ちょっとした駆け引き?
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皆様本当にご愛読ありがとうございます!
「わたしもついて行くわよ!」
分かっていたがやっぱりアデリナがそう言い出した。
「だから連れて行かないって言ったよね?」
確かに獣人族しかいない集落に1人だけ人族がいるのは気が落ち着かないかも知れないけど他の人を連れていくと移動速度が落ちるんだよね。
「どこにどんな物があるか分かってるの?」
「うっ…行き当たりばったりかも?」
「案内がいるんじゃない?」
欲しいけど、欲しいんだけど…ぶっちゃけ面倒事に当たりそうなので1人が気楽なんだよね。
「駄目なら…。」
「駄目なら?」
「1人旅しに行くわ!わたしは別に何も制約は無いしね。」
脅迫ですか…そんなものが本当に効くとでも?盗賊や魔物の出現するのに女性1人で旅するとか…。
「…仕方ないな…ちゃんと指示には従うんだよ。」
「おにいちゃん!わたしたちも…。」
キラキラした瞳で見つめてくるジータとメイちゃん。何よりこうなるから誰も連れて行きたくなかったのに…。
「ルルさんママが良いって言ったらね!」
アデリナは行く事になったから強気だ。
「ズルい!前の時ににいちゃんも同じ事言った!」
君たちは子供だから仕方ないでしょ?それに大人はズルいんですよ、これは順番に来るある種の特権だよね?
「ジータとメイはママを置いてどっかに行っちゃうんだ?」
いつの間に現れたルルさんが泣き真似をしながら指の間からチラッチラッっと兄妹の様子を伺う。ジータとメイは慌ててルルさんの側に寄り添い「何処にも行かないよ」と簡単に言質を与えてしまう…ほら大人はズルいでしょ?
「という訳で明日の朝には出発するからよろしく!長にはもう言ってあるから。」
…そしてその夜。
「アデリナ…この夕飯が終わったらこっそり出るぞ。」
夕飯を食べている手を止めてアデリナばかりではなく、ルルさんもジータもメイも驚きに目を見張る。
「あの…夜に外に行くのは危ないですよ?それに何故そんなに急いで出て行こうとするんですか?」
心配そうにルルさんが問い掛けてくる。
「それはですね…前回と同様にジータとメイとハイトみたいについてくる用意をしている人が何人かいるという情報が入った為です。面倒なので明日の朝に出ると長に報告を皆がいる前でしておいて裏をかいてしまおうと思いまして。」
「あんたねぇ…そこまでして…。」
アデリナが呆れているが仕方ないのだ。
「この集落を守る為に戦える人を連れてウロウロする訳にはいかないだろ?」
これも前回に話した様な…。
「確かにそれはそうね。じゃあルルさんママは準備しているワクワクしている人達に朝にネタばらしする訳ね!」
なにそれ楽しそうやん!
「こっちは食べ終わったからアデリナも早く食べろよ?」
「分かったわよ。遅くなる前に出掛けて適当な所で休みましょ。」
夜の集落から夜警をしている獣人の警戒を掻い潜り2つの影が走り去ったのは暫くしてからだった。
「夜に行動する魔物は結構多いから気をつけてよね。」
背負われたアデリナは夜を疾走するマサルに不安そうに忠告をする。
「大丈夫だよ。ビクティニアスによると肉体的にはポータリィムに武力的に喧嘩売れるくらいのスペックがあるらしいから。」
「何よそれ!?貴方のいた世界ってそんな超人がゴロゴロしてるの!?」
「いや、神様達のちょっとした調整ミスらしいよ?まぁ、深く考えるだけ無駄だよ。」
「そうよね、神様の考える事だもん…深い考えがあるかも知れないもんね…。」
そんな深い事考えてないよとは言わない方が良いんだよね?夢は壊したらいけないでしょう…駄女神と呼んでるとかは絶対バレたらいけないのだろう…きっと本人より普通の人に内緒にしないといけないのは神様の理不尽のせいだろう。
くだらない事ばかり考えながら夜の影は高速で駆けていくのだった。