悪人に人権は無いと人生のバイブルには書いてありました
10月12日11時頃少しだけ修正。
「じゃあ、行ってきます!」
「ちょっと、にいちゃん!?」
「なんで…おにいちゃん!?」
夜中にこっそり旅の準備をしていたのは知ってる。なんせ一部屋しかないからね。だから朝食をとってから旅の準備をしていた袋をルルさん渡して正座でお説教中に出発する事にしたのだ。正座の文化があるのかって?勿論俺が教えた。
「おはようございますハイトさん。長様に挨拶をして行こうと思ってるのですが一緒に長様のところまでいかがですか?」
「ああ、おはよう。長のところか…そうだな一緒に行こうか。」
ハルトはいつも持っている弓矢とやたら大きな袋を背負っている。まさかな…。
「そういえばハイトさん。その弓は素晴らしいですね。少しだけ拝見させて頂いても良いですか?おぉ、これは中々…凄く張りも強いししっかりしている…おっ、ここはこんな風に…。」
なんて良いながらハイトの弓を品評しながら長のところに着く。ハルトは弓をベタ誉めされてかなりの上機嫌だ。
「あっ、長様おはようございます。はい、これハイトさんの弓です。しばらく持ってて下さい。」
「なっ、ちょっとマサル!どういう事だ!」
「どうせその中身は旅の準備なんでしょ?ジータとメイも夜中に同じ事して今ルルさんに叱られているのでハイトさんも同じだろうなと。」
堂々とした態度で知らないフリをしているが完全に目が泳いでいる。こういう場合沈黙は是と見なしますよ?という事で長にも正座での反省の文化を教え、彼はきっと狩人としての責任について長から教授願いたいのでは?と吹き込んでおくのも忘れない。ニヤリとして面白いオモチャを見付けたと、目が笑っていたので正しく真意は伝わっただろう。
「何か欲しい物が見付かったりしたら遅くなる場合もありますので決して捜索とか考えないで下さいね。お土産は期待しないで待ってて下さい。あとは…ルルさん達をお願いします。皆様お身体にお気をつけて!では!」
「…そっちは南東だぞ?」
なぬっ…そうか…。東と西を逆に覚えてたわ…。こうして溜め息の中を出発するのであった。
…長距離走マジでキツい。身体能力が上がっている為景色がどんどん流れていくのが面白くてハイペースで駆けてきたのだが数日もの間ただ歩いたり走るというのもかなりの苦行である。既に3日目なのだが何せ何も起きない。一度走っていると何かの糞を踏んで滑って転けたくらいだ。忘れよう…なんて考えていたら誰かの声がする。まさかと振り返るけど誰もいない。
「…おーい!…おーい!こっちだぁ!」
あ、何だか手を振ってる男の人間がいる。どうする?行くのか?男の後ろには馬車、馬は死んでいるみたいだな、何かに襲われたのか?周りに視線を巡らせ警戒しながら男の方へと近付いてみる事にした。
「おーい!こっちだ!盗賊に襲われて馬を殺されてな困ってたんだ。何とか盗賊は追い返したんだがな足がなくてな………」
何か言っているが頭に入らない。死んだという馬はまだ時間が経ってないのか斬られたであろう血が流れ続けている。それに馬とは別の血の跡、これは引きずられ馬車の裏へと続いている様だ。馬車を見る限り商人のようだが何故一人でいる?護衛は?馬車を操作していた御者は?そこまで考えたところで反射的にアイテムボックスからホブゴブリンの棍棒を取り出し男に向かってスイングしていた。
「…な…ぜ…。」
あんた今腰の後ろの剣抜こうとしてたよね?駄女神様に怒られて決めたのです、後悔するなら殺した後にするって。てか剣も頂きますね〜。
「てめぇ!よくもジーンを!」
さて思った通り馬車の裏からこの男のお仲間4名の登場だ。てか、ジーンだって…!
「なめるなよ! ガン○ムがただの白兵戦用MSじゃないところを見せてやる!」
「………何言ってんだこらぁ!」
ですよねぇ。だって言って見たかったんだもん!
「殺ってやる!死ねぇ!」
「うりゃっ!」
斧を振りかぶる男にアイテムボックスから出した石が顔に当たり倒れる。
「てめぇ!卑怯だぞ!正々堂々と戦え!」
複数人で騙し討ちしようとしてた人間がそれを言いますか?次に斬りかかってきた男には棍棒を投げ付ける。また当たったし!
倒れて痛がる男二人の横を通り過ぎる瞬間に川の近くで拾った大きめの石をアイテムボックスから放出して身体の上に落としながら残った男2人に斬りかかる。
「その首斬り落としてやる!」
と言いつつ胴を一閃。予想外の流れに明らかに動揺している男には防げる訳もなく斬り伏せられる。あと一人!気合いを入れ直し睨みつけると
「…ひっ。た…助けてくれ。」
腰を抜かして命乞い始めちゃいました。助かるわけないでしょうに…聞くに値しませんね。
「助けてくれたら今まで貯めた財宝を全部やる!だから助けてっ!」
財宝なんかあったら盗賊なんかしてないだろうに…いや待てよ?少しくらいの武器くらいならあるかな?お金はないし集めれる物は集めておこうか…。
「じゃあ、お前には案内して貰う。その前に少し寝てろ!」
ミシッという音をたてて男は蹴りを顔面にくらい気を失う。酷い?悪人に人権は無いと私の青春時代の聖書の主人公の美少女が言ってましたよ?(ラノベだけど)
被害者側に生存者はいないだろうけど襲われて持ち主がいなくなったなら遺失物は盗賊を退治した俺が預かって問題ないよね?という訳で馬車とその周辺を捜索すると護衛と見られる男が3名。商人と御者と下働きの男3名が遺体で見付かった。
護衛と盗賊の武具はアイテムボックスにしまい、商人からは硬貨の入った袋を貰う事にする。護衛と商人はそれぞれ違うデザインのカードを持っておりそれぞれを鑑定すると【冒険者ギルドカード】と【商人ギルドカード】と表示されたので本人確認が出来るかもとこれも収納しておく。馬車の中はというと…。
「これは…ビン?【ポーション】に【解毒薬】?あとは…【風邪薬】に【痛み止め】か…薬の流通がビンなのか。」
他には保存の効きそうな塩漬けの肉や乾燥させた薬草などがあったのでそれもアイテムボックスに。水袋の中の水は飲めない事はないだろうが少し泥の臭いがするので集落で貰った水袋と交ざらない様に印をつけて収納する。
馬や壊れた馬車も入るかな?と試したらすんなり入ったのでラッキーだった。護衛の冒険者や商人の遺体は持って帰ってあげられないかな?と思ったが入らなかった。魔物や馬は入るのに人は駄目なのは判定が分からないが、その理由こそ考えても分からないので考えるのを止めた。
眠る盗賊を馬車の中で見付けた縄で手足をくくり、昨日乾燥していた木を取り出し枝などを斬り落とし乾燥させてから掘った穴に遺体と枝を入れ焼く。穴堀りは土木スキルが役にたった。無宗教だから信仰なんて無いし彼らとは何の関係もなかったけど…少しだけ泣いた。
盗賊を殺した事より知らない人の死に心を痛めてしまうと私は思います。人の死については様々な考え方があるとは思うので主人公の態度などに不快に思ったのならごめんなさい。