鍛冶仕事をしてみよう
30000PVありがとうございます!
皆様のお陰で楽しく書かせて頂いております。
「銅に錫…これは青銅が出来るな。鉄に磁鉄鋼、クロム鉄鋼…黒鋼?朱鉱石?青鉱石?…なんだこりゃ?後回しだな…銀は装飾用かな。あとはミスリルか…出たよファンタジー…あとは未鑑定の謎石…なんだそりゃ。玉鋼のインゴットまであるとは思わなかったな…これは輸入物で少しだけか…。」
「どうかしましたか?何か問題でも?」
種類毎に分けて整理して全ての在庫をリストアップして徹底的に在庫管理を教え込み、ドワーフの二人は何とか徹夜で簡易的なリストを作り上げた、それを見ながら呟いているのをウェイドさんに見られていたらしい。
「いや、まともに使えもしないのに鉱石とかいくら購入してんだよと思ってただけだよ。」
「頭の痛い話ですが、まだ暫く届きますよ。」
「は!?どういう事?そんなに予算余裕あんの?」
「いえ、長期的に買う契約が既にあったのですよ…わたしがこの街に来る前にはね。確か採掘場で採れた鉱石の1割がこの街にあと一年は届きますよ。犯罪奴隷を利用した採掘場だと伺いました。」
「あぁ、盗賊は死刑か奴隷として鉱山行きとか言ってたっけ…。それは良いとして鉱石は少しインゴットにして使える形にしないとなぁ…扱った事のない石もあるし、配合とかを色々弄ると良い合金が出来るかも知れないしな。」
「合金ですか?っていうと、どういうものでしょう?」
「例えば銅と錫を混ぜると青銅という金属が出来ます。まぁ、武具にも使えない事はないですが銅よりは強く、鉄よりは弱いって感じでしょうか?使用方法は追々試してみましょう。本命で言えばステンレスがわたしはやってみたいですね、これは鉄とクロムの合金で…。」
「いやいや、少し待って下さい。つまりはどういう事でしょう?」
少し難し過ぎたか。何と説明すれば良いだろうか…そういう物として考えてくれても良いんだけど。
「つまりは強度や性質的にあまり需要がなかったとか弱かった金属に別の金属を混ぜると、新しい性質を持った金属が出来るって感じでしょうか?単純に強度が上がったり錆難くなったりですね。勿論、正しい配合が必要なので適当に混ぜても駄目ですけどね。」
「そんな事が…でも下手にやらせると無駄に消費される資材が増えるって事ですね。彼らには教えられた物以外は禁止しときましょう。」
経理を持つ人は何時だって冷静に現実をみて判断しますね。しかし、合金の開発にハマって破産なんて洒落にもならないので俺も賛成である。スクラップにするくらいなら貰っていくさ。
「さてと鍛冶スキルはっと…。」
******
《鍛冶2》
金属加工する為のスキル。金属を加工する時に補正がかかる。道具がなくても魔力を消費して切断することも可能だがコストは悪い。
******
「具体的には何が出来るんだよ…。」
******
《鍛冶2》
金属加工する為のスキル。金属を加工する時に補正がかかる。道具がなくても魔力を消費して切断することも可能だがコストは悪い。
▼
インゴット製作、形成、切断、接合など様々な事がイメージ次第で可能。物理的に不可能な事は実現されない。
******
「何か出た!イメージ次第で…って事は念じるだけで剣が出来たりするのか…既に鍛冶ですら無いな。しかし怪しすぎるぞ…いきなり完成した剣が素材から出来たら…もしかしてスキルと言っても俺のスキルって特殊なのか?」
実のところマサルの持つスキルはこの世界の生き物が持っているモノとは全然別のモノで【スキル付与券】で入手したスキルは神の【創造】の力が創り出したモノなのである。今回はマサルのスキルのイメージが日本にいた頃に遊んだゲームの影響をかなり受け使えばかなり自由に何でも出来ちゃう仕様になっている。勿論、その構造や仕組みをある程度知っている必要はあるという制限はあるが間違いなく破格のスキルなのである。
「何か問題がありますか?先ほどからぶつぶつ何かおっしゃってますが…。」
1人で何か呟き始めた俺を心配そうに覗き込んでくるウェイド。俺だったら「何こいつ?頭おかしくなったんじゃね?ヤベぇ…。」とか思ってしまうのに本気で心配してくれるウェイドさんは良い人だ…実は頭おかしくなったとか思われてないよね?
