【side story】女神様の憂鬱
「ちょっ!どうなってんよのアレ!?」
「いや、分からないからヘラ様にご相談に行ったんですけど…。」
二人の女神が見ていたのはゴブリン達を地面を滑る様に斬りまくっている鳴海優の姿。次々と案山子でも斬っているかの様にゴブリンを倒していくその姿は異常としか言えない。確かにゴブリンは弱い。しかしそれは訓練された戦士などの話で、普通の一般的が無傷で次々とどうにかなるものではないのだ。曲がりなりにもゴブリンは魔物で野生環境で生きる事が可能な生物なのだ。
「ちょっと持ってる資料見せなさい。何か分かるかも知れないし…。」
「資料?あぁ、ゼウス様から貰ったヤツならここに。」
「えっと、剣道を中学3年間して3年生の時に全国でベスト8。よくあるヤツよね…。高校は剣道部が無くて拳闘?部に入部。あぁ、ボクシングね。こっちは県大会で2位か。入部理由、剣道部と拳闘部のゴロが似ていたから…どうでもいいわ!何か優秀って言えば優秀だけど異常って程じゃ…。」
「ゼウス様が肉体を改変した時の加護とか?」
「…ちょっと旦那に聞いてくる。」
…数分後。
「…原因分かったわよ。確かに肉体の改変も原因しているんだけど、あんたの世界自体も原因なんだってさ。」
「え?わたしの世界が?」
「あんたの所、魔導技術も生物自体の発生も停滞しまくってるでしょ?」
「だから彼が必要なんですけど…。」
「肉体を改変する時に生物が多過ぎて魔力自体が薄い地球から、過剰に魔力が余っている世界に移すと体内に魔力が溜まり過ぎるて魔物化したり変異したりするから適応出来る様にと周囲の魔力を身体に効率的に取り込み消費する様にしたらしいのよ。」
「つまり妙にハイスピードで長時間走ったりステータス以上に能力高いのは…。」
「まぁ、なるべくしてって事ね。」
あまり疲れず、力も魔力もスペック以上に高いスーパーマンの出来上がりである。
まぁ、能力高いのは何とかなるよね?とビクティニアスが簡単に考えていると、
「なにほっとしてるのよ。完全にヤバい状況なのよ?」
「え?ヤバいんですか?物作りが出来て戦えてなら悪くないと思うんですが?」
「むしろああいうのがヤバい。あんたは文明や技術の起爆剤になれば良いなくらいに考えてるでしょうけどあれは既にキロトン単位の戦略級爆弾くらいに思ってなさい。異世界からの召還って世界消滅の原因の第4位なのよ?」
因みに一位は神様の管理ミスでうっかり。二位は破壊神の降臨。三位は戦争や荒廃などで建て直しが不可と見なされるパターンである。つまりは殆どの場合神様のせいと言えなくもない。
「………ガクガクブルブル………。」
「一歩間違えたらそれがただの爆弾じゃなく超新星爆発くらいの規模になるしね。」
「文明どころか世界ごとじゃないですか!」
「そうねあなたごと消滅ね。」
神は管理する場所の世界とその生命体によってその力が左右される。世界が滅べば勿論その世界の神は解雇というか消滅となる。
「どうにかしてくださいよ!」
「どうにもなんないわよ。」
彼を始末すればと思う人もいるかも知れないがこっちの世界に神はわたし含めて9人。向こうの世界は彼の住んでいた日本だけで八百万を超える。何よ八百万って!わたしの世界の中規模な国の人口に匹敵するじゃないのよ!多過ぎよ!多過ぎ!だいたいゼウス様やヘラ様だってその神様の大群とは別の体系の神らしいし…。
「彼を始末したりしたら神同士の戦争よ?」
分かってますよ…意外と思うかも知れないが結構神はその世界のある命を大事にする。世界の中でのゴタゴタは神が干渉をしない様に決められているだけで全ての命はわたし達神にとって可愛い我が子なのだ!賭けに使っただろって?言わないで…ヘラ様の説教を思い出す。別の家に行ったって子は子なのだ。
「とりあえず様子見するしかないよね〜♪」
ヤバいのが分かったって手は出せない。わたしにとっては最凶の危機でも彼に何も出来ない時点でヘラ様にとっては他人事なのだ。
「いつか絶対酷い目にあうんですから…。」
「何か言ったかしら?ビクティニアス。」