酷い仕打ち1
「ほへっ?」
「ほへっ?じゃねぇわ!なんだよこのカオスな状況は!?全員生きてんのか!?」
微かにピクピクしている者はマシで、お尻を上に突きだしてうつ伏せに顔を地面に埋める様にして動かないもの、茂みに突き刺さって逆さまになっている者、まだ殴られていないのに木に抱き付き白目を剥いて意味不明の言葉を繰り返し言ってる者と酷い状況が広がり。複数の者が失禁しているのだろう臭いも酷い面のだ。
「てへっ♪やり過ぎちゃった♪バギー君あとは任せた!」
「待て!逃がすかっ!てか何が『てへっ♪』だ!気持ち悪いわ!向こうに全部引っ張っていくから手伝え!」
「バギー君がやってよ…ほら、俺が近付くと怖がっちゃうから。」
「逃がさんと言っただろ!自分のやった事の始末くらい手伝え!お前は漏らしてるの運べよ!良いな!」
結局、本当に漏らしてる男達は全部運ばされました。こっそりやり過ぎの証拠隠滅にヒールをかけていったのは秘密なのです。
「こっ…これは…。」
誰もが絶句し横たわり気を失ったり意味不明な言葉を繰り返しながら震える男達をただただ眺める。さて、楽しい村長殿との交渉ですぞ。
「という事でこの者達に襲われました。」
「襲ったのではなく?」
「はい、襲われました。勿論わたしも無抵抗で攻撃されるのは良しとしないので少々抵抗させてもらいましたが。」
「…しょ…少々ですか?これが?」
村長だけではなく全ての人がドン引きか怯えているが仕方がない。
「村の者が人を襲うなどの不祥事を起こせば村長にも責任の是非を問わねばならなくなると思われますがいかがですか?隊長殿。」
最終的な判断をするのは別の責任が取れる人がするお仕事だ。決して決めつけたり自分で判断してはならない責任を問われるからね。
「確かに責任はないとは言わないが…ここまで痛い目をみているなら…いや、本来なら減刑の対象にはなり得ないのだが…。法に照らし合わせれば武器を持ち集団で殺意ある行動を起こしたのなら処刑か奴隷落ちなになる。」
「そっ、そんな!おら達はこのままじゃあ村が潰されると言われて仕方なく従っただけだ!」
誰だって自分は可愛い。きっとまだまだ叩けば埃が出るのだろうが俺の目的は彼らの罪を何でもかんでも暴くとこではない。
「誰からだ?」
「村長の息子ジョンからです。」
視線が一人の男に集まる。最初に斧で斬りかかってきた男だ、きっと立場的にも人間性的にも疑う事なく主犯だろう。しかし、ここで襲撃の件を村長の息子を主犯に確定としても他の村の男達が犯した罪がなくなる訳でもなければ、俺にだって得がない。鞭は十分に振るったから今度は飴をあげて自分の利益を挙げようではないか。
「まぁ、待って下さい皆さん。条件次第では今回の襲撃に関しては被害者であるわたしが訴えを取り下げても良いのですが?」
「「「「「「「はいっ?」」」」」」」
今度は一転、全員が頭おかしいのか?って顔をしている。
「どういう事かね?」
一番最初に我にかえったのは村長。明らかに何を吹っ掛ける気だと警戒心を顕にしている。
「わたしがお願いしたいのは最初に隊長さんが言った水瓶と木箱の手配と、幾つかの質問に正直に答えて頂きたい。それだけです。」
「それだけか?」
「それだけです。難しくはないでしょう?」
村長はため息を一つつき答える。
「仕方ないですな。そもそもはわしと倅のおかした愚じゃ。」
「違うでしょう?漁村の村人全員の過ちですよね?あれだけの男達が武器を持ち関わっていたなら他の村人が知らなかった訳がない。つまりは誰も止めず愚行を傍観していた訳です。直接関わっていないなら無罪?違うね!見て見ぬふりをするのだって同罪だ!まぁ、それがどれくらい関与してるのか知りたかったから彼らをバギー君に任せて他の人の反応を見たかったんですけど、バギー君に捕まっちゃったんですよね。あはははっ!」
「全部計算ずくの行動か。じゃあ何故俺に捕まってコイツらを運んだ?そのまま押し付けて逃げて行けば良いじゃねぇか。」
「だってバギー君逃げたら追いかけてくるじゃん。反応見れなくなるし…それにバギー君に嫌われたくないからね。」
「なっ、てめぇ!からかってるのか!」
そうだよと答えると追いかけられた。適当に撒いて戻ると何かを決したような目をしたクックが待ち受けていた。
「質問とやらを聞こうじゃないか…君の事だから質問して本当の事を答えて終わりじゃないんだろ?」
「当たりですよ。景品いります?あれ要らない?じゃあ、質問させて貰いますね。知ってたら誰でも良いので答えて下さい。」
「我々もか?」
「えぇ、騎士団の皆様もどうぞ。では聞きます。わたしの推測が正しければ約2年くらい前はこの辺りは兎人族達の住まう土地だったんじゃないですか?彼らはどうなりました?」
思った通り、この質問には全ての人がうつむき沈黙するのだった。
兎人族達の事を知る為に仕組んだ酷い仕打ちでした。
侵略した方は自分達を侵略者だとは言いません。
臭い物には蓋をしろというのが普通なのです。歴史は正しく伝えなければならないという思考は地球でも最近の心理で、地球の先進国ですら悲しい事に実際のところは正しい意味では行われていないでしょう。見栄やプライドで国は良くなりません、しかし偉い人にはそれが分からんのですよ!