獣人への説明会
「これからはこのマサル殿が諸君らの主となる。これからその説明会を執り行うので静粛に聞くように!」
シラケきった決闘にだらけた空気が漂う中、ウェイドさんがよく通る声で獣人達に向けて話す。一瞬静まり返った後にざわめきが広がっていく。
「まだ何にも話してなかったっていう事で良いんですよね?」
歩み寄ってきた司令ランスロットに話し掛けるとウェイドさんは交代とばかりに一歩下がり補佐の位置へと戻っていった。
「あぁ、一応戦いに絶対はないからな。万が一にも決闘で事故が起こり解放が不意になったらと考えて話してなかった。…そもそも戦いにすらならないとは思わなかったがな…気持ちを折るのが早すぎだ。あれじゃあ良い薬にならん!」
「神聖な決闘でのあの醜態を盾に降格するとか、えげつない叩き直しすれば良いじゃないかと思いますがね。馬鹿な真似して長期的に逃げ場の無い罰則があった方が後々使えますよ?」
「さっきのを見てみろ、逃げ場が無いどころかあいつ等はすぐ逃げるぞ?」
決闘に名乗りを挙げた騎士たちをみるランスロットのその顔は呆れや失望を通り抜けて汚いドブネズミでも見たかのようだった。
「逃げる場所がある人には先程の醜態をご実家に報告する事になると脅せば大丈夫ですよ。さすがにあれはご実家も羞恥に震えるでしょう…受け取り拒否されますよ。逃げた先で盗賊にでもならないと良いんですけどね。」
「…それは本気で冗談にならないからな…。」
「はい、皆さん注目です!暫く私語はやめて話を聞いて貰います!先程にご紹介がありましたマサルと言います。一応は皆さんの主という形でこの街を出る事になります。目的地等はまだ言えませんが先の戦いで逃げ延びた他の獣人の皆さんと一緒に生活し助け合っていけたらと考えております。」
すると口々に「ちゃんと逃げ延びていたんだな」とか「息子は無事なのか!?」とか様々に口走る獣人たち。
「はい、静かにして下さいね。まず合流出来るのは兎人族の方達です。わたしは彼らの集落しか存じ上げておりません。ここからはわたしの提案なのですが皆さんにはわたしと協力して獣人の皆さんの住む街を作りあげて頂きたいのです。今までは皆さんは種族ごとに集落を作り暮らしてきたのでしょうが、これからは様々な種族の獣人が集まり1つの集落として生きていこうではありませんか!」
「そんな事が出来るのか?」
1人の狐人族が立ち上がり疑問を投げ掛ける。
「良い暮らしになる様にわたしも一緒になって努力させて頂きます。様々な種族が手を取り合うという事は苦手な所を補いあえるという事です。これは大きな力になるとは思いませんか?自分たちには出来なかった事が出来る仲間が新しく出来るのです!思いきって暫くの間だけでも頑張ってみませんか?」
「…本当に出来るんだろうか?」
「出来るのか?じゃなくやるのです!豊かな暮らしを築き兎人族だけではなく皆さんの家族達を迎え入れ大きく素敵な街作りをしましょう!」
少しずつ面白い事が起こりそう、やってみようという空気が沸いてきた手応えを感じる。
「皆さん気高き獣人達の本気を見せてやろうじゃないですか!そして大きな街になったらこのポータリィムとの外交等も考え、人間達とも支えあう関係を築いていきましょう!ちゃんとした外交があるし攻めてくるような蛮行をまさか天下の騎士さん達がしないですよね?とか大声で振り撒きながら楽しく生きていくんです!取り敢えずの目標はこの街より豊かな暮らしとしましょう!」
大声で獣人達に語りかける俺に「おいおい…。」と苦笑混じりに声をあげるランスロットを無視して、やってやるぜ!と獣人達は奇声を上げるのだった。
「ねぇ、ランスロット司令…将来的には一緒に面白い事しましょうね!」
「仕方ないな…。」
とがっちり握手を交わしいつまでも騒ぐ獣人達を見ているのであった。
ちょっと忙しくて短めになっちゃいました。
一度書いてたのを消してしまって時間が…ぐふっ…何故なんでしょうね?書き直したら同じ展開になりませんw