お引っ越し
結局、翌日には作った建物の壁を全て外し(スキルで地面から切り離してアイテムボックスにしまうだけ)外壁へと作り直していくと物見櫓がないと危険だという事になり櫓の建設が先となった。1人で考えていては駄目だと思い知らされる。
「結局、2日かけて外壁と櫓、住居用の柱を立てただけで終わってしまった…。」
「いや、普通は外壁が1日で終わるとかあり得ないんだからね?しかも木の杭の外壁じゃなくて石壁なのよ?自慢したって良いわよ。ポータリィムの外壁だって半年くらい前に完成したばかりなんだからね。」
確かに本来なら高さ3mの石壁を街を囲むだけ作ろうと思うと年単位の仕事になるはずなのだ。それをスキルで2枚の壁を作って中を土砂で固めていくなんて大工事を1日とかで終わらせたのは異常なのである。
「じゃあ、明日は外壁の北と南の出入口の門作りと村人たちのお引っ越しかな?石の床に毛皮引いただけじゃ硬いから床だけは早急にすのこを大量に作って…いや、隙間は要らないな…後で家のフローリングに再利用すれば良いからきっちりフローリング的な床を作るか!」
結局マサルは夜通し片側のみに板をびっしり張ったパレットを大量に作り続けたので簡易ある。
「はい、皆さん今日から少しずつ集落から街に引っ越しをして貰おうと思ってます。住居の場所等はアデリナに任せてあるので指示に従って下さい。また、今は木の蓋をしていますが下水道用の穴が街中には多数あります。これらは深く危険な為、絶対に開けたり興味本位で入ったりしない様にして下さい。足りない物や困った事があれば随時言って下さい。」
一軒あたりに割り当てられる土地には炭で地面に四角に囲いをしてあり、その四隅には柱が立っているだけの簡単な作りで、そこに夜通しマサルが作ったパレット式の床を持ってきて貰い上に毛皮を引いて暫く暮らす場所の基礎となる。
柱は取り敢えずの間に合わせの物であり、板や布を各自に釘で打ったりして自分たちの住むスペースを確保して貰うのだ。屋根は空いた集落にある家等を解体して取れる資材を再利用する事になっている。
「あの…火を使いたい時にはどうすれば良いのでしょうか?」
そういえば煮炊きする場所もないし!
「どこにどんなのが欲しいか言って下さい。設置しに伺いますよ。」
まるで最初から準備してありますよ的な笑顔で乗り切る。結局、住居内用に筒状の中で薪や炭が使える簡易的な囲炉裏も作る。中には灰を入れてその上で火を使うタイプだ。食事等は現在住民全員で纏めて作り配給する制度になっているので大きな設備は必要ないのだ。
「水は共用の水槽を用意するからポンプを漕いで水を溜めるのは子供たちの仕事だな!頑張れよ!」
水槽に残っている水を桶に汲んで呼び水をポンプに入れて漕ぐだけの仕事だが街で役割がちゃんとあるのが大切なのだ。外の危険な場所に行かせる必要なんてないのだ。
「なぁ…。」
後ろから元気のない声で話しかけてきたのはザーグ君だった。
「どうした?ザーグ君から声をかけてくるなんて珍しいじゃないか?」
俺がナイフを刺したりしたせいなんだけど…。
「こないだまでこんな城壁なかったよな?しかも壁には継ぎ目もないし上から何か塗った様な後もない…どうなってんだ?」
「あれ?珍しいところに気がついたな…なかなか良い目をしてるじゃないか。」
「そりゃあ異常だろ…これが異常だと思わない獣人等がおかしいんだ。それに………オレの親父は工兵で子供の頃から石や木の組み方を教えてくれたんだ。今は親父も一線を退いて煉瓦なんかの商店をしているけど街の中にも建物なんかを建てれる職人なんかは大概は大きな商家と繋がっているからな、オレが手柄を立てて有名になって向こうから取り引きを望ませてやるんだ!」
意外と話せば好青年?頭は残念だけど。
「それで今回みたいに獣人の集落を取り込み手柄にする為にあんな馬鹿な事してたの?」
「馬鹿とは何だ!オレには手柄が必要なんだ!」
「いや、完全に馬鹿っしょ…だいたいお前等の仕事はなんだ?命令されたのは?馬の魔獣の発見でしょ?それが終わってもないのに他の事しました誉めて下さいって言うつもりだったの?怒られるだけに決まってんじゃん。」
「そっ、それはここを拠点に魔獣の討伐をすれば…。」
「獣人たちがいつ敵に回るか分からない場所で?支援して貰おうにも王都は遠く救援は来ないし、獣人の数は200人近くいる…つまりここを安全な拠点とするには最低でも100〜150人くらいの戦える人族が必要な訳だ。それも物資もここまで運ばないと戦えないし、いつ襲われるか分からない相手を獣人と魔獣2つを相手にしながらな。」
「しかし…兵の練度からしても獣人たちに負ける訳が…。」
こいつマジで教育足りてないわ…騎士の階級があってこれだと王都での交渉が不安になってくるわ…。
「あのな…長い距離遠征してきて疲れきった兵に遠くから矢を射て逃げて矢を射て逃げるだけで獣人たちは勝てるんだぞ?身体能力的には獣人たちの方が基本的に高いしな。」
「そんな卑怯な戦いがあってたまるか!」
「戦いに卑怯もクソも無いからな。死んだら終わりだし、お前たちが卑怯にも侵略を仕掛けて来ているのに何で獣人たちが紳士的に真っ正直に戦わないといけない?」
「侵略ではない!オレたちは騎士なんだぞ!」
「騎士も何も関係ないから…人の住む土地を武力で進行したり脅し取ったら侵略だから。騎士が進行に必要に迫られて途中にある集落から食料を要求して取ったら恐喝だし、力ずくなら強盗だ。やってる事は盗賊と同じだからな?それとも何か?俺が騎士より立場が上ならお前等を殺しても正義か?………少し考えてみろ。」
よし、話のすり替え成功です。真面目な話をしながら大きな話にすり替えて元々の話題を忘れさせてしまう作戦成功なのです。スキルについて詳しい話なんかしたくないしな…こっちにも色々あるんだよ!
「ザーグ………明日から王都に出発だから蟻の片付け宜しくな!あと蟻の要らない部位はスライムたちのご飯になるから一ヶ所に集めておいて!じゃあ、宜しくな!食料とかは準備しとくからってフリードたちにも言っといて!」
さりげなく仕事も押し付けてこっちも明日からの
準備に取り掛かる…明日からは男4人で華のない移動が続くのだよな…ちょっと鬱なマサルであった。