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告白します!実は…

「突然ですが、ちょっと旅に出てきます。」


本当に突然の申し出に皆の表情が固まる。


「どういう事でしょう?これから街の建造が進んでいくという大切な時期ですよね?」


アデリナもいつになく真面目な表情で詰め寄ってくる。


「まあまあ、ちゃんと話は最後まで聞いてみましょう。彼は理由もなく思い付きでそんな事を言ったりしませんよ。」


長がなだめて話の先を促してくれる。


「実はですね…資材がどう見積もっても足りません。この辺りで全ての資材を集める事は不可能ではないのですが、その後の街の運営を考えると周囲の資材になる物はある程度残っていませんと生活が出来なくなるでしょう。」


「なるほど、資材の問題か…今まで全てをマサル殿に任せていて考えていなかったな…我々には何か出来るか?」


「子供たちには現在木の苗や種子を集めて貰っています。木の苗は集落である程度まで育ったものを山にまた植樹しなければならないでしょう。木を切るだけではなく、木を使う我々が森や山に手を貸して豊かな環境を整える必要があると思っています。木が育つまでには長い年月が必要になりますが、切る時はあっという間です…計画的に植樹を行わなければ気がついた時には手遅れという事にもなりかねません。」


これは地球でもよくある話だ。いまだに考えもなしに焼き畑をして木々を無作為に消費しているところだってある。本当にこういう話が出ると教育の大切さを感じ、情報が得られる日本という環境がどれ程優れているのかを痛感させられる。


「種子は集落内で種類別に植えて同様に苗木まで育ててから植樹する事にしましょう。小さい時に食べられてしまうとやはり木が増えませんので。」


「色々考えているんだな。具体的に苗木はどれくらいまで育ててどれくらいまで植えるんだ?」


ハウルさんの疑問も最もだがその基準は俺には分からない。


「それは狩人の皆さんの経験に任せますよ。あまり狭い感覚で植えると日陰が多くなり育ちにくいし土地の栄養がなくなってしまいます。種類もバランスよく少しくらいなら動物に葉を食べられても大丈夫なサイズの木を色々と植えて下さい。」


「せっかく分けて育てたのに色々なのを植えるのか?」


「ええ、ある程度は色々な種類が混ざっていたほうが良いですね。同じ種類を固めて植えるのにも利点があるのと同じ様にリスクも有りますから。」


「具体的なそのリスクは?」


今度はアデリナお嬢さんか。


「具体的なリスクは食べられる実を付けない木々が集まっていても他の動物の食料にならない事が1つ、あとは病気対策ですね。同じ種類だと1つの病気で1度に大きな被害が出やすいですが種類が違う事で得意な病気、苦手な病気があるので感染が広がりにくい事と広がるにしても広がる速度が抑えられるかも知れません。その僅かな時間があるか無いかで木が救える可能性が出てきます。」


聞いたところによると葡萄を植える時に周りに薔薇を植えるそうなのだ、葡萄と薔薇は同じ病気にかかり薔薇の方が免疫が低い為に先に症状が出る為に葡萄への対処が出来る猶予が生まれるらしいのだ。


「木の病気かぁ…あんまり聞いた事ないけど。」


「あんまり聞かないうちに工夫はしときましょうって事です。周りに大きな被害が出てからでは遅いですから。」


その言葉に皆の納得の声があがる。


「他にやる事は?」


「堆肥の作成ですね。具体的には腐葉土の作成をお願いしたいです。落ち葉やオオトカゲの糞や生ゴミなんかを使って作る肥料です。こちらも重要になので実演を交えて1度やってみましょう。」


「で、いつ旅に出るの?」


「用意が出来次第に行こうと思っています。先に行っておきますが連れていきませんよ、誰もね。」


「どうやって他所から資材を持って帰るつもりだ?」


やはりそうなりますよね?しかしこれはもう腹を決めたのだ!


