挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異世界に転生したんだけど俺、天才って勘違いされてない? <旧題  転生したんだけど俺なんか勘違いされてない?> 作者:にゅん

学院編1年度 前期

15/77

斉藤君の研究 (閲覧注意 ゴキさんが出ます)

 今回は只野飯陣さんのネタと、しらたきさんのコメントから発想を得たお話です。もともと予定の無かった斉藤君のお話なので短めです。
「ねぇ、ボクの研究も手伝ってよ」

これはそんな一言から始まった、悪夢の1週間のお話。




----荒川功樹 視点----

「ねぇ、ボクの研究も手伝ってよ」

 学食で天丼を貪っていた斉藤君が、俺とアリスちゃんにそんな事を言った。正直面倒だとは思ったがアリスちゃんを手伝ったのに斉藤君だけ手伝わないなんて言えない。アリスちゃん本人も自分を手伝ってくれたせいか結構乗り気で『いいよ』なんて言っているので、俺は斉藤君に何をするのか聞いてみる事にした。

「えっとね、AIを搭載した簡単な作業ロボットを作りたい」

 ふむ、作業ロボットか……。斉藤君のことだからミリタリー系のパワースーツとかを応用するのだろう、そう思って斉藤君に聞いてみる。

「形はどんなタイプにするの? 人型か戦車とか?」

「いや、ゴキブリだよ」

 待て、なんて言った? ちょっと聞きたくない言葉が聞こえた気がしたが恐らく聞き間違いだろう。アリスちゃんも紅茶を飲みながら引きつった顔で止まっている、俺はもう一度聞いてみる。

「なんて言ったの?」

「だから、ゴキブリだよ」

 そんな事を笑顔で言われても困る。そもそもなんでゴキブリなんだよ! そこは戦車とか無理難題を言って俺がいつもの様に、『母さん! 宜しく』って頼む所だろ。なんで今日に限って無駄に現実感溢れる生き物で押すんだよ。ほら、アリスちゃんなんか既に薄っすら涙目になってるぞ。

「作業用のロボットだよ、合理的だと思うんだけど……」

 合理的とかそういう事じゃねーから! なんであんな気持ち悪い生き物をモデルにしないといけないんだよ。アリスちゃんも嫌がってるんだから違うものにしろよ、俺がこう言うと普段は大人しい筈の斉藤君がキレた。

「フヒ!? 気持ち悪い? 気持ち悪いってなんだよ!! ゴキブリは凄い生き物なんだ。3億年前から殆ど姿を変える事がない完璧な形、どんな環境でも適応する生存能力。それに虫の中でもトップクラスの俊敏性があるんだよ? 種類によっては滑空するだけじゃなくて実際に飛翔する事も出来る種もいるし、水分すら取らないで50日以上活動できる。学習能力も高くて同じ所に毒餌をおいてもそれを食べる事もないし、薬効耐性も直ぐに獲得する。完璧だよ! まさに究極の生物なんだ。さらに……」

 軽く目が据わりながら熱弁する斉藤君を横目に、アリスちゃんが俺の服を引っ張りながら話かけて来る。

「斉藤君、どうしちゃったの?」

 いや、そんな事俺に聞かれても分からん。確かに第一印象は変な人だと思っていたが、最近はそんなの勘違いだと思っていた。だがこの様子を見るにやっぱり変な人だったんだろう……。ゴキブリを侮辱したのが斉藤君の中の何かを傷つけたんじゃないか? 俺がアリスちゃんにそう伝えると、納得したように頷いてくれた。

「2人とも聞いてる? 今良い所なんだけど」

 5分以上ゴキブリの素晴らしさと生態について話しているのにまだ足りないのか……。というか、もうあだ名は『ゴキブリ』でいいんじゃないかな斉藤君。もう分かったよ形はゴキブリで良いけど、サンプルは俺とアリスちゃんは絶対に捕まえに行かないからな。そう言うと、

「うん、大丈夫だよ。ボク『飼ってる』から」

 当然でしょ? と言わんばかりの顔で斉藤君はそう言った。何も大丈夫じゃないしアリスちゃんはもう半泣きになっている。

「今日の放課後、ボクの家でどの種類をモデルにするか選ぶから一緒に来てね」

 斉藤君は笑顔で誘う。俺は気持ち悪いから嫌だというのが怖くて言えず頷く事しか出来なかった。





ガサガサ……。カタ! カサカサ……。

 斉藤君の自室に入ると最初に目に付くのが壁一面に設置してある飼育ケース……、そしてなんともいえない音である。アリスちゃんは部屋の入り口から入ってこないで様子を伺っている。

「コレ、何匹くらい居るの?」

「今は8種類で全部で80匹くらい」

 俺が聞くと斉藤君は嬉しそうに答えてきた。そして1種類ごとにケースから出して説明してくれる。『クロゴキブリ』『ヤマトゴキブリ』『ナンベイオオチャバネゴキブリ』……、どうやら俺には見分けが付かないが固体ごとに名前まで付けて可愛がっているようだ。あまり見たくない俺は適当にコイツでいいんじゃないかと言うと。

「うんボクもそう思った。やっぱり一番ポピュラーな『チャバネゴキブリ』が良いよね」

 斉藤君は、分かってるね! といった感じで俺の意見を後押しする。おいアリスちゃん、そんな俺まで『ゴキブリ好きなんだー』みたいな顔で見るのをやめろ。俺はこんな生き物好きじゃないぞ!





