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売買

本日2話目なのです!

「では、魔物の売却価格はこちらになります。そしてこちらは一角の魔獣の討伐報酬となりますので金額をご確認下さい。」


翌々日、城で呼ばれて提示された金額は思っていた金額よりかなり多く討伐報奨まで出てしまった。この国内で起きた魔獣騒ぎを国内で静めたという体裁を調える為らしいが金額が馬鹿らしくなる程に大きくて小市民のマサルは完全に引いていた。


「あと王からこちらの書状を預かっております。小麦の取り引きについての話だそうです。」


なになに…助言に従い当分の間は国土拡張を広げるのを止めて国内の調整に努めるから技術提供や協力よろしく!その代わりとして小麦の売却を認めます。


「…アクシオンめ…直接交渉から逃げたな…。」


その呟きに目の前の文官が苦笑する。


「備蓄されている昨年の小麦の1/3までなら売却の許可が出ています。ご確認しますか?」


「どれくらいか分からないが量と金額を確認して購入しよう。」


確認するとやはり国規模の量…莫大な量だったのだが未加工の小麦である事と昨年の物であるという事、間に業者が入らない為にかなり安い金額の提示をされ購入を決めた。魔熊一匹ぶんに及ばないくらいの値段だった。


「いやぁ、良い買い物をした!」


「いえいえ本当に良い買い物をしたのは当方でございます。王は今まで戦火渦巻く派手で効果のすぐ見える事に重きをおき、内政にあまり関心がございませんでした。今回の事で我々文官と話をする機会が増え戦争を控えると仰りました…我々の様に国の財を扱う者としては安定せず膨大な金や食料を伴う戦争が無くなった事、大変嬉しく思います。」


「いや少し貴方たちは思い違いをしている。文官は財の為とかではなく民の生活の為に戦争を起こしてはならない。

戦で場を納めるのが将や騎士だとするなら貴方たち文官は戦を起こさず事を納める事を誇りにしなければならない…出会ってそのまま戦になるのは文明を持つ国の在り方ではないし、それを諌めるのが文官の仕事だ。

王が相手だろうと悪い事は悪いと叱責出来なくてどうする!民を育むのが王なら、それを育てるのが臣下だろう!金の計算だけなら商人で良いんだ…商人と自分たち文官の違いは何かもう一度考えてみるんだな。預かっているのは財か?それとも民の命か?」


「ご指摘の程感謝いたします。この話皆と必ず共用し今後に活かしてみせます。」


「まぁ、偉そうに言ったが俺は所詮一般人だからな…自分たちの納得出来る様に適当に頑張ってくれ。」


その後、少しの間政治や経済の話や質疑応答が2時間ほど続いたのだった。



そして城を出たマサルはその足で【石と工兵】へと足を運んだ。これからザーグの姉ディナとの商談の予定が入っているのだ。


「なぁ…姉ちゃんには向こうでやらかした事は内緒にしてくれよな。あんまり心配かけたくないんだ。」


着くなり店の前で待ち構えていたザーグにそんな事を言われたが目が泳いでいる…なるほど、姉には頭が上がらんのだな。


「分かった。じゃあ、さっそくディナさんと話をしにいこう。」


「あぁ、姉ちゃんは中にいるから早く行こう。」


店の中に入ると石板に石筆で何やら一生懸命に計算する1人の女性がいた。ここの世界では紙といえば羊皮紙でなかなか高価なのだ。


「ディナさんですね。今回は無理を言ってしまってすみませんでした。わたしはマサルと申します。」


「あぁ、こちらこそ…ちょっとザーグ!お茶の準備も何も出来ないこんな所に…すみません汚い所ですが…。」


「お構い無く…えっとまだ処理中でしたか?」


「………あんまり計算は得意じゃなくて………こんなにたくさん売れた事もないし桁が大きすぎて。」


「あぁ、確かにこんな大きな金額は普段使わないですしね。ちょっと計算している概要を見せて頂けますか?全部終わって無くても構いませんよ。」


そうして見せて貰った内容には完全に種類と個数の調査は終えていて、あとは計算するだけとなっていた。


「ちょっと待って下さいね。計算してしまいますから…。」


そして3分後…。


「終わりました。何かやけに多くないですか?」


「父さんが勝手に倉庫を持ってたみたいで、その中にも大量の商品があったんです。」


煉瓦、耐火煉瓦、石材、木材…ん?見たことない物もあるな。


「この特殊板①って何ですか?」


「あぁ、それですね。父さんが工兵時代に開発した板で軽く丈夫なんですけど初期コストが高いとかで流行らなかったんです。材料も特殊なものがあって数が揃えられないとか…。」


瓦くらいの厚さで石とセラミックの中間の様な固く軽量の板でなかなか使い勝手が良いが、だいたい1m四方の大きさで統一されているらしい。


「材料が特殊なのに6000もあるとはどういう事なんですかね?」


「………家を担保に材料を買ってたみたいで、昨日家を追い出されました…。」


何してんだあの馬鹿親父!ディナさんの目に殺意が隠っているじゃないですか!?


