森のクマたん
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本日2本目でふ
ノームの森を出てから数日、マサル達は木々の密集しているところを見付けては間伐したり大きな岩場を見付けては石材の採取をして過ごしいた。
「迷いの森で〜♪熊たんに〜♪出会った〜♪」
歌っているのはアデリナで、マサルが面白半分で教えた『森の熊たん』にハマっていた。最初は微笑ましく歌を聞いていたのだが延々とヘビーローテーションで歌い続けるアデリナにマサルはげんなりを通り越してグロッキー気味だ。
「他の歌を教えるからいい加減に違う歌を歌ってくれ…もうその曲は耳について仕方ないんだ。」
「えぇ!?良いじゃない、この歌気にいったのよ♪」
「またの機会をお待ちしております。」
「何よそれ…。」
「もううんざりです、その曲聞くなら本物の熊さんに出会った方がマシって意味です。」
「ホントに失礼な人ね…ホントに熊が出たらどうするつもりな…の…。」
語尾が何故か震えながら小さくなっていくアデリナの文句にまさかとアデリナの視線の先を追っていく。
「本当に熊で…も?何あれ?」
そこにいたのは体長8mを超える真っ黒な剛毛をした4本腕の赤目の熊だった。その熊?は2本足で立ち上がり茂みの向こうからこちらを見下ろす様に観察していた。
「…アデリナさんや?遊びましょ?って誘わないの?」
「…な…何を馬鹿な事言ってんのよ…。」
「良いかアデリナ…絶対に目を直接見るな、そして絶対に背中を向けるなよ。」
熊と遭遇した時ってどうするんだっけ?背中を見せず少しずつ下がるんだっけ?何処まで?見えなくなるまで?いやいや後ろ数kmは障害物無いんですけど?
「グルグググググググ…ッ…。」
喉の鳴る音だけが響いている…辺りからは生き物の気配が急激に遠ざかり消えていく。
どれ程の時間が経っただろうか?10秒か?それとも20秒か?1時間だったのだろうか?長いようで短く、短いようで長い時が流れていく。
気がつくと恐ろしい4本腕の魔熊は姿を消していた。身体中は嫌な汗でびっしょりと濡れており今までに感じた事のない程に疲労を感じていた。
「…アデリナ?大丈夫か?」
歯をガチガチと鳴らしながらアデリナは同じ様に身体中に変な汗を流していた、視線はどこにも定まらずどれだけ怖かったのかが伺える。
「おい、ちょっと…。」
肩にそっと触れるとビクリと身体を震わしてカラクリ人形のようなぎこちない動きでアデリナはマサルに身体を向ける。
「あの熊は?…どれくらいこうしてた?」
「分からない…俺も気付いたらあの熊がいなくなっていたからな。多分錯乱していたんだろう意識をちゃんと保っていられなかったんだな。」
「あんなのがいるんだね…お腹空かしてなくて良かったね…。」
「それは考えたくないな…洒落にならないしな。しかしだ…まだまだ強くならないとな…あいつとはまた会いそうな気がする。」
「ちょっと止めてよ!本当にそうなったらどうすんの!」
でもここって俺の足でも4日くらいで走ってこれるんだよね…あの熊なら気分次第で街に来ないとは言い切れないんだよね…。
「本当になった時の為に強くなるんだろ?準備だけでもしとかないと次は戦いにならないとは限らないからな…。」
「勝てるかも知れないと思えるだけマサルは凄いわ…何をやっても私じゃあ勝てる気がしないもの…。」
マサルは武器も戦い方も自重なんて捨てるガチな方法も準備しとかないとなと心に刻み込まれたのだった。
「マジで攻城兵器でも用意しないと勝負出来ないんじゃないか…。」
本気でバリスタの制作を考えるマサルであった。
作者は山の中で猪と遭遇した事があります。
野生動物ってマジで怖いですよ…殺らなきゃ殺られる!と竹を切る為に持ってた鉈に力入りましたけど走って来たのを見ると慌てて竹に登って回避したのを覚えています。利き手に握った鉈の柄には力を入れすぎて血が滲んでいました。
熊とは遭遇した事はないですが、これからも遭遇の予定はありませんので…。