男は馬鹿な生き物で、女は強い
「こっちは先に街へと戻る。ガイお前はマサルについていって後から街で合流だ。」
「えっ!?オレッスか!?酷いッスよ!」
どうやら俺の面倒係りを決めているらしい。
「クック隊長は上に討伐の報告に、今回の獣人に関しての相談。俺の街へ入る許可等なかなか忙しいんだ…ガイが代わりにするんなら交代しても良いぞ?」
「うっ…マサルについて行くッス。」
せっかくフォローしたげたのにクックは胃を押さえている。頑張れ隊長殿!
「さぁて楽しい尋問だぁ♪」
クック達と別れ、せっかく意気込んで尋問に挑んだのに盗賊はあっさりと全ての情報を吐いた。という訳で些事は省略し、盗賊のアジトという名の小屋?についた。中からは女性の声と子供の声が聞こえてくる。
「ホントにここッスか?普通に猟師小屋かなんかに見えますし子供いるみたいッスよ?」
手首のところで縄で連結させて拘束されいる盗賊達の顔はこれ以上ないくらいに暗く誰一人顔を上げようとすらしない、うつむき唇を噛み締めているその顔には「ヤバいよヤバいよ」と書かれている様にも見える。
「取り敢えずお邪魔しようか…すみませ〜ん!少々お尋ねしたいのですが!」
「ちょっと!ここ盗賊のアジトッスよ!」
ガイが何だか抗議の声を上げていると中から一人の女性が顔を出した。
「こんなところで何の御用でしょうか………っ!アンタ達どうしたのっ!捕まっ…何があったの!?」
捕縛される男達の姿にパニックを起こした女性。その声に小屋の中からあと4人の女性が出て来た。何があったのかと騒然となる女性が落ち着くまで少し待ち声をかける。
「この人達は皆様のお知り合いという事で間違いない様なので事情をお知らせします。先ほど彼等とは知り合ったのですが残念な事にその出会いは馬と馬車で街へ移動する我々と襲ってきた盗賊という形でした。」
「盗賊っ!?何かの間違いです。その人達はただの猟師で…ってアンタ達っ!まさか!」
「こちらに被害はなかったのですが、事が事なので一応拘束し拠点としている場所を教えなさいと言ったところ、こちらに来る事となった次第です。取り敢えず皆様とこの人達のご関係をお尋ねしても宜しいでしょうか?」
「本当にウチの者がご迷惑をお掛けしてすみません。わたしはそこの顔に青アザしてる馬鹿の妻でございます…本当に何と言っていいか…。そこの馬鹿達は皆、わたし達の旦那や兄弟の者でございます。」
やはりどの世界でも馬鹿なマネをする男達を叱る強い女性達は健在のようだ。
「それで一体ウチの者達はどうなるんでしょう?」
「ガイ教えてくれ、クックは俺に任せるって言ってたけど一般的にはどうなるんだ?」
「ここでオレにふるッスか!…盗賊は王国法によると死刑か犯罪奴隷となります。犯罪奴隷ってのはだいたい働ける男は鉱山行きッスね。」
「そんなっ…なんとかなりませんか…ウチには子供もいますし、旦那がいないと生活して行けません!…馬鹿っ!アンタ何て事を…。」
膝から崩れ落ち呆然としたり泣き崩れたりする女性達を見て、男達も自分の仕出かした事にやっとはっきり気付いて泣き崩れていく。
「因みに襲われたオレ達は沿岸騎士団の小隊とお客人ッス。」
あっ、トドメ刺した。男達も女達ももはや完全に絶望の表情へと変わる。
「という事でガイ君、初犯でまだ被害者が出てないみたいなので今回は貸し一つって事にして女性達に一任するという事でどうかな?」
「えっ?良いんッスか?」
「良いんじゃないかな?きっと彼女達がしっかり反省を促してくれると思うし、わたしの故郷の反省の定番の正座を伝授していこう。貸しはいつかまた困った時に相談にくるって事で…良いですかね?」
「本当に宜しいのでしょうか?」
「良いんじゃないッスかね。またこれから街でゴタゴタあるし面倒事はゴメンッスよ。」
「という事でしっかり反省させてあげて下さい。困った事があれば沿岸騎士団のクックかガイのところまでご相談ください。」
「オレもッスか!」
ガイの苦情は今回も安定のスルーですよ。
「じゃあ、街に行こうか。一気に走るぞガイ!」
「ちょっ、無理っ!待ってぇぇえぇぇぇ!」
こうして沿岸都市ポータリィムへとやっとたどり着く事になったのだった。
頑張って色々種まきしているけど、どれだけ話の芽が出るのでしょう?
なんとか街へは着きました…ぐふっ。無理やりすくる(笑)