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とある小さな集落での惨事。

「隊長、先に集落に寄って討伐の報告。住民達の移動を促してからマサルの馬を借りるんで良いんですか?」


「そうだな。…えっとその前にマサルは馬には乗れるかな?」


むろん否である。そんな金持ちの遊びにはとことん接点が無い。こっちの世界は必須技能かも知れないが。


「馬には乗った事はありませんね。」


「じゃあ、取り敢えずはわたしの後ろに乗ってくれ。村にマサルの乗れる様な馬があれば良いが…。」


「わぁ〜い、隊長殿のランデブーだ…。」


野郎二人で二人乗りかと思うとため息が出るわ。


「ランデブーって何?なんか響きが面白いな…ランデブー…ランデブー…隊長とマサルがランデブー!」


「ガイ君?すぐに忘れろ!無理なら記憶喪失する迄、何度でも殴って手伝ってあげるぞ?」


「忘れたであります!」


要らん嗅覚を働かせるなよな…こうして漁村の村人達が避難しているという集落へ馬を走らせる。月並みだが馬の感想を一言…ケツ(いて)ぇ!





「無事にご帰還なされましたか騎士様。一同皆様の無事を案じておりました。して、ゴブリン共はいかがなされましたかな?」


丁寧には話しているけど結果以外に興味はないか。


「実はだな、我々がたどり着いた時には殆どが既に倒されていたのだよ。本来なら我々が倒したならば騎士団への仕度金をというところなのだが、今回我々は事後処理くらいしかしてないのでな村を守った報奨をこちらの方に用意して欲しい。むろん、無茶な要求をする方ではない事は我々が保証しよう。」


一部の人から険悪な視線が集まる。なるほど、本当なら税金を払っているから守護する騎士が動けば最低限の経費くらいで討伐されたのに余計な事しやがってという事か。


「報奨と申されましても我々も貧しい生活をしておりますので…。」


払いたくないでござる!って言っちゃえよ。隠す気あるの?払わないって言っちゃうと村の信用なくなるから別に良いですよとか言えとでも?


「だから言ったであろう。無茶な要求をする方では無いと。彼は幾つかの水瓶と木箱が欲しいと言っているだけだ。あとは可能ならいくらか魚の干物くらいだ。今回の被害が最小限になったのは間違いなく彼の功績だ。安いものだろう。」


「いやしかし、木箱はともかく海辺で住む者に水瓶というのは生活に必須の道具です。海の水は飲めませんから淡水を溜めておける水瓶を手放したくないというのは分かって頂けませんか?」


何が何でも払いたくないでござる!ってか?


「すみませんがあの漁村の住民は何人ですかね?」


「40人くらいだが、それがどうしたのかね?」


「村にあった水瓶はだいたい大きいものが38と小さいものが26ありました。うち使用しているものは大が18と小が24でした。予備も考えたとして生活に支障あります?」


「貴様!勝手に我々の村を探ったのか!」


「他に魔物が潜んでいないか調べたついでですよ。必要じゃないですか、安全確認。それにありますよね?少し分かりにくいところに淡水の出る井戸。ほらアレですよ、畑のあったところですよ。」


「ほぅ?あの村には水が貴重だからと畑はないと聞いていたがね?説明頂こうか村長殿?」


みるみるうちに顔色を真っ青を通りすぎ真っ白になった村長さん。同時に殺気だつ一部の男達。


「水瓶をけちって不正をばらされちゃ村長は終わりだな、ついてくる者はいないだろうよ。お前もなかなか悪辣だねぇ。」


「余所者なんで不正だなんて知りようがありませんよ。」


分かりにくい場所の草の生え放題の畑は地球でも昔からあった不正所得の隠し畑だと十分に確信があったがそれを認めても良い事はない。あくまで自分は報奨を虚偽の報告をしてケチろうとした村長に対し抗議しただけなのだ。それが不正の摘発へと繋がったのはあくまで偶然なのだ。周り全ての人が違うと知っていてもそうでなくてはいけないのだ。大人って大変だよね?


「じゃあ、隊長さんは村長殿と大切なお話があるようなので少し散歩をしてきますね。」


「おいっ、今一人でふらふらすると…いや、だからか…。…殺すなよ。」


嫌だなぁ。殺したりする訳ないじゃないですか、勿体ないじゃないの。

キョロキョロと周りを珍しそうに見ながら人気の無いところへと少しずつ移動していく。


「おい、そこのお前!余計な事をしてくれたな!」


手には斧に鉈にナイフ…(いず)れも先ほど殺気だっていた男達だ。殺す気なら何も言わず攻撃すれば良いのに。これは様式美と言えるのだろうか?もしかすると美しく散る三流悪党のやられ方とかって本でも出版されているのだろうか?不意を突いてはいけません実力差があると自分の出番が少なくなりますとか。


「むしろ村長の自爆ですよ?」


「要らん事を抜かしたのはお前だろうがぁ!ぶへっ!…」


斧で斬りかかる男の顔面へと拳がしっかりめり込む。


「覚悟はしてるんだよな?」


逃げ惑い泣き叫び絶叫を残して倒れていく男達。


「走りまわりながらボクシングっぽく殴るのは違和感あるな…少々改善が要るな。」


「なんじゃこりゃあぁぁぁあぁぁぁっ!!!」


辺りに響きわたる騎士バギーのその絶叫は集落中に響くのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 剣も逝けるが拳も逝けるよ?それとも地面と仲良くしたい? 屋外での柔道や合気は凶悪だぞ?死合に成るからね 受身を知らんと!良くて重賞だぞ?無手対凶器持ちだと 騎士は無手の味方だよ立場上! 殺さ…
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