「実はわたしには特殊な技能がありまして…それを皆さんには教えておこうと思っています。…内緒にして下さいね?」


そう言ってアイテムボックスから手の中へとナイフを取り出す。1本2本3本と次々と取り出し、ナイフが尽きれば剣、次は槍の穂と取り出していき、槍の穂が尽きた頃には足下は武器でいっぱいになっていたので危険なのでやめた。


「アイテムボックスというスキルで沢山の物を収納出来ます。」


みんな何処からか出てきた沢山の武器に目を固定させ絶句している。


「記録ではエルフに3人と魔族に3人しか発現した事ないスキルなんだけど…駄目ね、これは誰にも話せないわ…。軍事バランスが変わるもの。貴方達も誰にも話したら駄目よ!家族にもよ!下手をしたら国にこの集落が狙われるわ…。」


流石のアデリナである。騎士団の姪として様々な情報は入っていたのであろう。まぁ、輸送力は軍事力に大きく影響するしね。


「あと…話はまだあるんだ。」


「…まだあるの?」


どうやらアデリナさんはお疲れのようです。いやん、ジト目は止めてっ!癖になったら困るじゃないのっ!


「えっと…わたし鳴海優(なるうみまさる)は実は違う世界から来ました。」


…………………あれ?反応がない。


「えっと…皆さん?」


「あぁ、そういえば違う大陸から流されてきたみたいな事を聞いたわね…あれ本当だったの?」


「結局はそう報告いってるんですね…。」


確かそのあたりは誤魔化しておく事になったハズだ。


「あぁ、叔父さんとわたしにはね。他の人には適当に言ってあるらしいよ?わたしもここにくる当日の朝に聞いたし…なんか分かったら報告して欲しいって。」


「それを言ったらマズいんじゃ?」


「報告する訳ないじゃん…戦争する気がないなら何も知らない方が良いのよ。」


「くくくっ…アデリナはやっぱり賢いな。馬鹿な大人たちはそれが分からんのですよっ…。」


因みに宇宙空間での手足は実は噴射等を使わずに移動するのに必要らしいですよ?大気があれば無重力空間でも動けるらしい。


「なんかバカにされてる気がする…蜘蛛の巣にかかりたくないなら蜘蛛に近づくな。これ常識でしょ!」


こっちでの言い回しだろうか?やっぱり大きい蜘蛛とかいるのかな?…蜘蛛嫌いなんだよな…。


「ただ1つ訂正するなら違う大陸ではなくて、違う世界だ。」


「………どういう事?何が違って何が正解か分からないわ。」


そうですよね…他の獣人の皆さんなんか暫く喋ってないですもん。後でアデリナには通訳をお願いしておこう。


「違う世界っていうのは地面も空も海も繋がってない場所ってところ。で、分かるかな?」


「って…それはどこなのよ?本当ならどうやって来たの?」


それは俺にも分からない。


「まぁ、夜空の星より遠いところって認識でも良いよ、行きようがないのは同じだからね。来た方法は神様に連れられてきたんだ。だけど来た理由は言えないかな。」


神様の賭博のとばっちりとか信仰する人が可哀想過ぎて言えない。


「神様?…本当にいるの?」


「いるよ、多分今も見てるし。」


みんなして上を見上げるがそこには草の屋根しか見えんよ?


「どこに!?どの神様なの?」


「どこになんて知らないよ…どうやって見てるのかも知らないし…そもそも見てない可能性もあるし。あと、連れてきたのはビクティニアスって女神だよ。」


「…それって創生の女神ビクティニアス様って事?」


さっき神様がいるのかと聞いた人が急に(さま)付けで呼ぶんですか?


「多分、その女神だよ。…そういえばヘラ様バニーの写真まだかな…。」


「ヘラ様?…聞きたくないけどそれは誰?」


「元いた世界の女神様だよ。」


「なんか頭が痛くなってきた…で、バニーの写真?って?」


あれ?獣人の皆さんなんでひれ伏してるの?


「ビクティニアスに可愛い格好をさせて絵にするからそれをくれるって約束なんだけど…。」


「あんた創生の女神様になにする気よ!神罰が落ちるわよ!」


あれ?獣人の皆さん寝て…気絶してるんですね…。


「いや…可愛い女神の姿見たくない?」


「………………ちょっと見たい。」


「色々マズいだろうから見せてあげない♪」


「酷い!見せないなら言わなければ良いじゃない!」


そんな泣きそうな顔をしなくても…流石にバニーちゃん姿の女神は見せられんじゃないか。普通のエロ本を女子に見せるより難度高いわ!


「じゃあ、頑張って像を作るので許して下さいませ…。」


こうして街の建造のリストに教会または祭壇が載ったのである。


「じゃあ、そのあたりは頑張るから皆を起こして理解してない人には通訳しといてね!俺は他のやる事しとくから!」


逃げる背中に「ちょっと待ちなさいよ」とか聞こえるけど逃げるが勝ちである。

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