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良い子はマネをしないで下さい

冒険者たちを連れノームの集落へと着くと、開口一番、


「出来るならすぐに水浴びがしたい!」


と女性2人が訴えたので男性陣は苦笑しながら準備をしだす。マサルは小屋を一つ借りてスキルで石を使って簡易的な浴槽を作り、樽詰めにしたヴィンターリアの温泉の湯を中に入れていく。他の男性陣は鎧や装備の手入れを井戸水で一度丸洗いして手入れの準備をしていく。

そわそわする女性2人をお湯を用意した小屋に招待するとキャーキャー言いながら喜んでくれた事にほっこりしながらマサルは食事の準備にとりかかった。


「きゃあぁぁぁっぁぁぁあぁぁっ!!」


しばらくすると聞こえてきた悲鳴に、すぐに声の主の場合へと駆け出すマサル。


「何をしてんだ!って…ボッツ爺!?…歳を考えろ!」


湯をかけられて湯気を出しながら逃走しようとしている覗きをしていたノームたちの前に立ち塞がり反射的に握ってきたオタマで頭に一撃ずつ入れていく。


「た…頼む!見逃してくれ!儂らは知らなかったんじゃ!」


「ほぅ…事故ならちゃんと皆の前で弁明して貰おうか。」


「なっ!!それは…。」


覗きをしていたノームはボッツ爺を含めて4名。なんでもボッツ爺が(そそのか)して若いノームを共犯にした様だ。


「何があった!今の悲鳴は………あぁ…なるほど。」


「…あぁ…そういう事か…。」


駆けつけてきた冒険者仲間の反応は意外に薄い。


「怒ったりとかはしないんだな?」


「………そうだな。彼女たちが余程に油断でもしていないとマトモに覗きなんか出来ないからな…水をかける程には余裕があったとオレたちはみたんだ。」


「………なるほど。経験談か。」


「「「「…………………。」」」」


「じゃあ、飛び火する前に作業に戻った方が良いぞ。こういう時の女性たちは理不尽だ。ちゃんと駆けつけて心配はしてたと報告はいれとくよ。」


「た…助かるよ。じゃあ、オレたちはこれで。」


謎のフォローにより、マサルに対する冒険者の心の距離は思いの外に縮まる。これが男という生き物なのだ。

次第に集まってくる他のノームたち(特に女性)によって覗きの犯人たちは捕らえられ、冒険者の女性たちによる証言とお湯をかけられている証拠、そして現行犯逮捕により言い訳等は全く認められず彼らはキツい罰則勤務を命じられるのであった。


「せっかくの久しぶりの水浴びかと思ったら、お湯まで用意してくれていたから凄く喜んでいたのに台無しよ!」


そう言って怒る彼女たちに苦笑しながらマサルは提案する。


「なぁ、温かいお湯のお風呂に毎日入れて家も支給してくれる街があるんだが移住する気はないか?」


「お風呂に毎日って!?しかも家を支給!?」


「王族じゃああるまいし、そんな事が…。」


「この近くのヴィンターリアって新しい街なんだ。定住する気があるなら今なら煉瓦作りの一軒家が手に入るぞ?」


「あなた…私たち冒険者が何を求めて暮らしているのか分かって言ってるの?」


突然、真剣な顔をして目を見て話出すメイス使いの女性。


「スリルと金?」


「そんな物を求める冒険者なんて一部の愚か者だけよ。私たち一般的に冒険者になる様な人には市民権がないの…つまり定住する許可が降りないのよ。」


「何で!?」


「本当に知らないのね…それは簡単よ。税金をちゃんと払えないから。決まった収入は無いし、経済的な意味で社会的信用がないのよ。」


「つまり?」


「お金を貯めて市民権を買って、税金が払えて…そして普通の暮らしが出来るのが私たち冒険者の夢なのよ。…ほとんどの人が実現出来ないけどね。」


「じゃあ、問題は解決だ。明日には街に帰るし皆に紹介するよ。あ…獣人差別とかないよね?」


「えっ…そういうのはないけど。」


「なら大丈夫!家も仕事も問題なく見付かるさ!」


その言葉に彼女たちはポロポロと涙をこぼして抱き合い喜ぶ。


「…う〜ん。何の涙にしても女性の涙にはどうしたら良いか分からんな…逃げるか。」


こっそり逃げようとするマサルはノームのおばちゃんに捕まり、女の子を泣かすとは!と怒られたりするのはまた余談であろう。


「やっぱり女性は理不尽だ…。」


そんな言葉は空に溶けて誰にも届く事はなかった。

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