夢は寝てる時だけで十分ですが?
「…実はですね?わたしは何と別の世界から来たのです!」
「そういうボケは良いからさっさと話せ。」
いや本当なんですけどね?さて、どうするか…。
「こことは別の大陸がありまして海を大型船で航海している途中に…4日目くらいだったかな?嵐にあって船が転覆して流れついたのがこの大陸だったのです!」
こんなところでどうや!
「2ヶ月前のあの嵐か!あの嵐は今までにない規模だったからな。その時海の上にいたのなら…。」
「おいおい隊長さんよ。そんな海を旅出来る様な船なんか見たことも聞いた事もないぜ?」
「他所の大陸ならあるかも知れぬ。下手に報告したら大変だぞ?絶対に馬鹿な貴族共が船で他の大陸から攻めて来られる前に自分達が攻めるんだ!とか言って大型船の開発とかやりだすぞ?」
「なぁ、マサル。大型船の構造とかって知ってたりは?」
そうなりますよね?地球でも歴史上あったしね。
「構造なんて知りませんとも…なんせ密航してましたので!それに大型船が出来るのと大陸間航行が出来るのは似たようで別次元の話ですよ?わたしのいた大陸でもあと100年は先の技術ですね。死ぬなら他人を巻き込まないで自分達だけで死んでくれと貴族の方々にお伝え下さいませ!」
満面の笑みで答えてやる。
「「「「「「………………。」」」」」」
「きっと船が出来たら海をよく知ってるだろうとか言って沿岸騎士団の人達からも船に乗らされるんだろうなぁ…海に浮かぶ棺桶とも知らずに。何度失敗するまでやるかなぁ〜何人が死ぬのかなぁ〜♪」
「「「「「「………………。」」」」」」
この辺りは半分以上は真実である。
「どうすれば…。」
深く落ち込み悩み始める彼らに取って置きの解決法を教授しよう。
「あれ?別の大陸とか大型船とか変な夢見てないでゴブリン退治に協力してくれた田舎者の買い物を手助けするのに普通に帰れば良いと思いますよ?」
「そうだな…夢か…変な夢を見てしまった。」
うんうんと皆が頷く中クック隊長はまだ悩んでいる。
「しかし虚偽の報告は…。」
いるよねこういう真面目な人。人柄としては好ましいが仕事柄それはよろしくないんだよね。
「いえ、虚偽の報告をしろとは申しません。その代わりに何も報告しなければ良いのです。質問され嘘だと知られると皆さんの立場的にものすごくマズい。しかし、相手が知らない事は聞かれる事は無いのです。クック隊長はこの国を守護する者だと言いました。民を犠牲に戦いの火種をまく事は騎士の本懐では無いとわたしは思うのです。」
「そうだな!わたしが守るべきは国であり民だ!余計な事なんて忘れてしまおう!」
はい、洗脳成功。密航してたのは誰もツッコんでくれないのね?
こうして話し合いも終わり見張りも騎士の皆さんに任せてぐっすり寝たわたしと騎士団小隊の面々は翌朝隣の集落へと移動するのであった。