技術とは…。
整地作業が始まってから5日間、遂に土地は縦200m横500mもの土地が均されていた。えっ?チートあるにしては遅い?狩りに行ったりレンガのサイズの石のブロックを大量に作ったりしてたんですよ。
石のブロックは街の建造予定地のすぐ横で直径1mくらいの円柱状に積み重ねて簡易的な炉にしている。これからは他の人と作業場を共にしなければならなくなる。何をしようかと言うと、
「ジータ、それにメイとアデリナ。君たちに重要な任務を与える!」
子供の2人の興味を引くために軍隊ごっこっぽく言ってみたのだが何故かアデリナが1番ワクワクしているけど気にしてはいけない。
「君たち3人はこれから消石灰という物を作って貰う。このお仕事は凄く大変だけど凄く大事な事なのでわたしの信頼する3人に託す事にした!」
本当はこの3人が人が増えた集落の中で仕事がないからなのは言わぬが華というものである。
「はい、しょーせっかいって何ですか?」
手を上げ質問したのはメイちゃん、元気でよろしい。
「消石灰っていうのは今回の街の建造で秘密兵器になる重要な材料です。作り方は難しくはないけど凄く重要なので頑張って下さいね。」
「「は〜い!」」
元気よく返事をする兄妹。それをニコニコと見ているアデリナ。
「では、こっちに作った簡易な炉を使って消石灰を作ります。慣れる迄はわたしが一緒に作業するので安心して怪我をしない様に気をつけて作業しましょうね。作業はまず炉の中に入った釜にそこに山になっている貝殻を入れます。その後に下から薪等の燃料を入れて火を着けます。
ここからが大事なポイントですよ〜、横に設置している箱はふいごという道具です。これは横にある取っ手を出し入れすると反対の穴から風が出るという道具何です、これを火を燃やしている間はずっと使って風をおこして貰います。」
「にいちゃん、そしたらどうなるんだ?」
「風はこの管の中を通り隣の炉の中に空気が送られます。すると炉の中は1000度を超える高温になるんですね。」
「おにいちゃん1000度って凄く熱いの?どれくらい?」
「どれくらい…そうだな…水に火をかけてブクブク泡が出るくらいになる温度が約100度です。その10倍なんだけど…武器を作る時に鉄が真っ赤になって柔らかくなるのがこの1000度を超えたくらいですね。因みに鉄が溶けるのが1200〜1500度を超えたくらいで、その鉄の種類によって温度が違います。」
「はい、先生!どうやってそれは計ったんですか?」
これはアデリナの質問だ。まぁ、当然出てくる質問ではある。
「それはですね、先生も知りません。知識というのは確かに筋道を立てて順番に全部説明出来れば良いですけど全ての事柄を知らなくてはいけないという事ではありません。安全に正しく使えるという程度で普通の人は問題ないのです。」
「安全ってのは分かるけど正しくっていうのはどういう意味ですか?」
アデリナは知識の正しい運営の事だと思ったのだろう、何にその知識や技術を使うのか…難しい問題だ。
「今回のいう正しくは考えている通りの現象が再現出来るか?という意味の正しいですね。間違っていたり足りないと知識は誰がいつ行ってもという再現性がなくなります。これは知識としては十分ではないとわたしは考えています。」
「再現性…誰がいつやっても同じ事が起きる…確かに大事よね。」
「さっきアデリナが思った疑問にもお答えしましょう。正しく技術を使うというのは確かに大切な事です。しかし人は立場や状況によって正義というものが変わってきます…だから、これが正しいというモノは存在しません。」
難しい顔をしてアデリナは考えこむ。
「ただ、わたしが思う正しい技術や知識の使い方ならお話しましょう。誰が幸せになるのか?誰の為に使うのか?誰かが悲しまないか?不幸にならないのか?と考え出した答えなら正しいと胸を張りなさい。ただ誰かに言われたからと人のせいにするくらいなら止めなさい、それは最も愚かで卑怯な技術の使い方です。悩みながらならするくらいなら実行を遅らせなさい、心が納得出来ないなら何かが足りないのです。この技術というのは物を作るという事についても言えますが、戦いの技術なんかもそうです。生きている限り考えなさい、それは貴方達の宝になる…成功したとしても失敗したとしてもね。」
「失敗しても良いの?」
不安そうにマサルの顔を覗きこむ3人。
「失敗しても良いさ、失敗せずに成長するより失敗しながら自分の正しさを考えて導きだす方が大事だよ。きっとね。」
「きっとぉ〜?」
首をかしげるメイが凄く可愛い…こんな時は子供が欲しいなとか思ってしまう。
「そこはきっとで良いのさ。じゃあ、作業するよ〜!火を着けて貝殻が真っ白になるまで燃やしていきます!熱くなるから炉には触らないようにね〜あと一応テストはしてあるけど炉は石を利用しているから熱でどうなるか分かりません。ヒビが入ったりおかしいなと思ったら作業は止めて炉から離れましょう。」
「「「は〜い!」」」
こうして少しずつながら開拓は進んでいく。
研究しただけ、作っただけと責任を投げるなら利益や名声も一緒に捨てる覚悟が必要なのではないでしょうか?というかやらないで欲しいですよね。