酷い仕打ち2
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「答えて下さいませんか?兎人族達はどうなりましたか?」
「何なんだね君は!突然来て何を探っているんだ!騎士様、このような横暴を許して良いんですか!」
突然横から割り込んで来た戦士の様な体格の男。左腕の袖から見え隠れする剣で出来たであろう傷痕は今は治っている様には見えるがそんなに古い様にも見えない。
「彼はこの集落の村長のガーヴさんだ。ガーヴさんも少し落ち着いて下さい。」
そういえばここは漁村の人達が管理する場所ではなく別の集落だった。だからこそ漁村の人達から話が聞きたかったのだがどうやら当事者が来てしまったようだ。
「あなたこそ急に何を怒っているのでしょう?探っていると貴方は言われましたが何か探られて痛い腹でもあるのでしょうか?」
「何もある訳がないに決まっているだろう!貴様無礼だぞ!」
「怒鳴って威嚇を続ける貴方は無礼ではないとでも?」
「二人とも落ち着けっ!!…マサル、君はいったい…君は二ヶ月前の嵐でこちらに来たと言った。しかし何故君は二年前の事を調べているのかね?」
「わたしは違うと訂正はしませんでしたが、二ヶ月に来たとは言いませんでしたが?何故と言われればそれも言ったでしょう?恩を受けた人達がいると。」
「…それが兎人族達という事か?」
また沈黙してしまったので、ここまでの情報を整理してみよう。
まず、二年前はここは兎人族の住む土地ではなかったかと推測、それは兎人族からの情報と彼らの反応から間違いないだろう。
しかし新たな疑問点も見つかった騎士団の小隊長のクックは兎人族達と言った、それは他にここに住む者がいたとの事を示唆しているのではなかろうか?
それにこの集落の村長…彼はこの件に関して直接関わって戦った一人ではないかという事。集落や漁村が騎士団の防衛圏にあるという事は騎士団が所属する国の下に管理されているという事。
それを二年前に勢力圏を拡げるために住民である兎人族達を追い出したとしたら?きっと無抵抗で土地を譲り渡すなんて事はなかったであろう。
そうなると戦いになり兵がいる…兵が要れば報奨がいる。勢力圏を拡げるならそこを守る住民が要るとなればある程度は自分達が戦えて土地を守れる兵に報酬として土地に住む権利を与えたと考えるのが妥当ではないだろうか?
それならそこに住んでいたいた住民達は?きっとあの兎人族の集落に住む人達が全てではないだろう、ならどうなった?わたしはそれが知りたいのだ。
「で、お話して頂けるのですか?どうですか?」
「答える必要などない!」
「では、先ほどの襲撃については被害者であるわたしからの訴えにより対処して頂けるという事ですね。クックさん後はよろしくお願いいたします。」
「ちょっと待って下さい!話します話します!」
「貴様!避難を受け入れた恩を忘れたのか!」
なかなか悲惨な展開になってきたな。手加減してやる義理はないがこんなコントにずっと付き合う気はないのだが。
「ではわたしから話をしよう。その件についてはわたしも関わっているのでな。」
「エルダム様!?」
そう言って出てきたのは何とクックの部下で今まで一度も喋ってない騎士エルダムであった。
「マサルも考えている通り、確かにこの土地は獣人族の住まう土地だった。」
「お待ち下さい!エルダム様!」
「黙れガーヴ!貴様に発言は許しておらぬぞ!」
どうやら二人は知り合いらしい。
「続きを話そう…。」
話が長かったのでまとめると、5年くらい前に先代の王が死去し代変わりし国土の拡大を目指し周囲の集落などを次々飲み込んで自国の土地としていった。その時に上官と部下としてエルダムとガーヴは戦いへと参加したらしい。そして2年前獣人達の住むこの地にたどり着き戦いの末に獣人達は逃げていき土地は国に吸収されてエルダムは騎士に、ガーヴはこの集落の村長になったらしい。
「それで?獣人達はどうした?全員が逃げました、戦いで死にましたじゃないだろ?」
「………捕虜として捕らえられ今は奴隷として扱われている。」
「じゃあ、解放して貰おう。」
「っ!それは出来ぬ!奴隷は財産として扱われている!勝手に解放したりは不可能なのだ。」
「じゃあ、ここでお前らを叩きのめし奴隷とすれば全員俺の財産って訳だな?」
「そんな無茶苦茶な理屈があるか!!」
「そういう無茶苦茶をしてお前らは獣人を奴隷にしたんだろ?なら、斬り殺されても奴隷にされても文句は言えないだろ?」
「獣人の味方をして人間を敵に回す気か!」
ほぅ、この期に及んでそういう事を言いますか?
「分かりました。彼れらに優しくされた恩を返す事が貴方方の敵となるなら喜んでなりましょう。自分たちのやった事がどれだけ人の道に反れているか理解しているのにそれを正義だと語って侵略が正しいと言うならば皆さんのいう侵略をわたしが成してみせましょう。」
そう言って剣を鞘からそっと抜き、心の中に少しずつ闘志をみなぎらせていく。
「待ってくれ、本当にわたし達の権限で勝手に奴隷の解放は出来ないのだ。」
「自分たちは法に乗っ取っていると?」
「その通りだ。決して自分たちの勝手でやって…」
「黙れ!!侵略を受けた人達は国に属していなかった。つまりお前らは自分たちの法を押し付けて自分勝手に彼らを奴隷にしたんだ!」
その言葉には誰も反論出来ず今度こそ完全に沈黙したのだった。
自分の過ちは頭で理解していても認めにくいものです。きっと戦争など大きな過ちなら尚更なのでしょう。