いざ尋常に決闘なのです!
ついに決闘当日。
それまでの数日の間、マサルは何だか憑き物が落ちた様に自然な表情になり、決闘に向けて自分の武具や指令との約束の武器を作ったり、ドワーフコンビに馬車やポンプの修理や製作する為の構造をレクチャーしながらごく普通に過ごした。
何故かハンバーグもパンもあるのに存在してなかったハンバーガーを提案したり、魚や貝や海藻を使ったダシの文化を広めてみたりして食事の幅も僅かながら広がりを見せ小さな提案ばかりだったがこの数日で確かな生活の変化が見られてマサルは嬉しく思っていた。
「よく来たなマサル。ここが我らが自慢の騎士団の訓練所だ!あそこには隊列などを確認したり、お偉いさん方が視察したりに使う為の視察台もある。」
訓練所と称される施設へ入るとそこは街の外へと繋がっており、周囲を広く石壁で囲っていて外部から隔離された広いスペースを確保している。視察台と称したその台は明らかに視察や確認をするには過剰で観客席としか思えない三段階の高さの客席がずらりと並んでいる。そこには今回解放をされる獣人たちが並び何がこれから行われるのかとざわつきながら座らせられている。
「あ、そうだ指令…例のアレ出来てますよ。ほら、ピッタリの武器作るって言ったヤツ。」
「おお!出来たか!何処にある?」
「そこの木箱の中にあるんで適当に取って下さい。」
自分はっと…準備運動を…っと。
「おい、これって…。」
「えっ?…はっ!それは駄目です!俺の専用装備ッス!司令のは隣の長い木箱ですよ!」
「お…おま…アレを決闘に使うのか…?奴等が哀れ過ぎるわ…。」
ランスロットが見たのは木箱の中にあったモーニングスター。1mくらいの金属製の柄に革のグリップを巻きつけ滑り止め
をして先端から伸びる60cmくらいの鎖には直径10cmくらいの鉄球がついている。もちろん鉄球には刺がたくさん付いていて打撃攻撃力が高くなる様に製作されている。まさにロマン武器である。
他にも木箱には数点のロマン武器が隠してあるのだがそれは後程。
「お祭りですからね。楽しまないと♪」
「決闘をお祭りと一緒にするのはお前くらいだぞ。まぁ良い、もうすぐ始まるからさっさと装備してしまえ。やるからには刃向かう気にならない様にちゃんと躾しとけよっ。」
「了解しました!司令殿!」
という訳で決闘の始まりなんですが何だかやる前から相手がドン引きしちゃってます。相手は人間無制限と言った為、11人の有志が集まったようで訓練所に入って俺が現れる前までは肩で風を切り威風堂々と現れたのだが…。
「「「「「なんだそりゃあぁぁぁあぁぁっ!」」」」」
数人の絶叫が鳴り響いた。腰の後ろには刃渡り1m程のショートソードをぶら下げ、左右にナックルガード付きのナイフ。防具は籠手だけ金属製の物をつけ、あとは革のジャケットとベルトに日本から履いてきたジーンズとブーツタイプの安全靴。左手手には長さ120cmの大ハンマーが握られていて、右手にはモーニングスターをぶら下げている。大ハンマーとモーニングスターは同時には使えないのだが一応引っ張り出してきた、見せかけやはったりも勝負事では大事なのだ。
「あ、あんな物が武器として使える訳が…。」
「…っと、そりゃっ!おぉ、いい加減に振れるじゃんか!」
モーニングスターをブンブンと振り回しながら持ち手の感覚を確認する。
「オレは降りる…あんなのくらったら怪我じゃ済まねぇ…。」
「オレも止めるっ!死にたくねぇ…。」
「あんたも止めた方が良いぜ…あんなの相手にしてられっか!」
次々にやる前からギブアップが現れ残ったのはたった3人…。
「おい、どうする?」
「どうするってやるしかないだろ…でも、誰かが一撃でもあれを止めないと話にならんぞ…。」
「盾ならそこにあるぞ…。」
「誰がやるんだよ!盾ごしでも腕折れるわ!」
「じゃあ、どうすんだよ…。」
「「「……………。」」」
なんか相談してるの全部聞こえてるんですけど…。
「あの…。」
「なんでしょうか…?」
「「「降参です!」」」
…………………………。
『『『『『『『『『『なんだそりゃあぁぁあああぁぁああっ!』』』』』』』』』』
マサルと騎士団、獣人達の叫びはピッタリハモったのであった。