「…い、今はどちらにお住まいで…?」


「わたしは幼なじみの友人の家に、父さんは倉庫に寝泊まりを…。」


「色々と大変ですね…なんて言うか…本気で。」


「そうなんですよ!仕事もなかなか見付からないし見付かっても給料は安いし、散々なんです…。まだ父さんの借金もありますし…。」


どんだけだよ…絶対にあの親父さんは1人で好きにさせたらアカン人だな…。ザーグ君も拳を握り締めているじゃないですか。


「好きな様に煉瓦を焼いていれば良いって人なんですけど、材料にお金はかかるし売れるあても無いんです。」


っと…全部の集計が終わったな。


「なかなかの金額になりますね…もし大量に買うとしたら値引きとかってして貰えます?」


「もちろんです!商品が売れて借金が返せるなら多少の値引きなんて問題じゃありません!」


むしろ売れてくれたら小銭でも欲しいって顔してますよ?


「じゃあ…全部買っちゃいますから少しだけ相談にのって貰えませんか?」


「えっ?…全部ですか?値引きしても凄い額になりますけど…それに相談だなんて私で力になれるかしら…。」


「いやぁ、難しい事は言いませんよ。家も今は手放しているし店の在庫も全て売れた…建物もこのような小屋だし、今なら倉庫も解約しやすい。そこで親父さんと俺たちの街に移住しませんか?」


「ちょっと待て!」


ザーグは慌てて立ち上がる。


「黙って!…どの様なお話か詳しくお聞かせ願います。」


「俺は今、獣人たちと街を作っています。これは王にも話しましたし他所からの横槍が入る事のない事業となるでしょう。場所はこの王都からはかなり離れてますが3食保証、仕事は要相談、親父さんの煉瓦焼いたりする為の工房と助手付きで如何でしょうか?因みにグレイタス王国どころか今は国に所属してないので税金もかかりません。しかもグレイタス王国に荷を運び売買するのに関税はかからない事になっています。」


「それは…破格すぎて何だか怖いですね。ザーグ?本当だと思う?」


「あぁ…王との話の場にはオレもいたからな…。」


何だか悩んでいる様子です。


「…その街には獣人ばかりなんですよね?」


「アデリナっていう沿岸都市の代表の姪がいるけど、他はみんな獣人だね。」


「人族の殆どいない所に住むなんて私に出来るかしら…。」


確かに将来的にももう少し人族も増やした方が良いんだよな…互いの意識改革の為にも。


「そうだ!ザーグとディナさんには知り合いに儲からない末端の職人に知り合いがいませんか?わたしが王には話をつけますので引き抜きをかけましょう!相互技術交流だとか何とか適当に話をつけてきますよ。あ、何だか面白くなってきたかも♪」


「うわ…マサルが悪い顔になってる…。」


「大丈夫なのこの人…王様がどうとか言ってたけど簡単に会えるものなの?」


姉弟揃って失礼な…この平和が大好きな温厚な一般人に…えっ?辞書で言葉を勉強しなおせ?気にすんなよ…。


「という事で王に会いに行こうぜ!ディナさんは前向きに先程の話考えて下さい。取り敢えず親父さんの借金で破産する将来はないと約束しますよ?」


「何か言葉にすると酷い最低条件なのに破格に思える私はおかしいんでしょうか…。」


仕方ないと思うよ?


「ほらザーグ行くぞ!突撃王様の晩御飯だ!ついでにご飯食べさせて貰おうぜ!」


「いや、オレは普通の騎士だから!王様の晩御飯に突撃とか無理だから…あっ、ちょっと…何でこんなに力強っ…誰か助けてっ!」


王城に交渉にいくと微妙な顔をしながら二つ返事で「いいよ」と快諾してくれ、王の署名入りで移住の許可と推薦状を持たせてくれた。相手の名前のところは空欄になっているので欲しい人材の名前を入れろとの事…そして市場に影響しない範囲で頼むと言われたがそもそも市場に影響する様な売れてる職人を引き抜く気はないと伝えると安堵されたのだった。


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[一言] (人間辞めてる)武力と(とち狂った)コネで人材引き抜きを容認させるストロングスタイル・・・
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