スキル使用でイージーモード開拓作業
「さぁ、頑張るぞぉ〜っ!」
そう叫ぶマサルの元には誰もいなかった。今いるのは街の建造予定地の土地なのだが今から他の人が来てもやることがない為に他の人は集落で簡単な雨をしのげる骨組みに草を被せただけの屋根を作っている。壁まで作って小屋にしてしまうのが1番なのだが資源や労働の都合により最小限雨を避けるだけの男達が寝る場所に屋根だけはと頑張ってくれている。昼からはやることが比較的無いアデリナが昼食を持って来るらしいがそれまでは1人作業をする事になる。
「スキルってマジでチート…。」
思わずマサルが呟いてしまったのも無理はない。硬い岩場を平らに均したいなと思いスキルで何とかなるかな?ならないだろうなと思いながら地面に手を付き念じると一辺が約100m四方の土地がうねうねと動きだしものの1分程で巨大で平らな石の台座に変わったのだ。
「魔力尽きたけど、何この天下一な武道会が出来そうな石の舞台は…。しかし、せめて黒じゃなくて白なら良かったのに…あ、岩の話だよ?」
誰に言い訳をしたのかは置いといて、あっという間に仕事が終わったマサルは時間の過ごし方に困る事になる。
魔力が回復するのには今迄の経験で全快まで約6時間かかる事が分かっていて、1日は地球と同じ約24時間なのも分かっている。これは地球から持ってきたスマホと日時計を利用して計測したものだから間違いはないハズだ。
「さて、魔力が回復するまで暇だから出来た武道会の舞台モドキにどんな建物を建てるか考えてみようかな…現在の住人は150人くらいだから…結構多い様で少ないな…地元の大きなホテルの客室数が330とかって聞いた事あったから1人1部屋使っても半分以上余るのか…。」
人間というのは時間があり考え事を始めると何故か意味不明の『もしも』話を考えてしまったりするものである実際にそのホテルがあったら等と考えても仕方ないのだがマサル本人は何かを考えないといけない気分になっていてそれに気付かないのである。
「結局は色々考えたけど一年を通しての気候や植物の分布を知らないからどうしようもないよなぁ…。」
そうして結局なにも決まらないのである。
「なにコレ…どうやったらこんな事が出来る訳よ!?」
気がつけば朝6時頃に始めたこの作業は色々と考え込んでいただけで昼になっていた様で、昼食を持ってきたアデリナは平らに均された岩場に混乱するのであった。
「あれ?もう昼?ご飯は何かなぁ〜♪」
「ちょっと無視しないでよ!どうやってこんな風に岩を平らにしたっていうの!?しかも、ここの岩にはヒビ1つないじゃない!それに何で一枚岩なの!?なんなの?神様でも降臨したっていうの!?」
「お昼は…おっ、お肉さんじゃないですか!よく焼けた串焼きのお肉にキラキラと光る塩がまた美しいっ!ちょっと焦げてるけどそれはご愛嬌だよね。」
「ちょっとぉ〜っ!」
「んっ?辛っ…ちょっと塩効きすぎだよ…食べられない事は無いけど少し料理も教えた方が良いかな。」
「教える気は無いって事なのね?」
分かれば結構なのである。ていうかマジで塩辛い…泣きそうだ。
「まぁ、そのうちにね。まだ色々と誰にも話して無い事いっぱいあるし、ずっとここで一緒に頑張る気があるなら話をする機会もあるんじゃない?」
「それもそうね。ところで何かさっき1人でぶつぶつ言ってたけど何か困ってる訳?」
「それなんだけど、この辺りの土地の年間を通しての気候が分かるかな?どれくらいの温度でどういう特長があるとかそういうの。」
「ん?気候…季節の事?今が夏の始まりで今より少しだけ温かくなるわ。秋になると今と同じくらいになって木の実がたくさん採れるの…この辺りでも採れるのかな?…冬は寒くて少しは薪の用意が必要ね。雪は数年に一度は降るけどあんまり降らないのが残念ね…私は雪好きなんだけどね。」
「つまり極端には気候の変化は無いって事か?」
「そうね。あんまり極端な気候の変化は経験した事もないし、話にも聞いた事ないわね。」
「じゃあ、雨の量は?」
「それも適度には降るけど嵐でも来ない限り特筆する事はないわよ?嵐も大きなのは珍しいわよ?」
つまりはこの土地は極度な気候の変動は無く、適度な雨が降り嵐も来ないと…めっちゃ良い土地なのでは?しかも四季があってある程度の変化は一年の中で楽しめと…良い!めっちゃ良い!なるほど、これだからビクティニアスは転移の始まりの地にここを選んだのではないだろうか?イージーモード最高ッス!
「じゃあ、頑張って昼からも作業しますかね。」
暫くはどんな風に平地を作っているのかを知る為にじっと作業を見ていたアデリナだったがマサルは何も気付いてない振りをしながら邪魔になる細い木や草を抜いたりしていく。1時間も経つとアデリナは飽きて村へと帰っていった。それを確認してから、
「ほいっ、100m四方の整地終了!っと…。」
マイペースでハイペースな開拓はまだまだ始まったばかりだ。