出力を上げてください」

 俺の意見を取り入れて、再び実験が行われるがやはり何も起きない。まぁ、そりゃそうだよな。俺が考えたような事で実験が成功すれば、そもそも母さんだけでも成功する。俺は落胆しながら会議を始める研究員を眺めながら、机の上にあった粒子構造モデルを手に取って組み替えながら暇を潰していたのだが

「功樹、それって……。そうか!! そういう事ね」

 突然母さんが、俺が手に持っているモデルを見ながら声を上げた。まて、なんか嫌な予感がする……。これはアレだ、前に俺が弾道ミサイルを叩き落した時と同じ『なんか勘違い』されている時と一緒の感じだ。
 俺は慌てて母さんに言い訳しようとしたが母さんは『大丈夫!! こうちゃんの言いたいことは全部分かってる』なんて言って話を聞かない。

「母さん……、何も分かってないよ」

 俺は小声で呟くが聞いてはくれない。というか……俺の呼び方が素に戻ってるよ。凄まじい勢いで指示を出す本気モードの母さんを止めれるわけもなく、俺は黙って見守る事しか出来ない。やがて準備を終えた母さんが再び実験を行うと

「発光現象を確認!」

 部屋に居た全員から歓声が上がる。それを遠巻きに覗いていた俺だが、あることに気付いた。





 光が強くなってる気がするんだけど……




 他の人たちも気付いたのだろう、慌てて機械を止めようとするがどうやら上手く行ってないようだ。そして異常を感知したのか警報が鳴り出す。

『重大事故発生、研究ブロックE-2は閉鎖されます。研究員は至急避難して下さい、繰り返します……』

 部屋に居た人が一斉に出口に向かって走り出す、母さんも他の研究員の人に腕をつかまれて避難させられている。一方の俺はあまりの急展開についていけずに軽く腰を抜かして動けない

「あの、だれか……」

 誰かに担いで貰おうとも思ったが、俺の声は虚しく消えていくだけだ。というか、こんな時こそスキンヘッドの出番だろうが!! アイツは何処にいんだよ!!! 






そして、目の前の隔壁が完全に閉まった。






----荒川美紀 視点----

 今日は、功樹が研究を手伝いに来てくれるので私は朝から上機嫌だった。普段から私が自慢しているせいでもあるが、功樹が研究室に来た時に周りの部下が

「あの子が、女史の息子か」

「この前は『欧州の悲劇』の治療薬を作ったらしいぞ」

 なんて事をコソコソ話しているのが聞こえる。当の本人は、ゆっくりと見物するつもりなのだろう、部屋の隅に置いてある机の椅子に座って見守っている。絶対に失敗できない……私の中にそんな感情が膨れ上がる。
 この実験は、功樹の構築した数式を用いて実際に別次元があるという事を証明する為のものだ。観測されると思われている粒子は『アラカワ粒子』と名前が付けられる事が決定している。本当は構築者にちなんで『コウキ粒子』としたかったのだが、語呂がとてつもなく悪いので却下された。

「それでは、実験開始」

 全ての準備が整ったので、私はそう宣言して起動スイッチを押す。だが何も起きない……、もう一度試すがやはり何も起きなかった。

「どうしますか」

 部下がそんな事を言う。私は困ってしまって、功樹はどう考えているのだろうと漏らしてしまった。その瞬間、一斉に皆が功樹へと振り返る。見つめられた功樹は呆れながら

「観測場所を暗くして、僅かな発光も見逃さないようにしましょう。それからもう少し機械の出力を上げてください」

と意見をくれた。呆れもするだろう……、自分達の研究なのに考える事を放棄して子供に縋ったのだ。意見を取り入れ再び実験を行うがまるで反応がない。私は部下を集めて会議を行うが、結局実験は失敗したという結論を出すしかなかった。
 そんな中、私は功樹の方を見ると粒子モデルを使って何かをしていた。そして手早く組みなおされるソレは私に衝撃を与えた……




私の想定した粒子の結合が違う!?



 恐らく、功樹は最初から実験が失敗することが分かっていたのではないか? だが最初から自分が口だしすると、私達のプライドを傷つける事になる。そう判断して実験が失敗した今この時になって、『解答』を私達に示してくれたのではないか。私は功樹が作った結合モデルを入力して三度実験を行った。

「発光現象を確認!」

 報告が知らされた時、私は歓喜した! 功樹の数式は間違って居なかったのだ……。だが直ぐに事態の異常さに気付く、発光現象が全く収まらないどころか範囲が徐々に広がっていく。

『重大事故発生、研究ブロックE-2は閉鎖されます。研究員は至急避難して下さい、繰り返します……』

 そして緊急警報が発令された。私は部下に連れられて避難したが、功樹が居ない。

「功樹は!? あの子は避難したの?」

 私が喚くのと同時に、反対側のブロックにまだ功樹が居るのが目に入った。まるでチョットした問題が発生したかのような苦笑いを浮かべている……そんな場合じゃないのになんで避難しないの!? そして功樹が『粒子変換機』のそばに置いてある緊急停止用のマニュアルを手に取ったのが見えた。

「停止させる為に残ったの?」

 思わず叫ばずには居られなかった。私達が自分の安全を優先して避難する中、あの子はたった1人だけ機械を停止させる事を考えていたのだ。本来なら職員が行うべき仕事を功樹に押し付けてしまった、皆それに気付いたのだろう、今からでも自分達の手で行うべく隔壁を抉じ開けようとしている。
 だが、一度閉じてしまった隔壁は正規の手順を踏まなければ開く事が出来ない。そんな中、功樹が私の方を向いて口をパクパクさせているのが見えた


ソダ・テ・クレ・ア・リ


『育ててくれて、ありがとう』多分、そんな事を言った……。私は、手のひらの出血にも気づかず隔壁を叩く

「功樹! 功樹!!」

 最後の別れになるかもしれない、そんな悪夢のような思いが浮かぶ。停止プログラムを入力し終えたのだろう、満足げな表情で私の方を振り返り……





功樹は、研究ブロックと共に目の前から消失した。









 2102年5月20日、『空間粒子研究施設』で重大事故発生。研究者及び民間職員に被害はなかったが、主任研究員の『荒川美紀』の息子である『荒川功樹』が事故に巻き込まれ消息不明。また、消失した研究ブロックE-2には試作段階である多数の『軍用装備品』が貯蔵されていた為、行方不明者の捜索と同時に紛失した装備品の捜索も急がれている。
「メインのお話を進めて下さい」というコメントがありましたが、基本的にメインていうのはありません。日常アニメ的なノリで色んなお話を進めていきます。学院の設定は主人公が外に出たり友達を作るための口実です。ですが、学祭とかのお話もあるので全く関係ないわけではありません。
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