「いえ、ただ単に内容の確認等を一つずつ声に出し指差し確認してから作業するんです。そうすると1つ1つの確認が意識的に出来て本当にチェックしていたのかが記憶に残りやすいんです。安全確認や重要物のチェック等はこれを行うと良いかも知れませんね。」
「ほぅ、そんな方法が…ただ指を指して声を出すだけで効果がありますか?」
「指を指して注目する事でそれに確実に集中して、声に出す事でそれが何なのかを考え意識に残すのですよ。1つの物の確認でも例えば馬車だったら、車輪良し!連結良し!と重要な箇所を1つずつ指差し確認していくんです。確認はしたつもりが1番恐いですからね。」
「わたしはこの確認を導入し徹底する様に教育の計画書を作成してきます。タダで高い効果を発揮出来そうなので絶対に徹底させてみせます!明日の騎士団の方達の最初の議題としましょう。」
やる気満々で書類を作る為に出ていくウェイド。とっさに出てきた話だが日本の鉄鋼などの作業では普通に実績されているのがこの【指差呼称確認】だ。某鉄鋼所などは道を渡る時や建物に出入りする際に毎回周囲の確認やクレーンの位置までも指差し確認を徹底されているのだとか。
「さて、誰もいなくなったしちょっとテストをしてみるか…。この鉄のインゴットにまずは炭素の量を増やしてってと…出来てるのかな?外見が変わらないから出来ているか分からないな…【鑑定】っと。」
******
【鉄のインゴット】
鉄のインゴット。ごく一般的な物で重さは2kgくらいに揃えられている様だ。
【鉄のインゴット】
鉄のインゴット。一般的な物より炭素量が高く粘りのある高品質な鉄。重さは2kgくらいに揃えられている様だ。
******
「おぉ、何だか出来てる!ホームセンターでこの鉄はどんな鉄なんだとかオッサンが喚いてた時にはマジでムカついたけど、こうしてみるとあの時に勉強したのが役に立ってるし!ありがとう近くの工場のオッサン!…あの後、倒産したんだっけ?…よし次!」
その後、次々と炭素量の調整など地味作業が暫く続いて飽きてきた頃、ふと視界の端に刃渡り60cm程のナイフが映った。どういう構造なんだとみてみると1枚板を切り出しヒルト(日本刀でいう鐔の部分)を差し込み柄のパーツで固定しただけの様だ。これならスキルもあるから出来るかなと思い挑戦する。
「まずは完成形の物より厚めに大まかに形成して、次はこれやってみたかったんだよね!火に入れて赤くなってからハンマーで打って密度を高くしていくっと…スキルでやったんじゃ味気無いしな…。…最後に焼き入れもしなきゃな。」
目をキラキラさせて一心不乱に熱した鉄材を叩いていく。適当に打ち終わると部屋の中を暗くして焼き入れを行う。この作業は高校の時に草削りを作った時に経験済みだ。焼きなましもして入り過ぎているであろう硬度を調整する。
「うはっ!楽しい!…次はヒルトのパーツだな。あんまり大きくなくて良いとして…これくらいかな?ガタツキが起きない様にナイフの刃のパーツを差し込んで再度形成っと…あとは柄の部分か…今回は柄も鉄で作るか。スキルでコレも形成して…はめ込むっと…グリップのところには滑り止めの為に凹凸をつけてっと…出来た!あとは刃を砥石で研いで…。」
僅か40分程で出来たのは刃渡り50cmくらいのナイフ…。鈍く光る刃にマサルはご満悦で暫くナイフを眺めた後、次の作品へと取り掛かる。
「そうだ、鎖を作ってみよう!少しゴツいのが良いな…アレ作ってみるか!モーニングスター!絶対に日本じゃ出会えない物だしな、よし決まり!」
こうして日が暮れる迄自由気ままに物造りを堪能したマサルはドン引きしたウェイドとドワーフ二人によって食事へと連行されるのであった。
ナイフ3本
両刃斧1本(持ち手は木で製作予定)
フルメタルの手斧1本
鉈2本(刃だけ)
モーニングスター1個
金属バットに似た棍棒1本
調子に乗って作った鎖3m
鎖に付けて振り回そうとしている分銅1個
これだけ製作した様です。モーニングスターは流石にヤバいと思ってアイテムボックスに隠しました。