 翌日から斉藤君の研究室でロボットの製作を開始したのだが、初日にまずサンプルとして持ち込んだチャバネゴキブリの『エンジェルたん』が脱走してアリスちゃんの顔面に飛来した為、危うく貴重なサンプルを失う所だった。その後も無駄に見た目に拘るせいで当初予定していたゴキブリ型作業ロボットではなく、見た目は本物の1メートルのゴキブリが誕生した。
 初めて実物を動かした時のリアルさ具合は俺が腰を抜かしてアリスちゃんが研究室から全力で逃走し、斉藤君が頬ずりをするというレベルだった。そして今、俺たちはある問題にぶち当たっていた。

「荒川君のお母さんから貰ったAIの設定だけど、どうする?」

 斉藤君は困った表情でプログラム画面を開いてコチラを見る。ふむ、コレだけリアルなロボットだから内容自体もリアルさを追求したいな……。俺がそう発言すると3人とも自分が望む内容を画面に打ち込んでいく。そして一番最後に斉藤君が、もし何かあった時のために活動停止プログラム『スリッパ一号』を入力して終了した。







----作業ロボット チャバネ君 視点----


 ワタシはマスター達に作られたロボットである。ワタシに優先順位付きでプログラムされた内容は、

1、マスターの1人であるアリス様に近づかない。また、人間を攻撃しない。
2、学院内の掃除をする。他にも人間に役立つと判断した場合は実行する。
3、必要以上に自己増殖しない。
4、人目に付かないようにする。
5、定期的に研究室に帰る。

 以上の5項目だ。まず最初にワタシは学院の地下にある下水道に住み着く事にした。そして、広い学園を掃除する為に仲間を増やすことに専念する。廃棄場などから必要な部品を集めつつ仲間を増やし、数が400匹を超えたところで夜間一斉にマンホールから飛び出し学院の清掃を開始する。途中、今のままだと清掃効率が悪いことに気付き自己進化をした。
 暫くそのような生活をしているとある日、ゴミの回収中にマスター以外の人間に遭遇してしまった! その人間は私の方を見つめた後、何事もなかったかのように去っていったが、驚かなかったのだろうか? しかし、そろそろ学院の清掃もすることが無くなってきた。
 そうだ、この前マスターの功樹様が言っていた花壇という物を作ってみよう。なんでも人間というのは花をみると心が安らぐらしい……。ワタシはそう判断してさらに花壇製作用の仲間を増やす為、部品の回収に勤しむ事にした。








----学院長 山本香 視点----


「ここも綺麗になってる……」

 最近、学院内が隅々まで掃除されている事に私は上機嫌だった。常々、口煩く生徒達には清掃の大事さを説いているのだが良い反応は返ってこない。だがやっと気付いてくれたのだろう、学院内のどの場所を見て回っても塵1つ落ちていないのだ。さらに普段はポイ捨ての多い研究塔の裏まで来た時に私はある物を見て思考が止まった。


目の前に、ゴミ袋を首から下げながら二足歩行するゴキブリが居る。


 1メートルくらいのゴキブリが歩きながら袋にゴミを詰めていたのだ……、あまりの現実感の無さに私はそのまま来た道を引き返して自宅に帰った。あんなモノを見るなんて疲れているのだ、そうに違いない。その日私はぐっすりと眠り日頃の疲れを取ることにした。そして次の日、学院に出勤すると再びありえないモノを見ることになる。


学院中に花やゴミを再利用したプランターが置いてあった。


 それも嫌味にならないように丁重に配置を考えられ、まるで映画の中のワンシーンのような学院の姿があった。誰かが業者を呼んだのだろうか? 私は確認をしたが誰もそんな事をしていないと言う。職員会議では結局生徒のイタズラと結論されたが果たして、中央にある時計塔の外壁を覆うような事まで生徒が出来るのだろうか? そんな事を考えながら窓の外を眺めた時、例の二足歩行するゴキブリがプランターを持ちながら歩いているのが見えた。




 きっと私は、まだ疲れているのだろう……。

 功樹の言葉を勘違いして拡大解釈したチャバネ君が頑張る回です。

 活動報告の方を更新しました。今更ながらこの小説のコンセプトやその他の事を書いているので一度目を通して頂けると幸いです。それと、返答していないコメントも必ず目を通しています。コメントを見ながらニヤニヤするのが最近の日課です。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